サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 2, Issue 2, 2007
Volumes & issues:
-
特集
-
- 新しい展開 どう治すか? 不整脈治療
-
-
不整脈治療をなぜ治療するのか? どのような不整脈を治療すべきか?
2巻2号(2007);View Description Hide Description不整脈をなぜ,治療するのか.患者はもちろんのこと,医者も一緒になって不整脈というものは,その存在自体が異常であり,異常なものは治すべき,と思いがちである.それだけではない.心室性期外収縮を診ると,あたかもそれがきっかけとなって心室細動が誘発されるのでは,といった不安がわいてくる.特に突然死の発生が知られている病気を持つ患者では,心室性期外収縮が抹消されない限り,その不安はぬぐいきれないものとなる.こうして抗不整脈薬を投与することになるのだが,不整脈の発生原因を棚に上げておいて,ただ表現形としての不整脈だけを治すことが,そもそも可能なのか,またそれを人為的に行うことに無理はないのか.そしてそれが達成されれば,本当に予後は良くなるのだろうか. -
心房細動に対する薬物療法
2巻2号(2007);View Description Hide Description心房細動に対する薬物治療は一様ではなく,個々の症例に応じて投薬内容や投与量を調整する必要があり,さらには臨床経過により薬剤の変更を余儀なくされることがある.この背景には,①発作頻度や持続時間,患者の臨床経過や自覚症状,合併する疾患など心房細動の患者が多様である点,②抗不整脈薬による長期間の洞調律維持がすべての症例において可能なわけではなく,心房細動の再発例が非常に多い点,③「心房細動」という不整脈に対する治療のみでなく血栓塞栓症に対する予防的治療が必要であり,塞栓症リスク因子の有無により薬剤を選択しなければならない点などの要因がある.また,心房細動に対しては薬物治療ばかりではなく,電気的除細動やペースメーカー治療さらにはカテーテルアブレーション等の非薬物治療も存在するため,治療の選択肢が多い.2006 年にACC /AHA / ESC の心房細動診療ガイドライン1)が改訂されたこともあり,本稿では当ガイドラインを中心に心房細動の薬物治療に関して概説する. -
心房細動に対するアブレーション
2巻2号(2007);View Description Hide Description近年,局所異常興奮,すなわち孤立性あるいは反復性の心房期外収縮が心房細動発生のトリガーとなることが報告され,本心房期外収縮が心房細動の発生機序として重要であることが認識されている.本起源の多くは肺静脈内心筋に存在することから,肺静脈開口部への焼灼により,肺静脈心筋と心房筋を電気的に離断する肺静脈隔離アブレーションが開発され,広く施行されている.しかしながら,本アブレーション法における成績の限界性や合併症の発生の報告もあり,付加的なアブレーションの開発も進んでいる.本稿では,電気的肺静脈隔離アブレーションを中心に,今なお変化しつつある心房細動に対するカテーテルアブレーションについて概説する. -
上室性頻拍(心房細動を除く)に対する治療−薬物療法とアブレーション−
2巻2号(2007);View Description Hide Description上室性頻拍は,房室結節を含む心房部位に頻拍の起源を有する不整脈の総称である.頻拍は発作性に出現するタイプが大半を占め,一般に発作性上室性頻拍(paroxysmal supraventriculartachycardia ; PSVT)と呼ばれる.他の頻拍と同様,頻拍が持続し得る機序としてリエントリー(reentry)や異常自動能(abnormal automaticity),激発活動(triggered activity)が知られているが,臨床的にはリエントリーを機序とするPSVT が多い.発症年齢は小児期から高齢まで幅広く,全体としては基礎心疾患のない例が多いが,高血圧心や心臓弁膜症,陳旧性心筋梗塞などの器質的心疾患に合併するタイプや心臓手術後に好発するタイプもある.発作中の血行動態は保たれている場合が多く,発作性に始まる動悸症状を主訴とするが,頻拍レートが著しく速い例や心機能低下例では,ふらつきや失神,急性心不全などを来す場合もある. -
特発性心室性不整脈に対する治療−薬物療法とアブレーション−
