Volume 21,
Issue 10,
2008
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特集
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今日からできる救急・ICUでの創傷ケア
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 959-959 (2008);
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 960-963 (2008);
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医学大辞典(医学書院刊)によると,創傷とは,物理的外力によって身体組織に起こる損傷で,構造の正常な連続性がさまざまな形で断たれた状態を指す.創傷を創と傷とに分ける場合には,創は開放性,傷は非開放性の損傷の意となるが,総称して傷(きず)とも呼ばれる.この治療(創傷管理)は,この10 年間で飛躍的に変化してきており,傷を,早く,美しく,患者にとって心地よい(痛みのない)方法で治癒させることができるようになった.ここでは創傷管理の原則と,その歴史について述べたい.
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 964-969 (2008);
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創傷とは外力など外的要因や動脈硬化による血行障害などの内的要因から起こる皮膚皮下組織を中心とする体表組織の損傷である.創傷のアセスメントとは,損傷により組織がどの程度非可逆的な変化を来しているのか,今後の組織損傷が進行するのか,あるいは創傷治癒機転が働き治癒に向かうのかを判断することであり,創傷の診断と適切な治療を行うために極めて重要である.損傷を受けた組織はその後,出血凝固期,炎症期,増殖期,成熟期と一連の創傷治癒過程(表1)を経るが,本稿では救急の現場で遭遇する機会が多いと思われる出血凝固期や炎症期の創傷のアセスメント法について述べる.
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 970-975 (2008);
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われわれは医療者でなくても子どものときから転倒しては傷を作ってその治る経過を見てきた.これまで,傷は乾燥させてかさぶた(痂皮)ができてから,いつの間にか治るものと思われてきたが,最近では適度な湿潤状態を保ちながら,治癒に導いた方がきれいに治るということが医療者だけでなく,一般の市民にも少しずつ浸透してきている.実際に当クリニックを受診する患者から「湿潤療法で治してください」とリクエストを受けることもしばしば経験するようになっている.このような状況下で医療者が正しい創傷ケアの知識を持っておかなければ患者や家族の信頼を受けることができない.何よりも正しい創傷ケアを行わなければ創傷の治癒が遅れることになり,患者に身体的,経済的負担をかけ,医療者にとってもケアに費やす時間が増えることになる.そのため創傷を管理する機会のある医療者は最新の創傷ケアの基本について知っておくことが求められている.
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 976-981 (2008);
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熱傷とは皮膚が熱作用により損傷を受けたものである.局所では損傷部位の血管透過性が亢進し浮腫を来し,損傷が深ければ皮膚機能が喪失するため,体液が漏出して不感蒸泄が増加する.外界との遮断も損なわれ,自浄作用が喪失して易感染性となる.さらに損傷が広範囲に及ぶと全身にもさまざまな病態が引き起こり,これらは局所の変化とも密接に関連する. 熱傷は体表面のすべてに受傷し得るが,部位ごとの解剖学的・機能的特徴によって治療法が異なることも多い.小児や高齢者では皮膚が薄いため深い熱傷になりやすく,特に高齢者は上皮化に必要な汗腺や毛根などが減少しているため治癒も遅い. 熱傷創ケアの主な目的は疼痛対策と速やかな皮膚機能の回復であり,そのためにもこれら病態や特徴は十分理解しておく必要がある.
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 982-986 (2008);
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外的刺激によって組織が損傷した状態を「外傷」という.外傷は,その原因によって機械的損傷(外力による損傷)と物理的・化学的損傷(熱・電流・化学物質などによる損傷)に分類される.ここでは皮膚軟部組織の「機械的損傷」に対するケアについて述べる.
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 987-991 (2008);
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創傷治癒に関する分野の研究・開発における進歩は,目覚ましいものがある.近年,新しい創処置法やドレッシング材がすでにいくつかの成書で紹介されており1 〜 4),インターネット上5,6)で一般市民にさえも多くの情報が与えられている. 感染創については別稿に譲るとして,ここでは手術創の創傷ケアの実際について述べる.
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 992-995 (2008);
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感染創とは創部に感染を併発したものであり,組織中に細菌が増殖し,組織構造を破壊する.局所には炎症反応が引き起こされ,創傷治癒が遷延するだけでなく,高サイトカイン血症Systemic Inflammatory Response Syndrome(以下,SIRS)の原因ともなる.
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 997-1003 (2008);
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従来,創部は消毒とガーゼ保護を行い,乾燥して治癒させるということが一般的な創傷ケアの方法であった.しかし1962 年,Winter GD博士のNature1)発表のころから,創部を湿潤環境下で治癒させるモイスト・ウンド・ヒーリング(湿潤療法)という創傷治癒理論に変わってきた.それに伴い,さまざまなドレッシング材および薬剤が開発・販売された.これらは有効性を示したものが多く,種類が多いため適切な選択に迷うことがあり,しかも誤った選択をすると創傷治癒が遅延するのみならず悪化することもある.適切な創傷ケアを行うには,創傷の状態を正確に評価・判断することに加え,正しいドレッシング材と薬剤の知識が必要である.
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連載
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E Word 私を支えるこの言葉
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 941-941 (2008);
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10 年前の春,私は前任校の学長の退職記念パーティでこの言葉に出会いました.会場前のテーブルに学長直筆の色紙がいくつも並んでおり,気に入ったものをいただけるというのです.私は迷わず「念ずれば花ひらく」を選びました.以来10 年間,その色紙はずっと私の研究室の一角に飾られています.
