サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 4, Issue 6, 2009
Volumes & issues:
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第1部特集
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- 依頼からみかたまで詳しく理解 心臓外科医のための心エコーHow to
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術前評価(心エコーからわかること) 僧帽弁形成術
4巻6号(2009);View Description Hide Description僧帽弁形成術は,長期間の抗凝固療法,弁機能不全などの遠隔期の合併症を回避できること,僧帽弁および弁下組織の温存により左室機能が保たれることから,僧帽弁置換術と比較し長期生存率や術後のquality of life が良好である.また,手術死亡率が低く,自覚症状が軽微なうちに手術した方が手術成績や予後が良好なことから,より早期の手術が推奨されている.特に2006 年に改定されたAHA/ACC 弁膜疾患に対する治療指針では僧帽弁閉鎖不全症(MR)の外科的治療の第一選択となり,無症状例に対しても積極的に形成術 -
術前評価(心エコーからわかること) 大動脈弁狭窄症
4巻6号(2009);View Description Hide Description大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)は増加の一途をたどり,もっともポピュラーな弁疾患となりつつある.心エコー法は本疾患の診断に不可欠なツールとして確立しているが,一般にはいまだ十分に理解されていない重要なピットフォールがいくつか存在する.心臓血管外科医が知っておくべき項目を中心に,AS の心エコー診断における注意点について解説する. -
術前評価(心エコーからわかること) 大動脈弁閉鎖不全症
4巻6号(2009);View Description Hide Description大動脈弁閉鎖不全症(aortic regurgitation:AR)の基本病態は逆流による左室容量負荷であるが,一回拍出量の増加により圧負荷も同時に生じる.慢性的な容量・圧負荷は無症候性に心筋障害を進行させ,次第に不可逆的な心筋変性(線維化)を起こす.重症AR において,心筋障害の進展を抑える方法として薬物治療は限界があり,心機能低下例や症状出現例では外科手術の適応となる.本稿では主に慢性AR の術前心エコー図診断について詳説してゆく. -
術後の評価(心エコーで診断できること) 術後心不全の評価
4巻6号(2009);View Description Hide Description心臓外科手術では術後にしばしば心不全を来す.一般に術式,人工心肺時間,術中および術後出血量,血行動態などの情報から心不全の原因や機序はある程度,推定されるが,個々の症例においてそれらを正確に診断することは必ずしも容易ではない.心エコー法〔特に経食道心エコー法(transesophageal echocardiography:TEE)〕は心臓の形態だけでなく心機能や血流動態を評価することが可能であり,低心拍出量症候群,拡張障害,左室流出路閉塞,周術期心筋梗塞,心タンポナーデ,収縮性心膜炎,弁不全などさまざまな原因による術後心不全の診断に重要な役割を果たしている. -
術後の評価(心エコーで診断できること) 人工弁患者,弁形成患者の心エコーによるフォローアップ
4巻6号(2009);View Description Hide Description人工弁置換術後・形成術後うまく行っているか? 心臓外科医はそれを知りたくて心エコーを依頼する.エコーをする側は,その知りたいことに答える報告を心がけなければならない.また報告書を受ける側も,エコーで何がわかって何がわからないのか,ピットフォールは何か,を知った上で報告書を解釈する必要がある.術後の心不全やその他の合併症については別項があるため,ここでは,外来フォローアップ時の心エコーで何に注意してみていくべきかについて述べたい.
