Volume 13,
Issue 10,
2008
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特集
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泌尿器科病棟でできる緩和ケアのスキル
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泌尿器ケア 13巻10号, 985-985 (2008);
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1 緩和ケアの考え方
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泌尿器ケア 13巻10号, 986-990 (2008);
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緩和ケアを考えるうえで,さまざまな言葉が出てきます.そして,それらの言葉は時代の変遷とともに変わってきます.老人性痴呆症が認知症になったり,精神分裂病が統合失調症になったのと同じです.緩和ケアに関係する言葉は時には同じようにして,また時にはまったく違った意味で用いられることがありますので注意が必要です.ここでは,これから緩和ケアを学ぶうえで用語について正しい知識を身に付け,混乱しないように解説していきます.
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2 泌尿器癌の進行に伴う身体症状
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泌尿器ケア 13巻10号, 991-997 (2008);
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泌尿器科で最も多い癌は,前立腺癌,膀胱癌,腎癌です.前立腺癌は骨によく転移するため,疼痛や骨折,ひいては麻痺などの症状が出現します.腎癌,膀胱癌の転移部位としてはともに肺,骨,リンパ節が多く,呼吸器症状や骨関連症状が問題となります.いずれの泌尿器癌も排尿通路に関与するため,腫瘍が尿路に浸潤して出血したり,圧迫して腎機能障害を呈したりします.後腹膜を走る神経や筋肉近傍に再発,転移をきたすと,難治性の疼痛を伴ってきます.
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3 一般ナースのためのペインマネジメント入門
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泌尿器ケア 13巻10号, 998-1005 (2008);
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がんの痛みは,がん治療を受けている患者さんの1/3,進行がんの患者さんでは2/3 に起こるとされています1).痛みが存在することで患者さんの日常生活の質は著しく低下し,大切な家族との関係性や生きる意欲にまで影響してきます.がんと診断された早期から痛みの治療を積極的に行い,患者さんがその人らしい生活を継続できるよう支援することが看護師の役割です.本稿では,痛みのマネジメントに向けての姿勢や,具体的なアセスメントについて,またモルヒネ製剤を中心としたオピオイド鎮痛薬の使用方法を解説し,一般病院のナースがペインマネジメントするための基本的事項を解説します.
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4 ペインコントロールの実際
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泌尿器ケア 13巻10号, 1006-1007 (2008);
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痛みの治療には患者や家族の理解と協力が必要ですが,麻薬性鎮痛薬に対する誤解や偏見がある,または漠然とした不安があるというケースは少なくないと思います.そういう場合には,医療者の方から一方的に説明するより,患者や家族がどう思っているかを確認しながら説明することが大切です.「麻薬性鎮痛薬を使うことにどういった心配や不安をおもちですか?」と尋ね,誤解や不安に対して一つひとつ説明していきます.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1008-1009 (2008);
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痛みとは,体に障害が加わったことを脳まで知らせる信号であるとともに,身体的な原因以外に心理・社会的な影響を強く受ける情動的な体験でもあります.慢性的な痛みの特徴をイメージ化したものが図です.この図は,周りの人が患者の痛みとして直接認識できるのは痛み行動であり,人間は身体的な原因だけでなく,さまざまな苦悩をも含めて痛みを表現するということを表しています1). また,がん患者のかかえる痛みを身体的,精神的,社会的,霊的(スピリチュアル)な要素が関連する全人的苦痛(トータルペイン)としてとらえて対応すべきことが広く受け入れられています.この考え方は,がん患者の苦痛に影響する心理・社会的側面の重要性を非常に的確に表しています. よって,身体的原因と比べて痛みの訴えが極端であると思われても,その訴え(痛み行動)はさまざまな苦痛が反映された結果であり,過小評価すべきではありません.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1010-1011 (2008);
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嘔気・嘔吐は非常に苦痛な症状であり,痛みの治療のためにも主治医と看護師で情報を共有し適切に対応しなければなりません.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1012-1013 (2008);
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強い体動時痛がでる病態で最も代表的なものが骨転移です.泌尿器科の患者においても,前立腺癌,腎癌では高頻度にみられるため,泌尿器科の看護師は骨転移患者への対応・治療法について知っておく必要があります.ここでは,骨転移による体動時痛に対して行う治療について概説します.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1014-1015 (2008);
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「オピオイドを増量しているのに痛みがとれない」というのは痛みの相談を受けるときによく聞かれる内容ですが,いくつかの原因が考えられます.
