バスキュラー・ラボ
Volume 3, Issue 4, 2006
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特集
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- 深部静脈血栓症診断と治療の現況
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- Basic
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1.静脈血栓症と凝固系の関連
3巻4号(2006);View Description Hide Description動脈・静脈血栓症は多因子疾患であり,血栓症発症の危険因子が増えることによって,その発症数が増加する.近年,肥満や長距離旅行者の増加,天災による避難生活時のストレスなどにより静脈血栓症を発症しやすい環境が多い.静脈血栓症の発症予防には,各個人において何がその発症要因となるかを認識し,それらの要因を取り除くように努めるとともに,行政ならびに医療従事者が適切な予防処置および検査を実施することが重要である.本稿では静脈血栓症の発症と血小板および凝固線溶系との関連について概説する. -
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3.治療に必要な静脈の解剖
3巻4号(2006);View Description Hide Description静脈の解剖については,多くの教科書で「同名の動脈に伴走する」という程度の記載にとどまるものが多い.しかし,心臓から全身に勢いよく駆出される動脈の流れと異なり,時には重力に逆らいながら全身からゆったり還流する静脈では,血管の性状も生じやすい病態も大きく異なる.本稿では,とくに深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)との関係で重要な下肢深部静脈の解剖学的特徴を中心に概説する. - Illness
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1.浮腫の鑑別
3巻4号(2006);View Description Hide Description深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)の発症急性期は,患肢の急激な腫脹・疼痛・皮膚色の変化といった特徴的な所見を呈する.しかし慢性期になると症状は単純な浮腫だけという症例もあり,ほかの浮腫をきたす疾患と鑑別することが必要となる.とくに下肢の片側に発症しやすいリンパ浮腫は,最も鑑別が必要な疾患である.以下ではDVT の,とくに慢性期のものと鑑別が必要な疾患についてまとめた. -
2.血管エコー検査時の注意点 結果を主治医にいつ知らせるか
3巻4号(2006);View Description Hide Descriptionさまざまな診療科において院内発症することのある肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)の原因疾患として,深部静脈血栓症(deepvein thrombosis : DVT)は主要な疾患である.DVT が疑われる症例においてその有無の評価をすることは,治療方針決定において重要である.なかでも下鞁のヒラメ静脈内血栓は,下肢腫張を伴わずに急性PTE を発症するためにとくに注意が必要である.このDVT 診断において超音波検査は,画像診断の第1 ステップとして重要な検査である.本稿では,DVT の好発部位である下肢病変についてエコー検査時の注意点と結果報告について述べる. -
3.周術期における静脈エコーのポイント
3巻4号(2006);View Description Hide Description急性肺塞栓症の発症は周術期に多く,とくに術後に最も多いことが知られている1).近年エコノミークラス症候群が社会問題となり,肺血栓塞栓症が広く認知されるようになってきた.そのような背景のもと,わが国でも肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン2)が公表され,周術期の1次予防への取り組みが一段と高まってきている.肺血栓塞栓症は深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)に併発し,欧米では静脈血栓塞栓症と呼称されている2).今回,周術期における静脈血栓塞栓症の特徴と,静脈血栓塞栓症リスク管理のための下肢静脈超音波検査(下肢静脈エコー)のポイントについて解説する. -
4.肺血栓塞栓症の塞栓源としてのDVT
3巻4号(2006);View Description Hide Description深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)が急性肺血栓塞栓症の塞栓源として重要であることは言うまでもなく,急性肺血栓塞栓症の実に90 %以上が下肢あるいは骨盤内静脈に形成された血栓が原因であることが知られている(図1,2).肺血栓塞栓症発症後にもDVT が残存している症例では再発の危険性があり,肺血栓塞栓症を疑って診断する際には同時に下肢静脈の検索を行わなければならない(図3).最近では,両疾患の深い関係よりDVT と肺血栓塞栓症を総称して静脈血栓塞栓症と呼ぶことが多い.本稿ではDVT と急性肺血栓塞栓症の関係について解説する. -
5.周産期における特殊性
3巻4号(2006);View Description Hide Description周産期とは広義には妊娠,分娩,産褥期ならびに胎児,新生児期を示す.周産期における深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT),肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)の診断治療の特殊性は,㈰妊娠自体が後天性血栓傾向を生理的に示す時期であり,㈪母体の治療が第2 の患者である胎児の存在下で行われる点にある.こうした点から,DVT ・PTE 発症時に男性もしくは非妊娠時の女性を対象とした対応とは異なる点がいくつか存在する.以下では,㈰凝固学的(検査上)な特殊性,㈪診断治療といった臨床医学的な特殊性,㈫母体と家族といった社会的な特殊性について触れる. - Diagnosis
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2.視診・触診などの臨床所見をどう読む
