ゲノム医学
Volume 8, Issue 1, 2008
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特集【核内受容体と疾患】
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5. Peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)δ活性化によるメタボリックシンドローム改善作用
8巻1号(2008);View Description Hide Description骨格筋細胞における核内受容体PPARδの活性化は脂肪酸β酸化,脂肪酸活性化,脂肪酸トランスポートなど,脂肪酸β酸化系の遺伝子の発現を包括的に誘導する.個体レベルでは,合成リガンドによるPPARδの活性化は,高脂肪食による肥満を抑制し,メタボリックシンドロームにかかわるほとんどの症状を改善することをわれわれは明らかにした.PPARδは骨格筋細胞のほか,種々の細胞に発現しているが,膵ラ氏島保護作用,インスリン分泌作用,心筋保護作用など,各種細胞における機能が次第に明らかにされてきており,メタボリックシンドロームの創薬の標的分子として明らかにされつつある. -
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単一遺伝子病とゲノム〜テーマ5.循環器疾患〜
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先天性心疾患
8巻1号(2008);View Description Hide Description中等度〜重度の先天性心疾患は1000人中3〜6人に認められ,新生児死亡のうち非感染性であるものの死因の大部分を占めるため,それらの原因を解明していくことは重要である.先天性心疾患の原因として,遺伝的要因によるものは約13%と考えられている.先天性心疾患の原因を考えるうえで心臓循環器系の正常な発生と,関連する遺伝子について知ることは大変重要である.最近,心臓の発生に関与する遺伝子が動物実験によって次々と明らかになりつつあり,NKX2.5やGATA4といった多くの転写因子の遺伝子変異が先天性心疾患患者で認められ,ヒトにおける原因遺伝子として特定されつつある. -
大動脈疾患:マルファン症候群ほか
8巻1号(2008);View Description Hide Description全身の結合織の異常にともない高率に大動脈病変を合併する遺伝性疾患はいくつか知られている.たとえば,フィブリリン遺伝子(FBN1)異常によるマルファン症候群,3型コラーゲン遺伝子(COL3A1)異常による血管型Ehlers-Danlos 症候群などが有名だが,そのほか,TGF-β受容体遺伝子群の異常によるLoeys-Dietz 症候群,平滑筋型ミオシン重鎖遺伝子(MYH11)異常による家族性胸部大動脈瘤,グルコーストランスポーター10遺伝子(SLC2A10)の異常による遺伝性動脈蛇行症候群なども,最近の分子生物学的研究により原因遺伝子が明らかにされ,患者における遺伝学的診断も可能となっている.これらは,いずれも血管結合織や血管平滑筋組織の合成や維持にかかわる遺伝子の機能異常により発症しており,発症のメカニズムなども解明されつつある.特に,マルファン症候群,Loeys-Dietz 症候群,遺伝性動脈蛇行症候群では,いずれも血管病変部位においてTGF-βシグナルの増強が認められ,またマウスモデルでも,TGF-βシグナルを抑制する薬により血管病変が改善することも示され,新たな治療法として期待されている.
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