サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 4, Issue 1, 2009
Volumes & issues:
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第1部特集
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- 心臓治療のシミュレーション教育システム
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僧帽弁シミュレーション実験と冠動脈吻合訓練
4巻1号(2009);View Description Hide Description最近,「EBM;evidence based medicine」,すなわち過去の科学的データ分析に基づいた医療の重要性が広く認識されるようになっている.しかし,今我々がここで提唱しようとしているのは,「もうひとつのEBM;engineering based medicine」である1).これは,医学領域のさまざまな事象や問題に対してバイオエンジニアリングの手法を駆使して課題の解決を図るアプローチであり,そこには医師とエンジニアの緊密な連携が不可欠である.本稿では,その中から冠動脈吻合訓練シミュレータと僧帽弁形成術評価シミュレータを取り上げ,医療応用について概説したい. -
体外循環シミュレーションシステムECCSIMおよびECCSIM-Lite
4巻1号(2009);View Description Hide Description開心術において人工心肺装置は患者の心肺機能を代行し,さらに大量の血液が体外循環する非生理的な状況にあるため,人為的トラブルが致死的な事故につながる.航空業界など操作ミスが人命に関わる機器・装置の訓練では,実際に発生しうる事象を高いレベルで再現できるシミュレータシステムが導入され,ヒューマンエラーの削減に効果を上げている.麻酔医学教育の分野では,1960年代から数多くの教育用患者シミュレータが開発されているが,生理学的要素の再現性レベルの向上が,高度な判断と対処技術の教育に有効とされている1).医学と工学の双方に対する深い理解に基づく状況判断と意思決定,対処を要求される体外循環技術においても,同様のシミュレータシステムの開発と普及が必要である. 著者らは2003 年より体外循環装置の操作に携わる医療従事者の安全教育,養成校教育へ適用するための体外循環教育用シミュレータECCSIM(Extra-corporeal circulation simulator)の開発を継続してきた2〜4).本稿では,このシステムの概要と現状および将来展望について述べる -
亀田総合病院のシミュレーションセンター(CSSセンター)の紹介
4巻1号(2009);View Description Hide Description近年,医療安全の観点から,シミュレーショントレーニングの重要性が強調されている.諸外国ではすでに,シミュレーション専用のビルが建てられている.亀田総合病院では病院内の一角にシミュレーションセンター(CSS センター)を立ち上げ,除細動器のトレーニング,人工呼吸器のトレーニング,さらにはACLS などの心肺蘇生のシミュレーショントレーニングを行っている.本稿では当院のシミュレーションセンターを紹介する.
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連載
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- CIRCULATION GRAPHICUS
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- 専門医に求められる最新の知識
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- 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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- 私の循環器科運営術
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バランスのとれた循環器内科を目指して
4巻1号(2009);View Description Hide Description天理よろづ相談所病院は奈良県の天理市にある病院で,医学教育で全国に先駆けてレジデント制を導入したことで有名である.昭和41 年4 月に開設され,現在は831 床の本院(写真)と,療養病床と精神病床を持つ186 床の分院に分かれている.26 診療科目があり総医師数は200 名を超える.奈良県だけでなく近畿一円を診療圏とする地域の中核病院である.名前が示すように天理教の教えに基づいて運営されており,“ 全人的医療” への取り組みを続けている.天理教と高度医療とは相反するものではなく最先端の医療を積極的に実践している.私自身は北九州にある循環器臨床の総本山ともいえる小倉記念病院で延吉正清先生(同病院長)の指導を10 年以上にわたり受け,京都大学では北徹教授・木村剛准教授の指導を受けてきた. 平成18 年8 月に部長として着任し2 年が過ぎた.当院の循環器内科の歴史と伝統を守りつつ,一層の発展を目指して奮闘中である.この2 年間の自分の取り組みの方針について紹介したい.
