がん看護
Volume 27, Issue 7, 2022
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特集【がん患者のセルフケアを支えるアドヒアランス】
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アドヒアランス評価尺度
27巻7号(2022);View Description Hide Description患者のアドヒアランスを確認するとき,患者は単に提案された治療に服従するのではなく,それについて話し合うか,あるいは拒否することができなければならない.これは,アドヒアランスが患者が自分の病気を受け入れ,処方された治療の価値を理解していることを意味する1)からである.前出「アドヒアランスとは」(663-667 頁)で述べたとおり,アドヒアランスへの臨床的なアプローチは個人に合わせて調整する必要があり,全体的で多次元的な方法でアプローチする必要があるとされている.われわれ医療者は,効果的な自己管理サポートを実現するために,疾患と症状の管理,薬物に関する技術的な課題(たとえば,複雑な投与計画や副作用,飲み忘れ)の解決にむけた支援と,希望や不安などへの感情に目を向け支援すること2)が求められている.あらかじめ尺度や質問票などでノンアドヒアランスのリスクをスクリーニングできれば,バリアに対する対処も迅速に行えるようになることから,これまで多くの評価尺度が開発されてきた. 本稿では,がん領域で比較的多く使われている尺度や,国内で使用可能な尺度を中心に紹介したい. -
海外におけるアドヒアランスを高める看護ケア
27巻7号(2022);View Description Hide Description近年,がん薬物療法では経口抗がん薬の使用が増加している.経口抗がん薬は,点滴治療と比べて簡便で痛みを伴わず,自宅で治療できることにより患者から好まれる傾向にある1)が,患者自身による服薬管理が必要となる.治療効果を獲得し,Quality of Life (QOL)の向上を図るために服薬アドヒアランスは重要である2).看護師には患者の服薬アドヒアランスを向上させる役割が求められているが,支援のあり方は確立されているとは言いがたい. 本稿では,海外の文献を中心に服薬アドヒアランスを高めるための看護ケアについて述べ,わが国での活用を模索したい.
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My Favorite Medicine ! !
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- 私が注目している抗がん薬を紹介します【22】
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リレーエッセイ
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- “がん看護CNS”奮闘中!〜活動の場の開拓について考える〜【5】
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特別寄稿
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緩和ケアWebセミナー「出島塾」の取組み
27巻7号(2022);View Description Hide Description2007 年4 月に施行された「がん対策基本法」では,痛みなどのつらい症状の緩和を目的とした治療を,早期からがんの治療と並行して行うことが推進され,2012 年からはとくに,診断時から適切な緩和ケアを行うことが推奨されている.しかし,2015 年の全国患者体験調査では,からだのつらさがあると答えた患者の割合は34.5%,気持ちのつらさがあると答えた患者は28.3%であり,患者の苦痛に対して迅速かつ適切なケアが十分提供されていない現状と,緩和ケア研修会の受講勧奨,受講の利便性の改善,内容の充実が求められた.2030 年には,看取り難民が増加し約47 万人に達すると予測され,緩和ケアが必要ながん患者も多く含まれる.地域包括ケアシステムが重要となった現代において,病院完結ではなく地域に根差した緩和ケア研修のあり方を模索した. 当院は37 床を有する独立型緩和ケア病院である.院内スタッフの緩和ケアの質向上および,地域の医療介護従事者(以下,地域スタッフ)への緩和ケアの普及の目的で,緩和ケア研修「出島塾」を2017 年から開始した.しかし,開始当初は業務調整がむずかしく,院内スタッフの平均受講率は約30%,地域スタッフは毎回2~3 人の出席であった.さらに,2020 年1 月からの新型コロナウイルス感染症の猛威により,研修はいったん中断せざるを得なかった.その後,with コロナでの日常をどう模索し継続していくかを検討し,オンライン緩和ケア研修を構築するにいたった.コロナ禍での困難を機会にできた,2021 年度緩和ケア研修「出島塾」について報告する.
