眼科ケア

　角膜移植患者の会は1997 年に発足しました。1995 年に東京歯科大学市川総合病院に角膜センター・アイバンクが設立され、角膜移植術後の患者さんが増加してきたのを一つの契機に、「患者同士のコミュニケーションや情報収集の場となること」を目的に作られた会です。十年ほど前は、患者さんが疾患や治療法、病院の情報を今のように簡単に調べることはなかなかできませんでした。インターネット環境も充実しておらず、情報を得る手段が明らかに少なかったと思います。　移植後の管理や生活については、医師やアイバンクコーディネーターから退院前に説明を受けているものの、それらに対する不安や質問などが多くありました。そのため、患者さん自身が病気に対して理解をより深められるよう、また、医師の提示に対して自らも治療法が選択できるくらいの知識が得られるような会を目指しました。立ち上げに際して暫定的な会長が必要となり、学生時代に角膜移植を受けた筆者に声が掛かり、発足後5 〜 6 年ほど会長を務めました。　何らかの疾患に対する患者の会はすでにたくさんありましたが、角膜移植後の患者の会は当時、わが国においてはほとんどない状況でした。年間の移植件数は、ほかの臓器移植などと比較すれば総数が多いものの、全国で2,000 件に満たず、一施設での患者数が限られることなどがその理由の一つと思われました。

　1997 年4 月、当院において角膜移植術を受けられた患者さんを対象とし、「角膜移植患者の会」が発足しました。その後、会員資格が適宜見直され、現在では移植患者さんのご家族、他院で移植を受けられたかたも入会されており、総数は400 名を超えるまでになりました。　発足から11 年以上が経過しましたが、現在の活動は ㈰総会開催、㈪会報「ひとみ通信」の発行、㈫年2 回のイベント開催を定期的に実施しています。また、代表者の会と称した幹部会が月に1 回開催され、企画・運営されています。　会の設立目的は、同じ角膜移植という治療を受けた患者さんがたに情報交換の場を提供する、また医療サイドからの情報を会員に伝達し、移植後の生活に役立てていただく、という二つであったと聞いています。しかし現在では、現会員の皆さまが移植を受けようかどうしようか検討されているころ、移植手術や術後の生活についてなどの情報が極端に不足していたという経験から、これから手術に臨まれる患者さんに何か貢献できないかということも模索しています。その一つとして、幹部会への一般参加呼びかけやホームページ開設による情報発信を行っています。　この会は、移植患者さんから自発的に発足された会ですので、当院眼科スタッフ、われわれ角膜センター職員は、顧問もしくはオブザーバーという立場でかかわらせていただいています。現在の会長さんをはじめとする幹部会の役員全員が、会員のなかから選ばれています。

　スチーブンス・ジョンソン症候群（以下SJSと略す）の多くは、薬の副作用として発症します。ほかの原因としては細菌やウイルス感染などがありますが、発症のメカニズムが解明されていないため、あらかじめ発症を予知することができず、予防することもできません。最近、日本皮膚科学会において、原因不明とされた症例も報告されています。　　SJS は高熱とともに口唇、口腔、眼球結膜、外陰部に高度の発赤、びらん、出血などの粘膜病変が、さらに全身の皮膚に紅斑、水疱、びらんが出現する重篤な全身性疾患です。早期に診断し治療することが、後遺症の有無や度合いに関係してきます。　ほとんどの患者にドライアイや逆さ睫毛などの後遺症が出現しますので、一生眼科にお世話になることになります。また、本来治療のために服用した薬が原因で発症し、かつ症状は良くなるどころ悪化するため、本人も家族もたいへん戸惑います。後に、PTSD（外傷後ストレス障害）やパニック障害など、精神的にも大きなダメージを受けて、精神科や心療内科に通う必要が生じることもあります。後遺症の視力障害もいろいろな理由により、なかなか回復は難しく、患者はつらい闘病生活を強いられています。　SJS は日本では1963 年に初めて症例報告がされましたが、患者会の会員のなかにはそれ以前に発症したかたもいます。発症例は必ずしも多くはないことと、医療現場で使用される薬の副作用ということもあって、処方した当事者である医療従事者も原因究明に積極的ではなく、研究の難しさもあり十分な周知がなされていない状況がありました。医療従事者にも周知されていないくらいですから、患者はさらに情報を得るチャンスがなく、孤独でした。

　先月、「アンチエイジングアプローチをしていたら、腰痛がなくなって快適な人生になった」という話をした。今日はさらに続きの報告をしたい。もともと僕がドライアイを専門に臨床と研究を始めたのは、自分がドライアイだとわかったからだ。ハーバード大学へ留学中、初めて体験したシルマーテストの値が、両眼とも0mm。何かの間違いだと思って翌日に再検査してみたら、また両眼とも0mm。シルマー試験紙が結膜にへばりついてなかなか取れず、とっても痛かったのを今でもよく覚えている。以来、20 年以上にわたって僕のシルマーテストは0mm。正真正銘の涙液分泌低下タイプのドライアイである。

　二重焦点レンズの処方目的は遠方視力と近方視力の補正ですが、累進屈折力レンズの処方目的には遠方から近方までの視力補正に加えて、調節力の補助が加わります。適切に処方された累進屈折力レンズは、眼精疲労の予防効果にも優れた威力を発揮します。最適な累進屈折力レンズを処方できる技術は、現代社会を快適に生き抜こうとする患者さんの信頼と安心のために欠かせません。

　9 巻12 号で、片眼のアイポイントと光学中心が上下に10mm もずれていて、そのため左右でバラバラに見えて眼鏡が装用できないという事例を報告しましたが、その原因はレンズのプリズム作用によるものでした。これは眼鏡店が正しく枠入れしなかったためにプリズムが入ってしまったものですが、なかには斜視を矯正するため、プリズム作用をねらって、はじめから光学中心とアイポイントをずらして（偏心）、レンズを枠入れすることもあるので、それとの違いを把握する必要があります。　レンズメーターで眼鏡レンズの光学中心を印点したとき、光学中心間距離がその患者さんの瞳孔間距離より長い、あるいは短い場合はプリズム作用が生じています。　まず、どの程度のプリズム作用が生じているのかを計算するために、プレンティスの公式を使います。この公式を元にレンズのプリズム作用を計算してみましょう（図1）。　眼鏡を装用すると疲れる場合、瞳孔中心間距離と光学中心間距離をチェックし、そこで差があれば、プリズム作用による違和感かもしれません。あるいは斜視の矯正で光学中心が偏心されたものであるかもしれません。　このようなとき私は、日常の外来で次のような方法で検査しています。