Volume 11,
Issue 12,
2008
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【展望】
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Source:
臨床精神薬理 11巻12号, 2195-2203 (2008);
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筆者らは“resilience”を「病気を防ぎ,病気を治す心身の働き」,いわば自然治癒力の現代版としてとらえ,うつ病が自殺・再発のリスクを胚胎しながらも回復しやすい病気であることを前提にして,この病気とその治療を回復論的視点から考察した。まず,病前性格に潜在して回復にも関わるうつ病者の「底力」(渡辺)に注目し,近年の臨床像の変化に対応すべく「回復状況論」の必要性を指摘した。次に自殺の問題をめぐって,軽症うつ病の保護的な役割を示唆する疫学的資料とうつ病経験者が語る自殺念慮との闘いを紹介し,SSRIとセロトニンの問題に言及した。最後に,自然治癒力に基づく養生・治療論(神田橋)を近年の薬理・生物学的知見によって補強し,生物学的治療を養生とは逆の脳活動を刺激する手段とみなす俗説に訂正を促すとともに,薬物療法を含めてあらゆるうつ病治療は,罹病者に内在する“natural resilience”(Stassen,Angstら)を前提として行われるべきことを主張した。 Key words :resilience, depression, suicide, psychotherapy, pharmacotherapy
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【シリーズ】
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臨床精神薬理 11巻12号, 2263-2264 (2008);
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【原著論文】
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臨床精神薬理 11巻12号, 2265-2276 (2008);
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緊張病性(亜)昏迷状態を呈した緊張型統合失調症24例,うち修正型電気けいれん療法(以下mECT)施行15例/未施行9例,に対してquetiapineを投与した結果,中等度改善以上が79.2%(19例/24例)と高い改善率を示した。90日以上にわたりquetiapineを投与し,入院治療を要する急性期からその後,外来治療に移行する回復期,安定期も継続して治療することができた患者は66.7%(16例/24例)であった。なお,継続・維持mECTを要した症例は無かった。また今回は,その中でmECT施行2例と未施行1例の治療経過も提示した。3例ともに経過中に緊張病性昏迷状態を呈した典型的な緊張型統合失調症であった。Quetiapineを主剤とし必要に応じてmECTを施行することで,比較的速やかに緊張病症状が軽快し,その後,寛解した状態を維持できている。以上のような使用経験から,quetiapineは緊張型統合失調症の第一選択薬として位置づけられる薬剤であると考えられた。 Key words :schizophrenia, catatonia, quetiapine, stupor, ECT
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臨床精神薬理 11巻12号, 2277-2283 (2008);
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Blonanserin(BNS)は,1988年に日本で開発され,2008年に臨床導入された新しい第2世代抗精神病薬である。本薬剤は,in vitroにおいて抗dopamine(D2)活性に加え,抗serotonin(5-HT2A)活性を併せ持つという,第2世代抗精神病薬に特徴的な性質を有しているが,in vivoにおけるBNSの薬理学的プロフィールについての報告は乏しい。我々は,統合失調症におけるBNS1日投与量,血漿中濃度,血漿中抗D2活性,血漿中抗5-HT2A活性の検討を行った。対象は聖マリアンナ医科大学神経精神科に通院中でDSM―IV分類により統合失調症と診断された男性6名,女性8名の計14名である。方法は,BNS投与量固定後14日後に採血を行い,血漿中濃度をHPLC法で測定した。また,血漿中抗D2活性,抗5-HT2A活性は,[3H]-spiperone,[3H]-ketanserinを用いたradioreceptor assay法によって測定した。その結果,1日投与量と血漿中濃度の間に統計学的に有意な相関を認めた(p=0.04)。また,血漿中濃度と抗D2活性および血漿中濃度と抗5-HT2A活性の間に統計学的に有意な相関を認めた(p=0.003,p=0.04)。このことから,血漿中抗D2活性および抗5-HT2A活性はほぼ未変化体のみで規定されていると考えられた。一方,平均血漿中S/D比は0.9で,本薬剤はin vivoにおいても抗D2活性に加え,抗5-HT2A活性を有しており,in vitroにおける薬理学的プロフィールがin vivoにおいても保持されていることが明らかとなった。 Key words :blonanserin, radioreceptor assay, plasma concentration, anti-dopamine (D2) activity, anti-serotonin (5-HT2A) activity
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臨床精神薬理 11巻12号, 2285-2294 (2008);
