がん看護
Volume 14, Issue 4, 2009
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特集 【乳がんの最新トピックと看護~個別化治療をめざして~】
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乳がんの個別化治療をめざして ~オンコタイプDX・マンマプリント~
14巻4号(2009);View Description Hide Descriptionわが国の乳がん診療では,術後に化学療法を行うかどうかを決める手段として,①ザンクトガレン国際会議,②乳癌診療ガイドライン,③NCCN ガイドライン,④アジュバント!オンラインなどの情報が利用されている.一方,海外では,乳がん組織から特定の遺伝子を調べ,そのタイプに合わせた治療を決定する「オンコタイプDX」や「マンマプリント」という検査が利用されるようになった.本稿では,今後普及するであろうオンコタイプDX とマンマプリントについて概説する. -
乳がんの最新トピック:病理診断
14巻4号(2009);View Description Hide Description最近の乳がん診療は病理学的なエビデンスを重視する傾向にあり,病理学的検索の結果に基づいて治療方針を決める個別化治療の方向に進んでいる.したがって,医師が乳がん患者や家族に病状や治療方針を説明する際にも多くの病理学的な専門用語を使わざるをえない状況になっている.また,患者のなかには自分の乳がんの特徴を控えておきたいという気持ちから病理診断レポートのコピーを要求する人も出てきている.このように患者自身が乳がんに関する詳しい病理学的知識をもつ時代になったので,乳がん患者の質問や相談に正しく応えるためにも看護師は病理診断に関する正しい知識をもっている必要がある.本稿では,乳がん看護に必要な病理学的トピックについて概説する. -
乳がんの最新トピック:遺伝性乳がん
14巻4号(2009);View Description Hide Description『乳癌診療ガイドライン5. 疫学・予防2008 年版』が出版され,乳がんの危険因子としていくつかの項目があげられている1).そのなかで確実,ほぼ確実とされているものについて表に示す.家族歴はとくに強い危険因子であり,遺伝の問題と大きく関係している.がんの発生要因としては遺伝因子および環境因子の2 つがあげられるが,一般にがんの5~10%が遺伝と関係しているといわれており,乳がんにおいても同様である.乳がんの遺伝にかかわる遺伝子がいくつか判明しているが,これらのうちBRCA1 とBRCA2 が原因の約85%を占め,診療上でもっとも重要であり,乳がんおよび卵巣がんの発症リスクを大きく増大させる.わが国の乳がん罹患率は欧米と比較するとかなり低い.確かに閉経後乳がんの頻度には大きな開きがあるが,閉経前乳がんの頻度は実はほとんど差がない(図)2).閉経前乳がんおいては,欧米も日本もリスクはほぼ同様であるという前提のもと,遺伝や検診,治療などの諸問題を考えていく必要がある. -
乳がんの最新トピック:若年性乳がんの治療
14巻4号(2009);View Description Hide Description近年の乳がん罹患者数の増加に伴い,日常診療において20~30 歳代の若い世代の乳がん患者に接する場面も少なくない(図1).診断・治療のプロセスは一般の乳がんに準じているが,「若年」という特性をふまえて留意すべき点を以下に述べる. -
乳がんの最新トピック:挙児希望のある乳がん患者へのケア
14巻4号(2009);View Description Hide Description近年,20 歳代,30 歳代の若年層の乳がん患者が増加傾向にある.また,40 歳代の閉経前の乳がん患者も多い.疾病に対する治療が最優先されるなかで,その後の妊娠・出産を希望する患者も少なくない.しかし,乳がん治療の多くは手術療法だけでなく,その後の補助療法として,化学療法や放射線療法,ホルモン療法が行われる.その場合に治療が妊娠・出産に及ぼす影響は多大である.治療を決定する際に医療者は患者の意思を確認し,妊娠・出産に及ぼす影響について十分説明を行い,患者・家族が望む治療が受けられるよう援助していくことが重要である. -
乳がんの最新トピック:手術療法
14巻4号(2009);View Description Hide Description30 年前,乳がんの治療法は手術療法が中心だった.しかし,薬物療法,放射線療法が大きな役割を占めるようになり,手術療法の位置づけは大きく変わり,手術法自体も非常に変化した.本稿では,乳がん治療における手術療法の変遷と現在の位置づけ,とくに最近主流となりつつある乳房温存療法やセンチネルリンパ節生検の詳細,さらに新しい治療の内視鏡手術やラジオ波治療について説明する. -
