Volume 14,
Issue 12,
2008
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特集
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なるほどナットク!透析中の血圧低下20のギモン
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透析ケア 14巻12号, 1201-1201 (2008);
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特集1 原因にまつわるギモン
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透析ケア 14巻12号, 1202-1203 (2008);
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血圧とは、心臓が血液を全身に送り出し、血管(動脈)を流れる際の圧力のことです。心臓から出た血流は、太い動脈からしだいに細い動脈を通り、毛細血管を介して静脈となり、心臓へ返っていきます。 血管内の圧力は、心臓に近い動脈ほど高く、しだいに低下して静脈系では低くなっています。このことは、動脈を傷つけたときに勢いよく血液が吹き出るのに対し、静脈ではその勢いが弱いことからも理解できるでしょう。
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透析ケア 14巻12号, 1204-1205 (2008);
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透析中に血圧が低下し何らかの処置が必要になる場合を、透析低血圧といいます。そのために透析を続けることができなくなると、透析困難症と呼ばれ、高齢者や糖尿病性腎症患者、心疾患患者などに多くみられます。 心臓・血管・血液量が血圧を決める3 つの要素ですが、これに関するさまざまな要因で透析低血圧が起こります(表)。実際には、原因が一つであることは少なく、いくつかの要因がともに関連して低血圧になっていることがほとんどです。
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透析ケア 14巻12号, 1206-1207 (2008);
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心拍出量低下による低血圧では、ふだんから血圧の低い患者がよくみられます。しかし、透析開始時は著明な高血圧であった患者が、透析後半には低血圧に陥ることも、ときどき経験します。これは、体重増加の多い患者、とくに時間当たりの除水量の多い患者でよくみられます。 透析前に服用している降圧薬の影響も考えられますが、循環血漿量の低下が原因になっていることが多くあります。このような場合は、昇圧薬の使用もためらわれ、対処がむずかしいところです。
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透析ケア 14巻12号, 1208-1209 (2008);
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循環血液量とは、心臓と血管の中を流れる血液の総量のことです。血圧を規定する2 つの因子(心拍出量と末梢血管抵抗)のうち、心拍出量は心機能と循環血液量に、また末梢血管抵抗は自律神経(なかでも交感神経)とその神経化学伝達物質でもあるカテコラミンの作用などによって左右されています。したがって、透析により除水を行い循環血液量が減少すると、血圧が下がるのです。
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透析ケア 14巻12号, 1210-1211 (2008);
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透析間の塩分や水分過剰により体重増加過多となった場合、通常の時間内で十分な除水を行おうとすると、時間当たりの除水量を上げなければなりません。18 ページで述べたように、除水速度がplasma refilling 速度より速くなってしまった場合、循環血液量は減少し、血圧低下を起こします。
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透析ケア 14巻12号, 1212-1213 (2008);
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まず、貧血とは酸素供給の役割を担う血液中の赤血球やヘモグロビン(Hb)の量が減少することで、体内に起こる酸素欠乏の状態をいいます。酸素はHb にくっついて運ばれるため、Hb が少ないと運ばれる酸素も少なくなります。またHb をつくる鉄分の減少、栄養不足でも貧血が起こります。
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透析ケア 14巻12号, 1214-1215 (2008);
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透析低血圧をひき起こす医療側の要因として、ドライウエイト(DW)の設定、降圧薬の投与、ダイアライザに対するアレルギー、酢酸透析液の使用などが挙げられます。
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透析ケア 14巻12号, 1216-1217 (2008);
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透析開始直後に起こる血圧低下は、透析回路に血液を満たすことにより一時的に循環血液量が低下するためと考えられています。心機能が正常な場合には、心拍数を増加させたり、末梢の静脈を収縮させたりするなどの代償機構がはたらいて、血圧は変動しません。しかし、透析患者では、高血圧を合併していることが多く、動脈硬化や左室肥大などの異常を認め、心機能も低下していることがあります。さらに自律神経障害の合併も多いため、急激な循環血液量の変化に対応できないために、透析開始直後に血圧が低下してしまうのです。
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透析ケア 14巻12号, 1218-1219 (2008);
