サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 4, Issue 2, 2009
Volumes & issues:
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第1部特集
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- 臨床で役立つ間違えない循環器薬の使い方
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間違えない循環器薬の使い方:ACE阻害薬とARB
4巻2号(2009);View Description Hide DescriptionACE 阻害薬とARB は作用機序が類似しており,その適応もオーバーラップしている.しかしながらこれらの2 つの薬剤の機序は微妙に異なる.人においてはアンジオテンシンⅠからⅡへの変換にはアンジオテンシン変換酵素のみならずキマーゼ系も関与する.従ってACE 阻害薬はアンジオテンシンⅡへの変換抑制作用は不十分である.しかしながらACE 阻害薬にはキニンの分解阻害作用もあり,そのためにブラジキニンが蓄積され咳の原因となる一方,血管拡張,内皮機能改善,血栓抑制などのベネフィットもあるとされている.ARB は受容体レベルでアンジオテンシンⅡの作用を阻害するのでより確実であるが,AT1受容体の阻害のみに限られており,AT2 受容体を介しての刺激はむしろ増加する.このAT2 を介する作用には増殖抑制などのベネフィットもあるが,一方でアポトーシス誘導などの弊害ももたらす可能性がある. 本項ではいくつかの代表的な疾患についてACE 阻害薬とARB のエビデンスを示しながらこれらの薬剤の使い分けについて解説する. -
間違えない循環器薬の使い方:β遮断薬
4巻2号(2009);View Description Hide Descriptionβ遮断薬は1960 年代に登場して以来,現在わが国において30 種類以上が販売されている.本剤の適応疾患は,主に高血圧,不整脈,狭心症であるが,最近では従来禁忌とされていた心不全に対しても,積極的に使用されるようになっている.しかし,β遮断薬は副作用が多いと考えられているためか,わが国ではまだβ遮断薬の使用頻度は必ずしも高くない.本項では,β遮断薬の特性やエビデンスを紹介し,主に心不全患者に対する使用法について解説する. -
間違えない循環器薬の使い方:Ca拮抗薬
4巻2号(2009);View Description Hide DescriptionCa 拮抗薬の適応は一般的には高血圧,狭心症であるが実際の使用対象は高血圧症がほとんどである.本稿では,われわれの行ってきたJMIC-B試験を中心にCa 拮抗薬の循環器疾患治療薬における位置付けを概略する. -
間違えない循環器薬の使い方:利尿薬
4巻2号(2009);View Description Hide Description心不全において利尿薬は,基礎治療薬として広く認められている.しかし,一部の利尿薬の使用は予後を悪化させるという報告も認められる.利尿薬の使用方法を心不全の急性期および慢性期に分けて論じたい. -
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間違えない循環器薬の使い方:抗不整脈薬
4巻2号(2009);View Description Hide Description抗不整脈薬は心筋細胞のイオンチャネルに直接的または間接的に作用し,イオン電流を変化させることにより心筋の電気活動を変化させる.この変化が,本来目的とする働きをすれば抗不整脈作用となるが,場合によっては催不整脈作用ともなり得る.さらに,イオン電流を抑制すると心筋の収縮能を低下させることもある.CAST 試験1)などの大規模臨床試験において,安易な抗不整脈薬の投与は生命予後を悪化させる可能性が指摘されているのは周知の事実である. 現在,その臨床試験の結果などを踏まえ,抗不整脈薬のより安全でより効果的な使用法が求められている.そのために各薬剤の特性を十分に理解し,個々の症例に最適な薬剤選択をしていく必要がある.本稿では,実際の臨床現場で抗不整脈薬の選択(使用するべきか否か,種類,使用法,使用量,使用期間,副作用など)に迷う不整脈である心房細動,心室頻拍(心室性期外収縮含む)に的を絞り,考えていきたい. -
間違えない循環器薬の使い方:強心薬
4巻2号(2009);View Description Hide Description急性心不全症例には,しばしば強心薬の静脈内投与を必要とする.強心薬は心筋の収縮性を上げて心拍出量を増加させる一方,心筋酸素消費量を増加させたり,不整脈を誘発したりすることがある.強心薬に対する考えは,心不全への病態認識の変化に伴い,変わりつつある.本稿では,まず強心薬について簡単に概説したのち,実際に強心薬を使うときに生じる問題点・疑問点について述べる.
