がん看護
Volume 13, Issue 3, 2008
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特集 【皮膚がん~最新の治療と看護~】
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皮膚がん患者の看護~予防・自己発見に関する情報提供~
13巻3号(2008);View Description Hide Descriptionがんの予防あるいは早期発見に関して,皮膚がんがほかのがんと相違する点は,がんを目視または直接触診できるため,自らあるいは家族など身近な者が発見でき,また日常生活上の注意である程度予防できることである.皮膚がんに関するこれらの情報をもっているか否かは,時として人の人生を大きく左右するほどの重大な事項となる.たとえば小さな悪性黒色腫を発見して専門病院を受診する場合と,長く放置しておいたり誤った処置がなされる場合とでは,予後が全く異なる.しかしながら,皮膚がんの罹患率が低い日本では,皮膚がんに関する情報は一般的には広まっていないため,人びとが皮膚がんの症状に気づいても,これを皮膚がんと認識して対応することが少ないのが現状である.このような現状を認識し,がん医療に看護師として従事する者は,講習会や勉強会で皮膚がんの発見や予防についての知識を習得し,普及することはもちろんのこと,各科の外来・入院患者に対しても,あらゆる機会をとらえてこれらの知識を提供し,人びとを皮膚がんの罹患から守る役割がある.ここでは日常の看護実践のなかで,皮膚がんの発見や予防について患者や家族に伝えるべき情報を述べる. -
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診断時・治療法選択時の看護
13巻3号(2008);View Description Hide Description当院では紹介による受診が多く,がんの疑いまたはがんと診断され,ほとんどの患者は不安を抱えて来院する.皮膚がんは日本ではまれながんであるため,これに関する情報量は少なく,皮膚がんというものがどんなものか,今後どのような処置,検査,治療が必要なのかを知るチャンスが少ない.そのために患者や家族の病状の理解度や病態の容認度は,医療者の説明とかけ離れている場合が多い.このギャップを埋めるために看護師の果たす役割は大きい. -
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外科療法の看護:【2】 拡大腫瘍切除術を受ける患者の看護
13巻3号(2008);View Description Hide Description良性病変を単純に切除する場合などと比べて,腫瘍の悪性度・進行度に応じて根治的に切除することを,拡大切除術という.拡大切除をした後の欠損部には皮膚の機能を復活させるために,広さ,深さ,部位に応じて植皮術や皮弁形成術などが選択される.また拡大腫瘍切除術は根治目的のため,合わせてリンパ節郭清が行われることが多い. -
皮膚がんの非外科的治療
13巻3号(2008);View Description Hide Description日本皮膚科学会,日本皮膚悪性腫瘍学会,日本癌治療学会の各ホームページで公開されている「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」によれば,皮膚がんの代表的腫瘍である悪性黒色腫,有棘細胞がん,基底細胞がん,乳房外パジェット病の4 種類の皮膚がんにおける治療体系として外科的および非外科的治療について,その適応や種類についてアルゴリズムにのっとり提示され,その推奨度についても詳しく解説されている.これまで経験的に行われてきた皮膚がんの治療法においてある程度のエビデンスに基づいた客観的評価がなされており,医療者にとっても患者にとっても共通の情報として大変有用なものとなっている.本来,皮膚悪性腫瘍の治療は手術療法を主体として,患者の全身状態や社会的背景に加え,腫瘍の発生部位,腫瘍浸潤の程度やリンパ節転移の有無,さらに遠隔転移の有無により,化学療法や放射線療法を適宜組み合わせた集学的治療が行われる.本稿ではこのうち皮膚がんの治療における非外科的治療(化学療法,放射線療法,モーズ法など)について述べる. -
非外科的療法を受ける患者の看護:【1】 化学療法を受ける患者の看護
13巻3号(2008);View Description Hide Description皮膚悪性腫瘍は外科的切除が第一選択であることが多いが,患者の全身状態や腫瘍の存在する部位,浸潤の程度,リンパ行性あるいは血行性の所属リンパ節転移や他臓器転移の有無により,放射線療法や化学療法を適宜併用した集学的治療が行われる.皮膚悪性腫瘍の化学療法には,手術前の腫瘍縮小効果を目的とした術前補助化学療法,術後の再発予防を目的とした術後補助化学療法,進行期症例における症状緩和やQOL 改善を目的とした化学療法がある.悪性黒色腫の皮膚転移症例や術後補助化学療法においては,インターフェロンβ の併用療法が標準的治療として用いられている.このように各疾患の病期により治療目的が異なるため患者・家族の心理的側面に及ぼす影響もさまざまである.また,長期的な治療の継続が必要となることが多いため,患者・家族の身体的・心理的背景を考慮しながら,患者自身がセルフケア能力を高められるように支援することが必要である.ここでは,当院で行われている皮膚悪性腫瘍に対する主な化学療法と看護の実際について述べる. -
非外科的療法を受ける患者の看護:【2】 放射線・陽子線療法を受ける患者の看護
