がん看護
Volume 10, Issue 2, 2005
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特集 【肺がん~最新の治療と看護(2)~】
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肺がんの化学療法~主として入院治療~
10巻2号(2005);View Description Hide Description肺がんの治療は,大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2 つに分けられる.現在わが国では両者の治療戦略は,『2003 年版EBM の手法による肺がん診療ガイドライン』1)などを標準的診療指標として計画され,実践されている.本稿では,当院において入院化学療法が計画され退院決定するまでの一連の流れの紹介と,現在一般臨床で実施されている標準的肺がん化学療法レジメンにかかわることを述べさせていただく. -
肺がんの入院化学療法の看護
10巻2号(2005);View Description Hide Description肺がんの化学療法は1990 年代の新規抗がん剤の承認によって,新たなレジメン(治療計画や処方計画,治療手順などのプログラムやスケジュール)の開発がわずかではあるが生存期間の延長や,症状緩和にも効果をもたらし,患者のQOL の向上に貢献するようになった.また,高齢者にも安全に使用できる抗がん剤の単剤による治療や支持療法の確立によって,外来での化学療法も増えつつある.当院でも,肺がん患者の外来化学療法件数が増加してきている.その一方で,肺がん化学療法のkey drug であるプラチナ製剤(シスプラチン)の使用や,肺がんによる上大静脈症候群,息切れや疼痛などの症状がコントロールできていない患者など,外来で化学療法を続けるだけの体力を維持できない場合もある.当院では現在,肺がん化学療法は入院が主体となっている.また,初回治療を入院で行い,2 コース目以降を外来で行うための教育と副作用のモニタリングを兼ねた目的の入院の場合がある.がん化学療法看護の目的は,患者が安全にかつQOL を維持しながら化学療法を行えるように支援することである.肺がんの化学療法では,シスプラチンベースの化学療法を繰り返すことによる体力の消耗がみられたり,新規抗がん剤の承認によって,多種抗がん剤のなかから患者に適した抗がん剤を選択使用することなどから,さまざまな出現形態の副作用がみられる.入院による肺がん化学療法では,看護師は副作用のモニタリングとその出現形態に適した支持療法を展開,肺がんそのものによる症状コントロールをはかりながら化学療法を継続できる体力と意欲を患者が維持できるように支援する重要な役割がある.本稿では肺がん患者が主体的に化学療法に取り組めるよう支援するための看護として①意思決定への支援,②患者教育・指導,③抗がん剤の安全・確実な投与と取り扱い,④副作用のマネジメントとセルフケア支援,⑤心理・社会的支援についての実践を中心に述べる. -
肺がんの化学放射線療法
10巻2号(2005);View Description Hide Description切除不能局所進展型の肺がんの治療は従来主に放射線治療が行われて,がん性胸膜炎や遠隔転移などがある患者には対症療法・緩和療法のみとなる治療が行われた.しかしさまざまな抗がん剤が開発され,これら対症療法のみとなった患者に対しても抗がん剤の効果が期待されるようになるのに伴い,放射線治療を主体とする患者でも抗がん剤を併用することでさらなる治療効果を上乗せすることができるのではないかと考えられた.その後さまざまな臨床試験が行われた結果,放射線治療が適応となる状態であれば,放射線治療単独よりは抗がん剤治療を行った後に放射線治療を行ったほうが生存率などの治療効果が高いことがわかった.さらに抗がん剤治療を放射線治療と同時に行ったほうが,副作用は多少強めになるものの,よりよい臨床効果が得られることがわかってきた. -
肺がんの化学放射線療法の看護
10巻2号(2005);View Description Hide Description化学療法+放射線治療併用療法(化学放射線療法)は限局型小細胞肺がんで適応となるのみならず,切除不能Ⅲ期非小細胞肺がんにおいても,化学療法単独と比較したメタアナリシスで,化学放射線療法の生存期間の延長が証明されている.さらに併用のタイミングとして,逐次併用より同時併用のほうがより抗腫瘍効果を増強させ,局所再発や遠隔転移の制御に改善をもたらしていることがわかってきた.その反面,化学療法と放射線治療による正常組織への反応も強く認められる.化学放射線療法における看護師の役割は,化学療法の経過日数,照射部位と線量などの両者の治療計画を把握し,予測的に副作用に対処していく知識をもち,予防行動がとれるように患者とともに副作用症状をマネジメントして,最小限の副作用で治療できるように支援することであり,重要な役割を担っている.肺がんの化学放射線療法では,照射範囲に上縦隔が入ることが多く,両者による粘膜障害が加わり食道炎症状が放射線単独に比して強く出現する.また,骨髄抑制も化学療法単独に比して高率に出現してくる.さらに,最大の懸念が放射線性肺臓炎である.本稿では化学療法と胸部放射線同時併用療法を受ける患者の看護について,副作用に関連した,観察のポイント・対応策・患者教育などの症状マネジメントを中心に述べる. -
