臨床精神薬理
Volume 15, Issue 12, 2012
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【展望】
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うつ病治療における非薬物療法
15巻12号(2012);View Description Hide Descriptionうつ病に対する非薬物療法に関して,精神療法的アプローチを中心に概観した。抗うつ薬の登場以降,薬物療法はうつ病治療の中心として機能してきた。現在も,新しい薬物療法の知見が積み重ねられており,その位置づけは変わらない。一方で,他の精神疾患やパーソナリティ障害が併存して薬物療法の効果が不十分な症例や,身体疾患が合併して十分な薬物療法ができない症例などが,問題になっている。近年,こうした状況に伴って,新しい非薬物療法が開発され,その治療効果に注目が集まっている。現時点では,非薬物療法単独の効果について検討されていることが多いが,今後は,薬物療法と精神療法との併用療法をはじめとする包括的なうつ病治療について,よりエビデンスレベルの高い知見を集積していくことが必要になるだろう。 Key words : non-pharmacological, depression, psychotherapy, treatment
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【特集】 うつ病に対する非薬物療法の有用性:各治療法と薬物療法の効果の比較
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うつ病に対する問題解決療法
15巻12号(2012);View Description Hide Description認知行動療法の一技法である問題解決療法(Problem Solving Therapy,以下PST)は,1980年頃から欧米を中心にうつ病の治療法としての効果が実証された後,1990年代半ば頃より我が国においてもPSTに関する著書や論文が出版,研修会やワークショップが開催される等,普及が進んでいる治療法である。うつ病と問題解決の関連が強いことから,効果的に問題解決を行うことで,うつ病が改善されると考えられている。効果的な問題解決を行うには,相互的に作用する5つのスキル(問題解決志向性,問題の明確化/目標設定,問題解決策の創出,問題解決策の選択と決定,問題解決策の実行と評価)が必要とされており,体系的に指導することが可能なプログラムの開発が進んでいる。本稿では,PSTの概念および理論と,基盤となる先行研究について論じたうえで,PSTプログラムで指導する5つのスキルの内容を紹介する。また,PSTの効果実証研究を展望しながら今後の臨床的応用の可能性について検討を加える。 Key words : problem-solving therapy, problem definition andformulation, generation of alternatives , decision making, solutionimplemental and verification -
成人うつ病治療における認知行動療法の効果――薬物療法との比較
15巻12号(2012);View Description Hide Description英国のThe National Institute for Health and Clinical Excellence(NICE)臨床ガイドライン(2009年)によれば,成人うつ病に対しての認知行動療法と薬物療法との無作為割付比較対照試験は,これまでに16 研究があり,合計の症例数は1793 例にのぼり,それらの研究の結果,両者に有意な差はなく,同等な効果を有することが証明されてきている。希望するうつ病患者に個人認知行動療法を提供するために,薬物療法と同様に,熟練した臨床家が,臨床試験で確認されている適切なプロトコールに基づいて実践できるという認知行動療法の質の担保が重要であり,認知行動療法家の人材育成システムの整備が急務になる。 Key words : psychotherapy, depression, pharmacotherapy, psychologicalintervention, cognitive behavioral therapy -
うつ病治療における対人関係療法(IPT)の有用性
15巻12号(2012);View Description Hide Description認知行動療法と並んでエビデンス・ベイストな精神療法の双璧をなす対人関係療法(IPT)は,成人うつ病外来患者を対象に開発されたが,その後,さまざまな障害(双極性障害,摂食障害,不安障害)やさまざまな対象向けに修正され効果が検証されてきた。うつ病に対しては,米国精神医学会などのガイドラインにおいて有効な治療法として位置づけられている。うつ病は何らかの対人関係的文脈において発症すること,そして,症状と社会的役割が双方向で関連するというデータに基づき,現在進行中の対人関係に焦点を当てて戦略的な治療を進める。医学モデルを採用し,患者に「病者の役割」を与えることもIPTの特徴であり,薬物療法との併用も容易である。産後うつ病の予防などの形でも応用されており,グループ療法も開発されている。我が国においてもパイロット研究で効果が検証され始めており,均霑化のための研究,治療者養成も進行中である。 Key words : interpersonal psychotherapy, depression, pharmacotherapy,communication, evidence -
うつ病治療における運動療法の位置づけ
15巻12号(2012);View Description Hide Description近年のうつ病概念の混乱や新規抗うつ薬の普及,安易な薬物療法への批判などを背景として,うつ病に対する非薬物療法の重要性が増している。糖尿病などの身体疾患の治療法でもある運動療法は,手軽に低コストで安全に行える治療法として,うつ病をはじめとした精神疾患の治療法としても注目されはじめている。一方で,有効性や適用すべき対象,具体的手法なども十分に検討されたとは言えず,現段階では薬物療法の補助的位置づけにとどまっている。日常臨床への導入が容易になるよう,さらなる研究と体制の整備が望まれる。 Key words : depression, exercise, physical activity, antidepressant,remission -
うつ病治療におけるオメガ3系脂肪酸のエビデンス
15巻12号(2012);View Description Hide Descriptionオメガ3系脂肪酸は,うつ病に対する食事療法あるいは補完代替療法に分類されるもののなかで,最もエビデンスが蓄積されてきている介入法の1つである。本稿では,オメガ3系脂肪酸とうつ病に関する疫学研究,無作為化比較試験およびそのメタ解析,さらに動物研究も含めた生物学的研究を概観し,うつ病治療におけるオメガ3系脂肪酸のエビデンスをまとめた。さらに筆者らが行ったオメガ3系脂肪酸による介入研究も紹介し,PTSD予防にもオメガ3系脂肪酸が寄与する可能性について述べた。オメガ3系脂肪酸はメカニズムなどまだ明らかになっていない点も多く今後さらなる研究が必要だが,そういった限界があることも含めて,現時点までのエビデンスを把握しておくことは臨床上も有用と考えられる。 Key words : omega-3 fatty acids, eicosapentaenoic acid (EPA),depression, posttraumatic stress disorder (PTSD) -
臨床場面でプラセボ効果をいかに生かすか
