がん看護
Volume 12, Issue 2, 2007
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特集 【一歩進んだがん疼痛マネジメント】
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- 1 がん疼痛の基本的な考え方
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1 がん疼痛の基本的な考え方
12巻2号(2007);View Description Hide Description近年,WHO のがん疼痛治療法の普及に伴い,がん疼痛対策はめざましい進歩をとげている.しかし,がん疼痛は多くのがん患者が体験するものであり,いまだ疼痛対策はがん医療の重要な課題となっている.また,最近では,進行がん患者に対してだけでなく,がん診断後の早い段階から治療と並行して十分な疼痛緩和を行うことが求められており,広くがん患者のQOL 向上のための対策が求められている.本稿ではがん患者における疼痛マネジメントの基本的な考え方を述べる. - 2 がん疼痛のメカニズム
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2 がん疼痛のメカニズム
12巻2号(2007);View Description Hide Descriptionがん患者のおよそ90%が死亡までに痛みを体験するといわれている1).しかし,痛みの原因を検索し原因が判明すれば対応の方法が決まってくる.もちろんすべての痛みが確実に緩和されるわけではないが,上手に付き合う方法を導き出すことは可能となる.痛みは非常につらくADLもQOL も著しく障害するが,感じ方は千差万別,訴えもさまざまである.よって評価も困難を極め,聞き手によって得られる情報量に大きな違いが出てきてしまう.まず痛みの情報を十分聞きとり,画像診断や身体所見などにより痛みの原因を見極めることが大切となる.問診・視診・神経学的検査・画像診断・心理検査などから,どの部位で痛みが発生しているか探索することが重要である.疼痛治療のためには,痛みのメカニズムを理解し,痛みの原因を見出すことが基本となる. - 3 がん疼痛のアセスメント
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3-1. がん疼痛のフィジカルアセスメント
12巻2号(2007);View Description Hide Description患者が体験するがん疼痛を理解するための大前提となるのは,誰もが客観的に把握することができるフィジカルな(身体面の)アセスメントである.そして,フィジカルアセスメントを的確に行うためには,解剖学,なかでも疼痛伝達や認知に関係する神経系の理解に基づいた,症状との関連づけが重要となる.的確なフィジカルアセスメントは,迅速で効果の高い疼痛緩和対策を導き,さらに医療チームメンバー,患者,そして家族間での情報共有を円滑にすることができる. -
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- 4 がん疼痛緩和に対する多角的アプローチ
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4-1. 薬物療法:薬物療法の基礎知識
12巻2号(2007);View Description Hide Description薬物が生体内でその作用を発揮するためには,体内へ吸収され,生体内組織に分布される必要がある.そして,体外へ排泄されるために水溶性が高くなるように変換(代謝)され,代謝を受けた薬物は,体外へ排泄される.これら一連の過程を薬物の体内動態といい,薬効の発現・持続・強度を決定するための重要な因子となる.効果的な薬物療法を行うためには,個々の薬理作用だけでなく,薬物の体内動態を理解することが重要である.ここでは,薬物の体内動態における各過程を解説し,各過程で起こりうる薬物相互作用,とくに緩和ケアで頻用される薬物の相互作用について述べる. -
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4-1. 薬物療法:オピオイド
