がん看護
Volume 15, Issue 5, 2010
Volumes & issues:
-
特集 【根拠がわかる口腔ケア】
-
-
-
口腔合併症を理解するための口腔・咽頭の解剖
15巻5号(2010);View Description Hide Descriptionがん治療に伴う口腔有害事象の発症を理解するために,口腔の解剖や生理は口腔ケアの根拠を明確にする基本となる知識である.単に口腔の解剖名称だけではなく,口腔有害事象の発生や観察方法と関連づけて理解することが大切である.またチーム医療で多職種とコミュニケーションを取る際に,基本的な解剖を理解しておくとお互いの理解が進み,正確な情報交換が可能になる. -
がん化学療法による口腔有害事象とその対処
15巻5号(2010);View Description Hide Descriptionがん化学療法に伴う口腔有害事象は,その治療対象となる患者数がもっとも多いと予測されることから,がん治療に従事する看護師にとって,有害事象の病態とその対処方法について理解することは必須である.本稿では,がん化学療法の口腔ケアと対処,とくにMASCC ガイドライン注1 に沿って口腔粘膜炎の対処方法を解説する. -
がん放射線治療による口腔有害事象とその対処
15巻5号(2010);View Description Hide Description放射線治療に伴う有害事象は,ほとんどが照射部位に一致して生じるので,口腔内に有害事象が起こるのは,頭頸部がんや頭頸部領域に限局するリンパ腫・原発不明がんなど,照射野に口腔周辺が含まれる場合に限られる.その障害は化学療法と比し,重篤で遷延する傾向にある1).近年,外来放射線治療が徐々に普及しているが,在宅中のがん治療の副作用や障害に対し,医療者の目が届かない状況があり,看護師によるセルフケアのサポートが必要不可欠となっている.また,放射線治療は有害事象のコントロールがつかず,長い休止期間をとると治療効果が減弱し治療成績が低下することが報告されている2).そのため治療完遂のための支持療法が注目を集めており,放射線治療に看護師の積極的な関与が望まれていた.2009(平成21)年から,がん放射線療法看護認定看護師教育課程も開設され,看護師のこの領域に果たす役割は大きくなってきている. -
頭頸部がん化学放射線治療の口腔有害事象とその対処
15巻5号(2010);View Description Hide Descriptionがん治療の中で口腔内に強い口腔粘膜炎や重症の嚥下障害などが起き,治療の完遂が困難になる場面にしばしば遭遇するのが,頭頸部がん化学放射線治療である.この治療は,その有害事象に対し多職種で組織するチーム医療の対応なしには,完遂できないかなり厳しい治療であると私たちは考えている.具体的には,①口腔粘膜炎の疼痛管理,②感染予防のための口腔ケア,③栄養支援・嚥下障害による誤嚥性肺炎予防と嚥下リハビリテーション,これらすべての支持療法を担保できる体制がなくては,治療完遂はむずかしい1). -
造血幹細胞移植治療の口腔粘膜障害とその対処
15巻5号(2010);View Description Hide Description造血幹細胞移植とは移植前処置として大量化学療法,全身放射線照射(total body irradiation: TBI)を用いた強力な治療を行って,患者骨髄とともに悪性腫瘍細胞の壊滅を行いその後,造血幹細胞を輸注し造血能を再構築する治療法である.また,同種造血幹細胞移植では造血機能の救援だけではなく同種移植免疫反応を期待する免疫療法でもある.重篤な口腔粘膜炎が,大量化学療法とTBI 終了後の骨髄抑制期に発症する.この時期には,口腔常在菌が粘膜炎から血行性に入り込み,敗血症に移行する場合もある.また口腔粘膜炎には,強い嚥下時痛や口内痛が伴い,経口摂取困難や会話困難のためコミュニケーションが不十分となり精神的苦痛も生じる. -
がん終末期における口腔トラブルとその対処
15巻5号(2010);View Description Hide Descriptionがん終末期の患者は,全身状態の悪化に,セルフケア困難な状況が加わり,さまざまな口腔トラブルが生じやすい.しかし患者から口腔内の問題を積極的に訴えることは日常的には少なく,口腔トラブル以外の身体的な苦痛症状に注意やケアが集まりやすい.その結果,口腔トラブルへの対応が後手に回りやすい傾向がある.口腔は,咀嚼,味覚,発音,呼吸の補助器官としての機能を有し,口腔トラブルは「食べる」「話す」「コミュニケーション」など,がん終末期患者のQOL に大きく影響を及ぼす.このため,可能なかぎり口腔内を良好な状態に維持し,尊厳を保つことを目的とした口腔ケアは重要な役割・意味をもっている. -
頭頸部がん・食道がん周術期の局所合併症とその対処
15巻5号(2010);View Description Hide Description近年,頭頸部がんや食道がん手術では,口腔ケアが術後合併症のリスクを軽減させることが報告され,がんの医療現場では口腔ケアを導入する施設が急速に増加している.北海道大学は医学部病院,歯学部病院が統廃合されて,医科と歯科が連携しやすい環境ができ,次第に口腔ケアも診療科の壁を徐々に取り払うのに成功して,口腔ケア介入が実践できている日本でも数少ない施設である注1. -