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連載
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- CIRCULATION GRAPHICUS
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- 私の心がけていること —心臓病のインフォームド・コンセントのコツ—
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- CIRCULATION COLUMN
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- My Challenge 循環器内科
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- 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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α遮断薬
4巻6号(2009);View Description Hide Description降圧薬として主に使用されているのは選択的α 1遮断薬である.しかし,本邦の高血圧治療ガイドライン2009 においても第一選択薬としては外れている.これは,ALLHAT(Antihypertensive and Lipid-Lowering treatment to prevent Heart AttackTrial)試験1 において選択的α 1 遮断薬であるドキサゾシン投与群で,心血管系事故が多く,途中でドキサゾシン投与群の試験が中止されたことによる影響が大きい.このような傾向から,α遮断薬は降圧薬としては使われることはないという雰囲気になってしまっているが,一方で,脂質代謝異常・糖尿病を伴う高血圧にドキサゾシンを投与した検討では,血圧はもとより,脂質,血糖値とも有意に低下したという報告や,インスリン抵抗性を改善させたという報告もみられている.さらに,臓器障害や心血管イベントのリスクとされる早朝高血圧や血圧変動に対する特異的な治療としてα遮断薬を使用する可能性も示唆される報告もみられる. - 専門医に求められる最新の知識
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高血圧治療ガイドライン JSH 2009
4巻6号(2009);View Description Hide Description日本高血圧学会は高血圧治療ガイドラインの改訂版JSH2009 を2009 年1 月に発刊した1).近年,生活習慣病が増加し,特にメタボリックシンドロームや慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)が注目され,心血管病リスクとして重視されるようになった.その関連因子である糖尿病や肥満は増加の一途をたどっている.今回の改訂ではこれらの生活習慣病の対策も重点事項となっている.2000 年以降,アンジオテンシン㈼受容体拮抗薬ARB は多種類のものが出現し,これらに関する大規模臨床試験も多数報告された.特に本邦においてもCASE-J(Candesartan AntihypertensiveSurvival Evaluation in Japan),JIKEIHEART Study(Japanese Investigation ofKinetic Evaluation In Hypertensive Event AndRemodeling Treatment Study),JATOS(TheJapanese Trial to Access Optimal Systolic BloodPressure in Elderly Hypertensive Patients),など独自のエビデンスが得られている.これらを踏まえて今回のガイドライン改訂が行われた.
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第2部特集
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- オペチームが知っておきたい 心臓手術の麻酔管理
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心臓手術中における患者のモニタリング
4巻6号(2009);View Description Hide Descriptionモニターという用語の語源は監視,監査を行うもの,とされている.転じて医学領域では生体の生理機能や生命維持機能の反復的あるいは持続的な観察や測定と理解されている.モニタリングの手段として望ましい特徴として正確性,迅速性,簡便性,連続性,持続性,経済性,低侵襲性といった点があげられている.心臓手術は周術期のリスクが高く,良好な成績を得るためには低侵襲性を犠牲にしても周術期管理に有用な情報が得られることが優先される. 本稿では,心臓手術における循環系および中枢神経系のモニタリングに関する最近の進歩を紹介する. -
心臓手術中の経食道心エコー
4巻6号(2009);View Description Hide Description近年,多くの施設において心臓外科手術の際には経食道心エコー(transesophageal echocardiography:TEE)がほぼルーチンで使用されるようになっている.ACC/AHA のガイドラインでは,先天性心疾患や弁膜症に対する術中TEEの適応はcategory ㈵となっており,臨床的予後をも改善し得るという強いエビデンスに支持されている1).これらは術中TEE が治療方針の決定や治療効果の判定に有用であるためと考えられるが,安全な手術を保障する点においても術中TEE の役割は大きい.本項では,一般的な心臓外科手術において,安全性を向上させるための有効なTEE の活用について,手術の流れに沿って紹介する. -
