糖尿病ケア

Volume 7, Issue 2, 2010
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特集
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- 糖尿病足病変 早わかりカード
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1.糖尿病と足病変
7巻2号(2010);View Description
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現在わが国には、予備軍も含めると2,200 万人もの糖尿病患者さんがいるといわれています(平成19 年、厚生労働省国民健康栄養調査)。ある資料によると、そのなかで実際に下肢切断に至る人は10 万人当たり5.8 人、すなわち予備軍も含めると日本では年間およそ1,200 本の足が切断されていることになります。この数値は、正確には「足趾」「足部」「下腿」「大腿」と分類して統計をとった際の大切断といわれる「下腿」および「大腿」に限局された部位でのデータですから、足趾レベルまで合わせるともっと多くの切断が行われていることになります。 では、なぜ糖尿病で足がなくなるのでしょう? たかだか食べすぎて、運動しないだけで、どうして最後には足を切断するはめになるのでしょう? その理由は、結構、複雑で難しいのです。実際のところ、糖尿病はその性質からして下肢切断に至る素因は実に多く、これらが重なり合って病気が重篤化していきます。今回の特集では、みなさんができるだけわかりやすく理解できるように、疾患の成り立ちを解説していきます。 糖尿病の三大合併症は、腎症、網膜症、神経障害であるというのはよく知られています。では、下肢切断に至る三大要因はなんでしょうか? これが言えたら、もう半分以上、この章をマスターしたことになります。この答えは、神経障害、血行障害、そして易感染性ですね。 -
- 3.病態別にみる糖尿病足病変
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(2)神経障害で起こる病態
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糖尿病は高血糖状態が長く続くために、網膜症、腎症と並ぶ三大合併症の一つである糖尿病神経障害が発症します。糖尿病神経障害は、びまん性左右対称性に起こる障害(狭義の糖尿病神経障害)と、単一神経に起こる障害(神経を栄養する血管の閉塞が原因)の2 つに大別されます。前者の成因としては、高血糖に伴う代謝障害と、それにより生じる血管障害の関与が考えられています。すなわち高血糖に伴い解糖系が飽和状態になると、ポリオール代謝経路が亢進し、細胞内にソルビトールが蓄積します。また、蛋白に糖が非酵素的に結合する糖化反応(グリケーション)も進行します。さらに、細胞内のプロテインキナーゼC 活性の亢進や、ミトコンドリアからの活性酸素による酸化ストレスの増加なども加わり、神経細胞の機能異常が高まります。 まず代謝異常期(高血糖に伴う急激な代謝異常による細い神経線維の障害、四肢の異常感覚や自律神経障害など)に始まり、機能異常期(代謝異常の持続による太い神経線維の障害、知覚低下や他覚的検査異常の出現)を経て、軸索変性や脱随などの器質的異常を伴う不可逆領域に陥ります。 -
(3)骨組みの障害
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糖尿病患者さんでは0.1 〜 0.5%に骨関節病変を伴うといわれており、その大半が足部に発生しています1)。糖尿病の患者さんには糖代謝の異常だけでなく、末梢血管障害や自律神経障害、末梢神経障害が起こることがあります2)。自律神経が障害されると、骨吸収が促進されて関節破壊を引き起こし、進行性になるとシャルコー関節となります。一方、末梢神経が障害されると知覚障害や運動神経障害を起こし、足部の内在筋の筋力低下により、ハンマートゥやクロウトゥ変形を来します。また、知覚障害のために気づかないうちに微小外傷を繰り返して足部に潰瘍や変形が生じることや、アキレス腱の拘縮により尖足や凹足(甲高足)を引き起こすことがあります3)。糖尿病患者さんではこのような変形や潰瘍が進行し、壊死や感染を合併した場合は下肢切断を余儀なくされることがあります。しかし、適切なケアを行うことで発症を抑え、症状を改善させることができます。この項では糖尿病患者さんにおける足部の骨組みの障害について解説し、予防とケアについて説明します。 -
(4)皮膚の障害(1)
7巻2号(2010);View Description
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糖尿病患者さんにみられる足の代表的な病変として、糖尿病性壊疽があげられます。壊疽を来す背景因子には、①末梢動脈性疾患(PAD)、②神経障害、③細菌感染の3 つがあります。この3 つはお互いにオーバーラップして生じることがあり、しばしば治療に難渋し、結局は切断に至ることもあります。しかし、3 つの因子が直接的に壊疽につながるわけではありません。3 つの因子がもととなってさまざまな病変が足に生じ、それが壊疽に至る要因となります。足の皮膚病変は靴擦れなどの外傷のほか、爪の疾患、足白癬、趾間部びらん、かかとの亀裂など、糖尿病以外の患者さんにも多くみられる症状です。そのため軽視され、見逃されてしまいがちですが、先にあげた3 因子が加わると、壊疽に至ってしまうことがしばしばあります(図1)。ですから、足に起こる皮膚病変についての知識を持ち、治療することは壊疽を起こさないためにも大変重要です。 -