3巻4号(2006);View Description Hide Description血管疾患の多くは,身体所見から病態を疑うことができる.それは,外観からの場合もあるし,四肢を触れることにより把握できる所見の場合もある.もちろん,問診から得られる情報が重要であることは言うまでもない.診察時には,これら臨床所見を収集・解析することにより疑われる疾患群を絞り込むところから始まる.検査依頼医師が疑った疾患群に対して,請け負った検査者はこれらの情報を自身でも再確認するべきである.したがって,臨床所見の読み方は血管疾患診療にかかわる者すべてが知っておくべき事項である.ここでは,視診,触診などの身体所見を中心に概説することとする. -
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3.血管エコー実施時の注意点 検査手順とピットフォール
3巻4号(2006);View Description Hide Description血管超音波検査法は非侵襲的に血管の形態や内部性状,および血流の情報を評価できる画像診断法である.その応用範囲は広く,現在では深部静脈血栓症に必須の検査法になった.しかし本検査法では簡便に行える反面,その診断精度は検者の熟練度に大きく依存する.本稿では,基本となる手技と検査手順およびピットフォールについて解説する.理 -
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5.経過観察の方法と検査の間隔に関するプログラム
3巻4号(2006);View Description Hide Description深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)の診断・治療は大きく急性期と慢性期に分類される.急性期においては,肺塞栓症を含めた血栓の早期発見および治療が重要であるが,慢性期はDVT の再発や下鞁の腫脹や色素沈着,あるいは静脈性潰瘍等の深部静脈血栓後遺症( postthromboticsyndrome : P TS)の予防が重要となってくる.DVT の再発は経時的に増加し,またPTS の発症には血栓の残存と静脈弁不全が大きく関与すると言われ,DVT 発症後2 年以内にその症状が発現すると言われている1 ).そのためDVT の発症後,エコーにより静脈の閉塞および逆流を観察していくことが肝要である.本稿では,静脈エコーを用いたDVT 発症後の静脈閉塞および逆流の評価指針について述べたい. - Treatment
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2.外科的治療を適応する状況とは
3巻4号(2006);View Description Hide Description深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)に対しては,一般に薬物療法や下肢の挙上,弾性包帯による圧迫療法といった保存的療法が多く行われている.しかしながら,これらの治療法で急性期の症状および所見は比較的すみやかに改善する例が多いものの,慢性期に静脈血栓後遺症を訴える患者も少なくない.DVT に対する血栓摘除術は1938 年に初めてLawen が報告したが,1950 年ごろからその有効性が認められるようになり,Fogarty のカテーテルの開発に伴って血栓摘除術が普及するようになった.近年では経カテーテル的血栓溶解療法や経皮経管的血管形成術・ステント留置などの方法も応用されている.静脈血栓後遺症を訴える患者の多くは腸骨大鞁静脈が広範に閉塞しており,静脈内血栓溶解または摘除を行いえた症例では明らかに下肢の状態が良好である.このため,整形外科手術や長期臥床,妊娠,出産,悪性腫瘍に関連してDVT が発生することも多いため患者の状況を十分考慮する必要があるものの,当科ではDVT 急性期に対する血栓溶解・摘除の適応を拡大してきている.本稿では,深部静脈血栓症に対する外科的治療法とその適応を症例呈示とともに解説する. -
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4.ワルファリンはいつまで続けるか
3巻4号(2006);View Description Hide Description深部静脈血栓症に対する薬物治療では,ヘパリンとワルファリンによる抗凝固療法が中心的役割を担っている.発症急性期には即効性があり用量の調節がしやすいヘパリンの静脈内投与が,慢性期にはワルファリンの経口投与が推奨される. -
5.治療に難渋した深部静脈血栓症
3巻4号(2006);View Description Hide Description多くの深部静脈血栓症は,早期の適切な抗凝固療法開始と抗凝固療法,圧迫療法の継続を行えば比較的良好に経過する1).しかし,血管奇形や静脈性血管瘤など他病変に伴う深部静脈血栓症は治療に難渋する.当院での症例を提示する.
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連載
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- 決め手の一枚
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- 施設紹介と将来展望
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- 微小栓子シグナルの臨床応用
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- 血管領域における循環力学的考え方
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動脈硬化の血行力学的測定(その1)
3巻4号(2006);View Description Hide Description今まで血管内の血流の動きを中心に,血行力学の基礎を述べてきた.その際血液を粘性流体としたが,血管については剛体管として扱ってきた.しかし,実際の血管は粘弾性体であり,血管内圧の上昇に伴い,血管径は膨らみ,その壁厚はやや薄くなる性質を持っている.さらに血管を切り出し,縦断すると円管を保とうとする組織構造的な力を持つことも周知であろう.ここではこの粘弾性血管が,生まれたときから始まると言われる動脈硬化現象について,その無侵襲的測定法を中心に説明する. - 血管疾患診療ガイドライン−血管疾患診療の際に知っておくべき基礎知識−
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- 血管診断の医用機器
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- 血管疾患の薬剤解説
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- 実践! 血管エコー検査シリーズ−どう撮り,どう読むか?−
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