サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 4, Issue 3, 2009
Volumes & issues:
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第1部特集
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- 心血管インターベンション手技のコツとポイント
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- 冠動脈の困難病変に対するインターベンション手技のコツとポイント
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慢性完全閉塞
4巻3号(2009);View Description Hide Description完全血行再建は長期生命予後改善効果を有するため, 慢性完全閉塞病変(chronic total occlusion:CTO)に対する再血行再建は特に多枝病変症例においては避けて通れない.CTO は動脈硬化性病変と血栓で閉塞している急性冠症候群による閉塞病変とは異なり,3 カ月以上閉塞が持続(=慢性的)し,器質化しており血管走行が完全には把握しにくいためガイドワイヤー(GW)操作が不確実なことが経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI) における最大の不成功原因である.裏を返せば血管走行と閉塞部の病変性状をいかに完全に把握するか,把握したところにいかにGW を操作するかが成功のポイントとなる.現在ではCTO-PCI においては各種のテクニックやImaging modalityが開発され,手技前の病変を評価するための準備,手技中の臨機応変のテクニックの組み合わせが成功のカギとなる.DES 留置の前提の下,CTOPCIはControlled Antegrade and Retrogradesubintimal Tracking (CART) の考え方:CTO閉塞部分を拡張することにより対側からのGW通過を確実に誘導する,が導入され,新たな時代に入ったと思われる.すなわち成功率向上のみならず,手技時間の短縮化,被曝線量や造影剤使用量の低減化を目指す高次元のCTO-PCI を構築することである.本稿ではCTO-PCI のコツとポイントについて私見を述べる. - 末梢血管に対するインターベンション手技のコツとポイント
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鎖骨下動脈
4巻3号(2009);View Description Hide Description鎖骨下動脈狭窄症は動脈硬化に起因し,頭頸部においては内頸動脈に次いで高頻度に発症するとされている.特に左側は右側の数倍から5 倍多いとされる.症状は,病変部位と椎骨動脈派生部との位置関係や両側椎骨動脈の形成度によって異なる.椎骨動脈分岐部よりも中枢側のいわゆるaorto-ostial に好発することを特徴とする1,2() 図1). -
腎動脈
4巻3号(2009);View Description Hide Description昨今の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念の普及に伴い,腎動脈狭窄および腎動脈形成術に対する関心が高まっている.しかしながら本邦ではPalmaz ステント以外のステントを腎動脈に使用することが保険上できないため,その普及,実施に大きなlimitation がかけられている.腎動脈形成術は腎動脈バイパス術に比べ圧倒的に侵襲度が低く,治療効果も腎動脈バイパスに比べ同等である.この有効な治療手技が,安全にかつ有意義に本邦でも展開できるよう,この稿が役に立てば幸いである.また本稿では誌面の都合もあり,動脈硬化性腎動脈狭窄の治療を中心に述べさせていただく(線維筋異形成については割愛させていただく)ことをご了承されたい. -
下肢動脈
4巻3号(2009);View Description Hide Description閉塞性動脈硬化症は高齢化とともに増加傾向にある.末梢血管の狭窄や閉塞は,運動時の下肢虚血の原因となり血行再建により症状の改善が期待できる.治療法はバイパス術とカテーテル治療があり適した治療を選択する.下肢血管の治療は著明に症状を改善するため患者から喜ばれることが多い.本稿では心房細動からの塞栓症を除く,動脈硬化性の末梢血管疾患に対するカテーテル治療について手技的な面から解説する. 末梢血管へのカテーテル治療は大きく分けて,腸骨動脈領域,大腿動脈領域,膝下以下の血管に分けられる.狭窄病変での治療は,冠動脈治療と同様であるが,低圧からゆっくりと拡張しバルーンが十分に拡張すれば高圧にする必要はない.大きな違いは血管径であり冠動脈と同様サイズの膝下病変へのバルーン形成術では再狭窄率が高く,間歇性跛行での一般的適応はない.ただし,重症虚血肢では救肢目的で経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty:PTA)を行う.末梢血管治療での注意点は血管を破裂させないこと,末梢塞栓を生じないようにすることである. - 大動脈血管に対するインターベンション手技のコツとポイント
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胸部
4巻3号(2009);View Description Hide Descriptionきわめて侵襲の大きい胸部大動脈疾患に対する人工血管置換術に代わるものとして,ステントグラフト内挿術が開発されてからすでに20 年が経過している.この間本邦においては,メーカー製のデバイスが入手できなかったため,Z ステントを内部骨格に使用した自作のデバイスが長らく使用されてきた.このような事情で,ステントグラフト内挿術はごく限られた施設でのみ可能とされてきた. しかし,平成20 年3 月にようやくGore 社製のTAG が,メーカー製胸部大動脈瘤治療用デバイス第1 号として認可された(図1).これに伴いデバイスを自作する必要がなくなり,ステントグラフト内挿術が一般的な治療法として普及しつつある. 本稿では,胸部大動脈疾患に対するステントグラフト内挿術を,Gore 社製TAG を例にとって基本的手技を解説する.
