臨床精神薬理
Volume 15, Issue 6, 2012
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【展望】
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ADHDの診断と治療に求められるバイオマーカーとは:Status quo & Potentialities
15巻6号(2012);View Description Hide Description注意欠如/多動性障害(ADHD)診療に有用なバイオマーカーとして現在,認知機能検査,コンピューターを用いた認知行動検査,脳波検査,fMRI・NIRS等のニューロイメージング検査が臨床場面で活用されている。これらはADHD適応薬の投与前後における病態把握,薬効評価に役立つものである。一方,ADHDの原因遺伝子は未だ不明であり,確定診断や病態評価のために必要な‘真のバイオマーカー’と言うべき分子は同定されていない。現状のバイオマーカーによる病態把握を綿密に行いつつ,患者個人のオーダーメイド治療を発展させるというアプローチとともに,分子生物学的な基盤に立ったバイオマーカーの検出,ニューロイメージングによる病態評価,そして新たな治療法と予防法の開発が今後期待される。そしてADHDの生物学的病態を反映すると思われる胎生~乳児期脳発達に視点を移した研究は,ADHDの具体的・客観的診断治療法開発につながる可能性がある。 Key words :ADHD, biomarker, order―made therapy, molecular―based biomarker, neuroimaging
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【特集】 ADHDの薬物療法の最適化
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ADHDの併存障害や発達段階に応じた薬物選択のエビデンスと実際
15巻6号(2012);View Description Hide Descriptionわが国では,長時間作用型methylphenidate(MPH)は2007年12月に,atomoxetine(ATX)は2009年6月に製造販売を承認され薬価収載され投薬できるようになり,作用機序の異なる2種類の適応薬を使い分ける時代に入り,注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療・支援における薬物療法の重要性は高まっている。欧米のADHDの治療ガイドラインでは,第1選択薬として長時間作用型薬物が位置づけられている。さらに長時間作用型薬物の中では,第1選択薬としてMPH,第2選択薬としてATXが位置づけられている。うつ病,不安障害,チック障害,薬物依存が併存している場合,親が中枢刺激薬への抵抗が強い場合,24時間効果が持続する必要がある場合には,ATXが第1選択薬になる。本稿では,欧米のADHD治療ガイドライン,なかでもテキサス・アルゴリズムをたどり,二重盲検試験の結果を織りまぜながらADHDに対してどのように薬物療法を組み立てていくのか,さらに成人ADHDへの薬物療法に関するエビデンスについて述べる。 Key words :Attention―deficit/Hyperactivity Disorder(ADHD), comorbidity, methylphenidate, atomoxetine, pharmacotherapy -
ADHDにおけるactigraphによる行動量評価と治療最適化への応用
15巻6号(2012);View Description Hide Description臨床場面において最も多く見いだされる注意欠如多動性障害(ADHD)の症状は多動であり,客観的な行動量指標である活動量連続測定計(actigraph)を用いてADHDの特性を捉えようという試みがなされてきた。これまでのところ,ADHDの活動量は,1)構造化の弱い環境では健常児と違いがなく,強く構造化された環境では健常児よりも大きいという状況依存性がみられる,2)methylphenidate内服によってADHDの活動量は減少するが,その効果もまた状況依存性がみられる,といった特徴をもつことがわかっている。ADHDの活動量は状況依存性が大きいことから,現状ではactigraphをADHDの診断や治療効果判定に用いる試みが成功しているとは言い難い。Actigraphに様々なバイオマーカーを組み合わせることで,ADHDの客観的な診断指標や薬物効果判定指標が生み出されると考えられる。 Key words :actigraph, attention―deficit/hyperactivity disorder, motor activity -
注意集中力検査を用いたADHD薬物療法の評価および質問紙を用いた休薬の試み
15巻6号(2012);View Description Hide Description以前より我々は,注意集中力を測定する持続的注意集中力検査(Continuous Performance Test:CPT)を用いて,methylphenidate投与前後の注意集中力の変化を測定できることを報告してきた。本報告では,methylphenidate投与後に注意集中力が悪化する1例を示して臨床使用上の注意喚起を行った。現在臨床上使用可能な長時間作用型methylphenidate製剤については,服薬前および服用5時間後にCPTを行うと薬物の効果判定予測が可能であることを示した。また一般診療上でも入手可能なCPT検査を紹介した。Methylphenidate中止にあたって,担任に質問紙を用いて評価いただく方法を実例を挙げて説明した。これらの方法が薬物が適正に使用される一助となれば幸いである。 Key words :Attention deficit hyperactivity disorder, continuous, Performance Test, AD/HD―rating scale, methylphenidate -