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座談会企画
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「Off Pump CABGにおける心臓にやさしい視野展開」
4巻2号(2009);View Description Hide DescriptionOPCAB における完全血行再建を行うには,全冠動脈領域での安全で確実な視野確保が重要である.3つのカップと3本のチューブで心臓を捉える分散型多方向性ハートポジショナー・テンタクルズは,これまでにない自由な視野展開を可能にした.今回の座談会では,テンタクルズ開発のきっかけ,その有効性と使用上のコツ,トラブルシューティング,他の術式への応用などについても,意見交換が行われた.その模様をリポートする.
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第2部特集
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- 患者のための人工弁選択と抗凝固療法
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ステント生体弁に適する弁置換術の実際
4巻2号(2009);View Description Hide Description生体弁の利点は血栓塞栓症などの合併症が少なく,抗凝固療法の必要性が軽減できる点にあるが,機械弁に比べ耐久性が劣ることにより再手術の確率が高いという欠点がある.生体弁の種類としては自己弁・同種弁および異種弁があり,異種弁はブタ大動脈弁を用いたものとウシ心膜を用いたものに分けられる.また異種弁は構造的にステントが付いたもの(ステント生体弁)とステントを外したもの(ステントレス生体弁)に分けることができる.現在,使用されている生体弁のほとんどはステント生体弁であり,これについて解説する. -
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弁置換術後の抗凝固療法におけるエビデンス
4巻2号(2009);View Description Hide Description人工弁置換術後遠隔期の患者の管理として抗凝固療法は診療の中心をなすものである.抗凝固療法の成否によって術後遠隔期の予後が左右されることも多い.さらに弁膜症手術における術式選択,弁置換術における弁種の選択も抗凝固療法に対する患者のコンプライアンスによって大きく左右される.従ってわれわれは弁膜症の患者を管理するに当たって抗凝固療法の根拠となるエビデンスおよび指針について常にアップデートさせておく必要がある.本稿では主として本邦および米国の最新ガイドラインを参考として,人工弁置換術後における抗凝固療法および人工弁置換における弁種選択に関する最新のエビデンスをまとめてみた.
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連載
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- CIRCULATION GRAPHICUS
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- 専門医に求められる最新の知識
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体外式カウンターパルセーション
4巻2号(2009);View Description Hide Description人口の高齢化,ライフスタイルの欧米化とともに,本邦でも虚血性心疾患(ischemic heart disease:IHD)が急速に増加している.特に本邦症例は糖尿病合併症例が約半数を占め,血行再建治療の困難な高度末梢狭窄病変および心不全合併例の頻度が高い.カテーテル治療やバイパス手術の手技やデバイスの進歩は,このような症例に対する治療・初期成績を向上させたが,今なお治療に難渋する症例にしばしば遭遇する.体外式動脈カウンターパルセーション(external counterpulsation:ECP)は,特にそのようなIHD 症例に対する治療の1 つの選択肢として,また安全で低コストな方法として,欧米ではかなり広く認知されている. - 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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- 心臓血管手術のコツとピットフォール 一流術者のココが知りたい
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冠動脈バイパス手術の際の側側吻合法
4巻2号(2009);View Description Hide Description近年冠動脈バイパス手術(coronary artery bypassgrafting:CABG)に際し,長期開存性を期待して内胸動脈(internal thoracic artery:ITA)や右胃大網動脈(gastro-epiploic artery:GEA)といった動脈グラフトが多く用いられている1).2005 年の日本胸部外科学会の報告2)では全CABG のうち29.0%が動脈グラフトのみでバイパスされており,2007 年の日本冠動脈外科学会の全国統計3)では動脈グラフト総数の割合は65.8%であったと報告されている. 末梢側吻合はグラフトと冠動脈を端側で行うのが一般的である.この際,ITA やGEA は大伏在静脈グラフト(saphenous vein graft:SVG)と比較すると小口径であるため,吻合口の有効面積を広くするために割面にスリットを入れる方法が採られている.この方法では縫合線にミスマッチを生じ得る.そこで小口径グラフトに対し,縫合線が冠動脈切開口と一致する側側吻合法の手技の詳細と臨床的な長所を紹介する.