がん看護
Volume 15, Issue 3, 2010
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特集 【症状マネジメント~疼痛以外の患者の訴えに看護師ができること~】
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身体がだるくてだるくてしかたがないのです~倦怠感~
15巻3号(2010);View Description Hide Description米国National Comprehensive Cancer Network (NCCN)腫瘍学実践ガイドライン(2008 年)によると「癌に伴う倦怠感とは,最近の活動に合致しない,日常生活機能の妨げになるほどの,癌または癌治療に関連した,つらく持続する主観的な感覚で,身体的,感情的,かつ/または認知的倦怠感または消耗感をいう」と定義されている1).私たちが患者からよく耳にする言葉は「だるい」「ぐったりだ」などがあるが,「ゆううつになる」「頭が働かない」などの感情的,認知的側面の訴えも,倦怠感を表しているといえる.またとくに終末期になると「身の置きどころがない」「だるくてだるくてしかたがない」など,その表現にも深刻さが増していく.このように倦怠感を表現する主観的症状は程度も含めてさまざまだが,時にQOL に著しく影響を及ぼすものである.進行がん患者の60~90%が倦怠感を経験するほど高率にみられる症状2)だが,その病態生理にかかわる正確なメカニズムはまだわかっておらず,有効なアセスメントやケア方法が確立していないため対応に難渋する場合も少なくない.本稿では倦怠感をもつ患者への看護を解説する. -
食べなければいけないのですが,どうしても食べられないのです~食欲不振~
15巻3号(2010);View Description Hide Description食欲不振とは“食欲が湧かず,十分に摂取ができない状態”であり,表に示すように身体症状だけでなく精神症状,心理状態などからも発症し早期から引き起こされる頻度の高い症状である.原因が多岐にわたるために十分アセスメントし,できるだけ早期の段階からケアにあたることが大切である1).近年の食欲不振に関しての取り組みは,「がん患者の栄養管理」「担がん患者の栄養状態」2)などのキーワードを元にがん患者の栄養状態を見直す動きが加速されている.また,2006 年の診療報酬改正で栄養サポートチームの活動が推進され,2010 年度の改定ではチームの活動に保険点数が加わることが検討され,さらに広がりをみせている.このような流れを背景に本稿では,“食べなければいけないのに食べられないのです”という患者の訴えから進行がん患者の食欲不振という症状を和らげていくために看護師としてどのように向き合うことが必要かについて述べていきたい. -
食べさせたいのですが,すぐにむせてしまうのです(家族から)~嚥下障害~
15巻3号(2010);View Description Hide Description「食べられるという日常」の維持は,大切なときを刻む人にとって明日を生きる希望につながる.看護師は食べたい思いをつなげたい感情を抱きながらも,目には見えない嚥下障害を前に悩む.口から食べるチャンスとタイミングを見逃さないことを改めて教えてくれた事例を交え,「看護師としてできること,しなければならないこと」を考えたい. -
ずっとむかむかしているのです~嘔気~
15巻3号(2010);View Description Hide Description嘔気・嘔吐はがん終末期の患者の約半数に出現するといわれ1),体験する患者はもちろん,そばで見守る家族(介護者)にとってもつらい症状の1 つである.嘔気・嘔吐の原因はさまざまであり,その原因や発生機序を理解し,状態に合わせた薬物療法やケアを行うことが重要となる.症状出現のきっかけ,症状があることで日常生活にどのような影響を及ぼしているかなどを,患者にいちばん近い存在である看護師が生活全体を観察し,患者の訴えをよく聴き対応できることが,症状緩和や患者・家族の不安の軽減につながると考える.ここでは嘔気・嘔吐の原因や発生機序の理解,栄養士と協力した食事の工夫,環境調整や安楽への援助,原因に合わせた制吐薬の使い方を中心に看護師が行うべき患者・家族へのケアについて述べたい. -
食べたものを全部,吐いてしまいました~腸閉塞~
15巻3号(2010);View Description Hide Description腸閉塞とは消化管内容物の通過が障害され,内容の停滞と口側の逆流を生じ排ガス・排便が消失した状態である1).腸閉塞はさまざまな要因で起こるが,ここではがんの進行による腸閉塞の症状マネジメントについて述べる. -
便がなかなか出なくてお腹が張って苦しいのです~進行がん患者の便秘マネジメント~
