サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 2, Issue 4, 2007
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特集
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- ビジュアルでわかる心不全の診断と治療
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血液学的検査BNPその他で心不全がわかる
2巻4号(2007);View Description Hide Description病態の性状を反映する血液学的検査は,昨今バイオマーカーと呼ばれている.心不全領域でのバイオマーカー研究は,最近常に注目の的である.その背景には, ① 心不全の診断自体が非専門医には意外と難しいことが多い, ② 高齢化社会における心不全人口の増加と心不全病期分類Stage A / B で代表される予防的戦略の拡充1)により,心不全診療にプライマリケア医を含めた広範な診療スタッフの参画が必要となった,ことがあげられる.すなわち,採血のみの検査手技で,かつ,数値のみで表わせる簡便な臨床指標が望まれている.その代表格が,BNP である. -
エコー・ドプラ法で心不全を診る
2巻4号(2007);View Description Hide Description心不全とは「心機能低下により末梢組織の代謝に必要な血流量を心臓が拍出できないか,または,心室流入圧の必要以上の上昇によってのみ可能な状態である」と定義される.末梢組織の代謝量は種々の病態や状態によって変化するため,心機能低下だけでは心不全の重症度は決まらない. 心不全の診断においては,左心不全,右心不全,収縮能,拡張能という要素に分けて考えると理解しやすい. -
核医学検査で心不全を診る
2巻4号(2007);View Description Hide Description放射性同位元素を用いた核医学検査によって,非侵襲的に心筋血流や心筋障害のみならず心筋代謝や心臓交感神経活性などを画像として評価できる.さらに心電図同期SPECT とQGS(quantitativegated SPECT)の普及によって,心機能とともに心筋血流・代謝に関する情報は飛躍的に増えている.本稿では心臓核医学検査からみた心筋障害・心不全の画像診断・重症度評価・治療効果の判定および予後の推定について説明する. -
CT・MRIで心不全を診る
2巻4号(2007);View Description Hide Description近年,心臓CT,心臓MRI ともに装置とアプリケーションが急速に進歩してきた.それらは冠動脈の有用性が最も重要であり,それぞれルーチン検査にも組み込まれつつあるが,実は冠動脈だけでなく,心機能,心筋灌流,心筋生存能の情報も得ることができる.このうち心不全の診断と病態把握のために関連の深い心機能の解析についても,シネCT,シネMRI の技術を用いて,ともに左心室全体が観察可能であり死角もない. 本稿では心不全診断に必要不可欠な情報を得ることができるシネCT とシネMRI について,実際の症例を提示しながら解説する. -
病態からみた薬物療法で心不全を治す
2巻4号(2007);View Description Hide Description慢性心不全は基本的には心機能の低下によって,あるいは基礎に低下した心機能をもって進行する.すなわち心機能不全が根底にある.この心機能不全は進行性である.推進力は神経体液性因子の亢進とリモデリングである. β 遮断薬やACE阻害薬(あるいはアンジオテンシン㈼ 拮抗薬(ARB))による慢性心不全の予後の改善はこのモデルの妥当性を証明した.近年,慢性心不全における心腎連関,インスリン抵抗性の重要性が指摘されている. -
補助循環で心不全を治す
2巻4号(2007);View Description Hide Description心不全に対する各種治療法の進歩により,その治療成績は向上してきた.しかし,心筋細胞や心筋組織障害が高度かつ広範囲にわたる症例に対しては,いまだ限界がある.このような症例に対しては,心臓ポンプ機能の短期的,あるいは長期的な代行が必要となる.その機械的な代行機能のことを補助循環という1).(図1) 補助循環には,緊急時に短期的に使用する大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloonpumping;IABP),経皮的心肺補助法(percutaneouscardiopulmonary support;PCPS)と,長期的な補助を必要とする場合に用いる補助人工心臓(ventricular assist system;VAS)が存在する. -
心室同期で心不全を治す
2巻4号(2007);View Description Hide Description慢性心不全患者の20%以上に認める心室内伝導障害は,心室の非協調的,非効率的収縮様式をもたらし,心不全の悪化要因,予後規定因子となる.1990 年代前半,この心室同期不全を是正する目的で両室ペーシング法が考案された.その後,本法は“ 心臓再同期療法(cardiac resynchronizationtherapy;CRT)” の名で急速に普及し,瞬く間に重症心不全治療に不可欠な選択肢の1 つとして確立した.そして現在CRT デバイスは,除細動機能やさまざまなモニタリング機能を付加し,さらなる進化を遂げようとしている.本稿では,CRT の基礎から有効性,適応,新しい機能までを概説する. -
心筋形成術で心不全を治す
2巻4号(2007);View Description Hide Description重症心不全に対する治療は内科的治療が主体となるが,内科的治療に抵抗性の重症心不全に対しては心臓移植が最も有効な治療とされてきた.しかしながらドナー不足は世界的に深刻であり,特に日本においては心臓移植はまだ定着した治療とは言い難い.1980 年代より左心室を縮小・形成することにより予後が改善することが明らかとなり,心臓移植と並び重症心不全に対する外科的治療として注目を集めるようになった.代表的な方法には心筋梗塞に伴う左室瘤に対しパッチを用いて左室縮小を行うDor 手術と,拡張型心筋症に対し左室側壁を部分切除し左室の縮小化を図るBatista 手術がある.