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乳がんの最新トピック:薬物療法
14巻4号(2009);View Description Hide Description乳がんの治療法は局所治療(手術ならびに放射線治療)と全身治療(薬物治療)に大別される.「乳がんは比較的初期から微小転移を起こす全身的な疾患」という概念がFisherらにより提唱されてから,今日,生存率向上のための治療の中心は全身治療が主体となっている.近年の乳がん領域の治療法,なかでも薬物治療の進歩は目覚ましい.本稿では乳がんの術前,術後および転移再発時に使用される薬物療法に関して,エビデンスに基づき,最新のトピックを紹介する. -
乳がんの最新トピック:薬物療法とケア
14巻4号(2009);View Description Hide Description乳がんの薬物療法は, がん細胞の内分泌反応性やHER2/neu の発現状況,閉経前・後により用いられる薬剤が異なる.また,治療目的は進行乳がんを手術可能とするために行う術前補助療法,手術後の再発防止のために行う術後補助療法や転移再発乳がんに対する延命,QOL 維持を目的として行う薬物療法があり,個々の患者により薬物療法を行う目的が異なる.これらのことから,乳がんの薬物療法は,まさに個別化治療であるといえるだろう.現在,乳がんにおいてわが国で承認されている分子標的治療薬は,トラスツズマブであるが,今後はベバシズマブ1)やラパチニブ2)などが承認される可能性がある.そして患者に対しての抗腫瘍効果や有害事象の観点から,これまでとは異なる化学療法薬を組み合わせた治療が行われ,患者にとっては薬物療法の選択肢が増えることから,個別化治療がさらに進歩すると考えられる.このように変化し,さらに個別化する乳がんの薬物療法に対し,看護師は各薬物療法の特徴に応じ,患者の背景をふまえた個別的な看護を行える知識と技術を,看護の現場で活かせるよう常に備えもつ必要がある. -
乳がんの最新トピック:放射線療法 ~乳房温存術後照射における治療期間短縮の試み~
14巻4号(2009);View Description Hide Descriptionかつては早期乳がんに対する術式は全乳房切除術が主流であったが,近年では乳房温存術が広く行われるようになった.しかし,乳房温存療法のみでは18~35%1)に乳房内再発をきたすため,術後放射線照射が必須である.日本乳癌学会では乳房温存術後の温存乳房に対する標準照射法として,全乳房照射50 Gy/25 回ならびに切除断端近接症例などに対する腫瘍床への10 Gy/5 回の追加照射を推奨している2).乳がんの罹患率は45~54 歳にピークを有しており3),社会的にも家庭的にも重要な役割を果たしている時期である.全乳房切除術と比較して手術法が縮小されることにより在院日数は短縮されるが,術後照射に5~6 週間の外来通院を要するのは患者にとって大きな負担である.また,近年の乳がん術後照射数のおびただしい増加は,放射線治療施設側にとっても負担となっている.このような背景から,少ない治療日数で術後照射を施行する短期全乳房照射や加速乳房部分照射が脚光を浴びている(図1). -
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連載
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がん専門病院における院内教育⑤:経年別教育:看護師レベルⅡ,Ⅲ(2)
14巻4号(2009);View Description Hide Description前号までは,がん専門病院における院内教育プログラムのアウトラインの説明,経年別教育:看護師レベルⅠ,看護師レベルⅡについて紹介した.今回は,主に看護師レベルⅢについて紹介する.看護師レベルⅢに該当する看護師は,当院での経験年数が5 年目以上の看護師,あるいは,当院での経験年数が5年未満であっても,他院での経験年数を考慮し,レベルⅢに値する能力の育成が妥当と判断された看護師としている.看護師レベルⅢの看護師に対して行う研修内容は,レベルⅠ~Ⅱと同様に,国立がんセンター中央病院看護師に求められる能力とクリニカルラダーに基づいて設定している.その内容は,レベルⅡで学習した内容を基に,その能力をさらに高めていくことをねらいとしている. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【37】:がん化学療法薬を取り扱ううえで知っておきたい薬物相互作用と看護師の役割
