サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 2, Issue 1, 2007
Volumes & issues:
-
特集
-
- 大動脈疾患治療戦略 Up-to-Date
-
-
動脈硬化性大動脈瘤・大動脈解離の診断 -MDCT,MRI-
2巻1号(2007);View Description Hide Description大動脈瘤や大動脈解離の診断においては画像診断が重要な位置を占めているが,特にCT は確定診断・治療方針の決定,経過観察などにおいて中心的な役割を果たす.近年,多列検出器CT(multidetector row computed tomography ;MDCT)の発達・進歩により高分解能で高速,かつ広範囲の撮影が可能となり,大動脈領域における情報は質・量ともに飛躍的に向上した.最新のMDCT では全大動脈を数秒間で撮影でき,かつスライス厚1mm 以下・等方向性の高分解能データを取得可能であり,任意の方向で多断面断層画像(multiplanar reformation ; MPR)あるいはボリュームレンダリング(volume rendering; VR)による表示を行うことができる.核磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging ;MRI)ではこれまでの非造影心電図同期法,造影磁気共鳴血管画像(MR Angiography ; MRA)に加えて高時間分解能MRA(time resolved MRA)といわれる時間分解能を向上させた撮影技術が加わった.本稿ではCT を中心に大動脈瘤,大動脈解離の画像診断の実際および最近の進歩について述べる. -
動脈硬化性胸部大動脈瘤のステント治療
2巻1号(2007);View Description Hide Description近年,大動脈瘤/大動脈解離に対する血管内治療としてステントグラフト内挿術が注目されてきている.従来の外科手術と比較して侵襲が低いことから,内科疾患を合併する症例など手術リスクの高い症例を中心に治療が行われている.また開胸や開腹が不要なため,特に日本人患者には好まれやすい治療と思われる.本邦では2002 年度よりステントグラフト内挿術の手術手技が保険適応となったが,当初は使用するステントグラフトで保険認可されたものはなく,各施設で独自に作成されたものが使用されてきた.2006 年7 月にようやくCOOK 社の腹部大動脈瘤用Zenith ステントグラフトが医療器具として認可され使用可能となったが,胸部大動脈瘤治療用のステントグラフトで認可されたものは今もまだない.そのため本稿では海外で使用されている企業製造のステントグラフトでの成績をもとに胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術の概説を行い,最後に当科で使用している井上ステントグラフトを実際の症例もまじえて紹介する. -
動脈硬化性非解離性胸部大動脈瘤の手術 Surgery for atherosclerotic thoracic aortic aneurysm
2巻1号(2007);View Description Hide Description真性(ないしは非解離性)大動脈瘤は,動脈硬化,炎症,感染,結合織疾患,先天性,などを原因として発生するが,ほとんどが動脈硬化性である.本章では,この動脈硬化性非解離性胸部大動脈瘤の外科治療について記述する. -
大動脈解離のステントグラフト治療
2巻1号(2007);View Description Hide Description大動脈疾患に対する低侵襲治療として登場したステントグラフト治療は,欧米においてはすでに標準的な術式の1 つとなり,従来の人工血管置換術に取って代わりつつある.本邦においてもようやく腹部大動脈瘤用デバイスの使用が可能となったが,胸部用のデバイスの市販はまだ当分先の話になりそうである.しかし,胸部用ステントグラフトは自作が容易であるため,本邦においてもすでに広く普及し,大動脈瘤に限らず大動脈解離の治療においても,従来の外科手術と遜色ない結果が報告されている.本稿では大動脈解離に対するステントグラフト治療の概要を,自験例を交えて解説する. -
急性大動脈解離の手術
2巻1号(2007);View Description Hide Description急性期大動脈解離は発症時期,entry の位置や解離病変の範囲,偽腔血流の有無から分類され,治療方針もしくは手術術式の決定に影響する1)(図1). 1.発症時期からの分類 発症から2 週間以内が急性期,15 日目から2 カ月以内は亜急性期,3 カ月目以降は慢性期と分類しているが,臨床的に重要なものは発症後3 日以内の超急性期症例で,この時期に手術を必要とする症例の手術成績はmalperfusion などの合併症も多く不良である. 2.Entry の位置,解離の範囲からの分類 Stanford 分類2)とDeBakey 分類3)が一般的でStanford A 型はDeBakey ㈵型(図2),㈼型に相当し緊急手術の対象でありB 型はDeBakey ㈽型(図3)に相当し保存的治療の対象となる. 3.偽腔開存の有無からの分類 偽腔に血流が認められるものを開存型,血流のないものを閉鎖型と分類している. -
腹部大動脈瘤ステントグラフト治療の現状と展望
2巻1号(2007);View Description Hide Descriptionステントグラフト術は1990 年にアルゼンチンのParodi らが世界に先駆けて臨床例を成功させた1).米国では,筆者が12 年間臨床活動を行ってきたAlbert Einstein 医科大学で1993 年に米国初の手術をParodi らとともに施行した2).その後の16 年間に多くの臨床経験が蓄積され,また数多くのデバイスが開発された(図1).当初は,われわれも含め医師が自作のステントグラフトを作成し使用していたが,企業製のデバイスが1997 年にヨーロッパ連合(European Union ;EU),次いで1999 年に米国食品医薬品局(Foodand Drug Administration ; FDA)の承認を得てから,欧米で腹部大動脈瘤に対して自作ステントグラフトが使用される頻度はほぼ皆無となった. -
腹部大動脈瘤の手術
2巻1号(2007);View Description Hide Description腹部大動脈瘤の手術は,周術期の患者管理の改善や手術手技の向上により,最近では手術死亡率は1 %以下の安全な手術になってきている1,2).しかし,高齢患者の増加に伴い,心肺機能,腎機能など重要臓器の障害を有している症例も多く,手術の際には細心の注意が必要である.本稿では私の行っている腹部大動脈瘤手術について解説する.
