Volume 14,
Issue 10,
2011
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【展望】
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1599-1606 (2011);
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統合失調症の再発予防や良好な長期予後を確保するには継続的な服薬が重要である。本稿では,長期予後を見据えた薬物療法を行い,統合失調症の再発・再燃を少なくする工夫について述べた。統合失調症の服薬コンプライアンスは約40%と低く,医師の処方した薬剤の服用を遵守するという考え方から,患者とともに治療方針を決定していくことを重視したアドヒアランスという考え方に変わってきている。一方,抗精神病薬は第二世代抗精神病薬が次々と登場してきている。抗精神病薬の単剤化に加え,これら薬剤の受容体プロフィールに留意しながら,それぞれの患者に適した薬剤を選択していくことが重要である。錐体外路症状は,遅発性ジスキネジアやドパミン過感受性精神病の重要な予測因子であるので,抗精神病薬の用量に留意することは重要であろう。さらに早期再発徴候を捉えて介入することも有効であり,近年,情報技術を用いた方法が報告され(ITAREPS),我々もその方法に訪問看護を加えたCIPERSを開発している。 Key words : schizophrenia, antipsychotics, dopamine supersensitivity psychosis, ITAREPS, CIPERS
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【総説】
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1655-1663 (2011);
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抗精神病薬の再発予防効果について,経口抗精神病薬に対するデポ薬の優位性を決定づけるエビデンスはいまだ見当たらず,議論の渦中にある。これまでの再発予防効果に関する臨床比較試験を概観すると,試験デザインごとに様々なバイアスやlimitationがあるものの,アドヒアランスの確保についてはデポ薬が明らかに優れ,被験者の特性を絞り込むことによりデポ薬の優位性が確認できた。したがって,デポ薬の利点を最大限に活用するためには,その適正使用方法と対象を理解することが重要であり,risperidone持効性注射薬を例として具体的な使用方法を検討したい。 Key words : schizophrenia, relapse prevention, depot antipsychotics, oral antipsychotics, risperidone
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【シリーズ】
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1665-1666 (2011);
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【原著論文】
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1667-1677 (2011);
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わが国では,禁煙補助薬の登場と診療報酬上にニコチン依存症管理料が設定され,禁煙治療に対する関心が高まっている。本研究は喫煙者が医師の指導のもと,vareniclineまたはニコチンパッチを使用して禁煙を試みた場合の直接医療費(禁煙介入費用と肺がん医療費)と,肺がんによる罹患および死亡リスクを比較・検討するために,30歳,40歳,50歳の男女を対象としたモデル分析を行った。その結果,いずれの性・年齢においてもvareniclineを使用した場合の生存年数はニコチンパッチを使用した場合より延長されていた。医療費に関しては,40歳および50歳男性ではvareniclineを使用した方が費用は少なく,30歳男性,30歳女性,40歳女性および50歳女性では生存年数1年延長あたりの医療費の増加はそれぞれ12,401円,271,254円,142,803円,93,102円と推計された。これらよりvareniclineはニコチンパッチと比較して費用効果的に優れていることが示唆された。 Key words : varenicline, nicotine patch, cost-effectiveness analysis, Markov model, lung cancer
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1679-1685 (2011);
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本邦における隔離,拘束を要する重症急性期統合失調症の薬物療法での,非定型抗精神病薬の有効性を検討する目的で,非定型抗精神病薬導入10年目である2005年の公的6病院精神科での入院治療と退院後経過について,服薬アドヒアランスの指標であるmedication possession ratio(MPR)を中心に診療録をもとに後方視的に調査した。MPR良好群とMPR不良群において退院後1年転帰を比較した際,MPR良好群については,外来継続日数および外来継続率が有意に高く,MPR不良群では再入院および治療中断する危険性が1.802倍高かった。一方,非定型抗精神病薬の導入率については2群に有意差がなかった。MPRに寄与する諸要因については,さらなる研究が必要である。 Key words : schizophrenia, acute-phase, atypical antipsychotics, medication possession ratio
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【症例報告】
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1687-1695 (2011);
