糖尿病ケア

Volume 6, Issue 4, 2009
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特集
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- ポイントで学ぶ&テストで確認!糖尿病の病態知識
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1.糖尿病の病態
6巻4号(2009);View Description
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「糖尿病」という病名から「尿に糖が出る病気」というイメージがあるかもしれませんが、問題なのは血液中のブドウ糖の濃度、すなわち血糖値です。糖尿病は「インスリン作用の不足による慢性的な高血糖を主徴とする代謝疾患群」と定義されています1)。インスリンは膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞で生成・分泌されるホルモンで、門脈を通って肝臓に達し、肝静脈を経て全身の組織に送られます。インスリンは肝臓や筋肉、脂肪組織などの細胞表面にあるインスリン受容体と結合し、ブドウ糖の細胞内への取り込みを促進します。インスリンで血糖値が下がるのは、インスリンの働きによって血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれるからです。また、インスリンにはエネルギー利用や貯蔵、蛋白質合成、細胞増殖などを促進する作用もあります。 -
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4.糖尿病腎症
6巻4号(2009);View Description
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糖尿病との診断がなされてから約5 年以上を経過して発症する腎臓病を「糖尿病腎症」といいます。その発症早期では、尿中アルブミン排泄の増加を特徴として診断がなされ、適切な生活管理および治療が必要となります。もし対応が適切でない場合には、ネフローゼ症候群にまで至るような尿蛋白量の増加、血圧の上昇とともに腎機能低下を認め、最終的には慢性腎不全となりうる病態です。 日本透析医学会の2007 年末の慢性透析患者さんに関する基礎集計では、糖尿病腎症からの透析導入症例は15,750 人で新規透析導入数の43.4%を占めるに至っており、糖尿病腎症の予防とともに慢性腎不全に至らないようにする対策が急務であることが理解されるものと思います。 -
5.糖尿病神経障害
6巻4号(2009);View Description
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糖尿病神経障害の成因として、高血糖が問題となって神経組織を障害する機序として、従来からポリオール代謝経路の亢進、細小血管障害、神経組織構成蛋白の糖化があげられています。ポリオール代謝は解糖系の側鎖路であり、高血糖になると過剰な糖分がアルドース還元酵素を介してソルビトール、ソルビトール脱水素酵素を介してフルクトースへと代謝されます。以前はソルビトールやフルクトースの蓄積が問題とされましたが、今はポリオール代謝経路の補酵素であるNADPH が大量に消費されることによる還元グルタチオン産生不足やフリーラジカルの生成などがむしろ問題とされています1-3)(図1)。 -
6.糖尿病と大血管障害
6巻4号(2009);View Description
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大血管障害(動脈硬化)は、糖尿病合併症のうち4 番目の合併症といわれています(ちなみに1 番目は神経障害、2 番目は網膜症、3 番目は腎症、5 番目が壊疽、6 番目が歯周病)。大血管障害には虚血性心疾患、脳血管障害、下肢閉塞性動脈硬化症があります。このうち脳血管障害では、脳出血より脳梗塞の頻度が多く、中・小の梗塞、多発性梗塞が多いことが特徴です。糖尿病患者さんの死因を調べてみると、虚血性心疾患が12.6%、脳血管障害が14.5%で、これら2 つの動脈硬化性疾患を合わせると糖尿病患者さんの死因の第1 位を占めています1)。これは一般人口と比較して、虚血性心疾患では3.33倍、脳血管障害は1.54 倍と死亡するリスクが有意に高く、糖尿病患者さんの治療上重要な合併症です(表1)。 -
7.糖尿病と肥満・脂質異常症・高血圧
6巻4号(2009);View Description
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糖尿病の細小血管合併症の発症や進展を予防するために血糖コントロールが重要なことは、多くの研究で明らかにされています。では、大血管障害(動脈硬化性疾患)はどうでしょうか。動脈硬化性疾患に関しても血糖コントロールはもちろん重要ですが、これだけでは十分に発症・進展を抑制できません。動脈硬化の抑制には血清脂質の改善、血圧のコントロール、肥満の改善など、血糖値以外の要素も大きな役割を果たしており、血糖と同時にこれらも改善しなくては予防できないのです。 -
8.小児・思春期糖尿病
6巻4号(2009);View Description
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小児・思春期の糖尿病も成人と同様に、主として1 型糖尿病と2 型糖尿病に分類されます。以前は小児・思春期の糖尿病はその大半が1 型糖尿病であると考えられていましたが、小児肥満の増加とともに、近年全世界的に2 型糖尿病が増加しています1、2)。本稿では小児・思春期の糖尿病を1 型糖尿病と2 型糖尿病に分けて、おのおのの特徴について述べたいと思います。 -
9.妊娠糖尿病
6巻4号(2009);View Description
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一般的に、妊娠が進むにつれて胎盤から分泌されるインスリン拮抗ホルモンやインスリンを分解する蛋白分解酵素の分泌が亢進し、インスリンの抵抗性が増大します。正常妊婦では、膵臓からのインスリン分泌を増加させることにより血糖値を正常に保ちます。しかし、インスリン分泌が不十分で増大するインスリン抵抗性に対応できない場合、妊娠糖尿病を発症します。妊娠糖尿病の危険因子(表1)をもつような妊婦では特に注意が必要です。 -
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連載
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- 巻頭言
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- その案いただき! 糖尿病患者さん指導用アイデアグッズ
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- 1型糖尿病患者日記 糖尿病と向き合う瞬間
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- 2型糖尿病患者日記 糖尿病と向き合う瞬間
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新連載
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- これからの食事療法がかわる! カーボカウント・マスターガイド
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カーボカウントの概念と背景
6巻4号(2009);View Description
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約7 年前に私がカーボカウントを1 型糖尿病のインスリン量の決定に用い始めた当時、本邦ではカーボカウントに関する学会報告や論文はまったく見受けられず、海外の論文や書物しか参考にできるものはありませんでした。キャンプでカーボカウントを用いたデータを学会で発表しても、質問もまったくないような状況だったのです。その後、少しずつ認知されるようになってからは、「カーボカウントは日本食には合わない」「カーボカウントは、肥満を増長する」といった批判をもらえるようになり、さらに最近ではカーボカウントの有用性を認める意見や発表が増えてきました。 そして、今号よりカーボカウントに関しての連載を始めることになりました。カーボカウントを用いている施設や専門医も徐々に増えていますが、まだその運用方法は多種多様です。この連載では混乱を避けるために、われわれの施設で行っているカーボカウントを中心に紹介させていただくことにしました。 ぜひ、この連載内容への批判や意見をお寄せいただき、今後のわが国でのカーボカウントの運用方法や指導方法について、議論が深まることを期待しています。 - 糖尿病のくすりのはなし
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連載
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- 知っておきたい! 深めたい! 糖尿病の用語解説
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- デンナースのヒュゲリな生活
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- おさえておきたい 糖尿病の海外文献
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- あなたの町の糖尿病看護認定看護師
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- Dr.サトーがアドバイス! 療養指導おなやみ解決塾
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- CDEJ資格更新のコツ
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- 糖尿病の検査と病態 正しく学ぶ!A to Z
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