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肺がんの放射線療法の看護
10巻2号(2005);View Description Hide Description放射線治療を受ける患者のなかには,誤った先入観や不安をもったまま受診する人が少なくない.また,治療が始まっても治療効果が自覚できないうちに正常組織の有害反応が出現して不安に陥り,治療中から治療後も不安を抱えたままの状態でいることがある.したがって,治療前診察から治療期間中および治療後のフォローアップまで,患者が正しく理解できるように繰り返し説明を行い,できるだけ患者の不安を解消する必要がある.看護師はすべての期間において患者の受け止め方を確認し,理解度を把握したうえで必要に応じて補足説明を行い,セルフケア指導を行う役割をもつ.また,日頃から積極的に患者の訴えに耳を傾け,迅速かつ適切に対応すること,常に共感的・支持的姿勢で接することで信頼関係を築く.そういった日常的なサポートが患者の精神的支えとなり,不安を解消することにつながる.これはがん看護の基本であり,放射線治療を担当する看護師が果たすべき重要な役割といえる. -
肺がんの外来化学療法
10巻2号(2005);View Description Hide Description近年,肺がん化学療法の領域においても,入院治療から外来治療への移行が推進されてきている.化学療法の適応となる進行肺がんは,診断時からの平均生存期間が1 年に満たないという厳しい現実があるため,患者に残された時間の質・価値を最大限尊重することが非常に大切である.われわれ静岡がんセンター呼吸器内科でも化学療法期間に占める入院期間の割合を最小限にとどめ,効率よく外来通院加療へ移行することで,なるべく本来の患者の生活の時間がもてるよう積極的に心がけている.実際に診療にあたっている実感として,はじめは不安を強く抱いている患者であっても,ひとたび外来化学療法を体験しある程度の時期がすぎると,自ら入院治療の希望を申し出ることはまれであり,通院ベースの治療継続を望まれることが大半である.したがって,医療者側は十分な化学療法のオリエンテーションを怠らずに実践することで,患者の不安の軽減に努めるだけでなく,経過が順調そうにみえる患者であっても自宅での状況を確認し必要な指導を継続することがリスクマネジメントの第一歩であることを忘れてはならない.つまり,肺がん患者の生活の質を高めるためには医療者側の質を高めていくことこそ大切なのである.本稿では外来化学療法についての基本的な留意事項や,実際に当院で実施しているレジメンについて述べる. -
肺がんの外来化学療法の看護
10巻2号(2005);View Description Hide Description近年,肺がんの化学療法は,併用療法におけるシスプラチン(CDDP)の代替であるカルボプラチン(CBDCA)の導入や,パクリタキセル(PTX)や塩酸ゲムシタビン(GEM)などの新規抗がん剤の導入,制吐剤や造血因子製剤などの薬剤開発などによって,入院だけでなく外来での治療が可能になってきている1,2).多くの場合,初回の化学療法は入院で行い,有害事象の出現時期や程度を把握し安全性を確認した後に,外来での治療へ移行していくことが多い.また,レジメンの内容によっては,薬剤投与のday 1 からday 3 までを入院で行い,day 8 を外来で実施するという方法もとられるようになってきている.外来で化学療法を実施していくためには,さまざまな有害事象に患者が主体的に対処していけるようにセルフケアを重視した患者指導を行っていくことが必要である.また,自宅での生活状況を把握したうえで,患者と家族に必要な生活指導を行うことが重要になる.ここでは,外来で化学療法を受ける肺がん患者の看護について,有害事象に関連した患者指導と,患者と家族に対する生活指導を中心に述べる. -
肺がんの緩和療法