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5 私たちは何ができる? 終末期の種々の訴えへの対応
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泌尿器ケア 13巻10号, 1017-1019 (2008);
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倦怠感はエネルギーが足りないような主観的感覚で「だるい」,「かったるい」,「力が抜けてしまった」などいろいろな表現がされます.倦怠感は終末期のほとんどの患者さんに生じますが,見過ごされていることもよくあります.倦怠感はQOL に大きく影響する症状ですので,医師と相談しながら対策を考えましょう.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1020-1022 (2008);
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腹部膨満感とは腹部が増大することによって起こるお腹が張るような感じです.この症状は主観的な感覚であり,どの程度の増大で苦痛と感じるかは個人差があります.腹部膨満感は薬物療法の効果が不確実なため,対応に苦慮する症状の一つです.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1023-1025 (2008);
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むくみとは体液が組織間隙に増加した状態です.終末期においてその頻度は非常に高く,患者さんを悩ませる症状です.しかし多くの場合,効果的な治療法はありません.医師にできることは限られているので看護師の役割が重要な症状です.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1026-1028 (2008);
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嘔気は嘔吐したくなるような不快な感覚で,「気持ちが悪い」,「ムカムカする」などと表現されます.一方,嘔吐は強制的に胃の内容物を吐き出すことで,多くの場合,嘔気に引き続いて起こります. 嘔気・嘔吐は原因に応じたマネジメントを適切に行えばコントロール可能なことの多い症状の一つです.しかし,このケースのように原因のはっきりしない嘔気・嘔吐は積極的な症状コントロールが行われていないことがよくあります.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1029-1031 (2008);
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患者さんとのコミュニケーションはとても大切です.よいコミュニケーションがとれないと患者さんは満足できませんし,われわれスタッフもストレスを感じて疲れてしまいます.そうならないためにもコミュニケーションのスキルを磨きましょう.患者さんの話をじっくり聴き,共感を示し,相手の感情に焦点を合わせたコミュニケーションを心がけます.そのためには,いすに座ること,アイコンタクトを保つこと,相づちを打つこと,患者さんの言葉を返すこと,話すスピードや声の調子・大きさに気を配ることなどの基本となるスキルを使うことが必要です.
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6 アドバンストレクチャー
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泌尿器ケア 13巻10号, 1033-1037 (2008);
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骨転移は癌の進行に伴いしばしばみられます.泌尿器科領域では前立腺癌や腎細胞癌が骨転移の頻度が高いことで知られています.しかし癌の性質が異なるために,同じ骨転移との診断がついても前立腺癌と腎細胞癌では対応や治療法が異なります.まずはそれぞれの疾患に対する基本的な知識を身に付けたうえで,骨転移の治療方針を考える必要があります.
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誌内雑誌
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排尿ケア
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特集 排尿ケアケーススタディ 排尿日誌のアセスメントを学ぼう!
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泌尿器ケア 13巻10号, 1041-1045 (2008);
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NPO 快適な排尿をめざす全国ネットの会では排尿介護の啓発活動の一環として多職種参加型の排尿セミナーを定期的に開催しています. 今回紹介するのは2008 年4 月に行われた排尿セミナーでのケーススタディの事例を紹介します.事例の情報と排尿日誌からアセスメントを行い,どんな治療,ケアがよいかディスカッションをしていただきました.参加者の職種は,看護師,医師,介護福祉士,ケアマネジャー,オムツメーカー,医療・製薬メーカー,一般の方などです.その一部分を紹介します.