15巻12号(2012);View Description Hide Description疼痛,うつ病,パーキンソン病の3疾患では,数多くのRCTにおいて顕著なプラセボ効果が繰り返し報告されている。近年,プラセボ効果の機序について急速に研究が進んできており,プラセボ反応の心理学的機序として,患者だけではなく医者や周りの人たちの治療薬に対する期待,条件付け,記憶学習,動機,報酬,不安軽減など,多くの作用が明らかになっている。また神経薬理学的アプローチやneuroimagingの方法を用いて,疾患領域により程度に差はあるものの,心理学的機序の基盤になる脳内機構として,内因性オピオイド,神経ペプチド,ドパミン作動性報酬機構の役割が注目されている。そしてこのプラセボ効果という回復促進的に働きうる効果に対して,臨床場面においてどのように生かしていくべきかについて検討した。 Key words : placebo, placebo effect, expectations, resilience,physician-patient relations
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【シリーズ】
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【原著論文】
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当院の心理教育プログラムとrisperidone持効性注射剤を組み合わせた治療を継続している統合失調症患者における患者満足度調査
15巻12号(2012);View Description Hide Description当院ではrisperidone持効性注射剤(RLAI)の高い治療継続率および再発予防効果を期待して,統合失調症の発症早期よりRLAIによる薬物治療と,ピアの力を最大限に活用した心理教育プログラムを組み合わせた継続治療を積極的に行っており,この治療を行うことで高い治療継続率と低い再発率が実現されたことを前回報告した。今回筆者らは,当院にてこのRLAIと心理教育とを組み合わせた治療を継続している統合失調症患者61名に対し,RLAI治療に対する患者満足度と治療継続希望度に関するアンケート調査を実施した。その結果,RLAI治療に対する満足度や継続希望度は高いことが確認された。また,RLAI治療に対する満足度や継続希望度は,RLAI治療開始からの総投与回数が多い患者(RLAI治療期間が長い患者)ほど高いことが明らかとなった。今回の調査結果から,RLAI治療と組み合わせて行う心理教育プログラムは,患者満足度がまだ十分に得られていないRLAI導入時から,患者が治療の必要性や重要性を理解して治療満足度が得られるまでの一定期間において特に重要性が高く,その後はRLAIによる薬物療法が治療の主役になり,患者のRLAI治療に対する満足度が経時的に高まっていくことが示唆された。 Key words : risperidone long-acting injection, psychoeducation,patients’ satisfaction
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【総説】
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4種20カテゴリーからなる抗精神病薬切り替えの新しい分類
15巻12号(2012);View Description Hide Description抗精神病薬の切り替えについて4種20カテゴリーからなる分類を作成した。本稿ではまず抗精神病薬の切り替えに参照されることの多いWeidenらの切り替え方法,Lambertの切り替え方法,そして,本分類作成の土台としたCorrellの切り替え分類について概括した。その上で本分類の作成経緯や内容について紹介した。従来の方法論と本切り替え分類を比較したところ,応用範囲が広いとされるWeidenらの切り替え方法でも本分類の8通りの方法しかカバーしておらず,Correllの切り替え方法では臨床上区別されるべき2つの重要な切り替え法,つまり漸減漸増法と上乗せ漸減法がいずれも同一カテゴリーに区分されてしまう等の問題点が明らかとなった。本稿では本切り替え分類の臨床的特徴,活用上の注意点についても解説し,本分類が抗精神病薬の切り替え方法に言及する際の標準的ツールとなりうるものであることを指摘した。 Key words : switching antipsychotics, overlap scale of theantipsychotic drugs
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【資料】
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統合失調症薬物治療におけるblonanserinの臨床的位置付け――千葉県下でのアンケート結果より
15巻12号(2012);View Description Hide Description従来のドパミンセロトニン拮抗薬がドパミンD2受容体よりも5-HT2A受容体に対して高い親和性を示すのに対して,2008年4月に上市されたblonanserinはドパミンD2受容体の親和性が5-HT2A受容体より高く,ドパミンセロトニン拮抗薬と呼ぶべき特徴を持っている薬剤である。しかしblonanserinのエビデンスは他の第2世代抗精神病薬と比較して限定されていることから,blonanserinの位置付けを明らかにする目的で,千葉県下の精神科医師を対象としてblonanserinの処方実態についてアンケート調査を実施した。その結果,本調査における臨床有効用量は全体13.6±7.3mg/日,急性期群(急性期+慢性期増悪例)14.5±7.5mg/日,慢性期群(寛解期+慢性期安定例)12.6±6.9mg/日であった。 Key words : blonanserin, therapeutic window, schizophrenia,dopamine-serot
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【私が歩んだ向精神薬開発の道——秘話でつづる向精神薬開発の歴史】
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第17回 非benzodiazepine系睡眠薬の開発物語――その3 わが国への導入が叶わなかったzaleplonとわが国で誕生したものの治験まで至らなかったSX-3228
15巻12号(2012);View Description Hide Description
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【講演紹介】
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Aripiprazole双極性障害躁症状適応追加記念学術講演会 講演1 AMAZE Study;Aripiprazole双極性障害の躁状態に対する臨床試験
15巻12号(2012);View Description Hide Description -
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Aripiprazole双極性障害躁症状適応追加記念学術講演会 講演3 双極性障害の治療における最近の進歩
15巻12号(2012);View Description Hide Description
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