10巻2号(2005);View Description Hide Description日本の緩和医療は1973 年に聖隷三方原病院にホスピスが設置されてからその後の発展は遅々としていたが,1991 年に医療保険で緩和ケアに定額医療制度が導入されてきてから施設数は急速に増加し,2004 年10 月に138施設が認定され,2,608 病床となった.しかし緩和ケア病棟で看取る患者数はがん死亡者のわずか5%程度で,まだ不十分な状態におかれている.一方,2002 年には緩和ケアチーム医療加算が保険で認可されてからは,一般病棟においても緩和ケアを行うことが可能となった.当施設はこのような状況下において21 世紀のがんモデル事業として静岡県が総力を上げて新設されたがんセンターで,とくに緩和ケア病棟はわが国最大の50 床が設けられた.2002 年9 月に50 床のうち34 床が稼働してきて,ここ2 年間で573 名のがん患者を看取ってきたが,臓器別にみると肺がんが最も多く,消化器がんを上回って24%の134 名となっていた.現在緩和専門医師スタッフ4名,カウンセラー1 名と看護師36 名で,入院,外来,他科のコンサルテーションの業務をこなしている.本項では現場で行われている肺がんの緩和医療,なかでもがん性疼痛の治療法の基本を中心に述べる.呼吸困難については診断上の注意のみに限局した. -
肺がんの緩和治療における看護~事例を通して~
10巻2号(2005);View Description Hide Description肺がんの症状は多様であり,がんの進行と多臓器への転移によりさらに複雑化すると同時に難治性となることが多い.これらの症状は患者の日常生活動作(ADL)を著しく低下させ,QOL に大きく影響する.肺がんの緩和ケアにおいてこれらの症状に対するケアは看護師の大きな役割となる.また,発症から進行の速度が速い予後不良の症例の場合,患者は治癒を目指す闘病生活から緩和ケアに重点を置いた療養生活への気持ちの切り替えに大きな苦痛を伴うことが多い.看護師は症状に対するケアと同時に患者の抱える心理的・社会的問題を踏まえ,患者を全人的にとらえた介入をしていかなくてはならない.本稿では,肺がん患者の主な症状に対する全人的ケアと心理的・社会的問題へのアプローチについて,事例を交えて述べる.
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今月の症例:積極的治療から緩和ケアへのギア・チェンジ~化学療法に期待を寄せる胃がん患者に化学療法の引き際をどのように伝え,支えるか~
10巻2号(2005);View Description Hide Description淀川キリスト教病院看護部では,看護部職員のキャリアアップと専門能力向上を目的にさまざまな研修を行っている.この緩和ケア研修Ⅱは,緩和ケアに必要な知識・技術の習得を目的とした緩和ケアⅠを受講したメンバーが,日日の緩和ケアの実践で問題を感じた事例を持ち寄り,メンバー間での検討を行い,その学びを各病棟での看護実践に活かすことを目的として行っている.今回紹介する事例は,看護師が積極的治療から緩和ケアへのギア・チェンジの必要性を感じながらも,どのようにギア・チェンジを進めていけばよいのかに苦悩した事例である. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【12】:Patient Needs Assessment Tool を使ったがん化学療法を受ける患者のアセスメント
10巻2号(2005);View Description Hide Description新薬の開発や医療保険の診療報酬制度の改定,症状緩和目的のQOL を考慮した化学療法の実施などによって,化学療法を受ける患者の治療環境は,長期入院治療から外来治療や短期入院治療へと変化している.また,医療情報やがん患者の闘病体験などを簡単に誰でも入手できるようになったことや,患者の権利保障の観点からもインフォームド・コンセント(IC)が不可欠になってきている.このように医療環境が変化し,入院期間の短縮に伴う看護師-患者間のコミュンケーションが減少した状況において,生活背景や生命・人生における価値観など多様な患者のニーズに対して,早期に気づき,危機的状況に陥らないように,QOL を維持できるように関わっていくことは容易なことではない.しかし,看護師は,時間の制限により患者との人間関係が十分とれない状況にあっても,患者の安全を確保し,個々の患者に応じて教育や相談,心理的サポートを実施する必要がある.患者一人ひとりの病気や治療への受け止め方や社会的背景など総合的に考慮した治療実現には,患者理解のためのコミュニケーションが重要であり,患者を理解する意図的なコミュニケーションスキルを磨く必要がある.ここでは,患者の身体面・心理面・社会面の機能やwell-being に関する情報収集を行いながら,その情報を患者理解に活用できるPatient Needs Assessment Tool(PNAT)1)の活用について紹介する.PNAT は,筆者が修士論文作成時に日本語版PNAT として日本語訳を行い,がん看護のエキスパートの意見をもとに一部修正したものである.