15巻3号(2010);View Description Hide Description便秘は,進行がん患者の約50%,末期がん患者の75%にみられる1,2).便秘は,食欲不振,悪心・嘔吐,腹痛,不眠など, ほかの症状を伴うことがあり, 生活の質(QOL)を低下させる要因の1 つである.看護師は,排便の有無を観察するのみではなく,便秘を包括的にアセスメントし,薬物療法と非薬物療法を並行し,症状緩和をする役割がある. -
尿をしたくても出にくいのです~排尿障害~
15巻3号(2010);View Description Hide Description正常な膀胱・尿道は,腎臓で作られた尿を膀胱内に十分にためて残さずに出すというサイクルを繰り返している.また,「トイレに行く」という行為には,移動や衣類の着脱,後始末などの運動や認知の機能がかかわっている.さらに「排尿」は生理的ニーズであるとともに幼児期に培われた特有の文化的社会的習慣や価値観がある.患者が「尿が出にくい」と訴えたとき,看護師は,統合されたアセスメントとそれに基づいた排尿方法選択の支援に大きな役割をもつ. -
息が苦しくて動けないのです~呼吸困難~
15巻3号(2010);View Description Hide Description呼吸困難はがん患者の約50%に認められ,進行・終末期になると70%の患者に認められるといわれている1).呼吸困難は本人にとって大きな苦痛であるばかりでなく,そばにいる家族やケアする医療者にとってもつらい症状であり,症状を緩和できないことで無力感に苛まれることも多い.一方で,看護師が日ごろから予防的な視点できめ細やかな工夫を重ねることで緩和できることも少なくない.本稿では看護師が独自にできる介入を中心に述べる. -
どうしても眠れないのです~不眠患者への全人的アプローチ~
15巻3号(2010);View Description Hide Description不眠は程度・時期などに差はあるが,終末期がん患者によくみられる症状の1 つである.日常生活動作の低下により昼間はウトウト眠っている姿がみられるのに,夜になると「眠れない」と訴える患者は少なくない.不眠は疲労感や全身倦怠感をもたらし,疼痛をはじめとするがんの諸症状の閾値を下げ,活動性や思考力の低下を招きQOL そのものを低下させる.そのため不眠を訴える患者の背景にある原因をアセスメントし,アプローチしていくことが必要となる. -
昼間も眠くてしかたがありません~眠気~
15巻3号(2010);View Description Hide Descriptionがん患者に生じる眠気には,さまざまな要因が絡み合って生じていることが多く,その原因をアセスメントし,ケアを行うことが必要となる.本稿ではがん患者に生じる眠気,とくにオピオイド使用患者における眠気のアセスメントやケア,さらに医師との相談について考えたい. -
不安で不安で落ち着かない気分なんです~進行がん患者の不安に対するケア~
15巻3号(2010);View Description Hide Descriptionがんの再発や悪化の現実に直面する進行・終末期がん患者の精神面へのケアニーズは高く,患者の抱える苦悩と不安に看護師がどのように向き合うかは課題である1).本稿では,日常臨床の中で,看護師として基本的に押さえておきたいと考える内容について述べる. -
ゆううつな気分がずっと続いています~抑うつ~
15巻3号(2010);View Description Hide Descriptionがん患者にみられる抑うつや不安(気持ちのつらさ)は一般的な精神症状ではあるが,適切な介入がなされないことでQOL に大きく影響する.そこで身近な存在にある看護師には,精神面の変化に気付き介入の必要性をアセスメントする役割が求められている. -
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連載
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がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【42】:進行がんにおけるがん化学療法中止に関する文献レビューと考察
15巻3号(2010);View Description Hide Description近年,mono therapy と呼ばれる単剤のレジメン,内服薬レジメン,細胞毒性をもつ抗がん剤とは異なる副作用プロファイルをもつ分子標的治療薬レジメンなどの開発によって,進行がん薬物療法の多様性と選択肢は増加の一途にある.また,治療目的も多様化しており,ダウンステージング,生存期間の延長を目的とした積極的治療ばかりではなく,症状緩和を目的とした緩和的化学療法も普及してきている.がん化学療法のメニューであるレジメン数が増えることで,いつまでがん化学療法を行うのか,化学療法の中止をいつ,何をもって判断するのかがむずかしくなってきているように思う.本稿では,進行がんの化学療法の中止に関連する文献をレビューし,がん化学療法の中止について,原則的に何をどのように考えていけばよいのか,どのような問題点があるのかについて論点整理をしていきたい.