-
連載
-
- CIRCULATION GRAPHICUS
-
管は輪が集まってできる
2巻1号(2007);View Description Hide Descriptionもし皆さんがお手もとに人工血管の端切れをお持ちでしたら、曲げたりつぶしたり手でいろいろな風にいじくったときに、その蛇腹の輪がどのように見えるかよく観察してみてください。まっすぐ円柱状におかれている状態ならば順次厚みの変わるただの楕円の集まりですが、いろんな風にグラフトが変形するとこの輪はさまざまな向きや形に変化するのです(図1)。じつは人工血管が輪の集まりであるのと同様にすべての管状のものは輪の集まりなのです。 - トラブルパターンから学ぶME機器の安全
-
ベッドサイドで行う急性血液浄化(CHD)
2巻1号(2007);View Description Hide Description心疾患領域で行われる急性期の血液浄化法は,水分バランスの調節とケミカルメディエーターの除去が目的で,一般的に持続的血液透析(continuoushemodialysis ; CHD),持続的血液ろ過法(continuous hemofiltration ; CHF),持続的血液ろ過透析(continuous hemofiltration ;CHDF)に表される持続腎代替療法(continuousrenal replacement therapy ; CRRT)が施行されている.施行中のトラブルには,血圧低 - 最先端医療 循環器系の再生医学
-
G-CSFを用いた心筋梗塞治療への展望
2巻1号(2007);View Description Hide Description造血性サイトカインである顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor ;G-CSF)は骨髄系前駆細胞の増殖,分化,生存などの促進作用や骨髄幹細胞,成熟好中球に対する動員作用を持つことから,臨床において化学療法後の好中球減少症や造血幹細胞移植などの際に用いられている.造血作用以外に抗アポトーシス作用,抗炎症作用,EPC の増殖・遊走作用なども報告されている1).Orlic らは骨髄幹細胞の動員作用を持つサイトカインが傷害心筋に対し心臓再生を促進するか否かについて検討した2).マウスに5 日間,G-CSF とSCF の両者を投与してから急性心筋梗塞モデルを作製し,その後もさらに3 日間,2 つのサイトカインを投与し27 日後に心機能を解析した結果,サイトカイン投与群では急性心筋梗塞後の死亡率は有意に減少し心機能の低下や心臓リモデリングは抑制された2). - 実践! 心臓・冠動脈CTの撮り方・診方
-
虚血性心疾患におけるCT
2巻1号(2007);View Description Hide Description心臓CT は低侵襲的に冠動脈の情報を得られる検査として,CT 機器の進歩とともに急速に普及し臨床的ニーズが拡大を続けている.64 列CT の導入により,心臓カテーテル検査室ではスクリーニング検査が減る一方で,ステント挿入などの治療症例が割合・数ともに増加すると言う話をしばしば耳にするし,われわれの施設にも当てはまる.治療症例の数が増すのは,CT という低侵襲検査法によりスクリーニングの間口が広がるからとされており,CT が虚血性心疾患の拾い上げもしくは除外の効率化に寄与していると考えられる.本稿では虚血性心疾患におけるMDCT のスクリーニング検査としての有用性,冠動脈評価の実際につき述べていく. - 心電図モニターでどこまで病気が読めるか
-
Q波が異常な波形
2巻1号(2007);View Description Hide Description心筋梗塞に伴う異常Q 波は,起電力を失った心筋壊死部を反映する誘導に認められ,診断上重要な意義を有するが,他の疾患でもしばしば類似した波形が認められる(表1).通常はaVR以外の誘導で幅0.04 秒以上,深さが当該誘導のR波の4 分の1 以上のQ 波を異常Q 波と呼ぶ.心室中隔の興奮に起因する小さなq 波(いわゆるseptal Q)は健常者にも㈵,aVL 誘導や㈼,㈽,aVF 誘導にみられることがあるが,通常上記のような異常Q 波の基準を満たさない.しかし健常者でも特に㈽誘導では比較的深いQ 波(6mm 以上)を認めることがある. - CIRCULATION data file 新製品・新しい薬剤
-
人工弁−SJM Regent 人工心臓弁−
2巻1号(2007);View Description Hide Description1 9 7 7 年1 0 月3 日, ミネソタ大学のD r .Demetre Nicoloff らにより世界で初めてSt.JudeMedical 人工心臓弁が用いられた.St.JudeMedical 人工心臓弁の基本的なデザインは,この1977 年から変わることなく受け継がれている.2枚のリーフレットからなるデザイン,85 °の開放角,血流の上流側に位置するピボットのくぼみ,低い弁高といった特徴がSt.Jude Medical 人工心臓弁の性能の基礎となり,St.Jude Medical 人工心臓弁と他の機械弁との違いを生み出している.