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【特別論考】
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CNS への相談を活用した病棟ナースの実践報告―モルヒネの副作用症状が強かったがん患者の疼痛マネジメント―
10巻2号(2005);View Description Hide Descriptionがん性疼痛はがん患者のほとんどが自覚する症状であり,緩和ケア病棟においては,その9 割がコントロール可能といわれている.しかし,一般病院における「疼痛マネジメント」はいまだ十分とはいえず,痛みに苦しむ患者を前にして,看護師は日々悩みながら対応しているという現状がある.当院には,緩和ケアの専門医は常勤していないが,がん看護専門看護師(CNS)らが活動しているので,がん患者への関わりについての悩みを相談することができる.本稿では,モルヒネの副作用症状が強く疼痛マネジメントが困難であった膵臓がん患者への関わりに悩んでいた病棟ナースが,CNS への「相談」を活用しながら実践した疼痛マネジメントの過程を報告する.この実践報告は,看護記録,CNS からの返信記録から「疼痛マネジメント」に関する記事を抽出し記述した.また,関係者に事実であることを確認した.倫理的な配慮としては,遺族と関係者に公表の許諾を得て匿名性を高めた.
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投稿
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原著論文:造血幹細胞移植体験が生き方に与える影響と移植を乗り越えた要因の分析
10巻2号(2005);View Description Hide Description造血幹細胞移植は,難治性の血液疾患においては根治を目的とする唯一の治療法である.今回は,移植体験患者の視点に立ち,その後の生き方に与えた影響はどのようなものなのか,また移植を乗り越えられた要因にはどのようなものがあるのかを探求することを目的に質的研究を行った.対象は,造血幹細胞移植を受けて,約3年再発がなく家庭で生活を営んでいる患者5名であった.方法は質的研究であり面接ガイドにより,患者の言動をコード化し集めたデータから病気体験が生き方に及ぼす影響を類似性に従い内容分析の手法を用いて,カテゴリー化した.その結果,造血器移植体験が生き方に与えた影響は【深められた重要他者との関係】【自己の生きる信条をもつ】【自己の成長を自覚】の3カテゴリーと9サブカテゴリーが導き出された.移植を乗り越えた要因は《闘病生活を支えられている実感》《時間が問題解決》の2カテゴリーと4サブカテゴリーが導き出された.病気を乗り越える際には,時間のみではなく,同病者の協力が必要とされており患者会や体験者のさらなる活用が不可欠であることが示唆された. -
事例報告:難治がんに対する臨床試験と看護倫理―脳神経外科領域における初回遺伝子治療例を通して―
10巻2号(2005);View Description Hide Description難治がんに対する臨床試験と看護倫理について,脳腫瘍(悪性グリオーマ)で初回遺伝子治療を受けた31歳の女性患者に対する看護の体験を通して考察した.既存の治療法では治癒を望めない難治がんにおいて,患者は新しい治療法に自分の命を賭け,その臨床試験に対する患者と家族の期待は高まる.したがって,医師は臨床試験について慎重に説明し,看護師は説明場面に同席して,患者・家族の擁護者としての役割を担うことが必要である.初回治療例では,効果や副作用に関する経験的なデータがなく,その時々における患者の身体的・精神的状態によって治療の方向性が検討されていく.臨床試験で狙う効果を達成するために,患者に著しい苦痛が生じる場合,治療継続に対する患者の意思決定上の葛藤は深刻である.看護師は患者の身体的苦痛が最小限になるように緩和し,患者が真に望むことに傾聴して共感的理解のもとに患者の意思決定を支えることが重要である.
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REPORT
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21 世紀COE プログラム第1回国際駅伝シンポジウム:あなたはどこで最期を迎えたいですか?―「市民とともに築く家で死ねるまちづくり」の基盤となる考え方を実例から学ぶ―
10巻2号(2005);View Description Hide Description
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心に残る看護
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アドバイザー通信
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