サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 5, Issue 2, 2010
Volumes & issues:
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特集
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- 体外循環の危機管理・医師と技士が学ぶ トラブルシューティング
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体外循環関連でのヒューマンエラー
5巻2号(2010);View Description Hide Description人間は間違え,機械は壊れる.体外循環装置は最先端医療機器の1 つだが,生体を非生理的状態におき,使用時間に制約がある難しい機械である.体外循環に関連するヒューマンファクター(人間がかかわる総合的失敗因子)について,SHEL 法をもとに,機械の不具合・環境の影響・不適切な管理やコミュニケーションなどの問題を概説した.製品の信頼性は非常に高くなっているとはいえ,回路が複雑化すれば重大な失敗につながり,また手術施行中の外科医とは,緊密かつ開かれたコミュニケーションがなければ,一瞬の遅れで命取りになる. -
安全装置環境・人工心肺装置
5巻2号(2010);View Description Hide Description人工心肺は心臓血管外科手術において,必要不可欠な生命維持管理装置である.人工心肺装置は人工心肺に必要な複数の血液ポンプとモニターや安全装置等で構成される.これに貯血槽,人工肺,血液回路などが配置され体外循環システムとなる.人工心肺のトラブルは回避できなければ患者の生命を脅かす危険性がある.これらのトラブルを未然に防ぐためには危険が発生しない安全設計,安全装置の設置などが対策(リスクマネジメント)として掲げられる.人工心肺の安全装置はディスポーザブル製品として血液回路に組み込まれる装置と駆動源を必要とする人工心肺装置に搭載される装置に分類される.また,安全装置に関しては2007 年4 月に日本体外循環技術医学会(JaSECT)より「人工心肺における安全装置設置基準」の勧告が提示され,安全を確保するための基準をうたっている.適正な安全装置を設置し,適切に使用することが安全な体外循環を行う上で重要と考える. -
教育システム・人工心肺装置
5巻2号(2010);View Description Hide Description心臓外科手術における人工心肺装置の技術や人工心肺回路の進歩は目覚ましく,医師や看護師,臨床工学技士が連携を取りチーム医療を行うことで,安全で精度の高い手術が施行されてきている(図1).しかし,近年においても日本国内で人工心肺操作中に医療事故が発生し,人工心肺操作における医療環境,システムや教育,さらにヒューマンエラーなどの人的な原因も指摘されている.人工心肺の安全は,多面に表示された計器類のデータを判断し,その複雑な操作が職人的専門技術に支えられてきた面が大きく,システムとして普遍化されるのが遅れていた.人工心肺の安全教育が重要視されその効果を高めるため,多面的・総合的な手法で,時間と労力をかけて行われ始めた.その変化は,操作手順だけでなくハード・ソフト・システム面の総合的内容へ,施設内の徒弟的教育だけから学会などの全国的な教育プログラムへ,講義セミナー形式から実践的形式へ,OJT(onthe job training)からシミュレーショントレーニングへ,操作技士だけでなく医師(心臓外科医,麻酔科医)・看護師を含めた手術チーム医療へ,ヒヤリハットなどの安全情報の全国共有化,安全装置設置基準の学会提言や標準的な安全ガイドライン作成1,2)取り組みなど,さまざまな安全教育に対する取り組みが進められている. -
安全装置環境・血液浄化装置
5巻2号(2010);View Description Hide Description血液浄化療法は,主に透析室で施行する血液透析療法,ICU などで施行する持続的血液浄化療法および各種疾患に対するアフェレシス療法に分類される(表1).これらの療法は血液の体外循環を伴うため,空気誤入,失血などの重篤な事故を引き起こす危険性を持つ.特に,血液透析療法ではベッドサイドの透析用監視装置だけではなく,透析液作製のために必要な水処理装置,透析液供給装置が不可欠であり,適正な透析用水および透析液作製も重要なポイントとなる.これらの安全を確保するためには,故障後の修理ではなく,日常行う予防的な保守が不可欠である(図1).本稿では,血液透析に使用する装置の安全管理について説明する. -
教育システム・血液浄化装置
5巻2号(2010);View Description Hide Description臨床工学技士は,チーム医療の中で医療機器を安全かつ効果的に運用することが求められている.血液浄化領域においては,基本的な透析用監視装置の操作,保守管理を習得するための教育環境を整備しシステムとして行わなければならない.特に透析用監視装置の保守管理においては,医療機器の専門職として安全な装置を提供するための教育が重要である.さらに,その専門的な立場から施設の医療機器に関する安全対策の中心となり,業務改善を含めた医療安全にかかわる助言ができるような臨床工学技士をめざした教育を行う必要がある.移り変わる医療環境の中で,臨床工学技士は質の高い透析医療を提供するために,幅広い知識と技術習得ができるシステム化された教育体制の中で行うことが求められる.