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連載講座:JJCCレクチャー
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対応のむずかしいがん患者へのケア~リエゾン精神看護師の視点から~【2】:対応のむずかしいがん患者への精神看護~ストレス・バランス・モデル~
15巻3号(2010);View Description Hide Description
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投稿
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資料:老年期乳がん体験者のソーシャル・サポートに関する研究の動向と今後の課題~英文献からの検討~
15巻3号(2010);View Description Hide Description本研究の目的は,老年期乳がん体験者のソーシャル・サポートに関して英語で報告された研究論文の検索・検討を行い,老年期乳がん体験者のソーシャル・サポートに関する研究の動向を明らかにし,今後の研究課題を検討することである.研究方法は,まず,CINAHL およびMEDLINE を用いて,[breast neoplasms],[support],[aged],[research],[English]の5つのキーワードにより検索を行い,対象研究論文の抽出を行った.その後,各研究論文を精読しながら,研究の目的,方法,結果,考察,結論について,項目ごとにまとめ,抄録フォーマットに記載した.最後に,その内容を統合し,研究の動向と研究課題を検討した.文献検索において,CINAHL 検索により126件,MEDLINE 検索により269件の論文がヒットした.これらの論文の重複を確認し,研究論文の標題,抄録から,老年期乳がん体験者のソーシャル・サポート論文25件を本文献研究の対象研究論文とした.分析結果は,主な研究デザインとして,質的研究(7件),比較・相関を含めた量的記述的研究(10件)であった.また,エビデンスが高いとされる無作為化比較対照による研究は2件のみであった.これらの研究内容を統合し研究の動向として,ソーシャル・サポートの内容とその種類,ソーシャル・サポート・ネットワーク,ほかの概念との関連が明らかとなった.また,介入としてのナースによるケアマネジメントの効果があることが示された.これらを基に,今後の研究課題の必要性をまとめた.
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海外がん看護事情
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米国がん看護高度実践看護師教育事情②:イェール大学での臨床実習
15巻3号(2010);View Description Hide Description前回は,筆者が学ぶイェール大学看護大学院における,がん看護高度実践看護師(Advanced Practice Nurse; APN)の学内教育について紹介した.今回は,当校におけるがん看護APN 学生の臨床実習の実際や,臨床現場のAPN の活動について報告する.
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REPORT
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第33回日本死の臨床研究会年次大会報告
15巻3号(2010);View Description Hide Description2009 年11 月7~8 日,平年よりも暖かく晴天にも恵まれた両日,名古屋国際会議場にて,第33 回日本死の臨床研究会年次大会[大会長:佐藤健(国立行政法人豊橋医療センター緩和ケア部長),安藤詳子(名古屋大学医学部保健学科看護学専攻教授)]を開催した.12 年ぶりの名古屋開催となり,実行委員長の家田秀明(名古屋掖済会病院緩和医療部長)を筆頭に委員が盛り上がり,豊富な企画を実現するにいたった(図1).
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こちらがん電話相談室
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BOOK
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