がん患者の口腔ケアの方法
15巻5号(2010);View Description Hide Descriptionがん治療に従事する看護師にとって,口腔内を実際に清掃する口腔ケア介入が必要になる状況は,そう多くない.なぜならば,がん化学療法や放射線治療を行う患者では,パフォーマンスステータス(PS) 0~1 の全身状態が比較的よいために,セルフケアが十分に行うことができるからである.口腔ケア介入が必要な場合は,がん手術直後のICU 管理にある患者,造血幹細胞移植治療や大量化学療法等による副作用が強く,セルフケアができない状況,またはがん終末期で予後が月から週単位となり,寝たきりの状態になった場合など,PS が2~4 の状態である. -
がん治療における口腔ケアの考え方
15巻5号(2010);View Description Hide Descriptionがん治療に伴う口腔内有害事象が発症することをよく理解できても,看護師が行うべき対処やケアについてシステムに関する具体的な情報が少なく,どのように,どこまでケアを行うべきなのか,とまどうことが少なくない.本稿では,前述されたがん治療方法ごとの口腔ケアを包括する形で,看護師による口腔ケア介入の考え方・導入方法について解説する. -
-
-
連載
-
-
今月の症例:壮年期がん患者のギアチェンジを支える施設を越えたケア
15巻5号(2010);View Description Hide Description高知県は4 つの2 次医療圏に区分されている.緩和ケア病床を有する医療機関は6 ヵ所あり,がん死亡者1,000人あたりの緩和ケア病床数は25.0 床と全国でもっとも多く(全国平均約10 床)1),高知県内の年間がん死亡者数の約23%(全国平均7~8%)が緩和ケア病棟で最期を迎えている2).また,1992 年に発足した「高知ターミナルケア研究会(現在はNPO 法人高知緩和ケア協会)」を中心に,がん対策基本法施行前より,緩和ケアへの取り組みが地道に行われており,したがって,ギアチェンジの検討や取り組みも,早い時期から地域全体で行ってきた.しかし,全緩和ケア病棟中5 ヵ所が1 つの2 次医療圏(中央医療圏)にあることや,3 ヵ所のがん診療連携拠点病院いずれもが中央医療圏に集中しているため,郡部のがん患者においては,約30%が中央医療圏の外来を受診し,50~60%の患者が入院するという課題を抱えている3).また,訪問診療や訪問看護に取り組む診療所やステーションも同様に中央医療圏に集中していることや,一般病床数や療養病床数が多いことから,在宅での看取りの率は4.3%と全国平均6.7%を下回っており,高知県がん対策推進計画に基づき,在宅緩和ケア推進連絡協議会を中心とした連携パスの作成など,在宅緩和ケア普及活動が行われている2,3).このような地域特性の中,がん患者と家族のギアチェンジの支援には,医療圏を越えた複数の医療福祉機関の協働や,医療者間のネットワークの強化が重要とされる.今回,がん診療連携拠点病院における治療チーム・緩和ケアチーム(palliative care team : PCT),他施設の緩和ケア病棟が連携し,ギアチェンジの支援を行った1 人の壮年期がん患者と家族の事例を基に,施設を越えたがん患者のギアチェンジの支援を検討した.なお,事例報告は,「ギアチェンジをする患者と家族の気持ちを医療者にわかってほしい」という患者と家族の意思に基づき,所属施設の看護研究倫理審査委員会を得て行った.また,患者との死別後,妻から寄せられた手記の内容や写真の掲載について,家族の同意・協力を得た. -
がん看護のいま,そしてこれから~厚生労働省看護技官の経験から~【3】:がん看護推進のために私たちにはなにができるか①:~実践と行政との連携強化を~
15巻5号(2010);View Description Hide Description第2 回では,わが国のがん対策のこれまでの成果として示すことのできるがんの年齢調整死亡率や年齢調整罹患率の低下などのがんの統計について述べるとともに,がん看護推進のために国が都道府県に補助金を出して,都道府県単位でがん医療に携わる看護師を対象に研修を実施する「専門分野(がん・糖尿病)における質の高い看護師育成事業」について紹介した.この事業は,がん看護の“ジェネラリスト”育成を主目的とした実務主体のベーシックな研修と位置づけられており,平成18(2006)年度の事業開始から平成21(2009)年度までに4 年間を経て,その間およそ1,000 名が研修を修了した.一方,第1 回の冒頭に述べたように,わが国でがん医療に携わる看護師は,現在就業している看護職員約130 数万人のうちの数十万人に上ることは確実であり,その受講修了者の割合はまだ1%にも満たないととらえることができる.このため,今後も公的資金によるこのようながん看護研修が継続されていくことは必須の課題といえる. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【44】:経口抗がん剤の特徴と取り扱い上の注意点
