がん看護
Volume 12, Issue 6, 2007
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特集 【頭頸部がん~最新の治療と看護(2)~】
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連載
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今月の症例:せん妄を来たした終末期がん患者への看護
12巻6号(2007);View Description Hide Description終末期の患者は,死の恐怖,家族や医療者への依存,人間関係の途絶など喪失を体験し,強いストレスにさらされる.がん患者に頻度の高い精神症状として,適応障害,うつ病やせん妄があげられ,終末期になるにしたがいせん妄の相対的割合は増加する1).今回終末期に適応障害と診断され,せん妄を来たした患者を受け持った.精神症状により患者は苦痛を抱くのみならず,日常生活にも支障を来たした.また患者を支える家族は患者の変化に動揺し,それを患者の人格の喪失ととらえ,時には患者家族の関係性が悪化したこともあった.筆者らは患者,家族がその人らしい人生の終焉が迎えられるようケアを行っていたが,せん妄状態にある患者へのケア,患者を見守る家族の苦痛に対するケア,さらにそのなかで患者や家族の希望を実現するにはどうすればよいか,困難を感じることが多かった.事例を通し,終末期に精神症状を来たした患者と家族へのケアについて考えたい. -
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がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【27】:がん化学療法に関連した腫瘍崩壊症候群とその看護
12巻6号(2007);View Description Hide Descriptionがん化学療法に関連した腫瘍崩壊症候群(tumor lysissyndrome: TLS)は,非常に重大で,潜在的に生命に危険を及ぼす緊急性の高い病態(oncologic emergency)である.とくに白血病や悪性リンパ腫などの腫瘍量の多い造血器腫瘍で発生頻度が高いことが知られている.TLS は治療により急激に腫瘍が壊れることで電解質代謝異常を起こすために起こる症状で,病態が急速に変化するため,緊急の対応が必要とされている.TLS の危険因子を多くもつ患者が,がん化学療法を行う際は,看護師はその危険性を十分にアセスメントし,症状の予防や治療中のモニタリングを行う必要がある.本稿では,oncologic emergency の1 つであるTLS の理解とその看護について理解を深めるために,関連文献をもとに情報をまとめていきたい.
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連載講座:JJCCレクチャー
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海外がん看護事情
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海外の在宅緩和ケアに関する看護師教育事情①
12巻6号(2007);View Description Hide Description2007 年4 月から「がん対策基本法」が施行され,国全体が充実した在宅医療の提供体制を整えていくことを課題とする気運が高まっている.なかでも,9 割以上のがん患者の死亡場所が病院・診療所などの施設であり,在宅死は1 割以下という現状を変え,これまで施設を中心として発展してきた緩和ケアを在宅へどう展開していくか,また,最後を在宅でどう看取るかという点が大きなテーマとして掲げられている1).そこで,本稿では将来的な在宅緩和ケアの普及・発展を目指し,すでに在宅緩和ケアが浸透し,そのなかで看護職が活躍している米国,オーストラリア,英国を取り上げ,これら3 ヵ国とわが国の状況を比較し,今後のわが国の在宅緩和ケアに関する看護師教育のあり方についての示唆を得る.2 回連載の第1 回となる本稿では,これら3 ヵ国とわが国における専門看護師を含む看護師教育の状況について,緩和ケア領域を中心に紹介する.そして,第2 回目は,在宅に焦点を当てて,在宅緩和ケアに関する看護師教育の状況を紹介し,わが国の在宅緩和ケアに関する看護師教育のあり方について考察する.
