Volume 13,
Issue 12,
2010
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【展望】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2227-2235 (2010);
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諸外国のうつ病の治療ガイドラインにおいて,軽症例では薬物療法は推奨されず,心理療法や運動,栄養面への配慮,パンフレットを渡す,支持的ケア,問題解決技法といった簡単なケアを勧めている。今後これら非薬物療法の実際の効果およびわが国の環境に導入可能かどうかなど,様々な観点から検討する必要があるだろう。なお中等症例においては,ほとんどのガイドラインで薬物療法が推奨されているが,心理療法を同等に扱っているものも多い。ただ薬物療法と言っても,新規抗うつ薬が決して推奨されているわけでない。薬物を選択する際には患者の嗜好,事前の反応,症状,身体合併症,費用,利益と忍容性とのバランス等において考慮すべきとしている。しかしこうした治療ガイドラインの策定には,薬物療法の専門家よりも,むしろ心理士や健康経済学者のほうが多く加わっていたりする。エビデンスの質の高さよりも医療経済的な要素やこの分野における国や自治体の方針が反映されているようである。ガイドラインを読む際にはこうした状況をよく理解する必要があるだろう。 Key words : antidepressant, resilience, treatment guideline, depression
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【シリーズ】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2273-2275 (2010);
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【原著論文】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2277-2291 (2010);
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2006年6月8日~2008年6月30日の間に水海道厚生病院においてaripiprazole(APZ)の処方が開始された全症例(N=165)を対象として,2009年7月1日までの間の臨床経過についてカルテ調査を行った。処方1年後のAPZ継続率はF2圏(N=136)で41.2%,F2圏以外(N=29)では27.6%だった。F2圏の精神症状に対するAPZの最終評価は,著明改善7.4%,軽度改善19.9%,不変39.7%,軽度悪化15.4%,著明悪化9.6%(判定不能8.1%)だった。F2圏症例の内,陽性症状が目立つ群では目立たない群と比較してAPZ投与後の精神症状悪化例が多い傾向があった(p=0.0503)。社会的機能レベルの高い群では低い群に比べてAPZによる精神症状改善例の比率が有意に高かった(p=0.0007)。また悪化例は改善例に比べて有意に平均年齢が高く,罹病期間が長く,切り替え前の抗精神病薬用量が多かった。無月経や乳汁分泌のためにAPZに切り替えた13例の内,転帰の確認できた11例全例で月経が回復し,乳汁分泌が消失した。APZは有害事象が少なく,総じて有用性の高い抗精神病薬と考えられた。 Key words : antipsychotics, side effects, social functioning, supersensitivity psychosis, withdrawal symptoms
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臨床精神薬理 13巻12号, 2293-2303 (2010);
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近年,欧米を中心に双極性障害に対する薬物療法の選択肢が広がり,本邦においても適応外使用を含めた種々の薬物療法が行われている。しかし,適正に使用できる薬剤が限られる中,日常臨床では対応に苦慮する場面も少なくない。今回我々は,わが国の双極性障害に対する精神科薬物療法の現状を把握する目的で,北海道内の精神科医を対象にアンケート調査を実施した。2008年3~6月にかけて,16項目からなる質問用紙を対象者679名へ郵送し,218名(約32%)から回答を得た。急性期・維持治療ともにlithiumおよびvalproateの評価は総じて高く,急性うつ病エピソードを除いて,双極性障害に対する第一選択薬としてコンセンサスが確立されていた。エビデンスレベルや病相予防効果の項目においてlithiumが,安全性においてvalproateが高い評価を受けていた。また,carbamazepineや第二世代抗精神病薬は第二選択薬として推奨されていた。 Key words : lithium, valproate, bipolar disorder, pharmacotherapy, questionnaire survey
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臨床精神薬理 13巻12号, 2305-2314 (2010);
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福岡県立精神医療センター太宰府病院の精神科救急および急性期病棟における1年間の抗精神病薬の使用状況を調査した。精神科救急病棟ではrisperidone(RIS),aripiprazole(APZ),olanzapine(OLZ),quetiapineの順で使用頻度が高かった。従来はRISとOLZの使用頻度が高かったが,近年APZの使用頻度が増えている。Benzodiazepine(BZP)系薬剤の併用率は各抗精神病薬で同様であったが,APZに併用されるBZP系薬剤の最大投与量は他剤に比べ若干高く,鎮静目的のhaloperidolやmidazolamの筋注を使用した症例がやや多かった。一方,救急病棟における1ヵ月以内の切り替え率は各非定型薬で差がなかった。APZは鎮静作用が少なく急性期では使いにくいという臨床家の評もあるが,本結果より初期から比較的高用量を投与し,BZP系薬剤で一時的に鎮静する等の工夫により,RISやOLZと同様に救急・急性期において第一選択薬となり得ることが明らかとなった。さらに長期の維持管理と回復を視野に入れ,糖・脂質代謝系副作用が少なく,意欲や認知機能の改善も期待されるAPZが積極的に選択されたと考えられる。 Key words : aripiprazole, antipsychotics, psychiatry emergency ward, ward for acute phase