2巻2号(2007);View Description Hide Description欧米においては基礎心疾患(特に虚血性)を伴う心室頻拍(ventricular tachycardia ; VT)が多く,基礎心疾患を有さない特発性VT は比較的まれとされている.しかし,わが国を含む東アジア地域では特発性VT のほうがむしろ多く,臨床的に重要である.一般的に特発性VT の予後は良好であるが,失神,心不全などの症状を引き起こす可能性もあり,適切な治療が必要である.カテーテル・アブレーションの適応は基本的には薬剤治療の抵抗例であるが,持続性VT や症状が強い症例においては,その根治性からfirst line therapyの1 つとして考慮されるべきである.特発性VTはその起源,機序,アブレーション・アプローチ法に従って表1 のように分類されるが1),本稿ではそれぞれの心電図学的特徴,抗不整脈薬効果,カテーテル・アブレーションに関して図・動画を中心に解説する. -
器質的心疾患に合併した心室頻拍をどう治療するか−薬物療法とアブレーション−
2巻2号(2007);View Description Hide Description急性の心筋虚血に生じる心室頻拍(ventriculartachycardia ; VT)の機序としては,撃発活動,あるいは膜電位が浅くなることによる異常自動能や一過性の伝導遅延によるリエントリーなどが考えられる.一方,陳旧性心筋梗塞,心筋疾患,弁膜症・先天性心疾患およびその術後などの器質的心疾患に合併するVT の発生機序の多くは,線維化あるいは脂肪化した組織内に残存する心筋細胞を介する伝導遅延,もしくは心筋の異方向伝導による伝導遅延を基盤としたリエントリーである.しばしば血行動態の不安定化を招く重症不整脈であり,心不全と並んで,器質的心疾患における重要な死因となる. -
ICDの適応拡大とその問題点−予後改善とQOL改善の狭間−
2巻2号(2007);View Description Hide Description心筋梗塞急性期を克服しても,社会復帰した後の慢性期に突然死する症例があり,その原因は心室頻拍,心室細動と考えられている.心室頻拍が認められる症例の予後は極めて不良である.心室期外収縮が心室頻拍,心室細動の引き金となる.陳旧性心筋梗塞症例においては心室期外収縮が多い程,生命予後が不良である.しかし,㈵群抗不整脈薬により心室期外収縮を抑制しても予後改善ができないばかりか,むしろ悪化させてしまう.㈽群抗不整脈薬であるアミオダロンには突然死予防効果が認められているが,抗不整脈薬の効果は必ずしも確実ではないので,ひとたび心室細動を起こしてしまえば突然死を防ぐことはできない.一方,植込み型除細動器( implantable cardioverterdefibrillator ; ICD)には心室頻拍,心室細動の予防効果はないが,突然死の予防効果は高いと考えられる(図1). -
不整脈の外科治療
2巻2号(2007);View Description Hide Description外科治療は,対象とする臓器を問わず病変を直接目で確認して治療を行うことから,高い根治性を特徴とする治療法である.不整脈手術は,目には見えない心臓の電気現象を切開,縫合,凍結あるいは焼灼にて変化させて根治しようとするところに特殊性がある.現在,外科治療の対象となっている頻脈性不整脈は心房細動と心室頻拍である.心房細動手術は,高率に洞調律を復帰させて動悸や不整脈などの自覚症状を改善するだけでなく,心房収縮の回復により脳梗塞などの血栓塞栓症を回避し心機能も改善する.致死性心室性不整脈による心臓突然死を予防するには植込み型除細動器(implantable cardioverterdefibrillator ; ICD)が極めて有効であるが,ICD を植え込んでも不整脈の発生を予防することはできない.心室頻拍手術の一つであるDor 手術は,心室頻拍に対する極めて高い有効性が示されている. -
新しいアブレーションの手法−冷凍凝固法,心外膜カテーテルアブレーション−
2巻2号(2007);View Description Hide Description近年,心房細動を含む,多岐の不整脈にわたりカテーテル焼灼治療が可能になってきている.欧米ではアブレーションカテーテル,マッピングシステムの開発とその臨床応用が迅速に行われており,その進歩には目を見張るものがある.より大きなリージョンを作成するi r r i g a t i o ncatheter,熱による心内膜の損傷なしに低温にてリージョンを作るcryocatheter,術前に撮影した3DCT,MRI 画像などを読み込みその上に正確なマッピングを行うことができるCARTO Merge システム,などが非常に効果的に用いられている.本邦では残念ながらこれらの最新技術の承認が遅れているため,同じアブレーションを行うにも時間がかかり,労力を要する状態が続いている.本稿では,“新しいアブレーションの手法”をトピックに,心外膜アブレーション,そして,cryocatheter について触れたいと思う.