ADHDの神経心理学とテーラーメイド治療
15巻6号(2012);View Description Hide DescriptionADHDは,不注意,多動性―衝動性という行動上の特性によって診断される発達障害であるが,これらの中核障害の背後には実行機能や報酬系などの神経心理学的障害の存在が示唆される。各種のガイドラインによれば,ADHD治療薬の使い分けは,中核症状のプロファイルやサブタイプでは明確ではなく,併存障害によることが多い。Methylphenidateは実行機能と報酬系を,atomoxetineは実行機能のみを改善することから,神経心理学的障害評価はテーラーメイドな薬剤選択の一助となり得る。また,このことは神経発達の段階に応じた,それぞれの年齢に最も合理的な治療選択を行う上でも有用となる。しかし,神経心理学的障害をもたないADHD児童もいるほか,その他の神経心理学的機能の障害も示唆されるなど,ADHDの臨床症状の背景はより複雑である。多数例での多様な神経心理学的アセスメントの結果に基づき,治療効果を最も予測するパラメーターを抽出することが求められる。 Key words :Attention―deficit/hyperactivity disorder, executive function, reward system, pharmacotherapy, tailor―made treatment -
ADHDの精神生理学的所見とそれに応じた薬剤選択の可能性
15巻6号(2012);View Description Hide Description注意欠如・多動性障害(ADHD)に関して,多くの遺伝学的,生化学的,脳画像的研究によって生物学的基盤が示唆されている。またADHDには認知の段階,または情報処理の段階で何らかの異常があると考えられているため,精神生理学的研究が比較的多くなされている。筆者らは課題刺激によって誘発された脳の活動を調べることが可能な事象関連電位(ERPs)に注目して検討を行ってきた。その結果,ADHD児群では定型発達児群に比べてP300の振幅の低下と潜時の延長が認められた。さらに注意関連電位であるnegative difference(Nd)とmismatch negativity(MMN)も低振幅であった。その後,それら異常の一部が成人のADHDにも認められることを報告した。また薬物治療の効果判定にも利用できると考えている。本稿ではそれら我々のERPsの研究のまとめと生理学的な研究の代表である頭皮上脳波,および最近の近赤外線スペクトロスコピー(near―infrared spectroscopy:NIRS)の研究についても述べ,それら所見と薬物治療による所見の変化,また薬物選択の可能性について考察した。 Key words :Attention―Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD), event―related potentials (ERPs), P300, negative difference (Nd), mismatch negativity (MMN), near―infrared spectroscopy (NIRS) -
脳画像からみた注意欠如多動性障害(ADHD)の神経発達と神経発達に応じた薬物療法
15巻6号(2012);View Description Hide Description近年,注意欠如多動性障害(Attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)に焦点をあてた脳画像の知見が急速に増えている。脳画像の知見としてはADHDの構造的な知見および脳機能に関する知見の両方の報告が増えている。このことはADHDに関する脳の形態的な報告と機能的な報告が現在徐々に統合されていっていることが示されている。この論文では最近のADHDに脳画像に関する論文から健常対照群のADHDの神経発達上の違いを明らかにするとともに画像診断による薬物療法の選択や反応性に関してどの程度予見できるかについて論じる。 Key words :ADHD, Neurodevelopment, magnetic resonance image, Functional magnetic resonance image, Medication response -
薬理遺伝学からみたADHD治療の最適化