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透析中の血圧低下には、次のようなさまざま原因があります。①急激な血漿浸透圧の低下②急激な除水による循環血液量の低下③ドライウエイト(DW)の設定が適切でない④自律神経障害⑤心機能低下⑥酢酸透析液の使用⑦降圧薬の内服⑧透析中の食事摂取⑨ダイアライザに対するアレルギー反応⑩一酸化窒素などの血管拡張因子の産生亢進
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特集2 対処法にまつわるギモン
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透析ケア 14巻12号, 1220-1221 (2008);
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透析低血圧は、透析開始前から血圧の低い常時低血圧と、透析中に突然血圧低下をみせる発作型低血圧があります。このうち死亡要因であることから予防を求められるのは、発作型低血圧です。
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透析ケア 14巻12号, 1222-1223 (2008);
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透析中に血圧が下がり始めた場合は、まず負荷を軽減させることを考えなくてはなりません。ここでいう、負荷とはどのようなものなのでしょうか? 負荷とは、透析そのものを指すことになります。最近では、電解質や糖質、そして血液pH の変動などは約20 秒で中枢神経に反射され、調整や制御を行うと報告されています1)。透析によりこれらの因子が時事刻々と変動しているわけですから、最低でも20 秒ごとに調整される因子が4 時間も続くことを想像すれば、透析現象そのものが負荷となることは理解できるでしょう。
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透析ケア 14巻12号, 1224-1225 (2008);
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生理食塩液(生食)は等張性液です。多くの場合、透析回路に接続されており、すぐに補液できるという利点があります。しかし、透析の進行に伴い血清浸透圧が低下するため、生食の補液が無効となる場合があります。
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透析ケア 14巻12号, 1226-1227 (2008);
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心臓から出た太い血管は、次々と枝分かれしてしだいに細くなっていきます。それとともに血管壁もしだいに薄くなっていきます。そして、血管が細くなりきったところには、輪ゴムのような小さな輪状の筋肉が血管を取り巻くように存在しています。 心臓から拍出される血液の量が多いほど、また血管を締めつけるこの輪状の筋肉の力が強いほど、心臓から出たばかりの太い血管内の圧である血圧は高くなります。この関係は、庭の芝生にビニールのホースを使って水道の水を撒く様子に、たとえられるかもしれません。庭の芝生に水を撒くとき、水道の蛇口を大きく開くほど、またビニールのホースの先をつまむ指の力が強いほど、ビニールのホースの中の水圧は高くなります。 さて、透析中に血圧が低下するのは、透析中に体内の余分な水を除去する結果、心臓から拍出される血液の量が少なくなり、これが血圧を下げるように作用するからです。しかし、人の体では、心臓から拍出される血液の量が減少すると、輪状の筋肉が血管の末端を締めつけ、これにより血圧の低下を防ごうとします。ところが、糖尿病のある患者や高齢患者では、血管を締めつけようとするこの輪状の筋肉の力が低下しています。したがって、糖尿病のある患者や高齢患者では、透析中に除水を行うと血圧が低下してしまうのです。
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透析ケア 14巻12号, 1228-1229 (2008);
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いくつかの薬が透析低血圧を防ぐために使用されています。それぞれの薬は、服用してから効果が現れるまでの時間、血圧を上げる作用が持続する時間が異なります。ですから、服用してから効果が現れるまでの時間、血圧を上げる作用が持続する時間を考慮して、薬を使い分けるべきです。
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特集3 予防法にまつわるギモン
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透析ケア 14巻12号, 1230-1231 (2008);
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透析中の血圧低下には、何らかの不快な臨床症状を伴うもの(症候性低血圧)と症状を伴わないもの(無症候性低血圧)とがあり、おもに問題となるのは前者です。 透析中には除水に伴う体液量の減少が生じるため、血圧はやや低下するのが一般的ですが、透析中に予期せぬ血圧低下が観察された場合、それが透析治療に起因するものか(過除水など)、透析中に偶発的に生じた合併症によるものかをまず考えましょう。たとえば、透析中に急に生じた消化管出血、透析中の不整脈(心室頻拍、発作性上室頻拍など)、感染症による敗血症性ショック、迷走神経反射、薬剤に対するアナフィラキシー反応などの可能性をつねに念頭におくことが必要です。 血圧低下の予防は、抗凝固薬の選択に始まり心電図モニターでの不整脈監視など、全身管理によるトータルケアがいちばん重要です。
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透析ケア 14巻12号, 1232-1233 (2008);
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40 ページで述べたように、血圧低下の予防には適切なドライウエイト(DW)の設定がたいへん重要です。DW とは体内に過剰な水分貯留のない状態の体重のことで、「もしそれ以上除水すると急激な血圧低下を来す限界点に至る一歩手前の体重」と考えてもよいでしょう。
