Volume 21,
Issue 12,
2008
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特集
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今すぐ知っておきたい 救急スタッフのための周産期救急対応
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1151-1151 (2008);
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1152-1161 (2008);
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2006 年,2007 年に連続した奈良県の周産期救急事例の報道は,われわれ周産期救急を専門とする者に大きな衝撃を与えた.「分娩中の母体の脳出血による母体死亡」「未受診の切迫早産(?)妊婦搬送中の交通事故とそれに関連した死産」という報道の内容は,一般の方には,現代の進歩した救命救急医療の中で,「19 病院が患者受け入れを拒否した」とか「二次救急の範囲と思われる症例が奈良県橿原市内から大阪府高槻市までの遠距離搬送を余儀なくされた」というようなことが起こってしまうものなのか,という疑問を抱かせるものであったかもしれない(その後,一般の救急医療においても受け入れ先決定困難事例報道が続発し,より根の深い問題であることが明らかとなっているが). しかし,われわれ周産期関係者は,あの条件下で,「国立循環器病センターや高槻の病院は(結果的に間に合わなかったかもしれないが)よく受けることができた」という印象を抱いた.分単位で患者搬送を行っている救急医療の分野からは奇異に思われるかもしれないが,周産期救急では遠距離搬送は日常化している.患者受け入れ先を見つけるのに,数時間かかることは決してまれではない.もちろん望ましいことではないが,それが実態なのである. 周産期救急医療とそれ以外の救急医療の違いはどこにあるのか,本稿では周産期救急医療体制の整備過程と現状を示すことを通して,この問題について検討する.
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1163-1168 (2008);
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「誰もが安心して出産できる社会をめざして」厚生労働省は1996 年から全国に総合周産期母子医療センターの整備とシステム化を推進してきた.大阪においては,1977 年に新生児診療相互援助システム(NMCS),1987 年に産婦人科診療相互援助システム(OGCS)が発足し,いち早く,周産期医療のシステム化が推進されてきた.1980 年には大阪府医師会内に新生児医療推進委員会が,1989 年には産科救急推進委員会が発足し,2004 年からは周産期医療委員会として再スタートし,大阪府,大阪市の援助を得て,大阪の周産期医療のシステム作りを支援してきた.
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1170-1177 (2008);
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妊娠が成立すると女性には各種の生理的変化が見られる.表1 に妊娠を疑う所見とその問診例をまとめ,表2 には妊娠の確実な所見を示す.確実な所見は検査機器による診断が必要であり,問診では解決できないので紹介にとどめる.
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1179-1185 (2008);
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妊産婦診療では2 人(母親と胎児)の命を同時に預かるということを念頭に置いて診療に当たらなければならない.ただし,母体に対して最適な治療を行い母体の全身状態を安定させることが胎児にとっても最良の治療となるため,原則としては母体の治療を最優先に考えるべきである. 妊産婦の合併症の中でも,活動性出血は最も重大な合併症の一つであり,重症例では救命救急センターへの搬送など,速やかな救急医療への連携が必要となる. 本稿では,産科救急において重篤な出血を引き起こす可能性のある播種性血管内凝固症候群(DIC)への対応と出血性ショックに対する対応について,具体的に事例を提示して解説する.
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1186-1190 (2008);
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事例は乗車者が車外に放り出されていた車両事故であることから,救急隊員は高エネルギー外傷として対応してきているはずである.高流量の酸素投与,脊椎保護のためのバックボード固定などがそれに当たる.また意識状態の確認のために,救急車内では絶えず患者と会話を交わし,既往症・常用薬などもすでに聴取済みのはずである.これらの情報については,通常の外傷患者の場合と同じように救急隊から情報を受け取るが,患者が妊婦の場合は加えて表1 の内容についても情報をもらう.
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1192-1197 (2008);
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相変わらず全国の医療機関において種々の医療事故が後を絶たない.これに伴い,その責任の所在や補償問題をめぐって,裁判であるいは示談で争われるケースが増えている. 最高裁判所の調べによると,第1 審裁判所である全国の地方裁判所ならびに簡易裁判所において新規に受理した医療過誤訴訟件数は,2005年が999 件,2006 年が913 件,2007 年が944件である.このうち,産婦人科関係は2005 年が149 件,2006 年が161 件,2007 年が108 件である.とりわけ,分娩誘発剤投与に関連した子宮破裂,胎児仮死・新生児仮死に基づく脳性麻痺,分娩に伴う妊産婦の出血死事故などをめぐるものが多いという. そこで,本稿では分娩に伴う妊産婦の出血死事故に関する裁判例を紹介・解説して,周産期救急医療関係者の参考に供することにする.
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連載
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E Word 私を支えるこの言葉
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1139-1139 (2008);
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「お母さん,だ〜い好き!」この言葉を聞くと,どんなに落ち込んでいても,イライラしていても,私の心のベクトルはプラス方向へ向き,温かいエネルギーが沸いてくる.