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連載
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- 臓器別がん 最新のエビデンスに基づいた薬物療法と看護の実践【3】
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- 善先生のがんなにそれ講座~まずは相手を知らなあかんで~【4】
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なにそれ10 「非科学的な原発」/なにそれ11 「浸潤は長い戦いのはじまり」/なにそれ12 「数打ちゃあたる転移」
27巻7号(2022);View Description Hide Description - スピリチュアルケアを学ぼう!【3】
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- 遺族の声を臨床に活かす J-HOPE4研究(多施設遺族調査)からの学び 【#7】
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【付帯研究1】社会経済的地位ががん患者の治療選択・望ましい死の達成および遺族の精神的健康に与える影響/【付帯研究23】進行がん患者が食べられなくなったときの経静脈栄養水分補給に関する家族の信念と認識
27巻7号(2022);View Description Hide Description【付帯研究1】 社会経済的地位(socio-economic status)と健康問題については,死亡率や循環器系疾患のリスクの上昇,メンタルヘルスの低下,BMI・血清コレステロール値・HbA1c など健康リスクファクターとなりうる指標の悪化など,医療のさまざまな分野において関係性が明らかになっている1).しかし,終末期医療に関しては社会経済的地位がそのアウトカムである望ましい死の達成度や遺族の精神的健康状態などに与える影響ついてほとんど研究が行われていない.社会的には経済格差の拡大も問題となっているなか,がんに対する医療費は増加傾向になり,国民皆保険制度を取り入れているわが国においても,がん患者自身の経済負担も増大しており2),社会経済的地位が健康問題に与える影響は無視できない問題である. 【付帯研究23】日本緩和医療学会では2013 年に『終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン』を発行している.その中で,終末期がん患者には経口摂取の減少は高頻度にみられる症状であるが,これに際して実施される人工的水分・栄養補給(点滴など)は,医師や施設によって大きな差があると述べている1).患者にどのような点滴が実施されるかなどは,患者・家族の価値観や,そのメリット・デメリットのバランスにより総合的に評価されて決定する.臨床現場では終末期がん患者への点滴の実施の是非と,家族の点滴などに対する思いや希望の乖離に悩むことも多いのではないだろうか.そこで今回の研究では,終末期がん患者の家族が点滴などに対してどのような信念や認識を抱えているのか明らかにしたいと考えた. - がん薬物療法看護のWhat’s Trending!Past → Current → Future 【15】
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がん薬物療法を受ける患者への大規模災害に備えた対策
27巻7号(2022);View Description Hide Description近年,地震・大雨・台風など自然現象による大規模な災害は各地で発生しており,災害を身近に感じている人も少なくないのではないだろうか. ひとたび災害が発生すると生命の危機という大きな問題だけでなく,被災地ではインフラの停止や居住環境の変化を余儀なくされ,これまで日常としてきた生活が継続困難となる.医療現場においても同様であり,医療機関の機能が停止し通常診療が行えなくなることもある. 本稿の前半部では,地震を中心とした大規模災害発生時に少しでも安全に安心した対応ができるよう,がん薬物療法を受ける患者へどのような影響があるか,その影響を最小限にするための対応策について述べる.
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投稿
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- 事例報告
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乳がん化学療法における脱毛の時期,経過,および気持ちの変化についての観察研究
27巻7号(2022);View Description Hide Descriptionがん化学療法中の1 事例において,詳細な脱毛開始時期,脱毛量およびその部位の経過を観察するとともに,そのときどきの不安などの気持ちを聞き取り,経過時期ごとに起こるQOL 低下に必要な支援について考察したので報告する.抗がん薬投与後,脱毛開始から終了の過程で毎日脱落した毛髪を回収,乾燥重量の測定,脱毛箇所の観察を行い脱毛過程の推移を記録した.さらに脱毛中のウィッグ装着感,不安感を聴取した.AC 療法第1 サイクル開始後13 日目に脱毛が頭頂,こめかみから始まり,脱毛開始4 日目には脱毛量はピークとなり,第2 サイクル開始時点ではほぼ全毛髪は脱落していた.患者の精神的不安の1 つは,脱毛中に外出が可能であるかということに関係していた.また,ウィッグに関しては,脱毛量に応じて調整が必要であることがわかった.