12巻2号(2007);View Description Hide Descriptionがん疼痛治療において,中心的な役割を果たすのはオピオイドである.NSAIDs や鎮痛補助薬を併用しながらオピオイドを適切に使用することが,よりよいがん疼痛治療につながる.以前,日本で使用できる強オピオイドはモルヒネだけであった.しかしながら,2002 年3 月にフェンタニル貼付剤が,そして2003 年7 月に塩酸オキシコドン徐放錠が日本で発売された.それ以来,わが国においても強オピオイドの選択肢が増え,より良好な疼痛コントロールが比較的容易に得られるようになった.しかし,それぞれのオピオイドのもつ特性が異なること,患者のさまざまな苦痛の多様性から患者に適した適切なオピオイドを選択することが求められる.本稿ではその基本となる考えと,オピオイドローテーションの実際について解説する. -
4-1. 薬物療法:オピオイドの副作用対策
12巻2号(2007);View Description Hide Descriptionモルヒネを中心とするオピオイドの副作用は多様であるが,三大副作用として便秘,嘔気,眠気がある.それぞれ出現頻度が高いため予防的な対処が必要となる.また,出現頻度は低いものの呼吸抑制など重篤な副作用もある.オピオイド使用時の不快な症状のために,オピオイドに対する抵抗感が強くなり,コンプライアンスが悪くなることを極力避けなければならない.さらに,がん患者はその基礎病態から,オピオイド由来の副作用に似た症状を呈しやすいため(表1)1),鑑別診断が重要となる.一般にはオピオイドの副作用対策として以下の4 つのアプローチがあげられる.(1) 各副作用の対症療法.(2) オピオイドの投与経路の変更.(3) オピオイドローテーション.(4) オピオイドの減量.良好な症状コントロールを得るために,十分な副作用のコントロールが必要となる.副作用の出現頻度・程度は個体差があり,患者それぞれの反応をよく観察し,おのおのの患者の状態に合ったオピオイドの種類・量を投与することができるように副作用対策を講じることが必要である.各副作用に対する予防・対策について以下に述べる. -
4-1. 薬物療法:鎮痛補助薬
12巻2号(2007);View Description Hide Description進行がん患者の約70%にがん疼痛が出現するといわれており,その治療を成功させることは患者のQOL を向上させる上で最も重要な課題である.がん疼痛の治療は一般にWHO 方式によるがん疼痛治療法によって行われ,これによって約80~90%の患者は疼痛から解放されるといわれている.しかし,この残りの約10~20%はモルヒネを中心とした治療法に抵抗する疼痛であり,近年,この疼痛にいかに対応するかに,大きな関心が寄せられている.本稿においては,モルヒネに抵抗する疼痛に対して,中心的な役割を演ずる鎮痛補助薬について概説し,具体的な投与方法についてこれまでの報告をまとめてみる. -
4-1. 薬物療法:新しく導入される可能性の高いオピオイドとその意義
12巻2号(2007);View Description Hide Description1986 年にWHO がん疼痛治療指針が発表され1),モルヒネを中心としたオピオイドによるがん疼痛治療が次第に普及してきている.最初の発表から約20 年間にオピオイドの剤形,投与経路は発展し,モルヒネ以外のオピオイドも少しずつ発売され,それらを介したオピオイドローテーションが次第に行われるようになっている.新しい薬剤が採用されるためには,必ず治験が行われなければならないが,一つひとつの治験の遂行にあたっては数年以上かかるため,現在多くのオピオイド製剤が使用できるのはそれにあたった多くの医療者,それを製造販売する製薬会社の努力の結果でもある.しかし,これまで治験が遂行されたものはほとんどが徐放製剤であり,現在でも速放製剤はモルヒネしか使用できないという問題がある.その意味でも日本でのオピオイド鎮痛薬使用にあたってはいまだに不十分な点が多い.この点を改善するためには,現在行われている治験のみでなく,今後も新しいオピオイドの治験を遂行し,現状の不備を補うこと,患者のQOL の向上のための新しいオピオイドの開発が続けられなければならない.オピオイド製剤として現在,日本で使用可能なのは,強オピオイドとしてモルヒネ,フェンタニル,オキシコドンの3 種類があり,弱オピオイドとしてコデインとトラマドールがある.本来,オピオイド製剤は,経口投与として徐放製剤,速放製剤がそろって初めて有効性が発揮される.また,それに注射製剤が加わることにより,単一のオピオイドによってがん疼痛マネジメントを行うことが可能となる.しかし,経口速放製剤,徐放製剤,静注製剤がすべて整っている薬剤は日本ではモルヒネしかない(表).本稿では,オピオイドの基本的な使用にあたって治験によって補われるべき薬剤,新しい投与経路を利用した薬剤を紹介する. -