14巻4号(2009);View Description Hide Description2 剤以上の薬物の組み合わせによって起こる問題のことを薬物相互作用といい,併用する薬剤の数によってその作用は増加するといわれている.がん化学療法は治療の効果を高めるために,2 剤以上のがん化学療法薬を組み合わせた多剤併用化学療法を行うことが多い.また,副作用の軽減を目的として複数の一般薬を支持療法として併用する.そのため薬物相互作用の出現頻度は高く,薬物の体内動態の変化によって治療の効果が大きく変動する可能性がある.がん化学療法薬は細胞障害作用をもち,風邪薬などの一般薬に比べて重篤な副作用が出現することが多い.また,がん化学療法薬は効果と副作用が出現する用量の治療域が狭く,少しの用量の変化によって効果と副作用の出現が大きく変わってくる1).がん化学療法を安全に,そして効果的に行うためには,こういった薬物の特徴と起こりうる相互作用,治療を受ける患者の個体差(臓器機能,遺伝子多型,生活状況など)を理解したうえで看護を行う必要がある.本稿では,がん化学療法看護を行ううえで知っておく必要がある薬物相互作用について述べたい. -
がんのくすりがわかる!がん医療と緩和医療のシームレスな関係【2】:抗がん剤の取り扱いはどうするの?~抗がん剤の安全な取り扱い方法と管理~
14巻4号(2009);View Description Hide Description
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投稿
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研究報告:乳がん手術後患者の術式によるQOL とソーシャルサポートの変化
14巻4号(2009);View Description Hide Description本研究の目的は切除術,温存術や再建術を受けた女性乳がん患者を対象に,術後3 ヵ月から2 年までの患者のquality of life(QOL)と,患者が希望する支援を明らかにすることであった.360 名の乳がん患者に質問紙調査を実施し,有効回答率は54.4であった.質問紙は,乳がん患者用に変更を加えたWorld Health Organization/Quality of Life26 とソーシャルサポート尺度が使用された.研究の結果,乳がん患者のQOL は,術後3 ヵ月がもっとも低く,多くのサポートを必要としていた.再建術を受けた乳がん患者は,切除術や温存術を受けた乳がん患者と同様にQOL の総合評価は維持され,サポートを希望する割合は,他の術式に比べて高い傾向を示した.また切除術や温存術を受けた患者が希望するサポートには特徴があり,QOL 向上のために術式に応じたサポートが重要であることが示された.術式の異なる乳がん患者のサポートに対するニーズを理解し,適切な時期に適切なサポートを提供することが患者のQOL 向上につながると考える.
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アドバイザー通信
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REPORT
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「がんプロフェッショナル養成プラン特別講義」を受講して
14巻4号(2009);View Description Hide Description2009 年2 月12~20 日の約2 週間にわたり,兵庫県立看護大学大学院看護学研究科において,米国より高度実践看護師(advanced practice nurse: APN)2 名,ともに活動する医師(medical oncologist)ら1 名を招聘し,「がんプロフェッショナル養成プラン特別講義」が開催された.本セミナーの焦点は,がん看護における実践的かつ高度なヘルスアセスメント技術である.さらに,学びを深めるため「放射線療法」や「造血幹細胞移植」に伴う副作用の症状コントロールにも触れながらの講義となった.また,セミナーの途中では,日本の専門看護師の現状や今後の役割拡大,カリキュラム開発についての議論も行われた.本稿では,ナースプラクティショナー(NP)や専門看護師(CNS)の解説を交えながら,その講義の様子を紹介する.なお,本セミナーは「平成20 年度がんプロフェッショナル養成プラン」の助成を受けている.
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こちらがん電話相談室
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