-
連載
-
- CIRCULATION GRAPHICUS
-
そのディテール、わかりやすく正確に
2巻2号(2007);View Description Hide Descriptionいつも「図に示す」などといいますがイラストとシェーマとスケッチはどう違うのでしょうか。今回の図の症例は生後2 カ月の男児で、冠状静脈洞Coronary Sinus(以下CS)に還流しているタイプの総肺静脈還流異常症ですが、左上肺静脈のみ無名静脈に還流していましたのでDarling IA+IIA 型です。ASD 径は6mm でCS 開口部は8mm でした。図1-a はCS の後壁(天井)を、ASD を通って左房に向かってcut back しているところで1)、また図1-b はcut back した面の断端形 - 最先端医療 循環器系の再生医学
-
細胞シート工学による心筋組織移植法の開発
2巻2号(2007);View Description Hide Description近年の幹細胞生物学や再生医学の発展により,循環器領域においても虚血性心疾患や拡張型心筋症による重症心不全に対する再生医療が現実的なものとなっている.特に細胞浮遊液を傷害心筋組織内に注入することにより血管あるいは心筋組織を再生させる方法は世界中で研究が行われ,自己の筋芽細胞や骨髄由来単核球細胞を用いた細胞移植の臨床応用がすでに始まっている1).これまでに左室駆出率約5 %改善という細胞移植の有効性を示すデータもあれば,ほとんど心機能は改善しなかったあるいは不整脈を誘発したといった報告もなされており,これから - 症例からみる・わかる心血管エコー講座
-
診療のポイント− 救急のエコー−
2巻2号(2007);View Description Hide Description心エコーは非侵襲的に行える検査であり,救急疾患の診断における有用性は極めて高い.しかし,救急の現場では体位変換や息ごらえができず良好な記録が難しい場合も多い.また,重症患者では通常の観察に比べて緊急性が求められるため,限られた時間でポイントを絞った観察を行い,適切な診断に至ることが重要である.救急外来における心エコー検査は,あらかじめ1 つの疾患を狙って行うことよりも,症状に対していくつかの鑑別疾患を考え,それらを絞っていくために施行されることが多い.いいかえれば,diseaseoriented よりもsymptom oriented な検査を行うことになる.そこで,本稿では救急外来で遭遇する症状から,心エコーを用いて評価すべき疾患・病態をあげ,その観察のポイントを述べる. - 心電図モニターでどこまで病気が読めるか
-
STが異常な波形
2巻2号(2007);View Description Hide DescriptionST-T 変化を来す心疾患としては,虚血性心疾患がその代表であるが,近年,V1 〜 3 誘導でST上昇を伴う右脚ブロック様波形を特徴とするBrugada 症候群が注目されている.ここでは,これらの疾患を中心に概説を行いたい. - トラブルパターンから学ぶME機器の安全
-
人工心肺装置(CPB)
2巻2号(2007);View Description Hide Description心臓あるいは胸部大血管の病変に対し,肉眼直視下で手術により修復する際に血流や心拍動が妨げとなるため,心血流を一時的に遮断しなければならない.その間の血液循環を維持するために静脈から血液を体外に誘導し人工的に酸素加し動脈に再送する生体の心臓と肺の機能を代行する体外循環を行う装置が人工心肺である.さらにその主たる機能以外に,出血を回収するサクション,心臓の過伸展を防止するベント,血液を加温冷却する熱交換器,心臓を停止させて心臓を保護する心筋保護液など多くの補助操作を含む総合的なシステムである(図1). - CIRCULATION data file 新製品・新しい薬剤
-
MPS心筋保護液供給システム
2巻2号(2007);View Description Hide Description近年,体外循環の適応症例に対する心筋保護法は各施設により多種多様に施行されている.また今後は,マイクロプレジャー(全血に微量な薬液を添加したシンプルかつ効果的な心筋保護法)や各患者,各症例などに適した心筋保護法を行う方向性が予想される.現行と将来の心筋保護法に対応する,クエストMPS 心筋保護液供給装置(図1 ;以下MPS)は,より高い精度での注入と安全のための自動制御機能を有した心筋保護装置の開発を目指し完成に至った.