4-2. 神経ブロック
12巻2号(2007);View Description Hide Descriptionがん疼痛の治療には,鎮痛薬・鎮痛補助薬を主体とした薬物療法,化学療法,手術療法,放射線療法,理学療法そして神経ブロック療法が一般的である.神経ブロックとは,麻酔の技術を応用した鎮痛法の1つで,痛みを伝達している神経を遮断し除痛を図る手段である.薬物療法や他の手段で十分な疼痛管理ができない場合や,薬物療法による副作用が強い場合など難渋する症例で,神経ブロックが大きな力を発揮する.これからは1つの治療法にこだわらず,薬物療法と神経ブロック療法の併用などいろいろな除痛法を生かしQOL の向上を目指すことが重要である. -
4-3. 緩和医療としての放射線療法
12巻2号(2007);View Description Hide Description1981 年よりがんが日本人の死因の第一位を占めるようになり,最近では3 人に1 人ががんで死亡している.米国ではがん患者の約60%に放射線治療が施行されており,そのうち70%は緩和医療に用いられている.一方,日本ではまだがん患者の25%弱程度に放射線治療が行われているに過ぎず,結果として緩和医療においても放射線治療の恩恵を十分に受けているとはいえない状況が推測される.原因として高価な照射機器,放射線腫瘍医の不足という問題もあるが,がん患者を受け持つ医療スタッフに放射線治療の意義が十分に理解されていないことが考えられる.そこで今回,緩和医療における放射線療法の役割について解説する. -
- 5 治療中の痛みの訴えにどう対処するか
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5-1. 術後の痛み
12巻2号(2007);View Description Hide Description外科的手術は治療を目的として生体にメスを入れ,人為的に加える一種の外傷であり,この外科手術のあとの痛みを術後痛という.術後痛は,生体侵襲の程度や手術時間の長さ,あるいは手術創の大きさなどの条件に左右されるが,この疼痛は手術後には必発である.術後痛は仕方がないものとして軽視されがちであるが,痛みは患者に不安を与えるばかりでなく,呼吸状態や循環動態にも影響を及ぼす.さらに,早期離床遅延を招き,それに伴う合併症の発生の誘因となるなど,全身的な術後の回復遅延を招くため,速やかに取り除かれるべきである. -
5-2. 化学療法による痛み
12巻2号(2007);View Description Hide Description抗がん剤を用いたがん化学療法は,がん細胞だけに作用するものではなく正常細胞にも影響を及ぼすこと,抗がん剤そのものが毒薬・劇薬とされるもので組織への刺激や損傷などの影響が大きいこと,がん化学療法は繰り返し長期にわたって行われることなどから,副作用や合併症による苦痛も多い.がん化学療法に伴う副作用による痛みは,QOL の向上を目指して行う治療の質を低下させ,患者の闘病意欲にも影響を与える.また,痛みは重篤な合併症の徴候として生じる反応という意味もあり,随伴症状として見逃せない.治療中の患者の痛みの訴えを的確にとらえ,適切に対処していくことは,それぞれの患者にとってのがん化学療法の効果を得るために重要である.ここでは,がん化学療法に伴って生じる痛みとその対処方法について述べ,とくに粘膜障害(口内炎)の痛みのコントロールについて詳細に紹介する. -
- 6 難治性の痛みにどう対処するか
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6-1. 骨転移による痛み