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スペシャリストに聞く! 救急現場のME機器
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 942-944 (2008);
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植込み式ペースメーカーは決定的な徐脈あるいは心房細動などの恒久的治療手段として,体内に埋め込む生命維持装置です.体外式と大きく異なる点は,小型軽量薄型の装置を体内(鎖骨下など)に植え込むことで,安定した普通の社会生活に復帰できることです.性能としては,高度な記録・解析機能を持っており必要脈数を自動で判断して補正でき,電池寿命は6 〜 8 年です.ER では,救急搬送患者をよく観察してみるとペースメーカーが植え込まれていたというケースも多くあります.
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From ExpertNurse 救急看護認定看護師からのメッセージ
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 949-949 (2008);
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看護師となり10 年目,それは私にとってとても大きな人生の岐路に立たされた時期でした.それまでずっとICU で看護実践を積んできました.しかし,自分自身これから看護師を続けていく上で,今までの自分の知識にまったく自信が持てず,何か限界を感じていました.「このまま何事もなく年数だけ過ぎていけばいいのか?」何か気持ちの中でマンネリ化した自分に焦りを感じました.そのとき,同じ部署に勤務する認定看護師の先輩から救急看護認定看護師を受験してみたらと勧められました.
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家族
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 954-956 (2008);
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救急現場では,突然の出来事によって患者のみならず家族も危機的状態に陥りやすく,特に突然,心肺停止状態になった患者の家族は,心の整理や準備ができないまま「家族の死」を受け入れざるを得ない状況に立たされます.私たち看護師は職業上,さまざまな「患者の死」を経験します.患者とその家族には,それぞれの家族ごとに特別な絆があり,「家族の死」に対する受け止め方もそれぞれに異なります.最期の別れの時間は,患者家族が「家族の死」を受け入れるために必要な時間です.このような時間の中で,危機的状態にある家族に対して,看護師は何をするべきなのか,どう援助すればいいのかと,悩んだ経験はありませんか? 私には救急初療において,ある夫婦との出会いがありました.そのときの体験が救急看護における家族への援助をあらためて考えるきっかけになりました.
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誌上で検証 プレホスピタルでの患者のみかた
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 1012-1017 (2008);
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通報内容:テニスをしていて気分不快.症例:55 歳男性.現病歴:11 時ごろからテニスをしていて,13 時30 分ごろから気分不快を訴え,救急車要請.現場到着時の状況:テニスコート脇の日陰でグッタリと横になっていた.
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めざせ! 救急看護認定看護師 EMERGENCY QUIZ
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 1018-1023 (2008);
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40 歳代,女性.1 週間ほど前から微熱,咳嗽の感冒症状があり,市販薬を服用していた.午前2 時ごろ咳嗽が増強し,喘鳴とともに呼吸困難が出現したため,夫に付き添われ自家用車で来院した.辛うじて歩ける状態であった.来院時のバイタルサインは,意識レベル清明,血圧100/70mmHg,脈拍108 回/min,呼吸30 回/min,体温37.4℃,SpO2 88%(ルームエア下)で呼気の延長と喘鳴が聴取された.発汗,咳嗽・喀痰が見られ,発語は断続的で,呼吸が苦しくて動けず起坐位を取っていた.既往歴は特にない.
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EMERGENCY TOPIC
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 1025-1031 (2008);
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2007 年4 月に,北海道洞爺湖町のザ・ウィンザーホテル洞爺( 図1) を主会場として2008 年主要国首脳会議(G8〈Group of Eight〉サミット)が開催されることが決定した.G8の公式の定義はなく,一般的に首脳会議に参加する8 カ国の総称を意味している.開催国として,現地入りする各国首脳・閣僚および随行者などに対し,急病のほかテロや暴動による多数傷病者発生時においても必要な救護を行うために,厚生労働省医政局指導課の指導下に救急・災害医療体制の確保を行った.関係した機関は外務省,厚生労働省,北海道,総務省消防庁,日本救急医療財団,日本中毒情報センター,防衛省,警察庁などであった.
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からだのしくみで覚える 見のがさない検査値の異常
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 1032-1035 (2008);
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動脈血中ケトン体比(arterial ketone body ratio;AKBR)は,動脈血における酸化型ケトン体であるアセト酢酸と,還元型ケトン体である3 −ヒドロキシ酪酸の比をとったものです.肝臓には代謝作用,解毒作用,胆汁生成などさまざまな機能があり,多くのエネルギーが必要です.生体内でのエネルギー産生はATP の産生を意味しますが,これは大部分がミトコンドリア内での酸化的リン酸化によって行われます.すなわち,肝臓のミトコンドリアの酸化還元状態が分かれば,肝臓のエネルギー産生を把握することができます.AKBR は肝臓のミトコンドリアの酸化還元状態を表し,さらに肝臓でのエネルギー貯蔵量を鋭敏に反映する検査で,肝細胞のバイアビリティーを評価する指標となります.各種疾患や病態によって肝臓が障害を受けてエネルギー供給が低下すると,AKBR は低下して細胞は機能停止に陥ります.
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Emergency Case
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エマージェンシー・ケア 21巻10号, 1038-1043 (2008);
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当院の2007 年中の救急外来受診症例は9,584例で,そのうち心血管系疾患の症例が約4 割(3,955 例)を占め,搬送される,もしくは受診する患者の多くが胸痛を訴える.胸痛で特に緊急性が高い,急性心筋梗塞,大動脈解離,肺塞栓症はいち早く鑑別し,診断をつけることが重要である. 今回,急性心筋梗塞と診断された2 つの症例を通して,医師だけでなく私たち看護師にもフィジカルアセスメント能力,つまり患者と対話しながら聴診,触診を行い簡易分析する能力の必要性を学ぶことができたので報告する.