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透析ケア 14巻12号, 1234-1235 (2008);
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透析中の血圧低下の多くは、透析方法を工夫することによって予防できます。したがって、現在行われている透析方法がそれぞれの患者に本当に適しているかどうかをつねに検証し、必要があれば見直しを行うことが重要です。簡単に実施できるものから取り組んでいくのがよいでしょう。
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透析ケア 14巻12号, 1236-1237 (2008);
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透析中の血圧低下の大きな原因の一つに、時間当たりの急激な除水があります。つまり患者が透析間に体重を増やさないで来れば、除水量も少なく、血圧が下がることも少なくなります。 では、患者が水分をがまんすれば問題は解決するでしょうか。患者に水分制限を徹底させ、ポスターやパンフレットをたくさん配れば問題は解決するでしょうか。答えはノーです。かえって悪くなることもあるでしょう。
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透析ケア 14巻12号, 1238-1239 (2008);
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透析医療に限らず、いろいろな疾患の領域で治療のガイドラインが定められています。ある疾患をどういう治療をすると成績がよいか、予後がよいかという大規模研究の結果をもとに、実際の数値目標が決められます。日本高血圧学会では、高血圧の降圧目標を若年者、糖尿病患者、腎障害患者では130/80mmHg 未満、高齢者では140/90mmHg 未満と定めました。これをそのまま透析患者にあてはめてよいのでしょうか。
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透析ケア 14巻12号, 1240-1241 (2008);
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日本透析医学会の報告によると、透析患者の18%に何らかの血圧低下のエピソードがあり、一般的に生理食塩液の急速静注や昇圧薬投与で対処しています。今回の特集で学んだように、透析低血圧の原因には非常にたくさんの要因が関係しており、それぞれの透析施設で事情が若干異なります。ですから、すべての透析室で、すべての患者に対しても有効な方法というのは、残念ながら報告されていません。そうすると透析中に血圧の下がる透析患者はあきらめて、昇圧薬をどんどん使うしかないのかというと、そうでもありません。これまでにわかっている透析低血圧の原因を一つひとつ解決していくことが大切です(表)1)。
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特集4
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透析ケア 14巻12号, 1242-1247 (2008);
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連載
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マイクロ・メディカ号で行く! 透析装置ミクロ探検隊
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透析ケア 14巻12号, 1193-1195 (2008);
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いよいよ血液回路内の探検を決行! といっても実際の体外循環路内に入り込むのは、患者へのリスクばかりか倫理観が問われることになります。そこで、模擬的に治療中と同じ血液の循環を作り出して探検することになりました。
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患者さんといっしょに確認 写真でわ・か・る! 食事のポイント【最終回】
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透析ケア 14巻12号, 1196-1197 (2008);
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透析患者さんの栄養相談を担当していると、食事を制限することの厳しさを痛感します。本来、食事はおいしく楽しんで食べるもの。この連載では、透析患者さんからよく聞く実際の声を取り上げて、その対策について考えてみます。ぜひ、患者さんといっしょにお読みください。
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ケアするあなたに伝えたい! 患者さんのホントの気持ち
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透析ケア 14巻12号, 1249-1251 (2008);
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ある日、私は透析スタッフの方とすこし語り合う時間をもつことができました。そのとき感じたことは、患者とスタッフの間には、少なからず思いにギャップがあるということでした。スタッフにとってはごく当たり前のことも、患者からすれば不思議なこと、何か腑に落ちないこと、恥ずかしいことがあるように思いました。 私は透析歴約3 年と、まだまだ新参者です。しかし、透析の先輩方が当たり前と思う光景にも、新人だからこそ気づくことが多くあるように思います。そこで、私が感じたことをいち患者の思いとして語ることにします。
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医学と文学の散歩道【最終回】
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透析ケア 14巻12号, 1252-1253 (2008);
