がん看護
Volume 18, Issue 4, 2013
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特集 【外来治療中の患者のQOL を支える ~治療に伴う症状へのケア~】
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外来治療中のQOLを保つための看護の役割
18巻4号(2013);View Description Hide Description10 数年前までは入院治療が一般的であったがん治療は,近年急速に外来化が進み,患者は社会生活を中断することなく治療を受けることが可能になった.外来でのがん治療は,慣れ親しんだ環境で普段の生活を継続できるというメリットがある一方,患者は治療に関連するさまざまな問題に自ら対処することが求められる.とくに治療に伴う症状は,地域社会で生活している患者にとって,役割の遂行や余暇活動など日常生活に大きな影響を与え,QOL にも直接影響を及ぼす.そのため,患者は症状と上手に折り合いをつけ,生活を再構築していくことが必要となる.患者が外来治療のメリットを最大限に享受し,QOL を保ちながら生活していくうえで,外来看護の果たす役割は大きい.外来という限られた時間を,質の高い看護実践の場としていくポイントについて以下に述べる. -
化学療法に伴う倦怠感
18巻4号(2013);View Description Hide Description外来化学療法中の患者から「家に帰って2~3 日は,身体が重くて何もする気になれないんです」という訴えをよく耳にする.患者は必ずしも「倦怠感」という言葉を使わないが,このような訴えがまさに「倦怠感」であり,患者の日常生活やQOL に大きな影響を及ぼす.本稿では,外来治療中の患者の倦怠感に焦点を当てて述べる. -
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化学療法に伴う味覚変化~症状評価スケールを用いた評価と症状に合わせた対処の工夫~
18巻4号(2013);View Description Hide Description近年,がんに対する化学療法は外来治療が主流となり,仕事や家事などの社会生活を送りながら,長期間にわたって化学療法を受ける患者が増加した.生活の一部として治療を受け入れ,毎日をよりよく生きるためには,単に「食べられる」だけでなく,「おいしく食べる」ことが重要である. 味覚変化は,化学療法中にもっとも多くみられる副作用の1 つで,その頻度は3~7 割と報告されている1-3).化学療法に伴う味覚変化の症状は,食品の味が感じにくくなったり,口腔内に不快な味を感じるなどさまざまである.使用薬剤や投与量,投与方法によって症状の特徴や出現頻度が異なることが経験的に知られているが,詳細な報告はない.本稿では,味覚変化症状の概要と生活への影響,筆者らが開発した評価スケールを用いた症状の評価,症状に合わせた対処の工夫について紹介する. -
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内分泌療法に伴う関節症状
18巻4号(2013);View Description Hide Description内分泌療法の副作用はホルモン剤の種類によって異なり,エストロゲンを抑制する薬剤では関節症状が特徴的である.患者は「手指がこわばる」,「膝の痛みがつらくて歩きにくい」などと表現し,日常生活やQOL への影響は大きい.治療期間が2~10 年と長いため,患者が関節症状と上手につきあい,治療を継続できるように支援することが必要である. -
がん治療に伴う性機能障害
18巻4号(2013);View Description Hide Description外来治療における看護の大きな役割は,患者らしい生活を維持しながら治療との折り合いをつけていく患者の力を引き出し,寄り添うことであると考える.その中で患者のQOL を考えるとき,筆者ら看護者が踏み込みにくい課題の1 つに性機能障害という課題がある. 本稿では,主に女性の性機能障害に対して,がんと診断されてから外来治療を継続する中で,具体的な看護介入のポイントについて述べる.