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他の精神障害の合併がなくベンゾジアゼピン系抗不安薬の効果が不十分であった身体表現性障害の外来患者55例に対し,fluvoxamine(FLV)による治療を行った。FLVが有効であったのは,効果判定が可能であった52例(副作用により3例が脱落)のうち,44例(84.6%)であった。治療効果は強迫性障害と類似の病態に対してのものであると考えられた。投与量は平均150mgで,100~200mgが多かったが,50mgで効果が得られた場合や300mgを要した場合もみられた。効果発現時期は,1週間後から4週間後までが多かったが,1週間以前や4週間以降のものもみられた。臓器別の有効率は,循環器症状では高く,口腔内の症状では低かった。副作用は,食欲不振,悪心,眠気が多かったが,重篤なものはみられず,制吐剤の併用や投与法の工夫により通院中断を減らすことが可能であった。以上から身体表現性障害の治療においてFLVは有用であると考えられた。 Key words :somatoform disorders, obsessive compulsive spectrum disorders, selective serotonin reuptake inhibitors(SSRIs), fluvoxamine
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臨床精神薬理 11巻12号, 2295-2304 (2008);
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精神科で抗うつ薬を処方された成人うつ病患者1,187例へのインターネット調査により,うつ病治療に関する本音を聞き出した。調査時点で約75%が受診中であった。受診理由は,うつ病の自覚,身体・精神症状のつらさ,他者からの勧めが多く,初診時の最たる希望は「症状の早期改善」であった。抗うつ薬の服用はSSRIが最も多く7割以上であった。効果の有無が満足度を左右した。受診理由で多かった不眠・不安感・ゆううつ感は治療効果を実感しやすい症状でもあった。大多数では症状改善より副作用が先に現れ,7割以上が副作用を経験し,うち3割は自己判断で中止・減量した。最もつらかったのは眠気であった。医師の説明が副作用への理解と対処を促したが,医師からの事前説明,発現時の報告,対処できた割合が副作用によって異なり,性の問題は特に相談しにくかった。多くの患者が,治療効果,周囲の人との交流を治療の励みとしていた。 Key words :depression, antidepressant, adverse event, coping, adherence
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【症例報告】
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臨床精神薬理 11巻12号, 2305-2309 (2008);
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長期間の緊張病性昏迷に対しaripiprazoleが奏効した思春期症例を経験した。症例は15歳男性,統合失調症初発エピソードで昏迷状態を呈していた。両親の信仰上の理由から,昏迷状態となってから精神科受診するまでに約1ヵ月を要した。その間,十分な飲水,食事を摂ることができず,当院初診時は極度の脱水を認めた。補液等で全身状態の改善を図った後,精神症状に対してはrisperidoneで治療開始した。しかし過鎮静となったためaripiprazoleに変更し,18mg/dayまで増量したところ,昏迷から脱しコミュニケーション能力が回復した。Risperidoneの効果もあったと思われるが,aripiprazoleは鎮静作用が弱く,全身状態に与える影響も少なかったため,本症例のように家族が治療に懐疑的な症例においては有利であった。初回治療の薬剤選択については治療効果のみならず,心理社会的な状況も見据えた包括的な判断が求められることについて論考した。また両親の入院前までの治療に対する拒否的態度に関しては,医療ネグレクトの観点から若干の考察を試みた。 Key words :aripiprazole, schizophrenia, catatonic stupor, adolescence
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臨床精神薬理 11巻12号, 2311-2316 (2008);
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抗精神病薬による治療経過中に出現する遅発性ジストニアは,難治性でその治療に難渋することが多い。本症例は22歳時発症の統合失調症の女性患者であり,抗精神病薬による治療経過中,43歳時に遅発性ジストニアが出現した。11年後,定型抗精神病薬をquetiapineに変更し,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるfluvoxamineを減量したことで,遅発性ジストニアが消失した。遅発性ジストニアの発生機序は明らかではないが,各抗精神病薬に共通であるドパミン受容体遮断作用が重要な役割を持つと考えられ,その治療にあたってはドパミン受容体への親和性が低い非定型抗精神病薬への置換が推奨される。また,抗精神病薬とSSRIを併用している場合,SSRIのCYP阻害による抗精神病薬の錐体外路症状を惹起する作用の増強や,SSRIそのものによる錐体外路症状の出現に注意する必要がある。 Key words :tardive dystonia, atypical antipsychotics, quetiapine, fluvoxamine, SSRI
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【シリーズ】
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臨床精神薬理 11巻12号, 2317-2323 (2008);
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臨床精神薬理 11巻12号, 2325-2334 (2008);
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【講演紹介】
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臨床精神薬理 11巻12号, 2335-2346 (2008);
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【シリーズ】海外文献紹介
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臨床精神薬理 11巻12号, 2347-2358 (2008);
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