サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 5, Issue 1, 2010
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特集
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- 最新機器で循環器診断・治療がどう変わるか?
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不整脈治療にCARTOマッピング・EnSiteシステムはどう活用されるか?
5巻1号(2010);View Description Hide Description従来の電気生理検査は透視画像を基にカテーテルを配置し,心臓内の興奮順序を術者の頭の中で構築することで頻拍機序を解明していた.頻拍の機序が比較的単純で,アブレーション至適部位が解剖学的にも限定できるcommon arrhythmia〔通常型心房粗動,房室結節リエントリー性頻拍,ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(WPW)症候群など〕に対しては,透視と多極カテーテルを使用した従来からの治療法は,有効かつ効率的である.その一方で,カテーテルアブレーション法は,研究,装置,道具の進歩とともに近年目覚ましい発展を遂 -
マルチスライスCTで心カテはなくなるか?
5巻1号(2010);View Description Hide Description近年のマルチスライスCT(multislice CT:MSCT)の進化には目覚ましいものがある.2005 年に64 列MSCT が臨床応用されてから3 年で320 列MSCT,2 管球MSCT,高分解能MSCT など,時間分解能,空間分解能,撮像範囲と実質スキャン時間の短縮など各社が開発を進め,それぞれの特徴を生かした撮像方法を開発し心臓CT の分野は心血管画像診断学分野でトピックスとなっている. それでは心臓CT は万能の診断機器・方法となり得たであろうか? CT はX 線を使用し石灰化の検出に優れている一方で,冠動脈石灰化病変の評価が困難であり,ガントリー回転速度が0.3 秒以下に達してもいまだ不十分な時間分解能のために,高心拍数かつ不整脈症例ではモーションアーチファクトが出現しやすいなど問題を抱えている.ここでは,現時点のマルチスライスCT を用いた心臓CT について述べる. -
3D心エコーで心臓病変がどこまでわかるか?
5巻1号(2010);View Description Hide Description3 次元(3D)心エコー図法の開発の歴史は,2 次元(2D)断層法が実用化されて間もない1970 年代にまでさかのぼる.心臓という複雑な立体構造を観察するにあたっては,2D 心エコー図では限界があり,より正確かつ簡便にその立体構造を把握することのできる3D 心エコー図の開発が望まれてきた.当時は,3D 画像の再構築に多大な時間と煩雑な微調整が必要であったため,3D 心エコー図法を実用化するには限界があり,長い間,研究の域を出ることがなかった.しかし,1999 年に米国Duke 大学がリアルタイム3D 心エコー装置を開発して以来,その技術革新は日進月歩で進み,近年,本格的な臨床応用が始まっている. 本稿では,最新の技術の進歩を踏まえつつ,心臓病診断ツールの1 つとしての3D 心エコー図について概説する. -
組織ドプラ法でどこまで左室拡張機能がわかるか?
5巻1号(2010);View Description Hide Description組織ドプラ法は,心筋の収縮・拡張速度を検出する方法で,僧帽弁輪の長軸方向の速度(E’)を評価することが可能である.僧帽弁血流速波形(TMF)の計測と組み合わせることで(E/E’)非侵襲的に左室拡張末期圧の推定が可能であることが示されてきた.拡張障害の推定が困難なTMF 融合例や心房細動における左室拡張末期圧の推定が可能で,各種心疾患における左室拡張機能の推定における有用性が示されている.一方で,肥大型心筋症における左室拡張末期圧推定に関しては,対象患者数を増やした追試験では以前報告されたほどの精度はないとの報告があり,また左室容積が大きく心係数が小さな心室再同期療法を受けている非代謝性心不全患者におけるE/E’ は左室拡張末期圧と相関がないことが示されている.E/E’ の解釈に関しては,病態に応じた考慮が必要であり,限界があることも認識する必要がある. -
PCIにおけるIVUSとOCTの使い分け
5巻1号(2010);View Description Hide DescriptionIVUS ガイド下でのPCI は,認知され確立したものとなっているが,OCT はまだ発展途上のモダリティーであり問題点も残っている.しかしながら,OCT は血管内表層の情報を多く有しており,今後PCI の戦略上大きな役割を果たしていくものと考えられる.IVUS とOCT では血管内進達度も得られる情報量も異なるため,使用にはその利点と欠点を十分に理解し使い分けることができれば,安全でより良いPCI の施行が可能になると考えられる.近年急性期にOCT を使用する施設も散見されその成果も報告されるようになってきており,今後,急性期PCI 時における血栓吸引デバイスや末梢保護デバイスの必要性を検討したり,また将来的には中等度病変が存在しても安定プラークであるからステント留置はしない,などの治療戦略も生まれてくるかもしれない.OCT のその手技の煩雑さや観察時の冠動脈閉塞の危険性への克服がなされ,オクルージョンすることなく検査が遂行できる次世代型のOCT が普及すれば,より施行の機会も増えるものと思われる.