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投稿
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原著論文:がん患者のケアを担う看護師のケアリング行動を測定する質問紙の開発
12巻6号(2007);View Description Hide Description本研究の目的は,がん患者のケアを担う日本の看護師のケアリング行動を定量的に測定する質問紙を作成することである.がん看護において高い臨床能力を有すると所属施設より推薦を受けた看護師8名に半構造化面接を行い,得られたデータをラーソンが1984年に開発した「The Caring Assessment Report Evaluation Q-sort」を参考に,質的手法を用いて分析した.内容妥当性を高めるために,プレテストおよびがん看護専門看護師のスーパービジョンを受けて検討し,5段階のリッカートスケールの質問紙を作成した.次いで,その質問紙を用いてがん専門病院の看護師428名を対象に調査を行い,得られたデータを因子分析し信頼性,妥当性を検討した.その結果,最終的に質問項目はとなり,「チーム医療の中で看護師が果たす役割と責任の遂行」,「患者が主体的に療養できるための情報の提供」,「患者中心の支援」,「安心して療養できる環境の調整」,「患者や家族の状態を予測した支援」,「人間性豊かな関わり」,「意思の疎通」の7因子で構成されていた.その内的信頼性係数a は0.930~0.717,固有値は5.265~1.914,累積寄与率は52.109%であり,測定具としての信頼性,妥当性はほぼ確保されていた. -
原著論文:ガンマ・ナイフ治療を受ける脳腫瘍患者の家族の不安に影響を及ぼす要因についての研究
12巻6号(2007);View Description Hide Descriptionガンマ・ナイフ治療を受ける脳腫瘍患者の家族名を対象に,家族の「状態不安」レベルを調べそれに影響する要因を検討した.家族の「状態不安」レベルは比較的高いと思われるが,その程度は個々人で異なり,幅広く分布していた.家族の「状態不安」を従属変数にした重回帰分析を行った結果,健康や病気に関してコントロールしにくい傾向,患者が比較的若年であること,家族が女性であること,家族の(日常的な)「特性不安」が高いこと,家族が高齢であることが家族の「状態不安」レベルを高くする要因であると考えられた.このモデル全体で分散の27.4%が証明された.ガンマ・ナイフ治療を受ける脳腫瘍患者の家族の看護介入において,具体的に看護職者は受容的態度で接し,コミュニケーションを十分に図ることで,家族の個々の健康に関する考えや経済状態や精神的社会支援の状態を含めたバックグラウンドをよく把握する必要性がある.さらに患者の病状の経過や治療費用に関する医療情報を十分にしかも持続的に提供することが家族の不安軽減のために大切である.
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REPORT
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ONS(米国がん看護学会)32nd Annual Congress に参加して
12巻6号(2007);View Description Hide DescriptionONS( 米国がん看護学会)32nd Annual Congress が,2007 年4 月24 日から27 日にかけて米国ネバダ州のラスベガス(Las Vegas) Mandalay Bay Convention Center において開催された.カンファレンスの開催されたラスベガスは,砂漠の中の“不夜城”と呼ばれている都市である.ここ50 年ほどの間に目覚しい発展をとげ,米国の中でも人口の増加,経済の発展が著しい都市となっている.世界最大のエンターテイメントシティーと称されるようにカジノやテーマパークを備えていることは周知のことであるが,同時に毎週のように大きな国際見本市やビジネスショーが開催され,世界的規模のコンベンションが誘致されている都市でもある.そのラスベガスに世界35 ヵ国,約6,300 名のがん看護のケアに携わる人びとが集まってカンファレンスが開催された.筆者らも過去に数回カンファレンスに参加しているが,今回のカンファレンスの印象は,従来のがん化学療法などがんの治療に関するトピックス中心というよりも,予防や治療終了後のサバイバーへの支援について,「遺伝」という局面からアプローチする内容が多く取り上げられていたこと,さらにEnd-of-Life のケアにまつわるトピックスが多くとりあげられていた.また例年同様に,主要なプログラムのほかにONS の開催する継続教育のプログラムやSIG(Special Interest Group)のミーティングもあり,参加者がカンファレンスを満喫できるプログラムが多数企画されていた.本稿ではその一部を紹介する.
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こちらがん電話相談室
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