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目からウロコ情報局
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泌尿器ケア 13巻10号, 1046-1047 (2008);
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看護職の専門職業人としてのキャリア開発は,1992 年制定の「看護師等の人材確保の促進に関する法律」第6 条に看護師等の責務として明記されているのをご存知でしたか? 医療の高度化・専門化に対応すべく,新たな知識・技術の習得や,全人的な看護を行うための学びなどは看護職に必須のものです. 日本看護協会(以後,本会)は,看護職の職能団体として1948 年の発足当初から生涯教育の推進を事業の一つに据えてきました.今回は,看護職とキャリア開発の現状を簡単にご紹介したいと思います.
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排尿ケアつれづれ日記
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泌尿器ケア 13巻10号, 1048-1048 (2008);
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京都府医師会の役員になって4 ヵ月.正直に言って,医療制度,政治の問題がこれだけ勤務医である自分の知らない間に決まっているということにただただ驚きました.医師会という団体が唯一,国とアクセスできる団体であることを知りました.学会は任意団体であり,ときに官僚の都合のいいサポート集団になってしまっていることもあるように感じます.本来,学会は患者さんの方を向いているべきだと思いますが,今まであまり学問を市民に公開することをせず,極めて閉鎖的に存続してきたと言えます.それは,病気を治すために一生懸命研究してきた成果を一般の人にわかるように公開してこなかったことと同義です.そのために,気が付くと病人が命を落とすのは,病気を治せない医師のせいだと思われるようになってしまいました.病気の知識が世の中に広まったことによる結果だと思われますが,学問(つまりその知識に魂をこめたもの)が,学会で閉鎖的に扱われてきたためでもあると思います.
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巻頭言
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泌尿器ケア 13巻10号, 977-977 (2008);
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私たちは1995 年に“ リハビリパンツ” を開発し,販売を開始しました.それ以前のオムツは,トイレで排泄することができなくなった人,トイレで排泄させてもらえなくなった人に「トイレの代わりに,これに排泄してください」といって提供される,トイレの代替機能しかもちませんでした.リハビリパンツには「失敗したっていいんです.これを使ってトイレで排泄できるようにしましょう」というトイレでの排泄を補完する機能が付加されました.
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新連載
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泌尿器科略語あれこれ
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泌尿器ケア 13巻10号, 984-984 (2008);
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世の中,略語だらけ.www,NHK,KY,メル友,アラフォーなど,挙げればきりがありません.医療界も同じですよね.カルテが暗号に見えてくるってホント.だけど皆さんもフツーに略語を使ってますよ.DM とかBPH とかアナムネとか.あっ,これはもう死語か?! というわけで,今月から『泌尿器科 略語あれこれ』のコーナーを担当することになった横山です.よろしくおつきあいください.
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連載
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泌尿器科最新トピックス
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泌尿器ケア 13巻10号, 983-983 (2008);
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再生医療は21 世紀医療の目玉の一つと考えられている.人工腎(透析)や人工心臓などの人工臓器は古くより実用化されているが,本来の臓器がもつ精巧極まる機能には遠く及ばないのである.一方,医療において細胞や組織が本来もっている再生能力を利用するという発想は決して新しいものではない.身近な例では縫合後に創が治癒することも広い意味で組織の再生力を前提にしたものである.自己の組織の再生力を利用した治療は本来目指すべきものであり,ある意味で究極の治療と考えることもできる.
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質問BOX
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泌尿器ケア 13巻10号, 1038-1040 (2008);
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バルーンカテーテルを留置している患者さんで,強い尿臭の方がいらっしゃいます.ご本人も気にしておられ,クランベリージュースも飲んでもらったりしていますが,何かほかに尿臭をやわらげるような工夫はありませんか?
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私のCIC日記
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泌尿器ケア 13巻10号, 1053-1053 (2008);
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同窓会のお誘いがあった後,整形外科の定期検査のために,久しぶりに病院に行きました.
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わかりやすい! ナースのための泌尿器科手術講座
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泌尿器ケア 13巻10号, 1054-1056 (2008);
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結石手術の最後が,この経皮的腎砕石術(PNL)です.結石手術には,ESWL,TUL,PNL のほかに開腹手術もありますが,尿管結石や腎結石に対する開腹手術はほとんどなくなりました.膀胱結石も多くは内視鏡で破砕可能ですが,比較的大きな結石が複数あるときなどは開腹してもよいと思います.
