がん看護
Volume 15, Issue 1, 2010
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特集 【がんの告知と看護師の役割~看護師のコミュニケーション技術~】
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わるい知らせを伝えられる際のコミュニケーションに関するわが国のがん患者の意向~SHARE~
15巻1号(2010);View Description Hide Descriptionがん医療において患者がわるい知らせを伝えられることは少なくない.本稿では,わが国のがん患者への意向調査の結果を中心に報告し,わるい知らせを伝えられる際の患者が望むコミュニケーションについて言及したい. -
わが国における看護師対象コミュニケーションスキルトレーニングの紹介
15巻1号(2010);View Description Hide Descriptionがん医療に携わる看護師は,がんに罹患した患者とその家族に対して,病名,再発,積極的な治療の断念,予後といったがんの進行に伴う“悪い知らせ”を医師とチームを組んで伝え,その後のサポートを担う重要な役割を果たす.とくに,がん告知を受けた患者の心理的負担は治療開始前がもっとも高い1,2)という結果が報告されていることから,最初の悪い知らせとなるがんの病名告知を行う際のコミュニケーションは,がん医療に携わる看護師にとって重要な技術となるが,ほとんどの看護師はその技術を学ぶ機会がなく,むずかしいと感じていることが明らかにされている3,4).わが国のがん対策においても,平成19 年(2007 年)度に施行されたがん対策基本法で,がん医療の均てん化,がん研究の推進とともに,がん予防の推進が3 つの柱として掲げられている.なかでも,がん予防については,今年度の国の予算額が大幅に増大されるとともに,がん検診50%推進本部が立ち上がり,今後のがんの検診受診率を50%に引き上げるという数値目標を掲げて全国規模のキャンペーンが開催されることから,がんの診断・告知を受ける者の増加が見込まれる.このことからも,がん診断を受けた告知後の患者に対するサポートの重要性は今後ますます高まっていくことは必至である.このように国のがん対策が強化される中,がん告知後に高い不安や心理的負担を抱える患者へのサポートの質の向上・充実を図ることは重要であり,“生活援助のスペシャリスト”である看護師によってその役割が担われることは,現在がん医療に携わる医療従事者の人員配置を考えても現実に即していると考える.看護師によるがん告知後のサポート体制の構築が進むことで,がん医療の均てん化に貢献するとともに,がん予防における看護師の活躍の場の拡大にもつながる.以上の状況をふまえ,筆者ら研究グループでは,がん検診を受診してがんの診断・告知を受ける対象に対するサポート体制の充実・強化を目指し,がん検診機関においてがん告知後の患者の支援を行う看護師を対象とした悪い知らせを受ける際のコミュニケーションスキルトレーニング(以下,CST)を行い,その有効性を検討したので,以下に紹介する. -
がんに対する通常の心の反応
15巻1号(2010);View Description Hide Description基本のコミュニケーションを実践する上で,あらかじめがん患者の通常の心の反応を想定しておくことはとても重要で,節目に備えて大まかに心の軌跡を思い描いておくと,対応しやすくなる13).ここではがんの臨床経過の大きな節目における心の反応について述べる(図). -
インフォームドコンセントとコミュニケーションスキル~告知の現場から~
15巻1号(2010);View Description Hide Description医師(医療従事者)が適切に説明し,患者の理解と同意(インフォームドコンセント)をえて,信頼関係を構築し検査や治療を行うことは,がん医療の根幹である.患者およびその家族とコミュニケーションをとることができ,わるい情報も伝え,困難な状況でも適切に行動できることが重要である.また,医師にはチーム医療として専門職種間(看護師,ソーシャルワーカー,心理学者など)とのコミュニケーションを保つことが要求される.とくに,臨床の場では,がんの告知,進行がんや再発であること,積極的な抗がん剤治療の中止などの“わるい知らせ”を患者とその家族に伝えなくてはならない場面が,確実に増加している.望ましいコミュニケーションには言葉だけではなく,表情や姿勢,身振り,語気,語調といった非言語的なメッセージの重要性を認識しなければならない. -
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否認している患者への対応