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本書は、人間学を学ぶ月刊誌「致知」に掲載された致知出版社の社長、藤尾秀昭氏のエッセイを一括集録したものです。「致知」は格物致知という言葉に由来するものでしょうが、広辞苑には「①学問・修養法の一つ、②朱子学では、後天的知を拡充(致知)して自己をあらゆる事物に内在する個別の理ことわりを窮きわめ、究極的に宇宙普遍の理に達する(格物)ことを目指す」とあります。むずかしい言い回しですが、「致知」とは、修養によって一段高まった自己に至るための知識の蓄えであろうと考えます。
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透析室の気になるカタカナ語
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透析ケア 14巻12号, 1256-1256 (2008);
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みなさんの透析室でも、次のような場面に遭遇した経験はありませんか? ナース「先生! 砂糖さんの様子がおかしいので“BS”チェックしたら55 でした」 医師「低血糖だね。じゃ、50 プロツッカー1 筒iv して」
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私の心に残った患者さん
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透析ケア 14巻12号, 1259-1259 (2008);
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透析室に配属され責任者を任されてすぐ、88 歳男性患者のA さんが類天疱瘡で緊急導入してきました。そのA さんにまつわる苦い思い出が、今の患者対応を支えてくれています。
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患者さんと看護師が語る きらりPDライフ
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透析ケア 14巻12号, 1260-1262 (2008);
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今年で75 歳を迎えた林重子さんは、腹膜透析(PD)を始めて約3年になります。45 歳のときに脳出血で右片麻痺になり、杖歩行で何とか自宅での療養生活を送っていました。林さんは娘さん夫婦とお孫さん3 人との6 人家族で、介護は同居している娘さんが主となり、家族全員で協力していました。
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看護の醍醐味 透析室のベッドサイドから
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透析ケア 14巻12号, 1264-1265 (2008);
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30 歳代の独身女性M さんは、1 型糖尿病で若いときから病とつき合い、透析導入のため入院してきた。両親との3 人暮らしで、透析室にはいつも母親がつき添っていた。色白の端整な顔立ちで、知的な印象だった。4 時間の透析が苦痛だったのだろう。表情は暗く、誰とも目線を合わさず、透析機器を見ることもできない状態だった。
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ルーティンワークのヒミツがわかる、見直せる 透析ナースのための病態生理30分教室
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透析ケア 14巻12号, 1266-1271 (2008);
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●今月は、体重増加量の多い患者さんのケアはどこに注目すべきかについてお話しします● 今月は、体重増加量の多い患者さんについてのチェックポイントをみてみましょう。どこの施設にもかならず、体重増加量の多い患者さんがいますよね。そんな患者さんのケアでは、どういったことに気をつけていけばよいのでしょうか?
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荷物を背負った人生はそれなりの味がする
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透析ケア 14巻12号, 1272-1276 (2008);
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父親の骨折の回復は、思うようにはいかなかった。コルセットをつけたまま、ベッドで終日仰向けの状態で過ごさざるをえなかった。痛みが相当の期間続いた。表情からも苦痛が伝わってくる。勢い、ため息と涙が出た。声を出して泣くこともあった。夜も十分には眠れていないようだった。リハビリに通っていたころの元気は失われていた。
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すこし歴史の話をしましょうか〜腎移植史〜【最終回】
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透析ケア 14巻12号, 1277-1281 (2008);
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臓器移植を行うには、手術手技の開発のほかにも、さまざまなものが要請される。その一つには免疫抑制法の開発がある。 前号(vol.14 no.11)で述べたように、人間はその個体それぞれに固有の血液型と白血球の型(HLA 型)をもっている。一卵性双生児の場合は同一であるが、他人であれば通常これが異なる。よって移植をする場合には、ドナー(臓器提供者)とレシピエント(臓器受容者)間において組織適合性を検査することになり、適合度の高いドナーとレシピエントを選ぶことになる。だが完全に一致することは稀であるため、免疫を抑制する必要が生じる。