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Controversy 不整脈を治す
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連載
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- 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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- My Challenge 循環器内科
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- My Challenge 心臓外科
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- 一流術者のココが知りたい 心血管インターベンションのコツとピットフォール
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TRI のコツ
5巻2号(2010);View Description Hide DescriptionTRI は,患者の経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)術後安静が不要で,出血性合併症が少なく,入院期間も短縮できる優れた方法であるが,一方でその普及率はまだ十分とはいえない.TRI に馴染めない方に私のTRI のコツを説明してみたい. - 一流術者のココが知りたい 心臓血管手術のコツとピットフォール
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Minimally invasive cardiac surgery ーmitral valve repair 初歩的症例を題材としたMICS 手術確立について
5巻2号(2010);View Description Hide Description - New Topic 循環器内科専門医に求められる知識
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睡眠時無呼吸症候群
5巻2号(2010);View Description Hide Descriptionかつて睡眠時無呼吸症候群(sleep apneasyndrome:SAS)は呼吸領域の疾患と考えられていた.しかしながら近年になって心不全や不整脈,冠動脈疾患など循環疾患全般において,多くの症例で睡眠時無呼吸症候群を有していることが判明してきた.さらに,循環器疾患における睡眠時無呼吸症候群治療の重要性に関しても報告されるようになり,睡眠時無呼吸症候群を未治療のまま放置した場合,突然死をはじめとする心関連合併症を高頻度に発症することもわかってきた.このような経緯から,睡眠時無呼吸症候群を合併する心疾患症例において積極的に持続的気道陽圧法(continuous positive airway pressure:CPAP)などを用いた治療が行われるようになってきた.また,本邦ではいまだ一般的ではないが呼気,吸気ともに陽圧治療を行うadaptive servoventilation(ASV)を用いた心不全の治療が行われるようにもなってきた.ASV は本来,中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療として開発されたデバイスであり,本邦のように循環器疾患(主に心不全)に対しての治療デバイスとして使用するのは独特な使用方法である.しかしながら今後多くの症例を重ねることで,新たな心不全治療の大きな柱の1 つになる可能性があると考えられる. - New Topic 心臓血管外科専門医に求められる知識
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OPCAB 手術
5巻2号(2010);View Description Hide Description心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump coronaryartery bypass:OPCAB)は,1967 年にKolessovらが左開胸から左内胸動脈(left internal thoracicartery:LITA) を左前下行枝(left anteriordescending artery:LAD)に吻合したことに始まる.その後は人工心肺の確立に伴い,1980 年代より人工心肺下冠動脈バイパス術(conventionalcoronary artery bypass:CCAB)の時代が続いた.1990 年代にOPCAB は,ハイリスク例に対する例外的な冠動脈バイパス術(coronary arterybypass grafting:CABG)として,小開胸のものが再開された.やがて胸骨正中切開からのアプローチが主流となり,2000 年代に入ると心臓固定具や中枢側吻合デバイスなど補助器具の進歩に伴ってOPCAB が普及し始めた.そして日本国内では現在,OPCAB がCABG の標準術式と言えるまでになった1). - Case 私の治療戦略 循環器内科編 この症例のときにどのような心血管インタ−ベンションを行ったか
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高度石灰化と冠動脈の屈曲を伴いインターベンションが困難な病変
5巻2号(2010);View Description Hide Description透析患者の高度石灰化を伴う狭窄病変に対しては,冠動脈インターベンションが困難な場合が少なくない.しかし薬物治療に抵抗性で,患者が冠動脈バイパス術を希望しない場合には,何とか安全で効果的なインターベンションを施行しなければならない.本稿では,高度石灰化と冠動脈の屈曲を伴いインターベンションが困難な病変に対してロータブレーター治療を行い,薬剤徐放性ステントを留置した症例を紹介する. - Case 私の治療戦略 心臓血管外科編 この症例のときにどのような心臓外科手術を行ったか
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大動脈弁人工弁置換術後の弁輪部膿瘍に対する再弁置換術
5巻2号(2010);View Description Hide Description感染性心内膜炎の治療の基本は,(1)感染のコントロール,(2)心不全のコントロール,(3)疣贅からの遊離塞栓予防であるが,一般的に上記3 点のいずれかがコントロール不能となった場合には手術適応となる.外科手術の基本は,(1)菌塊の切除,(2)デブリードマン(Debridement),(3)弁置換術になる.もちろん感染が現局性で疣贅が弁尖に付着しているだけであれば弁形成術も可能であるが,やはり基本的には弁置換になると考えられる.しかし,感染が拡大して弁輪部膿瘍を来す場合には,基本手技では対応できない場合もあり,広範囲郭清の結果,弁輪および弁周囲組織が欠損してしまうこともある.広範囲に及ぶ外科切除のため弁輪も切除した場合,弁輪をブタ心膜などを用いて形成した上で,弁置換術を行う.弁輪が脆弱であると判断された場合には,大動脈弁の解剖学的位置関係(図1)から周囲組織から弁置換のための支持糸をかけて施行することも考慮する(図2;弁輪として使用できる大動脈弁の周囲の組織).本稿では,大動脈弁人工弁置換術後の感染性心内膜炎による弁周囲膿瘍を伴った症例に対する一手術例を紹介する. - 講座 最新の大規模臨床試験をひも解く
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