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(5)細菌に感染して起こる病態
7巻2号(2010);View Description
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糖尿病患者さんに感染が起こりやすい要因には、「全身の要因」と「局所の要因」があります。ここでは「足」という局所の要因について述べます。 一般に、創感染のサインは創部周辺の腫脹や発赤、疼痛、圧痛、熱感、そして浸出液の増加と悪臭です。このサインが感染成立前の段階(創の炎症の段階)で発見されれば、局所の処置と全身の抗生物質の投与で保存的に治癒に至ります。しかし、傷が同じ露出部でも、顔面や上肢に起こるのと、下肢、とくに足に起こるのではその発見の時期と重症度に違いが生じます。顔や上肢は、目に留まりやすい場所ですので傷を早く見つけやすいのですが、足は靴などの履物でおおわれているので、注意しないと傷が目に留まりにくいのです。ましてや足底部は意識しないと見ないため、より発見が遅れる傾向があります。 また、傷の疼痛の有無も創の感染が早く治療されるか否かにおいて重要な要素となります。前述した創感染のサインのなかで、疼痛や圧痛は非常に大切です。足の知覚が低下していれば疼痛も低下するので、神経障害をもった足は痛みを感じにくく、感染において非常に危険です。 易感染性で創傷治癒が遷延する傾向があり、足部に神経障害を伴いやすい糖尿病において、足の創感染は起こりやすいと考えられます。 -
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連載
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- 巻頭言
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- その案いただき! 糖尿病患者さん指導用アイデアグッズ
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- 1型糖尿病患者日記 糖尿病と向き合う瞬間
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- 2型糖尿病患者日記 糖尿病と向き合う瞬間
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- Dr.サトーがアドバイス! 療養指導おなやみ解決塾
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- LOOK! LOOK! CDEJ活動状況報告書
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- 知っておきたい! 深めたい! 糖尿病の用語解説
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- デンナースのヒュゲリな生活
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- おさえておきたい 糖尿病の海外文献
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カーボカウント
7巻2号(2010);View Description
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2 型糖尿病患者さんでもカーボカウントが役に立つ可能性を示す論文です。カーボカウント群では途中の脱落が多かったようですが、その点は深くは論じられていません。 - あなたの町の糖尿病看護認定看護師
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- これからの食事療法がかわる! カーボカウント・マスターガイド
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2 型糖尿病と基礎カーボカウント
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食事療法は、2 型糖尿病におけるもっとも基本的で重要な治療法です。戦後から近年までの日本では、食品交換表を用いて指導されるバランス・カロリー制限食が唯一の食事療法(栄養指導)でした。この食事療法は、実践すれば十分な代謝改善効果と血糖安定化効果を発揮しますが、習得と実践には多少の努力を要し、継続できない人が多いことが大きな欠点です。今回は、2 型糖尿病における新たな食事療法として期待される基礎カーボカウントについて、その可能性を説明します。