インフェクションコントロール
Volume 18, Issue 2, 2009
Volumes & issues:
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特集
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- サーベイランスの効果アップ!賢い活用とフィードバックのコツ
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1 デバイス関連感染のサーベイランス:(1)UTIサーベイランス
18巻2号(2009);View Description Hide Description筆者の施設では,耐性菌の包括的サーベイランスは継続的に実施していたが,尿道留置カテーテル関連尿路感染(UTI)サーベイランスは2006 年まで実施されていなかった.しかし,2006 年11月の定例院内感染対策委員会において,多剤耐性緑膿菌(MDRP)を始めとした耐性緑膿菌検出が問題となった.特にカテーテル尿からの検出が多いため,尿道カテーテル留置と尿路感染の関連性が問われ,自施設のUTI 感染率の把握と評価が必要であるとされた. そこで,ICT が尿道留置カテーテルの使用頻度が高く,かつ耐性菌の検出も多い部署(つまりハイリスク・ハイボリューム)をターゲットに,UTI サーベイランスを開始した.その結果,自施設の尿道留置カテーテルの使用実態やそれに関連した尿路感染率が明らかになった.そのなかで,カテーテル管理上の問題点も示唆され,それを委員会や当該部署にフィードバックすることにより,感染対策に配慮した医療材料の導入やケアの改善につなげることができた. その経験をもとに,UTI サーベイランスを感染防止活動に活用する方法やフィードバックのポイントを述べたい. -
2 デバイス関連感染のサーベイランス:(2)CLABSIサーベイランス
18巻2号(2009);View Description Hide Description医療施設ではさまざまな種類の血管内留置カテーテルが使用される.そのなかでも中心静脈カテーテルは全身管理や栄養管理のために最も汎用され,末梢静脈カテーテルや埋め込みポートなどのカテーテルと比べても感染リスクが高いことが明らかになっている1). そのため,サーベイランスデータのフィードバックや教育による感染率の低減が試みられ,その効果が確認されている2, 3). 当院は地域医療支援病院として,救急とがんを重点医療と位置付け,急性期短期入院の患者を受け入れる背景から,その治療過程において中心静脈カテーテルは欠かせないものとなっている.重症患者や消化器疾患の患者を中心に,中心静脈カテーテルが挿入され,在宅中心静脈栄養法(HPN)を導入する症例も少なくないため,中心静脈カテーテル関連血流感染(Central Line-associatedBlood Stream Infections,CLABSI)防止対策の徹底が重要課題の一つである. そこで,当院では,CDC ガイドラインの推奨に基づくエビデンスレベルの高い対策を中心に導入し,サーベイランスデータで評価,データのフィードバックや教育を行いながら,当院に合ったCLABSI 防止対策の確立に取り組んだので,そのプロセスを紹介する. -
3 微生物サーベイランス
18巻2号(2009);View Description Hide DescriptionMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)をはじめとする薬剤耐性菌(耐性菌)の増加は,病院だけでなくさまざまな施設やコミュニティにおいて,重大な医療問題として取り上げられている1).現在までに開発されたほとんどの抗菌薬に対し,耐性菌の存在が報告されている.こうした耐性菌の発生状況はWHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病予防管理センター)など国際的な保健医療機関によって監視されており,わが国においても国立感染研究所 感染症情報センターやJANIS(院内感染対策サーベイランス)などがサーベイランスを実施し,発生動向調査と対策検討を実施している2). NHSN(National Healthcare Safety Network)による2006 年から2007 年の耐性菌サーベイランスの結果3)を表1 に示す. 耐性菌のなかには空気・飛沫感染で拡散する菌もあるが,ほとんどは接触感染によって伝播するため,標準予防策(スタンダードプリコーション)と接触感染予防策を行うことで拡散を防ぐことが可能である.これらは,もともと人間や生活環境に常在する微生物が耐性化したものが多く,対策を怠ると,短期間で病棟中に広がりアウトブレイクを発生させるため,これらの微生物の分離状況や薬剤耐性の程度,感染症の発生などを監視し,耐性菌の拡大防止を図ることは,病院感染(医療関連感染)を防止するために非常に重要な対策である. -
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5 針刺し・切創サーベイランス
18巻2号(2009);View Description Hide Description医療従事者* 1(以後,職員という)が業務中に細菌やウイルスなどの病原体に曝露し,感染症を発症することを「職業感染」という.なかでも,「針刺し・切創」は,さまざまな職種の日常的な医療・ケア行為のすべての過程で発生している. また,血液曝露は職業感染の大きな要因であり(表1),可能なかぎり予防されなければならない.予防のためには,針刺しの発生状況を把握し,効果的な予防策につなげるため,針刺し・切創サーベイランスを行うことが重要である.サーベイランスの最大の目的は,結果をフィードバックして現場に行動変容を起こし,ケアの進化により針刺し発生を低減させ,安全な環境を提供することである. 針刺し対策は感染管理部門あるいは,職員健康管理部門,医療安全管理部門など多部門が関連するが,効果的に針刺し対策を実践するためには,いずれかの部門が中心となって対応する必要がある.当院は感染管理部門の衛生管理室(以後ICT)が対応している. 今回,当院のサーベイランス結果をもとに,サーベイランスの賢い活用とフィードバックのコツについてWhat・When・Who・How の切り口で紹介する. -