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連載
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- CIRCULATION GRAPHICUS
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- 私の心がけていること —心臓病に関するインフォームド・コンセント—
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- My Challenge 心臓血管外科
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- CIRCULATION COLUMN
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第2部特集
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- 臨床に必要な感染性心内膜炎の知識
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最新の薬物治療
4巻3号(2009);View Description Hide Description感染性心内膜炎は弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌集蔟を含む疣贅を形成し,菌血症,血管塞栓,心障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である.目覚ましい医療の進歩を遂げた現在でも,適切な治療が奏効しないとさまざまな合併症を引き起こし,死に至る可能性のある重篤な疾患である.感染性心内膜炎は診断がついた時点で,迅速かつ適切な治療が開始されることが重要である.しかしながら,人口100 万人あたり年間10~50 例と発症頻度が少ないため1,2),診断に苦慮し,適切な治療開始に時間を要することが多い.従って,感染性心内膜炎の発症を未然に防ぐべく,どのような症例がいかなる処置を受ける際がハイリスクで,どのような予防的措置が適切であるかを知るべきである.また,的確な診断がされた後では,有効な抗菌薬を選択し合併症の出現に注意しながら経過を慎重に見ていくことが重要である.本項では,2008 年に改訂された日本循環器学会「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」(JCS2008)3)を中心に,AHA のガイドラインも参照して4,5),予防と治療に関する薬物療法について解説したい. -
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外科治療 —手術手技を中心に—
4巻3号(2009);View Description Hide Description細菌,真菌等の病原による感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)は,弁膜のみならず弁輪部にまで破壊が及ぶことがあり手術手技を複雑にする.また本症は活動期には心臓の問題のみならず,疣贅(vegetation)塞栓症,特に脳梗塞と続発する脳出血,感染性脳動脈瘤破裂,敗血症などの全身臓器に及ぶ危険な疾患である. 本稿では通常の大動脈弁・僧帽弁置換術では対処し得ない弁輪部膿瘍合併症例に対する手術手技,IE 症例に対する僧帽弁形成術について述べる.また脳合併症を有する症例に対する人工心肺時の抗凝固法の工夫についても述べる.
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連載
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- 専門医に求められる最新の知識
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心房細動におけるアップストリーム治療
4巻3号(2009);View Description Hide Description心房細動は,心房の頻回かつ無秩序な興奮が持続する病態であり,不整脈基盤の中に起こる心房性期外収縮の頻発や,遅延伝導によって形成される不規則なリエントリーが異常興奮を維持する機序である.しかし,このような不整脈基盤は生理的に存在するわけではなく,さまざまな基礎病態が引き起こす心房筋の変化,すなわち電気的・構造的リモデリングの進行によって形成される1,2).従来の抗不整脈薬治療やアブレーションは,すでに形成されている不整脈基盤から発生する異常興奮を抑制することを目標とした治療であるが,その不整脈基盤の形成自体を抑制するアプローチも心房細動発生を抑制し得る.このリモデリング過程を抑制する治療は,頻拍成立機序の,より上流をターゲットとするという意味でアップストリーム治療と呼ばれる.異常興奮自体の抑制を目標とするダウンストリーム治療も,アブレーション技術の発達や新たな抗不整脈薬の開発により,その有用性を再評価する必要があるものの,すでに出来上がってしまった不整脈基盤にアプローチするという意味ではその効果が限定的とならざるを得ない.特に基礎疾患を有する症例においては,アップストリーム治療を併用することで,より効率的な頻拍抑制が可能となる可能性がある3,4).本項では,心房筋リモデリングの成立機序と,それを抑制するアップストリーム治療として期待できる治療介入について概説する. - 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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ループ利尿薬
4巻3号(2009);View Description Hide Description循環器診療に使用される利尿薬にはループ利尿薬,サイアザイド系利尿薬,アルドステロン受容体拮抗薬の3 種類がある(表1).この3 つの利尿薬はいずれも循環器診療に欠かせない薬剤であるが,本稿では慢性心不全治療におけるループ利尿薬についてそのピットフォールを解説していきたい. - 心血管インターベンションのコツとピットフォール 一流術者のココが知りたい
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ステントデリバリー困難時の対策
4巻3号(2009);View Description Hide Descriptionバルーンのみの風船治療(percutaneous oldballoon angioplasty:POBA) の時代に比べて,ベアメタルステント(bare metal stent:BMS)の登場により急性冠閉塞の予防・治療は確実なものとなりPCI の安全性は飛躍的に向上した.また,再狭窄を減少させる薬物溶出性ステントの登場により, 経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI) は血行再建の手段として地位を一層高めた.しかし,これらの恩恵はすべてステントが病変部にデリバリーされ,そして拡張され,植え込まれてこそ発揮されるものである.ステント植え込み術が不成功に終わる大半の理由は,ステントのデリバリー不成功である.ステントを病変部へのデリバリーが困難な場合の実践的な対策を論じたい. - 心臓血管手術のコツとピットフォール 一流術者のココが知りたい
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