人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術
4巻6号(2009);View Description Hide Description人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump CABG:OPCAB)の麻酔管理については,いろいろな報告が出ている.本稿では,「OPCAB の麻酔管理が難しい!!」と思っているあなたを対象とする. 心臓外科手術の麻痺はまず最初に,心臓の解剖,生理,病態生理を把握しなければならない.また手術手技による血行動態の変化も著しく,手術手技の理解も必要である.これらのことを理解できていれば自ずと管理は決定されてくる.最近のOPCAB における手術手技やデバイスの進歩は著しく,術中の麻酔管理は楽になったといわれている.しかし,多くの合併症を有する患者の増加や高齢化により,病態が複雑な麻酔管理が増えている.このような患者の麻酔管理は虚血性心疾患だけを持つ患者のように教科書的な1 対1 の知識では対応できない.本稿では基本的な解剖や生理,手術手技を踏まえて,OPCAB の麻酔管理について述べることとする. -
先天性心疾患手術における麻酔管理
4巻6号(2009);View Description Hide Description先天性心疾患手術における麻酔管理を安全に行うには,1)小児麻酔全般に関する知識と技術,2)成人の心臓麻酔全般に関する知識と技術,3)先天性心疾患の血行動態とそれが全身に及ぼす影響に関する知識,がそれぞれ必要である.したがって,小児心臓麻酔を担当する麻酔科医には,「先天性心疾患の病態生理,手術手技,麻酔法などが複雑にからみあって生じるさまざまな問題」を扱える能力が求められる.そのような指導者のもと,東京慈恵会医科大学麻酔科では,3 年間の麻酔科研修プログラムのなかで,1 年目の後半に小児麻酔,2 年目の前半に成人心臓麻酔,そして2 年目後半から小児心臓麻酔という具合に段階的にトレーニングレベルをあげている. -
心臓麻酔での鎮静
4巻6号(2009);View Description Hide Description「心臓手術終了後,挿管したまま集中治療室(ICU)に帰室する.一定期間鎮静を行いながら,循環動態を安定化させる.その後,鎮静度を浅くし呼吸器からの離脱を開始する」.これは一般的な心臓手術後の流れであろう.一般的な鎮静の大きな功罪は,「患者の苦痛を除去する」に対し,「循環抑制を来す」ことであるが,心臓手術後は,全身麻酔後,つまりICU で利用される鎮静薬・鎮痛薬より多い薬物を利用した深い鎮静状態の後から開始されるという点が異なっており留意が必要となる.さらに,近年周術期に利用される薬物(デクスメデトミジン:DEX,レミフェンタニル:Remi)が,術後の鎮静状態に影響を及ぼすため,心臓術後の鎮静を考える上で,十分な理解が必要となる.
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連載
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- 心血管インターベンションのコツとピットフォール 一流術者のココが知りた
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ガイドワイヤー通過困難時の対策(非閉塞性病変)
4巻6号(2009);View Description Hide Description約40 年前より始まった冠動脈形成術(percutaneouscoronary intervention:PCI)の手技の成功不成功はデバイスの性能向上により飛躍的に改善されてきた.しかし千差万別な症例の中には複雑な形態の冠動脈もみられ治療を困難にしている.安全に最良の治療効果を得るためには,病変に応じてガイドワイヤーを適切に選択し習熟することが必要である. その基本手技とトラブルシューティングを論じたい. - 心臓血管手術のコツとピットフォール 一流術者のココが知りたい
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弓部大動脈瘤に対する弓部三分枝送血法のコツとピットフォール
4巻6号(2009);View Description Hide Description弓部大動脈瘤に対する人工血管置換術では,術後の脳神経障害の合併と超低体温による出血傾向が問題となる.そのため,従来行われていた大腿動脈による送血法からより順行性に近い腋窩動脈送血法や全身の冷却温度を28℃までしか下げないといった方法がとられるようになってきた.腋窩動脈送血法は上行送血法や大腿動脈送血法に比べて中枢神経障害と死亡の率が低率であり1),その理由としてMicrosphereを上行大動脈から注入する実験で,右腋窩動脈送血を行うことで右側総頸動脈・椎骨動脈は完全にプロテクトされることから,上行大動脈送血よりも腋窩動脈送血法の優位性が示されている2). 当科では,2002 年9 月から弓部三分枝送血法による全弓部人工血管置換術( )3)を行っているのでそのコツとピットフォールを解説する.
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総目次
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