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シーン別 泌尿器ケアのトラブル対応
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泌尿器ケア 13巻10号, 1057-1060 (2008);
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66 歳のA さん(男性)は膀胱癌に対し膀胱全摘除術,尿管皮膚瘻造設術を受けてから12 日目です.退院が近いので,A さんに装具のパンフレットを見せ,「このなかから気に入ったものを選んでください」と話すと,「あなたにお任せします」と言われました.
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おもしろ看護泌尿器科学
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泌尿器ケア 13巻10号, 1062-1065 (2008);
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ウロ子:これまで医師不足のことでいろいろと話を聞いたけど,病院のほうにも問題があるんじゃないの?ネモト先生:そのとおりだね.特に市町村立や県立の自治体病院はね.ウロ子:なぜ,自治体病院ばかり攻撃されるのかしら? ほかにも病院があるのにね.ネモト先生:病院は,その経営してる組織の違いで大きく4 つに分けられるんだよ.国立病院機構,自治体病院,公的病院,医療法人などのグループ.ウロ子:公的病院というのは?ネモト先生:赤十字病院や済生会病院,社会保険病院,労災病院,厚生年金病院などのグループのことをいうんだよ.場合によっては,自治体病院や大学病院を含めることがあるけどね.ウロ子:そのなかで,どうして自治体病院だけが問題なの?ネモト先生:一言で言うと「経営状態が悪い」ってことだね.ウロ子:赤字ってこと?ネモト先生:赤字が問題というより,赤字になってるいろんな原因が問題なんだよ.ウロ子:わかった,お役所体質でしょ.ネモト先生:4 つの病院グループのなかで,いまだに職員が公務員なのは,自治体病院だけだからね.
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ウロ・ナースのためのカウンセリング入門
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泌尿器ケア 13巻10号, 1066-1068 (2008);
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毎月ナースのためのカウンセリングをしに病院にうかがっています.P さんは昨年から,自分のカウンセリング力を高めたいということで,面接に来ておられます.
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看護研究
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泌尿器ケア 13巻10号, 1075-1083 (2008);
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わが国において近年,高齢社会の到来・食生活の欧米化に伴い,前立腺癌患者は増加している.また,診断法の進歩により前立腺癌の早期発見が可能となり,前立腺全摘術を受ける患者数も増加している.手術後の主な合併症として,性機能障害と尿失禁があり,尿失禁は直接生命にかかわるものではないが,身体的活動・社会的活動など多岐にわたる領域で日常生活の支障となるいわゆる“QOL 疾患” であるといわれている.前立腺全摘術後,尿失禁は3 ヵ月ほど続くといわれており,ほとんどの患者は尿失禁が消失しないまま退院することになる.当院でも,前立腺全摘術を受ける患者は年々増加傾向にあるが,私たちがかかわるのは入院中のみであるため,退院後の尿失禁の状況や生活への影響を具体的に知らない.そこで,尿失禁が退院後のQOL へどのような影響を及ぼし,どう変化していくのかを明らかにすることで,今後の看護に役立てたいと考え,実態調査を行った.
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泌尿器ケア 13巻10号, 1049-1052 (2008);
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排尿についての悩みを抱えていても,「恥ずかしい」,「歳をとったのだから仕方がないことだ」といって泌尿器科の受診を控える高齢者は少なくないだろう.そんな“ 潜在的な排尿障害患者” をなくそうと立ち上げられたのが東京都老人医療センターの“ さわやか外来”.患者さんの排尿に関する悩みを解消し,心も体も気持ちよく,さわやかになってほしいとの願いを込めて“ さわやか外来” と名付けられた.より患者さんが受診しやすく,気軽に悩みを打ち明けられるように,研鑽を重ねて外来システムを常に改良しているという.開設から4 年,200 人以上の患者の悩みに真摯に向き合ってきたさわやか外来のスタッフに話を聞いた.