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スペシャリストに聞く! 救急現場のME機器
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1140-1142 (2008);
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前号まで,救命救急の領域に使用することの多いME 機器について,構造や取り扱いの簡単な機器から生命維持のために必要な複雑なものまでを解説してきました.皆さんの職場である救急医療現場では,時として予測外の治療が実践され,ME 機器については,特に正確で確実な作動が要求されるものです.また,汎用の機器でも比較的複雑な機器でも,準備から使用までの大半が看護業務の一環として認識され,取り扱われていることでしょう.本連載では,ME 機器の使用目的やツボ,ピットフォールを知ること,また安全に,上手に皆さんの“ 相棒” としてME機器と付き合っていただくことを目標に進めてきました.最終回では総集編として,電源コンセントの取り扱いを含めた,ME 機器との付き合い方のツボをお伝えしたいと思います.
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From ExpertNurse 救急看護認定看護師からのメッセージ
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1143-1143 (2008);
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私が救急看護の勉強を始めたのは2001 年の初夏からです.5 年半内科病棟で勤務した私は,古巣のICU に異動となり,再び急性期看護に携わっていく決意を新たにしていました.
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家族
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1148-1150 (2008);
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私は看護師になって救命救急センターに配属され5 年間勤務しました.配属された救命救急センターには1 次〜 3 次救急のすべての救急患者さんが来院されます.5 年間に本当に多くの患者さんとその家族に出会いました.患者さんと家族にとって,救命救急センターは非日常的な場所で,突然不幸な出来事に遭い,危機的状況に置かれているということをいつも感じていました.家族の突然の出来事に対応する姿はさまざまで,茫然自失で立ちすくむ方もいれば,パニックになり倒れてしまう方もいました. 新人のころは,知識・経験不足による不安と,救命救急センターの煩雑さやマンパワーの不足を理由に,そんな家族の姿を目にしながら何もケアできないまま見送ることがありました.大切な人を失う家族に出会うたびに,自分にできることを考えるようになり,家族看護の重要性を感じていたころに出会った家族がいました.
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からだのしくみで覚える 見のがさない検査値の異常
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1202-1206 (2008);
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血液中には,アルブミン,リポ蛋白,糖蛋白,補体,免疫グロブリンなど,多くの蛋白が含まれています.蛋白は電気泳動によってアルブミン,α 1 グロブリン,α 2 グロブリン,βグロブリン,γグロブリンの5 分画に分けられます.その中で血清総蛋白濃度を規定するのは主としてアルブミンとγグロブリンです.低蛋白血症は主としてアルブミン濃度の低下によることが多く,高蛋白血症は脱水を除くとγグロブリンの濃度上昇によるものがほとんどです. 蛋白は免疫グロブリンを除いてその多くが肝臓で産生されます.そのため,肝障害によって蛋白の産生に異常が生じると,血清総蛋白濃度や蛋白分画に変化を来すので,これらの検査項目は主に肝機能を反映する検査として用いられます.ただ,血清蛋白濃度は肝臓における蛋白の産生以外にも,アミノ酸プール,蛋白の異化,喪失,体内分布状態などによっても規定されます.
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誌上で検証 プレホスピタルでの患者のみかた
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1210-1215 (2008);
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通報内容:左腕の脱力と構語障害.症例:57 歳男性.現病歴:2 〜 3 日前から左腕に力が入らず,本日9 時40 分ごろからろれつが回らない.現場到着時の状況:意識は清明だが,左手の動きが悪く,うまくしゃべれない.
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めざせ! 救急看護認定看護師 EMERGENCY QUIZ
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1216-1222 (2008);
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40 代男性,胸痛を主訴に救急搬送された.来院時から難治性の心室細動が出現したため,プロポフォールで鎮静を図り気管挿管と経皮的心肺補助法(PCPS)が導入され,カテーテル治療が行われた.発症から1時間30 分後,左主幹部の99%閉塞に対してステントが留置され,再灌流状態はTIMI flow grade 3 となった.しかし再灌流直後,血圧が66/28mmHg,心係数1.5L/min/m2 と急激に低下したため,大動脈内バルーンパンピング(IABP)が導入されICU に帰室した.
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Emergency Case
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エマージェンシー・ケア 21巻12号, 1224-1229 (2008);
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熱傷とは,熱により生じる生体の障害と定義することができる1).体表面積の30%を超える熱傷は通常,広範囲熱傷と呼ばれ,生体に及ぼす影響は皮膚の損傷にとどまらず,体液,電解質,呼吸,循環系に異常を来し,全身の臓器に種々の異常が出現する1).また,広範囲熱傷では,受傷後24 〜 48 時間にかけて「熱傷ショック」と呼ばれる特有の循環異常が出現し1),それを乗り越えた後は,「refilling 期(利尿期)」,「感染期」が訪れ,さまざまな病態の変化を生じ生命予後に大きく影響する.そのため私たち医療者は,わずかな病態の変化を先読みし,適切なタイミングでの治療,看護を行うことが重要となる. 今回,79%の広範囲熱傷と診断された患者の急性期における看護について,呼吸・循環管理に焦点を当て振り返ったので報告する.