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Lecture
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- 冠動脈インターベンションにおける心臓リハビリテーション
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冠動脈インターベンションにおける心臓リハビリテーション
5巻1号(2010);View Description Hide Description冠動脈インターベンション(percutaneouscoronary intervention:PCI)は,急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)や不安定狭心症といった急性冠症候群(acute coronarysyndrome:ACS)の急性期治療として確固たる立場を確立しており,その急性期予後の改善効果に疑いの余地はない.一方,軽症の安定労作性狭心症の治療としてはCOURAGE trial1)が示すように,至適薬物治療と比較して症状のコントロールはできるが長期的な予後は必ずしも改善しないとも報告されている.PCI のみでは長期的な予後を改善しない理由は,PCI が局所治療であるためであり,予後改善のためには薬物治療・禁煙・食事療法・運動療法といった全身管理(包括的心臓リハビリテーション)を行う必要がある. 心臓リハビリテーションはAMI を含め冠動脈疾患の予後を改善し得る治療法である2,3)が,AMI の急性期にはPCI を行った上で開始するのが安全でかつ効果的である.すなわち,急性期治療のPCI と慢性期治療の心臓リハビリテーションは相補的な関係にあり,双方を行うことで相乗効果が得られると思われる. 以下にAMI を中心に,PCI 後の冠動脈疾患に対して当院で行っている心臓リハビリテーションの内容とその効果について解説したい. -
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連載
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- 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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Ca 拮抗薬
5巻1号(2010);View Description Hide DescriptionCa 拮抗薬は降圧薬として優れた降圧効果を持ち,比較的副作用も少ないことから本邦で最も使用頻度の高い薬剤の1 つである.また狭心症,高血圧症,不整脈の適応症を持ち,循環器診療においても頻用されている薬剤である.Ca 拮抗薬の適応となるさまざまな循環器疾患の中で本稿では冠動脈疾患におけるその位置付けをまとめ,特に冠攣縮性狭心症に関連して症例を提示し,Ca 拮抗薬使用上のピットフォールを解説する. - My Challenge 心臓血管外科 臨床から基礎へ,そして臨床へ
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- CIRCULATION COLUMN
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- My Challenge 循環器内科
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- 一流術者のココが知りたい 心血管インターベンションのコツとピットフォール
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急性冠症候群に対する冠動脈インターベンション
5巻1号(2010);View Description Hide Description急性冠症候群,特にST 上昇型急性心筋梗塞に対して経皮的冠動脈インターベンション(percutaneouscoronary intervention:PCI)を行う有益性については,多くの臨床研究やそれらのメタアナリシスにて証明されており疑う余地はない.本邦の急性冠症候群の診療ガイドラインでも,class1 に分類され,根本的な治療戦略であると位置付けされている.脆弱な不安定プラークや血栓を病因とする急性冠症候群に対するPCI は,インターベンション専門医にとって手技的には比較的容易な部類に入るが,経時的に大きく変わる病態や併発する合併症に対する理解不足および迅速かつ適切な対応ができなければ,術者にとって時に非常にstressful なものとなる.本稿では,急性冠症候群に対するPCI のコツとピットフォールについて述べる. - 一流術者のココが知りたい 心臓血管手術のコツとピットフォール
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DES 時代の冠動脈バイパス術 − 橈骨動脈を用いたSequential bypass −