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最期の日々を生きるがん患者を支える~訪問看護の現場から~
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BOOK
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特別寄稿
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排泄経路変更者への看護~リアリティ教育を目指した演習の工夫~
18巻4号(2013);View Description Hide Description●大腸がんの推移 厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると,2011 年1 年間の死亡数のうち死因のトップは悪性新生物であり,死亡者数35 万7,305 人で総死亡数の28.5%を占めている.“がん”による死亡のうち,男性は21 万3,190 人で全死因の32.5%,女性は14 万4,115 人で24.2%で,男女ともに死因別順位の第1 位となっている.このうち大腸がん(結腸がんと直腸S 状結移行部および直腸のがんの合計)による死亡数は1 万4,694 人で,性別でみると,男性は9,393 人,女性は5,301 人であった1). 排泄経路変更では,直腸がん治療のストーマ造設術が多く,国内オストメイト(ストーマ造設術者)人口は1991 年には5 万9,000 人であったが,2006 年には16 万5,000 人と15 年間で約2.8 倍に増えている2).この数はオストメイト登録患者数であり,実際のオストメイト患者数は登録患者数より多いと考えられる.それゆえ,多くのオストメイトが安心して入院治療から在宅に向けて生活できるよう,看護者は排泄経路変更後の日常生活を理解しなければならない. ●成人看護学における大腸がん,ストーマ造設患者の看護に必要な学修とは 以下は,大腸がんでストーマ造設術を受ける患者の看護に対し学修する内容である. 1.排泄の基礎知識の理解 1) 解剖生理・神経 2) 排泄障害の病態生理と失禁について 3) 排泄経路の変更・人工肛門造設術2.対象の理解 1) 小児・成人・高齢者の視点2) ストーマリハビリテーション(術前~術後~在宅) 3) 患者の心理状態3.ストーマ造設患者の看護 1) ケアの順序性 2) 生活指導の留意点 ●教育方法の強化の視点 これまでの本学の教育方法では「認知」・「精神運動」・「情意」の三領域の教育の中で,ほかの大学と同様2-4)に学生によるストーマパウチの交換を行ってきた.ストーマ造設に起因する疾患は,がんによるものが多く,患者は再発や予後への不安を抱きながら生活することになる.そのうえ,肛門機能の喪失に伴う排泄経路の変更は,自尊心の低下を招き,日常生活や社会生活を困難にしている.ストーマ造設患者の苦悩や日常生活と心理面の理解の学習として情意領域の教育強化が必要である.工夫点としては,これまではストーマパウチに有形便のみを挿入して体験させていたが,よりリアリティを追求し,ストーマ造設患者の日常生活困難の理解を深めるため,泥状便と有形便の模擬便の作成を行った.泥状便は漏れやすく,有形便は便の重さを感じてもらうことを目的として作成した.また消化ガスは強力粉を使用して作成し,学生がストーマパウチを装着する時間を12 時間以上とることで発酵効果を期待した.リアリティ教育方法の変換を図1 に示す.
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JJCCレクチャー
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看護師が実践するグリーフ・ビリーブメントケア~アセスメントの視点を理解する~【2】:高齢者の発達段階におけるグリーフ
18巻4号(2013);View Description Hide Description日本では,団塊の世代といわれる第1 次ベビーブーム世代の平均年齢が60 歳を超えて高齢者人口はますます増加し,超高齢化社会に突入しました.また,医療技術の進歩により日本人の平均寿命も延び,より多くの人が高齢者とよばれる時期を20 年近くおくるようになりました.そして,長生きをすることと同時に,さまざまな別れや喪失を多く経験することになります.また,がんで死亡する年齢も60 歳から急激に増えており(図1)1),ホスピス・緩和ケア病棟で死亡する患者さんの平均年齢も70 歳台になっています2).そのため,日々の臨床のなかでも高齢のがん患者に出会うことが多いのではないでしょうか? そこで今回は,高齢者のグリーフについて考えてみたいと思います.