15巻1号(2010);View Description Hide Description「説明されているはずなのに病状を理解していないようだ」とか「常識的に考えて不安や恐怖を感じるはずの状況であるにもかかわらず,平然としており,あたかも他人ごとのようだ」と看護師が感じる場合,現実を無意識のうちに否定してしまう「否認」という防衛機制が働いている可能性がある.「否認」とは,Freud が考案した自我の防衛機制の1 つであり,知覚はしているが,それを自分で認めてしまうと不安を引き起こすような現実を認知するのを無意識のうちに拒否することである1).有名なKubler-Ross の「死にゆく人の心理過程」(図1)2)やMassie の「がんの診断に対する通常反応」(表1)3)では,否認は疾病受容の一過程として位置づけられ,がん診断直後の多くの患者にみられる一時的で自然な反応であるとされる.一方,ホスピス入院中の終末期患者の21%に否認が認められたという報告もあり4),否認は病期にかかわらず,対象喪失や終末期などのストレス状況においてしばしばみられる反応であると考えられる.では,否認している患者に対して,どのような対応をすればよいのだろうか. -
家族が本人への告知を拒んでいる場合の対応~告知のメリット・デメリットを家族と話し合う~
15巻1号(2010);View Description Hide Descriptionがんの告知においては,病名告知だけではなく,自分自身の状況についてより詳しく理解することへの希望が増えている1).病名や予後など,何を知りたいと思うかについて希望はさまざまであり,またどのようなタイミングで知らせてもらいたいか,誰といっしょに聞きたいかについても患者それぞれで異なる2,3).遺族への告知に関するアンケート調査で指摘が多かった内容は,告知後の支援体制が不足していることであった2).患者と家族への支援についての理解を深めることが必要である. -
親のがんを子どもに伝えるとき
15巻1号(2010);View Description Hide Descriptionがん罹患が増加し,がん種によっては30 代,40 代での罹患も珍しくない.乳がんのように40 代が罹患のピークである疾患もある.出産の高齢化も進みつつあり,思春期,学童期以下の子をもつ患者が増えてくると考えられる.子どもをもつ患者たちはがんに罹患したことによる負担に加えて子どもに関する心配,負担が重なる.自身の身体的,心理的負担のある中で,病気について子どもに伝えるかどうか,伝えるのならいつ,どのように伝えるのか,悩み苦しんでいる患者は少なくない.こういった患者のサポートが現状では十分なされているとはいえないが取り組まれるべき課題と考えられる. -
病状進行,予後,死が話題に上がったときのコミュニケーション
15巻1号(2010);View Description Hide Description終末期の患者は危機的な状況の中で感情をあらわにし,看護師は無力感や喪失感,否定的な思いなど,さまざまな感情を揺さぶられる.本稿では,患者との対話で,病状の進行や予後,死などが,直接的にしろ間接的にしろテーマに上がったとき,どのように向き合えばいいかを検討したい. -
在宅につなげるコミュニケーション
15巻1号(2010);View Description Hide Description医療技術の進歩によって,がん患者は長期間サバイバーとしてがんと共存し,その経過において,再発や治療方針の変更などさまざまな転機を経験する.中でも,積極的抗がん治療が勧められない状況で,退院や別の療養先,緩和ケア病棟への移動などの選択を迫られるといった経験は,患者に病状の悪化に対する不安に加え,それまでかかわった医師や看護師,ともに闘ってきた戦友というべき患者を含む,慣れ親しんだ環境からの離別という孤独感など分離不安が生じ,場合によっては不信感につながることになる.医療者には,このような患者や家族が抱える状況や思いを十分に尊重した対応が求められる. -
医療者間のコミュニケーション
15巻1号(2010);View Description Hide Descriptionがん医療において,質の高い医療を提供するためには,主観的なQOL を重視することは言うまでもないことである.それに加えて,患者・家族の意向を尊重するために,医療者患者間のコミュニケーションが重要であることが指摘され,他稿で述べられているようにSHARE などのプロトコールが推奨されるようになってきた.患者・家族の意向に沿ったケアが提供されるためには,あたり前ではあるが,疼痛管理など基本的な症状緩和やケアが提供されていることが前提である.がん医療は多様な専門分野が絡み,高度な集学的治療が提供される必要があり,そのためには複数の医療者が参加し,各職種が連携して情報を共有し,実践していかなければならない.それには,医療者間のコミュニケーションが必須である.しかし,医療者どうしでコミュニケーションを図ることは患者・家族と図るのとは次元が異なるむずかしさがある.ここでは,医療者間のコミュニケーションがしばしば問題となる「わるい知らせ」が伝えられる場面を中心に,その問題について考えてみたい. -
コミュニケーションに関する教育・研修~看護師のためのがん患者とのコミュニケーション・トレーニング・セミナー~
15巻1号(2010);View Description Hide Descriptionここでは,わが国で行われている看護師のコミュニケーションスキルトレーニングの1 つとして,日本サイコオンコロジー学会主催の「看護師のためのがん患者とのコミュニケーション・トレーニング・セミナー」について紹介する.本セミナーに,筆者は主催者の1 人としてかかわっている.