12巻2号(2007);View Description Hide Description全がんにおける骨転移の発生頻度は30%前後と推定されており,原発部位としては,乳がん,肺がん,腎がん,前立腺がん,膀胱がんなどで多くみられる1).乳がんなど緩徐に進行するがんや,治療法の発達に伴い予後延長が認められるがんでは,次々と出現する骨転移を数年にわたって治療,経過観察する必要があり,経年的に蓄積される骨転移患者数は増加の一途にある2).転移部位別頻度は,大腿骨,骨盤,腰椎,胸椎,上腕骨の順であり,転移症例の過半数が多発転移である1).痛みは骨転移の主要な症状であり,がん疼痛のなかでも最も頻度が高く,ホスピス入院患者の28%,家庭で経過観察中の進行がん患者の45%に認められることが報告されている3).骨転移痛は痛みの性質がそれぞれの患者によって異なるが,持続性の鈍痛に加え,体動などで一過性の増悪を示す体動時痛を有する場合は,薬物療法のみでは疼痛緩和に難渋することが多く,患者はコントロール不全感を抱きやすい.また,骨転移により病的骨折,脊髄麻痺を引き起こすと,日常生活動作(activities of daily living:ADL)の低下を余儀なくされ,患者の自立心は大きく揺るぎ,quality of life(QOL)に深刻な影響を与える.このように骨転移は身体的側面のみならず,心理社会的な側面にも大きな苦痛をもたらすという特徴がある.骨転移の痛みに対する治療は,がん疼痛治療の主軸である薬物療法にとどまらず集学的な治療が基本であり,原発がん治療科,整形外科,放射線治療科,緩和ケア科で連携しおのおののケース毎に予後予測をふまえ治療目標を立て,治療方針を検討することが重要である.また,骨転移を有する患者は多かれ少なかれADL の制限を伴うため,患者が生活を再構築することをサポートするケアも大きなポイントとなる.本稿では,骨転移痛の機序,治療方針の検討方法を概説した上で看護ケアについて検討する. -
6-2. 頭頸部がんの緩和ケア
12巻2号(2007);View Description Hide Description頭頸部がんは悪性腫瘍全体からみると比較的発生頻度の低い部位である.死亡数も全がん死の4~5%に過ぎない.その一方で約半数が末期がんとしての経過をたどる.後に述べる頭頸部がん患者特有の諸問題から終末期においても,耳鼻咽喉科・頭頸部外科医の手を離れ難いため多くの患者は一般病棟,とくに大学病院で看取られる症例が多い.したがって大多数の施設で積極的ながん治療と緩和ケアを1 つの病棟で行わなければならない.近年,ホスピス・緩和ケアの概念が広がりつつある.このため患者,家族からホスピス・緩和ケア病棟への転院を希望されることや耳鼻咽喉科・頭頸部外科医から転院転棟が勧められることも多くなっている.しかしながら,がんを取り扱う耳鼻咽喉科・頭頸部外科を併設した施設は少ない.そのため,今後がん治療施設とホスピス・緩和ケア施設との連携,情報交換が重要となっていくと思われる. - 7 小児のがん疼痛
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7 小児のがん疼痛
12巻2号(2007);View Description Hide Description小児がんの子どもたちのほとんどは,何らかの痛みを体験している.しかし,子どもたちは身体,認知の発達の程度,疾患の重症度によっては,痛みを周囲に表出することは必ずしも容易ではなく,その身体的,精神的苦痛が取り除かれることが遅れてしまうおそれがある.子どもの痛みを的確にとらえ,適切な緩和ケアを迅速に行うためには,子どもの自覚症状と他覚症状を合わせて評価する必要があり,看護師は子どもの痛みをアセスメントする能力を向上させることが重要である.また,子どもにとって適切な治療やケアが行われるためには,医師―看護師間でのアセスメントの共有,継続的な評価が必要となる. - 8 がん疼痛のトータルケアを目指して
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8-2. 全人的苦痛に対する心のケア
12巻2号(2007);View Description Hide Description近代ホスピスの創始者であるシシリー・ソンダースは,がん患者とかかわった経験から,がん患者が経験している複雑な苦痛をトータルペイン(全人的苦痛)と表現した.これは,がん患者の苦痛は単に身体的な側面だけでなく,精神的,社会的,霊的な側面から構成されているという全人的な視点である.本稿では,全人的苦痛に対する心のケアとして,精神的苦痛および霊的・実存的苦痛について述べる. -
8-3. 身体的介入・身体的ケア
12巻2号(2007);View Description Hide Descriptionがんの痛みは患者のQOL に大きく影響する.がん疼痛の治療の目的は痛みをゼロにすることであるが,完全に痛みを取り去ることが難しいこともある.前稿で述べられてきたような薬物療法や神経ブロック,放射線療法などによる症状緩和の治療を行うと同時に,温罨法,マッサージ,ポジショニングの工夫など,多様なケアを組み合わせることで効果が期待できる.本稿では,看護師が日常的に行っているケアを見直し,がん疼痛を和らげるための身体的な看護ケアについて述べていきたい. -