15巻6号(2012);View Description Hide Description本稿では,現在本邦で注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療薬として使用できるmethylphenidate(MPH)およびatomoxetine(ATX)に関する知見を中心に,将来的に治療の最適化に役立つ可能性のある薬理遺伝学的研究をまとめた。これまでに多くのADHDの薬理遺伝学的研究が行われ,ドパミン・トランスポーター遺伝子,ノルアドレナリン・トランスポーター遺伝子,D4,D5受容体遺伝子などがMPH治療反応性に関わっており,ATXについてはドパミン・トランスポーター遺伝子およびD4受容体遺伝子の多型が治療反応性に関与していると報告されている。MPHの代謝にはカルボキシルエステラーゼ1が関与しており,この遺伝子の変異によりMPHの代謝が阻害される可能性がある。これらの研究の結果は必ずしも一致したものではないが,ADHDの薬理遺伝学的研究による知見が積み重なることで,次代のオーダーメイド医療に資することが期待される。 Key words :Attention deficit/hyperactivity disorder, pharmacogenetics, pharmacogenomics, methylphenidate, atomoxetine
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【シリーズ】
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薬の使い方 Paliperidone徐放錠を使いこなす 第5回 他剤からpaliperidone徐放錠への切り替え方法――Paliperidone徐放錠への切り替え試験と実践に関する考察
15巻6号(2012);View Description Hide Description
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【原著論文】
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統合失調症維持期を中心とした,非鎮静系抗精神病薬aripiprazole,blonanserinの比較――薬理学的特性から使い分けを考える
15巻6号(2012);View Description Hide Description非鎮静系抗精神病薬aripiprazole(APZ)またはblonanserin(BNS)を服薬した,維持期,慢性期の難治例を含む統合失調症患者138例を対象とし,半年後の比較を行った。両群とも70%に有効,平均CGI―Sは1点低下,CGI―S:1が10%程度となり,悪化はAPZ群に多かった。APZは気分の安定,BNSは抗幻覚妄想と疎通性の改善が多かった。両群とも性機能障害など副作用の改善を認め,高プロラクチン血症は全例低下した。鎮静,アカシジアの改善はBNS群に多かった。半年後の継続率は両群60%で,社会機能を持つ患者が約60%であった。APZはアカシジアによる脱落が多かった。APZ群で単剤化が多く,気分調節薬の併用率が低かった。非定型抗精神病薬の変更理由を調査し,副作用÷効果不足の比をとると,鎮静系は大きくolanzapineが最高,非鎮静系は小さくBNSが最小となった。これらを薬理学的特性より考察した。 -
身体表現性障害に対するSSRIの有用性について(第3報)――Fluvoxamineとparoxetineの切り替え例の検討
15巻6号(2012);View Description Hide Description身体表現性障害の患者にfluvoxamine(FLV)あるいはparoxetine(PX)を投与し,効果が不十分あるいは副作用が出現した57例に対しFLVとPXの切り替えを行い,効果と副作用の変化を検討した。効果に関しては,FLVからPXへの切り替えにより高まる傾向がみられた。副作用に関しては,FLVからPXへの切り替えにより副作用は増加する傾向がみられ,増加した副作用は眠気,めまい,体重増加,ミオクローヌスであった。PXからFLVへの切り替えにより副作用は減少する傾向がみられ,減少した副作用は眠気,倦怠感,めまい,口渇,多夢,発汗などであった。食欲低下は,FLVからPX,PXからFLVへの切り替えのいずれにおいても減少した。以上から,FLVよりPXの方が効果が強い一方,副作用が多いことが示唆された。
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【私が歩んだ向精神薬開発の道——秘話でつづる向精神薬開発の歴史】
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【座談会】
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【講演紹介】
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うつ・不安障害治療フォーラム:うつ病・不安障害治療における新規抗うつ薬の位置づけ 講演1 新しい抗うつ薬と血中BDNF
15巻6号(2012);View Description Hide Description -
うつ・不安障害治療フォーラム:うつ病・不安障害治療における新規抗うつ薬の位置づけ 講演2 高齢者のうつ病に対する薬物療法――増強療法が奏効した症例呈示を中心に
15巻6号(2012);View Description Hide Description -
うつ・不安障害治療フォーラム:うつ病・不安障害治療における新規抗うつ薬の位置づけ 講演3 Mirtazapine:アドヒアランスへの道
15巻6号(2012);View Description Hide Description -
うつ・不安障害治療フォーラム:うつ病・不安障害治療における新規抗うつ薬の位置づけ 講演4 うつ病と不安障害:その臨床的重要性について
15巻6号(2012);View Description Hide Description
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