13巻3号(2008);View Description Hide Description皮膚がん医療において放射線・陽子線治療は,外科的切除が不可能な場合や再発予防だけでなく,がん性疼痛の治療や病巣の止血など,症状緩和の目的でも選択される.これらの治療によるメリットは,身体の機能や形態を失わず,手術に比べて身体的な侵襲が少ないことである.一方,治療のデメリットとしていくつかの有害事象の発症がある.そこで,有害事象に直接対応したり,患者に情報を提供したりしてこれをコントロールしながら,患者が治療の目的を達成できるよう支援することが看護師の大切な役割となる. -
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連載
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今月の症例:がん患者の自己効力感を支える看護
13巻3号(2008);View Description Hide Description大きい不安を抱えて混乱の状態にあり,標準的治療の完遂が困難であると感じられた患者が入院した.患者の抱える不安が非常に複雑かつ深刻なものであったので,入院当初私たちはこの患者への支援の方法や介入方法がわからなかった.そこで,とにかく患者のニードにひたすら応えていこうと考え,徹底してこれを実行した.すると私たちの心配に反して,患者は意志的な強い患者へと変化していき,患者らしい治療スタイルを獲得して標準的治療を完遂した.患者の退院後,私たちの介入がどのように患者に働いて患者を変化させたのかを考察している過程で,Bandura氏の自己効力理論を学んだ.その学びのなかで,苦肉の策として患者のニードに徹底して答え続けたことが,実は患者の自己効力感を高める看護であったことを理解した.私たちはその意義を見出し,今後のがん看護に生かすことができると確信したのでここに報告する. -
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がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【30】:がん化学療法看護に標準コミュニケーションスキルは存在するのか
13巻3号(2008);View Description Hide Description2007 年末,筆者は「乳がん診療におけるSPIKES」という小冊子の作成にあたって,編集者からSPIKES についてどのように考えるかというインタビューを受けた.SPIKES は1990 年代,米国の臨床腫瘍医たちにより開発された悪い知らせを伝える際のコミュニケーションスキルの方法論である.今回このインタビューを通じて,日本においてSPIKES は知っている人だけが知っているというものではなくなり,がん医療の現場に浸透しつつあることを実感した.またこの1~2 年,SPIKES のスキル習得を目的とした医師およびコメディカル対象の技術研修会が開催されていることも知った.近い将来,SPIKES は日本の腫瘍医にとって,標準的化学療法ができることと同じにように,習得しておくべき標準的コミュニケーションスキルになるだろう.このような腫瘍医のコミュニケーションスキルに対する関心に比較して,がん看護師,とくにがん化学療法看護に携わる看護師のコミュニケーションスキルをどう考えていけばよいのだろうか,何が望ましいことなのだろうか.これらの問いから,関連する文献をたどり,がん化学療法看護におけるコミュニケーションスキルを考えていきたい.
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連載講座:JJCCレクチャー
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【食事につながるケアを目指した造血幹細胞移植の口腔ケア②】:移植前処置における大量化学療法・全身放射線照射を受ける患者の口腔ケア
13巻3号(2008);View Description Hide Description
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海外がん看護事情
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投稿
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事例報告:生きる希望を支える看護とは
13巻3号(2008);View Description Hide Description本研究の目的は,終末期にありながらも治療に望みを懸け,積極的治療を望み続けた患者とのかかわりのなかで「終末期がん患者に対し,生きる希望を支える看護において大切なことは何か」を明らかにすることである.研究方法として,治療方針の転換期であった4つの看護場面を5項目の視点に分類した内容をもとに,看護スタッフによるデスカンファレンスの内容と配偶者に対する半構成的面接により得た逐語録から考察した.その結果以下の4点が重要であった.(1)患者が意思や希望を伝え,自己決定できる環境を整えること.(2)患者の希望を理解した上でそれを尊重し,家族とともに寄り添い支持していくこと.(3)患者がこれまで日常で行ってきたことを大切にしたケアは,今を生きる患者を支えることになる.(4)倫理的問題については多職種を含め慎重かつ十分な議論が必要である.生きる希望は個人によって異なり,また病状によっても変化するため,その時々の希望は何かを知り,それを支持していく柔軟な対応が必要である.さらに患者の希望を奪わないことは大切であるが,患者には真実を伝えた上で,自己決定を支えるためのサポートも重要であることが示唆された.
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こちらがん電話相談室
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