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連載
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がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【41】:がん化学療法看護事例を範例として発表するには~個人情報とインフォームドコンセントの視点から~
15巻1号(2010);View Description Hide Description最近,ある会議において,筆者は,事例でがん化学療法看護を解説するという企画について検討するという機会をもった.この検討の要点は,この企画で用いる事例とはどの程度の個別性をもった事例なのかということだった.この検討中に,事例を誌上発表するうえで,どのような事例なら患者の同意が必要で,不要な場合とはどういう事例だろうか,患者の同意がとれないとしたら,事例から範例を作ることは可能だろうか,看護を記述するうえで,個別的な情報がない範例はどの程度有効なのかといったいくつかの疑問がうかんだ.これらの疑問と同時に,以前から問題と感じていた2つのことが頭をよぎった.1 つは,以前担当であったがん化学療法看護認定看護師教育課程において,多くの研修生,あるいは,修了生が,個人として看護事例を集積できていないという事実である.2 点目は,看護実践にとって参考となる具体的で質のよい事例発表が,近年少なくなっているのではないか,この事例発表の減少は,事例発表における患者の同意の取得と何か関係があるのではないだろうかという考えである.本稿では,事例発表と個人情報取扱いに関するガイドラインを概観した後,事例発表と個人情報,あるいは匿名性について,事例と範例の違い,範例の有効性と限界などについて,がん化学療法看護の事例を例にとって考察していきたい. -
がんのくすりがわかる!がん医療と緩和医療のシームレスな関係【6】:医療従事者の基本的マナーとは!~コミュニケーションスキルの実際~
15巻1号(2010);View Description Hide Description
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連載講座:JJCCレクチャー
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海外がん看護事情
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米国がん看護高度実践看護師教育事情①:イェール大学での学内教育
15巻1号(2010);View Description Hide Description日本で高度実践看護師(advanced practice nurse; APN)制度の議論が活発になっている.がん看護における専門看護師(clinical nurse specialist; CNS)と,ナースプラクティショナー(nurse practitioner; NP)の類似点と相違点はどこにあるのだろうか.類似点が多く,以前米国で統合する議論も行われたほどだ1,2).がん看護CNS とNP の教育内容や実習内容について知ると,手がかりが見つけられるように思う.2 号にわたり,筆者が学ぶイェール大学看護大学院がん看護APN プログラムについて紹介していく.初回は学内における教育内容について報告する.全米APNプログラム規定が存在するが,州によりAPN の裁量権に相違があり,全米の大学院のプログラム内容が一律ではないことを前置きとする.
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今月の症例
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ストーマ造設患者のセルフケア支援
15巻1号(2010);View Description Hide Description当病棟は大腸外科を主な診療科とする病棟であり,年間約100 例のストーマ造設患者に対するセルフケア指導を行っている.ストーマを保有することは,患者のライフスタイルに大きく影響するため,セルフケア獲得に向けての患者教育はQOL 維持において非常に重要となる.セルフケアとは,成人が自らの存在,健康,安寧を存続させるために持続的に行う自分自身に対する貢献であるといわれる1).術前からストーマのセルフケア方法について不安を表出していた患者が,腸閉塞や排尿障害の合併症をきたし先行きへの不安が増強したことに対し,セルフケア方法獲得に向けての患者教育の介入をした結果,ストーマケアの手技を獲得し,セルフケアを確立することができた.今回,セルフケア確立に向けて実践した看護の成果をWallston らが開発したヘルス・ローカス・オブ・コントロール1)の概念を用いて考察したので報告する.
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こちらがん電話相談室
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BOOK
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