5巻1号(2010);View Description Hide Description薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)の出現により経皮的冠動脈インターベンション(percutaneouscoronary intervention:PCI)対象例が増加し,冠動脈バイパス術(coronary artery bypassgrafting:CABG)対象例が減少したことは事実である.日本胸部外科学会の統計からも,単独CABG 症例は2002 年の21,625 例をピークに2006 年は17,938例に減少している.DES の出現は,虚血性心臓病の治療方針を大きく変えたといえる.このような時代のCABG 対象例は,糖尿病合併例などのび漫性複雑冠動脈病変が増加し大多数を占めている. このような状況でのわれわれのCABG 戦略は以下のごとくである.㈰完全血行再建を目指した多枝オフポンプCABG,㈪左内胸動脈による左前下行枝バイパスはgolden standard, ㈫ 橈骨動脈によるsequentialbypass の多用,㈬内視鏡を用いた大伏在静脈や橈骨動脈グラフト採取.今回,内視鏡を用いた橈骨動脈採取,橈骨動脈を用いた4 針側々sequential吻合を報告する. - New Topic 循環器内科専門医に求められる知識
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脂質低下療法
5巻1号(2010);View Description Hide Descriptionスタチンによる脂質低下療法の意義は1 次・2次予防ともに大規模臨床試験より明らかで,LDL- コレステロール(LDL-C)低下に依存して,心血管事故は減少する.また,予後不良とされる急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)も積極的脂質低下療法により予後改善効果は実証されており,現在LDL-C 達成目標値はより下げる方向にある.一方,スタチンによる心血管事故発症抑制の機序はプラークの安定化が主体と考えられているが,プラーク退縮の関与についても臨床試験結果が報告されている.本稿では,㈰高脂血症がいかに長期予後を悪化させ,その予後を介入によるLDL-C 低下によって改善するか,㈪積極的脂質低下療法の臨床的意義,㈫プラーク退縮について概説する. - New Topic 心臓血管外科専門医に求められる知識
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fast tracking を可能とした硬膜外麻酔によるawake CABG
5巻1号(2010);View Description Hide Description【背景】低侵襲冠動脈バイパス術(minimallyinvasive direct coronary artery bypass:MIDCAB)の最終目的は日帰り手術である.われわれはその目的のために,全身麻酔を用いず硬膜外麻酔を用いた新たなawake CABG 法の可能性につき評価した.【方法】2003 年3 月より72 例に対して心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump CABG:OPCAB)を行った.手術前日に第1,第2 胸椎間に硬膜外カテーテルを留置し,手術当日,同部よりC-6 からTH-8 に至る範囲を局所麻酔薬によりブロックし手術を行った.胸骨正中切開のOPCAB が57例, 胸骨下部切開によるrib cage lifting techniqueほかが15 例であった.平均年齢68 ± 11 歳,手術時間は平均171 ± 49min,平均バイパス本数は2.42 ± 1.0 枝であった.【結果】術中は66 例が手術を完遂し得たが,術中に開胸や麻酔の影響で5 例が気管挿管,12 例がラリンゲルマスクの補助呼吸を必要とした.ただ,全例術後手術室にて抜管できた.硬膜外麻酔の影響で心拍数は65.9 ± 9.9/min,血圧は収縮期圧74 ± 13.5mmHg で,昇圧薬は一切用いなかった.OCAB(awake off-pump CABG)を完遂した66例は術後早期に飲食歩行が可能となり,術後合併症は認めなかった.平均のバイパス本数は2.5 本(range2 〜 4).手術死亡および病院死亡はなく,全例が手術室で抜管可能であった.2 例は再出血や呼吸器の合併症で,重篤な合併症はまったく認めていない.【結論】硬膜外麻酔を用いたAOCAB は多枝バイパスにも有効である.そして,ほとんどの患者で術後極めて早期の日常生活ならびに歩行が可能となり,one day surgery ならびにday surgery への可能性が示唆された.超低侵襲手術として今後期待される術式である. - 講座 最新の大規模臨床試験をひも解く
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- Case 私の治療戦略 心臓血管外科編 この症例のときにどのような心臓外科手術を行ったか
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