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せん妄状態を呈して入院加療を行った8例の75歳以上の認知症患者に対して,aripiprazole 6mgで治療を開始し4週間投与した際の症状変化をDelirium Rating Scale-R-98日本語版(以下,DRS-R-98-J),PANSS-ECおよびPANSS-Positiveで評価した。(1)DRS-R-98-Jでは,日中の評価(10時)で,5日後よりスコアの有意な減少(p<0.05)を認め,夜間の評価(20時)では,2週間後よりスコアの有意な減少(p<0.01)を認めた。(2)PANSS-ECでは,2週間後よりスコアの有意な減少(p<0.05)を認め,PANSS-Positiveでは,1週間後よりスコアの有意な減少(p<0.05)を認めた。(3)安全性に関しては,1例でaripiprazoleの増量に伴い,食欲低下およびアカシジアを一過性に認めたが,これは減量と抗パーキンソン薬の短期間使用により消失した。また,全症例で治療開始2週間後よりプロラクチン値の低下(p<0.05)を認めた。これらの結果より,aripiprazoleは,高齢認知症患者のせん妄状態を伴う周辺症状に対して低用量で効果を認め,安全性の高い薬剤であることが示唆された。 Key words : elderly patients, dementia, delirium, aripiprazole
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1697-1703 (2011);
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Blonanserinは我が国で開発された非定型抗精神病薬であり,従来の抗精神病薬の中でも非常に強いドパミンD2受容体への結合親和性を持ち,強い抗精神病効果が期待される薬剤である。そのためblonanserinは治療抵抗性統合失調症患者にも優れた効果を発揮するとの報告も多い。今回我々は,このblonanserinを治療抵抗性を含む長期間治療に難渋した慢性統合失調症に対して使用したところ,いずれの症例に対しても,短期間で速やかに効果が発現し,忍容性も優れていたことから,服薬が継続され,効果発現後の病識の獲得や疾病教育の導入,アドヒアランス向上に大変有効であった。今後,blonanserinはその強い抗精神病効果と優れた忍容性により,統合失調症治療において,m-ECTと並ぶ最後の切り札としての役割を果たせる可能性が示唆された。 Key words : blonanserin, treatment-resistant schizophrenia, modified electroconvulsive therapy, adherence, switching
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1705-1712 (2011);
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今回,我々は,paroxetineおよびfluvoxamineなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors:SSRIs)が無効であった,むちゃ食い障害(binge-eating disorder:BED)を伴う非定型うつ病に対して,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor:SNRI)であるduloxetineが著効した33歳の女性例を経験した。症例には,不安・抑うつ発作が認められた。我々の検索した限りでは,同様の病態にduloxetineが著効した症例はBernardiらの報告(2010年)のみであった。Duloxetine 20mg/日を服用後2週目頃より,BEDおよび非定型うつ病が改善した。さらに,duloxetine を20mg/日→30mg/日→40mg/日と漸増させて服用したところ,服用後8週目において,BEDおよび非定型うつ病ともに寛解した。また,不安・抑うつ発作も消失した。Duloxetine服用後21週目で40mg/日を維持量としているが,諸症状の再燃,duloxetine服用に起因する有害事象や躁転は認められていない。また,症例の日常生活能力と社会性は改善し,安定した人間関係が維持されている。本症例の検討からduloxetineには,SSRIsが無効であったBEDを伴う非定型うつ病に対する早期の改善効果と,それらの効果の維持に対する有効性があることが示唆された。DuloxetineのBEDに対する作用機序には不明な点が多い。今後,BEDを伴う非定型うつ病の症例におけるduloxetineの有効性や服用方法について,さらなる症例の蓄積が必要であろう。 Key words : duloxetine, serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor (SNRI), binge-eating disorder, atypical depression, anxious-depressive fit
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【総説】
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1713-1719 (2011);
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うつ病患者の多くには不安症状もみられる。不安症状を有するうつ病の患者では予後不良や治療に対する反応性が低いことがあるなどの,様々な問題点が指摘されている。したがって,うつ病治療に際し不安症状に対してのケアも重要な課題であると考えられる。2010年に本邦でうつ病およびうつ状態に対して承認されたduloxetineは,国内外の臨床試験においてうつ病の不安症状に対する有効性についてのエビデンスが蓄積されてきている。これらの臨床試験において,HAM-D17の項目10,HAM-D不安・身体症状サブスケール等を用いてうつ病の不安症状に対するduloxetineの有効性を評価した結果,duloxetineはうつ病の不安症状に対して有効であることが示されている。以上より,日常臨床においてもうつ病の不安症状に対しduloxetineを用いることは治療選択肢として有用であると考えられる。 Key words : depression, anxiety, duloxetine, serotonin noradrenaline reuptake inhibitor (SNRI)
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【座談会】
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1733-1744 (2011);
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【シリーズ】
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臨床精神薬理 14巻10巻, 1745-1751 (2011);
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