8-4. 患者指導―鎮痛薬に抵抗をもつ患者に対するかかわり―
12巻2号(2007);View Description Hide Descriptionがん疼痛をもつ患者のなかには疼痛緩和を望みつつも,さまざまな理由から積極的に鎮痛薬を使用することができず,痛みをがまんし続けている人も少なくない.医療者は,患者が痛みに苦しむ姿を目のあたりにしながらも,患者が拒むものを使用できず手をこまねいてみていることしかできないという場合もあるだろう.本稿では,鎮痛薬に抵抗感をもつがん患者に対する効果的なかかわり方について述べる. - 9 疼痛マネジメント最前線:チームアプローチの現状と展望
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9-3. 一般病棟
12巻2号(2007);View Description Hide Description北里大学東病院は,消化器疾患,神経・運動器疾患,精神神経疾患の3 つの治療センターをもつ500 床規模の一般病院で1986 年に開院した.消化器疾患センターを受診する患者の7 割が悪性腫瘍で,主に消化器系の患者を対象としたがん医療を提供している.当院は緩和ケア病棟や緩和ケアチームを有していないので,消化器科医師,看護師が緩和ケアをも提供している.そして,必要時に本院の麻酔科(緩和ケア)に診療依頼をするという形式である.また院内では,精神科リエゾン医師,薬剤師,栄養士,医療ソーシャルワーカー(MSW),心理療法士などの病棟担当が明確になっているので,医療チームメンバーがスムーズに協働できる環境である.看護部内では,がん看護専門看護師(がん看護CNS)3名,精神看護専門看護師(精神看護CNS)1 名,がん性疼痛看護認定看護師(疼痛看護CEN)1 名,ホスピスケア認定看護師(ホスピスケアCEN)2 名が兼任で活動している.このようなリソースを活用して一般病棟で疼痛マネジメントにおけるチームアプローチを行う場合,がん患者への緩和ケアの必要性を認識して医療チームの他職種へ依頼・調整できる看護師の存在と,必要時に結束できる医療チームメンバーの連携や団結力が不可欠である.本稿では,当院における看護師への緩和ケア教育と医療チームで緩和ケアへ取り組んだ過程を先に述べ,疼痛マネジメントを行ったケースをまじえながらチームアプローチの現状と今後の展望を述べる. -
9-4. 外来
12巻2号(2007);View Description Hide Description在院日数の短縮化や在宅医療の推進に伴い,従来は入院で実施されていた検査・治療などが外来にシフトし,外来看護師による治療・処置の実施や,患者・家族のセルフケア能力の獲得に向けてより専門的なケアの実施に期待が寄せられている.がん疼痛マネジメントにおいても,外来通院患者・家族が主体的に疼痛マネジメントを行えるようにするために,生活の視点,全人的視点からの看護師のアプローチやチーム作りが非常に重要であることが認識されている.実際に,緩和ケア外来,疼痛外来などの専門外来を有するがん専門病院などの施設では,そこに配属されている看護師が,医師とともに,がん疼痛マネジメントを実践したり1),がん性疼痛看護認定看護師やがん看護専門看護師が,独自に看護相談外来などをもち,積極的に疼痛マネジメントを実践しているようである.しかし,これらはむしろひとにぎりであり,外来看護師が積極的にがん疼痛マネジメントに参加したいと考えても,日々の業務の煩雑さや,忙しさからなかなかその時間が確保できないことのほうが大多数ではないだろうか.その背景には,外来看護が経済的に評価されていないことや,外来看護師の認識の問題,施設や看護師以外の職種が外来看護師に期待する役割の相違,患者・家族の外来看護師に対する期待の薄さなどがあるのではないかと考える.筆者も外来看護師として試行錯誤しながら外来でがん疼痛マネジメントを実践している1 人であるが,その経験から,外来看護師ががん疼痛マネジメントに積極的に参加する上で感じた課題と,取り組みの実際を紹介し,外来での看護師の役割や今後の展望を述べたい. -
- 10 疼痛緩和に用いる器材
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