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連載
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- CIRCULATION GRAPHICUS
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心臓の三次元的イメージ
2巻4号(2007);View Description Hide Description診療や手術や勉強でお疲れになったところで、気分転換に手遊びをやってみましょう。右手と左手で心臓を作ります。右心室は昔からグローブ型とされますから別に目新しくもないのですが、右手が右心系、左手が左心系です。 - トラブルパターンから学ぶ ME 機器の安全
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除細動器
2巻4号(2007);View Description Hide Description心室細動時にもっとも効果的な処置は,早期の除細動であることは広く知られている.除細動器は,機器本体に内蔵されたコンデンサーに大電流(数百〜数千V)を蓄積し,短時間(数ms)にパドルを通じて体内に電流を流すことで,今まで不規則に興奮していた心筋細胞を同時に興奮させ,心臓全体を本来の規則正しいリズムに戻す装置(図1)で,緊急を要する心室細動,無脈性心室性頻拍や心房細動,心房粗動,不安定上室性頻拍などの治療に必要な場合(同期下カルディオバージョン)にも用いられる. - 実践! 心臓・冠動脈CT の撮り方・診方
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CT による冠動脈バイパスの評価
2巻4号(2007);View Description Hide Description冠動脈バイパス後の患者の予後は,グラフトの開存性と冠動脈の動脈硬化病変の進行により決まる.このため,術後早期・遠隔期のグラフト開存性,吻合部評価とともに,冠動脈の動脈硬化性病変を把握する必要がある.冠動脈造影法(coronaryangiography;CAG)は,冠動脈バイパス評価のgold standard であるが,侵襲的CAG を繰り返して施行することは,患者の負担のみでなく,医療経済上も問題である.近年,マルチスライスCT(multidetector spiral computed tomography;MDCT)を用いて,非侵襲的に冠動脈バイパスの評価している施設は多い.64 列MDCT では,多列化とともに,管球1 回転の時間が短縮し,撮影時間の短縮,時間分解能の改善が得られた.これらにより,16 列MDCT 時代には不可能であったグラフト全体を1 回の呼吸停止間に評価することが可能となり(図1),術後の高心拍の患者にもある程度対応できるようになった. 本稿では,グラフトの特徴,撮影方法,撮影範囲,グラフトの開存性評価,グラフト狭窄病変の評価,MDCT の問題点について記載する. - 心電図モニターでどこまで病気が読めるか
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U 波が異常な波形
2巻4号(2007);View Description Hide DescriptionU 波はT 波に引き続き認められる穏やかな波で,1912 年にEinthoven によって記載された1).通常は,V2 〜 V4 で認めることが多く,T 波と同じ極性を示す.その振幅は,T 波の振幅の10%程度(3~24%)で2),四肢誘導にて0.1mV,胸部誘導にて0.2mV を超えないとされている3). 一方,U 波はT 波やP 波と重なることもあり,鑑別が困難なことがある.特にT 波の形態が二相性に変化している場合では注意を要する. ここではU 波の成因と異常U 波について概説を行いたい. - CIRCULATION data file 新製品・新しい薬剤
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ヴァートサフ内視鏡下血管採取システム
2巻4号(2007);View Description Hide Description近年,心臓外科手術において低侵襲が広くうたわれるようになり,冠動脈バイパス術においても心拍動下冠動脈バイパス術(off pump coronaryartery bypass grafting;OPCAB)が積極的に行われるなど,低侵襲化が進んでいる.しかし冠動脈バイパス術に使用されるグラフトのうち,大伏在静脈の採取においてはグラフト長と同等の長い皮膚切開を必要とし,治癒不全,感染症を引き起こす二次的な問題がある.またこれらの問題がリハビリの遅れ,在院日数の延長,追加治療を必要とし,結果的に術後の医療費増加につながっていると考えられる.患者さんにとってもグラフト採取後の傷は,長く残る心の傷であり,「痛み」という観点からも侵襲が大きい方法であるといえる. これに対し内視鏡下伏在静脈採取術は,2cm ほどの小切開を膝部に加えるだけで,必要分のグラフト採取が可能である.この方法は,患者の満足度,術後合併症予防の観点からも有効な手段であり,すでに米国では一般的な手技として確立されている.日本でも患者さんの低侵襲ニーズが高まる中,スタンダードになることが考えられる.
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総目次
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