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連載
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がん患者と子どもに対する支援~親ががんであることを子どもに伝えるためのサポート~【3】:子どもに伝えることを支援するための看護師の役割
18巻4号(2013);View Description Hide Description近年,子育て年代のがん患者が増えており1),それに従い親ががんになった子どもも増えている.子育て中の母親は,がんと診断されたときから治療中においても,自身の病気による子どもへの影響を考えていることが報告されている2).その中でも,子どもに病気をどのように伝えるかということは患者の大きな悩みである.親ががんになったときから子どもは小さな変化にも気づき,不安や孤独を強く感じている.さらに,子どもが病気について知らされていない場合には,不安がより大きくなる3).このような状況の中では,がんの親と子どもの間にコミュニケーションが少なくなり,生活の質(quality of life)は低くなる.やむを得ず親との永遠の別れを経験しなければならない子どもが事前に病気について知らされていない場合には,その悲しみを乗り越えることが困難になるため,がんの親をもつ子どもに病気を伝えることは重要である. 最近,がんの親をもつ子どもへの支援の1 つとして,子どもに病気を伝える取り組みが始まってきたが,患者に接する機会の多い看護師の取り組みは課題を抱えている.そのような中で,何かできることはないかと悩んでいる看護師も多い4). そこで今回は,親ががんと診断されたときから,看護師の立場でできるがんの親をもつ子どもに病気を伝えるための支援について考える. -
がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【61】:がん化学療法を受ける患者の発熱性好中球減少症に対する看護援助
18巻4号(2013);View Description Hide Descriptionがん化学療法を受ける患者に高頻度で出現する副作用の一つに骨髄抑制がある.なかでも好中球の減少は感染症を併発しやすく,重篤化すると死にいたることもあるため,十分な予防と適切な対応が必要である.近年は外来で化学療法を行うことが多く,常に医療者が患者の状態を観察できるといった状況ではない.そのため,予防や早期対応ができるように患者の状況をアセスメントするとともに,患者指導を行う必要がある. 臨床で行われている多くの治療レジメンで,好中球減少は用量規制毒性になっており,強度の減少や感染症の併発などによっては,治療の延期,薬剤投与量の減量,入院による加療,医療費の追加など患者にとって不利益な状況を作る場合がある. がん化学療法を受けている患者の好中球が減少している時期に発熱を伴うものを,発熱性好中球減少症(febrileneutropenia: FN)とよんでいる.過去の研究データから,好中球減少時には発熱する危険性が高くなることが知られており,発熱の原因は多くの場合不明で,原因微生物や感染巣を同定することはできない.しかし,早期に広域スペクトラムの抗菌薬を投与することで症状が改善するため,適切な対応が求められている. 本稿では,がん化学療法を受ける患者の発熱性好中球減少症に対する予防と対応について,日本臨床腫瘍学会が発行している『発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン』(以降,FN 診療ガイドライン)をもとにFN の理解と,看護師としてどのような対応や支援の必要性があるのかを述べたい.
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opinion
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今月の症例
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家族性乳がんの範疇にある若年乳がん患者が体験した喪失に対するトータルサポートの一例
18巻4号(2013);View Description Hide Descriptionわが国では,乳がん患者のうち家族性乳がんの臨床像に当てはまる患者が約15~20%おり,遺伝的要因が大きいと考えられている1).かつて,「家族性乳がん」と「遺伝性乳がん」は同義語のように用いられていたが,「遺伝性乳がん」においては卵巣がんのリスクもあり,遺伝性乳がん・卵巣がん症候群[Hereditary Breast and Ovarian Cancer(HBOC) syndrome]と定義されるようになった2).このHBOC 発症の主な原因遺伝子としては,BRCA1 およびBRCA2 という2 種類の遺伝子が同定され,全乳がん・卵巣がんの約5~10%の患者が,遺伝要因を遺伝子レベルで特定できるとされている3). 筆者は,がん医療・看護に,がん看護専門看護師の立場で携わっており,これらの遺伝的要因との関連が疑われる患者と家族のサポートを経験する機会がある.なかでも,同病の家族の死を経験した若年乳がん患者においては,亡くなった家族が体験した症状や闘病過程が,患者自身の治療・療養の意思決定,終末期のイメージに強く影響していると考える.しかし,成人初期~中期において,がんとともに社会生活を送る彼らは,ソーシャル・サポートの獲得や強化を図る力の未熟さから,多くの喪失や課題に1 人で必死に対応していることも少なくない.したがって,彼らのサポートに携わる医療者は,ソーシャル・サポート源となり,同病にある家族の病状経過や,彼らの体験するさまざまな喪失を十分に理解しておくことが必要である. 今回の報告事例は,患者自身は遺伝子検査を受けてはいないが,「家族性乳がん」の臨床像に該当する若年乳がん患者の一例である(表1:事例はB に該当)4).患者が体験したさまざまな喪失,ならびに患者と家族に行ったチームアプローチの実際を報告する.また,患者の乳がんの発症に遺伝的要因が疑われることから,家族(姉)は乳腺専門医による定期診察を受けている.なお,事例報告は,生前に患者が筆者に託した「私の生きた証を書いてほしい」という意思を受け,所属施設の看護倫理研究委員会の承認を得た.また,語りの内容は,患者が使用した症状日記や,事例報告に向けて家族が語ったインタビュー内容に基づき報告する.
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