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臨床精神薬理 13巻12号, 2315-2327 (2010);
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Blonanserin(BNS)は,強力なドパミンD2受容体拮抗作用とセロトニン5-HT2A受容体拮抗作用を併せ持ち,dopamine-serotonin antagonist(DSA)と呼ばれている。上市されて2年が経過しているが,実地医療(real-world)における臨床的有効性と安全性に関する報告はまだ少ない。そこで,われわれはBNSを統合失調症の外来・入院症例40人に対して投与し,8週間までの治療効果や安全性について3施設共同で検討した。BPRS総得点は開始前→4週間後→8週間後で,49.18→42.05→37.40と有意に改善を示した。DIEPSSでは,総得点の各期間での有意差は認められなかったが,動作緩慢の項目において有意な改善が認められた。CGI-Sでも有意な改善を示し,CGI-Iにおける中等度改善以上の割合は,4週後に17.5%,8週後には27.5%に達した。重篤な副作用は発生せず,体重や血糖・脂質などの検査項目については,8週間で有意な変動はなかった。8週間後の時点での治療継続率は95%と高かった。BNSは陽性症状,陰性症状の両方への確かな臨床的効果があり,重大な副作用も少なく,有効性・安全性ともに高かった。 Key words : adherence, blonanserin, dopamine-serotonin antagonist, schizophrenia
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【症例報告】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2329-2334 (2010);
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実地臨床において双極Ⅱ型障害(BipolarⅡ Disorder : BDⅡ)は見過ごされることが多く,大うつ病性障害として誤診されることが少なくない。さらにBDⅡでは,当事者が軽躁エピソードの存在を自覚しないため,診断基準の規定する軽躁病状態がしばしば臨床家に認識されない。このためうつ病として治療され続ける事例が多い。今回,抗うつ薬投与で寛解と再燃を繰り返す治療抵抗性うつ病とみなされていた患者に,quetiapineと従来型気分安定薬の併用を行い,長期安定を得た事例を報告した。今回の経験から,治療上の留意点を主として二点あげる。第1に,対象がうつ病ではなく双極性障害であることに主治医が気づくこと。第2に軽躁期,うつ期,維持期に合わせた治療法の転換は当事者・臨床家双方にとって負担が大きいため,全経過を通じてできるだけ変更の必要のない治療選択が望ましい。また,気分安定薬としてのquetiapineの適切性,用量,長期有効性について考察を加えた。 Key words : quetiapine, bipolar II disorder, refractory depression, mood stabilizer, long term effect
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【短報】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2335-2338 (2010);
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Aripiprazole(APZ)は,その薬理学的特徴から体重増加を来たしにくい抗精神病薬であり,高い有用性が評価されている。今回我々はolanzapine(OLZ)で体重増加を呈した統合失調症患者で,APZにスイッチングすることで精神症状の増悪を認めることなく,もとの体重へ復した症例を経験した。症例は35歳の男性患者でOLZ 20mgで病状が安定したが,62kgであった体重が76.6kgに増加した。OLZを減量せずAPZ 12mgを上乗せしただけで,過剰だった食欲が正常化しだし,スイッチングの終了時点では62.6kgと,もとの体重に回復した。このAPZの上乗せによる食欲の正常化に関して考察を加えた。 Key words : aripiprazole, switching, olanzapine, weight gain, shizophrenia
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【追悼】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2339-2340 (2010);
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【対談】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2341-2354 (2010);
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【座談会】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2355-2363 (2010);
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【シリーズ】
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臨床精神薬理 13巻12号, 2365-2373 (2010);
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