15巻5号(2010);View Description Hide Description1960 年代にアルキル化薬が登場して以来,わが国では複数の5FU 系薬剤が開発され,経口抗がん剤は馴染み深いものになっている.また,2000 年以降は分子標的治療薬である低分子化合物(ゲフィチニブやイマチニブなど)の開発が進み,現在までに約30 種類の経口抗がん剤が発売されている.経口抗がん剤は自宅で服用できる簡便さが大きなベネフィットであるが,その反面,医療者がダイレクトに投与する静脈注射に比べ,患者自身が自宅で投与管理を行うため,個々の持つセルフケア能力によって,治療効果や副作用の出現率には大きな差がある.また,経口抗がん剤は食事やほかの薬剤との飲み合わせなど,治療と日常生活との関連が深く,患者自身が判断しなければならない部分が多いため,負担は大きい.さらに,経口抗がん剤は静脈内注射に比べ,薬の取り扱いや管理の簡便さ,身体への影響が弱いという潜在的意識が患者の心理にあり,投与管理に対する患者指導に対してもむずかしさを痛感している.ここ数年で抗がん剤の静脈投与管理に関する看護師の意識は高くなってきたが,経口抗がん剤についての知識は十分あるとはいえない.複数の新規抗がん剤が臨床導入される中,内服治療薬の投与管理について十分な看護介入ができていないという問題がある.そこで,本稿では経口抗がん剤の特徴と取り扱う上での注意事項を含めた看護援助について述べたいと思う.
-
-
連載講座:JJCCレクチャー
-
-
応のむずかしいがん患者へのケア~リエゾン精神看護師の視点から~【4】:がん患者が抱えるストレス(2)
15巻5号(2010);View Description Hide Descriptionがん患者の精神看護の原則は,ストレス・バランス・モデルを用い,ストレスの低減を図っていくことで,患者の対処能力を相対的に高めることで,患者がその人らしさを取り戻していくようにすることである.前回までに,がん患者が抱えることが多いストレスのうち①再発・転移の不安,②身体的苦痛,③人間関係の悩みについて述べてきた,今回も引き続き,がん患者が抱えることが多いストレスについて,解説していきたい.
-
-
投稿
-
-
原著:老年期乳がん体験者のソーシャル・サポート:内容分析による構成要素の検討
15巻5号(2010);View Description Hide Description[研究目的]本研究の目的は,老年期乳がん患者のソーシャル・サポート・ネットワークおよびソーシャル・サポートの構成要素を記述することである.[研究方法]65 歳以上の乳がん体験者を研究参加者(N=13)とする質的記述的研究をデザインした.データ収集は半構成的質問を含むインタビューガイドを使用した面接法により,また,データ分析は内容分析により行われた.[研究結果]ソーシャル・サポート・ネットワークは,配偶者,娘,息子,兄弟姉妹,孫,友人,その他であった.また,ソーシャル・サポートは,5 つのカテゴリーに分類され,①[情緒的サポートの捉え],②[道具的サポートの受領],③[乳がん体験に関する情報の提供],④[健康問題を持つ家族員へのケアの提供],⑤[コンフリクトな体験]であった.[結論]老年期乳がん体験者のソーシャル・サポート・ネットワークおよびソーシャル・サポートの5 つの構成要素を抽出した.医療者は,老年期乳がん体験者へソーシャル・サポートに関する情報提供を行う必要があること,家族員の健康問題の有無をアセスメントし,がん治療とケアが受けられるように社会資源の提供を行う必要性が示唆された.
-
-
海外がん看護事情
-
-
カナダでの看護事情①:ブリティッシュコロンビア州でRN になる過程と教育~オンコロジーやホスピス緩和の認定も含む~
15巻5号(2010);View Description Hide Description看護師の40%が外国もしくは州外で看護教育を受けた者1)という構成のブリティッシュコロンビア州(BC 州),カナダ(図).ここでregistered nurse (RN)となり9 年が経った.現在は,筆者はLaurel Place Hospice にて勤務している(図).本稿では,筆者の経験を織り交ぜながら,カナダでのがん看護事情を紹介する.
-
-
REPORT
-
-
がんプロフェッショナル養成プラン研修:海外編
15巻5号(2010);View Description Hide Description前号では,「がんプロフェッショナル養成プラン研修:国内編」を報告した.本稿では,海外編として,平成21(2009)年11 月1~5 日に開催したがん看護学海外研修の概要を報告する.この研修の目的は,米国のがん看護CNS(clinical nursespecialist)やNP(nurse practitioner)など上級実践看護師の講義および意見交換,カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校(UCSF)大学院生の授業の聴講,教員・学生との意見交換,さらに,施設見学を通して,がん看護の対象者理解を深め,がん看護を探究することにより,がん看護専門看護師としての専門力を高める機会とすることであった.
-
-
こちらがん電話相談室
-
-
-
アドバイザー通信
-
-
-
BOOK
-
-