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第2部特集
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- 急性冠症候群の治療スタンダード
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救急室における対応
4巻1号(2009);View Description Hide Description急性冠症候群は,冠動脈の粥状硬化による内膜下のプラーク破綻と血栓形成により生じる冠動脈病変の急激な進行により冠血流が減少し心筋虚血が惹起された結果として発症する症候群とFuster により提唱され,急性心筋梗塞,不安定狭心症,ならびに心臓突然死が含まれる(図1).胸痛,胸部圧迫感,動悸といった胸部症状を主訴に来院した患者のうち,㈰急性冠症候群を疑わなくてはならない患者はどんな患者か,㈪胸痛が消失している患者で心電図が正常,トロポニンTが陰性ならば,帰宅させてよいか,㈫胸痛患者で客観的所見を有しない場合の次の手順は何か,これらの課題を中心に危機管理的な視点で解説する. -
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PCIとその後のCCUでの対応
4巻1号(2009);View Description Hide Description急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)に対する緊急の経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)は,本邦では積極的に行われている.ST上昇型心筋梗塞(ST-segment elevation myocardialinfarction ; STEMI)では,梗塞範囲の縮小のため,急性期のPCI による早期再灌流療法が確立している.不安定狭心症や非ST 上昇型心筋梗塞(unstable angina/non-ST-segment elevationmyocardial infarction ; UA/NSTEMI)においても,リスク分類に基づき,中〜高リスクの場合は,ステントと強力な抗血小板薬の出現により,早期侵襲的治療が安全で効果的とされつつある. しかし,ACS に対する緊急PCI における手技や管理について,2007 年に改訂された日本循環器学会のガイドライン1)でも詳細は述べられていない.本稿では,緊急PCI において,実際に行っている手技や薬剤の使用についてまとめてみた. -
CCUでの管理
4巻1号(2009);View Description Hide Description急性冠症候群(ACS)の主病態は,冠動脈プラークの破綻または潰瘍化に伴う閉塞性血栓形成であり,心筋梗塞,不安定狭心症,虚血性の心臓突然死が分類される.高度の心筋虚血が一定以上持続すれば心筋壊死を伴い心筋梗塞と診断され,虚血の程度や持続時間が短く心筋壊死を伴わなければ不安定狭心症と診断される. 心筋壊死を伴う心筋梗塞は,致死的な合併症の出現がその後の予後を著しく低下させるため,心筋虚血が主体である不安定狭心症とはCCU での管理方針が異なる.ACC/AHA のガイドラインでは,心電図におけるST 上昇型心筋梗塞と不安定狭心症/非ST 上昇型心筋梗塞で異なったガイドラインを作成している1,2).このため,ACSを疑う症例で20 分以上持続するような安静時胸痛を訴えて来院された場合は,病歴,身体所見,12 誘導心電図,心筋逸脱酵素の確認を行い,心筋梗塞か不安定狭心症かを即時に判断する必要がある. -
急性冠症候群における心臓外科の役割
4巻1号(2009);View Description Hide Description急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)は,狭義には不安定狭心症(unstable angina;UA)および非ST 上昇型急性心筋梗塞(non-ST elevation myocardial infarction;NSTEMI)を意味するが,広義にはST 上昇型急性心筋梗塞(ST elevation myocardial infarction;STEMI)および急性心臓死も含む.本稿では,UA,NSTEMI にSTEMI を含めて述べる.早期に保存的治療が選択され,病態が安定したのちの待機的冠動脈バイパス(coronary artery bypassgrafting;CABG) は, 安定狭心症におけるCABG に準じる.ゆえに本稿では,ACS に対して経皮的冠動脈インターベンション(percutaneouscoronary intervention;PCI), あるいはCABG による早期侵襲的治療を要するという前提で述べる.
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連載
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- 心臓血管手術のコツとピットフォール 一流術者のココが知りたい
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大動脈弁輪拡張症に対する自己弁温存手術—Reimplantation 法—
4巻1号(2009);View Description Hide Description標準術式とは,標準的な術者が妥当な結果を得られることが必要不可欠であり,術式の簡便性,普及度,大動脈解離や高齢者などの患者背景を考慮すると,現状としてはBentall 手術が大動脈基部置換術の標準術式であることは間違いないものと思われる.しかし,若年層や大動脈弁逆流を伴わないAAE などにおいては自己弁温存手術の方が望ましいと思われ,一標準術式として確立されることが期待される.Bentall手術における手技を十分に修得した術者にとっては,自己弁温存手術の中でも手技としてはreimplantation法がBentall 手術に類似しており,また術後出血を容易にコントロールできる点から,新たな術式への展開として取り入れやすい.そこで本稿では,次世代を担う術者たちへのアドバイスとして,reimplantation法のコツとピットフォールを解説したい. - 心血管インターベンションのコツとピットフォール 一流術者のココが知りた
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PCI 時の思わぬ合併症とその対策—血管穿孔の対策—
4巻1号(2009);View Description Hide Description冠動脈ステントの導入以後,PCI はきわめて安全なものになった.しかし,依然として予期せぬ合併症に遭遇することがある.本稿では,筆者が実際に経験したPCI 時の血管穿孔について, 患者の症状に即して手技上の問題点と対策について述べたい.