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新連載
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- このひとのとっておき
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連載
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- 月刊CDCガイドラインニュース
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医療施設における消毒と滅菌のガイドライン
18巻2号(2009);View Description Hide Description二〇〇八年十一月、CDC は*「医療施設における消毒と滅菌のガイドライン」(http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/p d f / g u i d e l i n e s /Disinfection_Nov_2008.pdf)を公開した。このガイドラインには消毒や滅菌についての情報が数多く記載されているが、ここでは消毒と滅菌の効果に影響を与える因子について抜粋紹介したい。 - 院内指導にそのまま使える 感染対策まちがい探し
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- 院内勉強会に使える 感染対策問題集
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- グローバル化時代をどう生きるか/ICMTから発信! 微生物検査室のSign
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- IC日記
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- SPOT
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感染管理認定看護師が行う地域の医療従事者を対象とした研修会
18巻2号(2009);View Description Hide Description近年,さまざまな医療関連感染(病院感染)に関する報道があります.当院はこれらの報道を受け,当院における感染対策を再確認すると同時に,地域連携を目的として,外部施設を招待し,感染管理セミナーを企画しました.同時期に,社団法人三重県看護協会(以下,看護協会)より依頼を受け,三重県内の感染管理認定看護師(以下,ICN)と共同して,「基本的な感染管理の再確認」をテーマにした研修会の講師をさせていただく機会をいただきました. これら2 つの研修会(表1)を実施して,地域での感染対策教育のニーズの高さを痛感しました. -
精神科領域における病院感染対策−その特殊性とストラテジー−
18巻2号(2009);View Description Hide Description精神科病院では個人衛生管理が困難な患者が多く,通常であれば直接接触することのない床などの環境表面が感染源となり得ます.また施設構造上,閉鎖的環境が多く,そのため接触・交差感染の温床となる「ドア」が数多く存在するなど,特殊な環境下にあります. 難しいガイドライン云々の話は成書に譲ることとして,ここでは大規模単科精神科病院である当院の感染対策の経験から,精神科領域の特殊性に特化した感染対策の戦略について提言したいと思います. - カンセナー救済企画 現場の疑問氷解Q&A
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人工呼吸器回路の定期交換
18巻2号(2009);View Description Hide Description2004 年にCDC から公開された「医療ケア関連肺炎予防のためのガイドライン 2003」1-3)には,「患者に使用中の呼吸器回路を定期的に交換しない.目に見える汚染や作動不良が発生したときに回路を交換しなさい」という人工呼吸器回路交換に関する勧告があります.また,定期的な回路交換が肺炎の予防につながるわけではなく,むしろ過度の回路交換は肺炎のリスクになるということが複数の研究結果によって示されています(Evidence の項を参照). ただし,定期的な交換が必要ないといっても,呼吸器回路を無条件に放置してよいわけではありません.毎日回路汚染の有無を確認し,汚染確認時には速やかに回路の交換を行う必要があります.単純に交換をやめればよいということではなく,「回路汚染を適宜確認し,必要時には速やかに交換する」と理解しておくことが大切です.以下に,人工呼吸器回路管理の考え方を簡単に説明します. - プロの真価が問われる コンサル手順 冒頭10分
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緑膿菌感染症に対するゲンタマイシン注の投与量と併用抗菌薬に関する検討− CRP,末梢血白血球数,体温を効果判定の指標として−
18巻2号(2009);View Description Hide Description緑膿菌は一般に,抗菌薬に対し低感受性の細菌であり,同時に,各種抗菌薬に耐性化しやすいことが知られている.その理由は,緑膿菌の外膜にあるポーリンの孔が小さく,またその数が少ないため抗菌薬の透過性が低く,さらにほかの腸内細菌に比べてβ - ラクタマーゼが誘導されやすい菌であるためとされている1).したがって,緑膿菌に対する抗菌薬の選択と投与量が重要となる. 当院では,緑膿菌感染症に対しゲンタマイシン注とβ - ラクタム剤の抗菌薬併用療法を多く行っている.ゲンタマイシン注は,濃度依存性で効果発現が早く殺菌性の高い薬剤であり,うまく使用すれば早期治療に有効な抗菌薬である.処方する医師はアミノグリコシド系の腎障害を懸念し,低用量から投与開始する場合が多いと思われる.しかし,添付文書で認められた最大量の120mg/ 日の1 日1 回投与では有効症例を多く経験した. そこで今回,ゲンタマイシン注の投与量と効果,さらに併用抗菌薬について検討したので報告する. - ニュース丸かぶり
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