サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 5, Issue 3, 2010
Volumes & issues:
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目次
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特集
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- ケースからみる 虚血性心疾患のベストな治療戦略
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この症例をどう治療するか?:LMT病変
5巻3号(2010);View Description Hide Description薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)の有効性・安全性が広く認識された今日においても,非保護左主幹部病変(non-protected left main trunk:ULMTD)に対する経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は,ガイドライン上原則禁忌とされている.しかしながら,Syntax trial 等の大規模なランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)の結果から,症例を選べば,ULMTD に対するPCI は冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting:CABG)に劣らない成績を期待できることが示されつつある.一方で,ULMTD に対する血行再建は術者の技量によって,その予後が大きく異なることも知られ,治療戦略は各施設で異なるのが実情である.本稿では,まず症例を提示しながら,著者らの施設における選択の実際,治療成績を示し,最後に,当院におけるULMTD に対する血行再建の戦略について述べる. -
この症例をどう治療するか?:CTO病変
5巻3号(2010);View Description Hide Description慢性完全閉塞(chronic total occlusion:CTO) 病変は経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の手技成功において最も難度の高い病変であるが,最近の器具の開発や手技の進歩により,そのPCI 成功率は着実に向上している.以前はantegrade approach において,サイドブランチ法, パラレルワイヤー法,IVUS ガイドPCI などが成績向上に貢献したが, 最近ではantegrade approach において,柔らかいテイパード・ワイヤーでCTO 内のmicrochannel を探す方法が,また,retrograde approach 法として,kissing wire 法,retrograde wire crossing 法,CART 法,reversed CART 法の有効性が報告されている. -
この症例をどう治療するか?:分岐部病変
5巻3号(2010);View Description Hide Description分岐部病変はカテーテル治療の20%程度を占めるといわれており,日頃遭遇する機会の多い複雑病変の1 つである.今回のテーマであるカテーテル治療かバイパス手術かといった治療選択が問題となる症例は分岐部病変の中でも左主幹部分岐部病変と思われる.そこで本稿では左主幹部分岐部病変3 例を提示し,現在の当院における考え方を紹介する. -
この症例をどう治療するか?:多枝病変
5巻3号(2010);View Description Hide Description冠動脈左主幹部を含む多枝病変症例に対する治療では,単なる薬物治療のみでは狭心症の予防や長期予防に限界があり,血行再建術を行うことが必要である.経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronaryintervention:PCI)と冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting:CABG)のいずれを選択すべきかについて,実際には症例ごとに条件が異なるものの,2009 年に発表されたSYNTAX 試験のデータが参考になる.全体的には術後の総死亡率や心筋梗塞,脳卒中の発生率は両者で差がなかった.冠動脈病変の複雑さ(完全閉塞やびまん性病変など)を表すSYNTAX score を用いて症例を層別化するとscore 高値群(33以上)では主要心血管イベント発生率や再血行再建率でCABG の方が優れていたが,score 低値群(22 以下)・中間値群(23 〜 32)では両者に差がなかった.糖尿病症例ではいずれの群でも再血行再建率でPCI の方が劣っていた.各症例でPCI かCABG のいずれを選択するかの方針決定ではSYNTAX score や糖尿病合併症の有無が一つのガイドとなり得る. -
この症例をどう治療するか?:中等度狭窄病変
5巻3号(2010);View Description Hide Description昨今では薬剤溶出ステント(drug eluting stent:DES)の出現により経カテーテルインターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の臨床成績が向上し,その適応範囲は広がりつつある.しかしその一方で,生命予後に及ぼす効果としては,冠動脈バイパス手術(coronary artery bypass grafting:CABG)や強力な至適内科療法(optimal medical therapy:OMT)に勝るという結果を出せずにいるのも現実である.現在のDES には依然として,血栓症(特に晩期血栓症:late thrombosis)やlate catch-up などの問題が残されており,どのような軽度病変であってもステントを留置しておけばよい,というわけにはいかないのが現状である.中等度狭窄病変に対しては,虚血を生じることが証明されればPCI の適応といえるが,非侵襲的負荷検査が行われていなかったり,非侵襲的負荷試験自身の限界で虚血を証明することが困難な場合もあり,冠動脈造影の見た目のみで適応が決定されていることも少なくないと思われる. 冠血流予備量比(Fractional flow reserve:FFR)は,冠動脈狭窄により制限された冠血流が,正常血管の冠血流に対してどの程度低下しているかということを表わしており,冠動脈狭窄の機能的重症度の指標として用いられている.FFR 0.75 未満であるということは,非侵襲的負荷試験によって虚血が誘発され得る狭窄であることを示し,すなわちPCI の適応となり得る病変であることを意味する. 本稿では,中等度狭窄に対しこのFFR を用いることにより治療の適応,戦略を決定した2 症例を提示し,FFR に基づいたインターベンション(FFR based Intervention:FBI)の重要性について解説したい. -
この症例をどう治療するか?:血栓症病変
5巻3号(2010);View Description Hide Description循環器冠動脈疾患診療の臨床現場で遭遇する血栓性病変の大部分は,急性冠症候群(acute coronarysyndrome:ACS)の急性期病変と静脈グラフト(saphenous vein graft:SVG)病変であり,末梢塞栓の発生を抑えることが重要である.前者では,マイクロカテーテルや吸引カテーテルによって閉塞部末梢の状態を把握してから拡張操作を行うのが有利である.塞栓子量が多いと予想される場合にはより積極的に末梢保護デバイスを併用する.後者では可能な限り末梢保護デバイスを併用すべきであるが,その限界を踏まえると,可能な限り自己冠動脈の治療を優先するのも賢明である.
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Topic
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- 抗血小板薬の臨床
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心臓血管外科における抗血小板薬
5巻3号(2010);View Description Hide Description抗血小板療法は,心筋梗塞,脳梗塞,末梢動脈疾患などの動脈硬化を基盤とした血栓性疾患に対する標準的治療法であり,これまでに多くの大規模臨床試験によって血栓塞栓予防の効果が明らかにされている.心臓血管外科領域でよく使われる抗血小板薬を中心に,その作用機序と特徴,術前中止時期や術後投与法について述べる. -
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連載
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- My Challenge 心臓血管外科
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- 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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硝酸薬
5巻3号(2010);View Description Hide Description硝酸薬はたいへん歴史が旧い薬剤で,19 世紀末にThomas Lauder Brunton が硝酸アミルを狭心症の発作の寛解に用いたことが狭心症治療薬としての起源である.現在では,発作寛解のための舌下投与錠やスプレー,狭心症の発作予防のための長時間持続型経口剤や貼付薬,さらには,急性冠症候群の急性期管理,降圧,心不全での前・後負荷軽減などに用いられる注射薬など,いろいろな剤型の硝酸薬がさまざまな目的で使用されている.その中で,狭心症治療薬としての硝酸薬の長期継続投与は,硝酸薬が薬剤耐性を生じやすいことや2006 年のわが国の心筋梗塞二次予防に関するガイドラインで長期投与がクラス III に位置付けられたこともあって1),最近では避けられる傾向にあるようだ.しかしながら,硝酸薬の継続投与が患者の予後に悪影響を及ぼす明確なエビデンスはない.ピットフォール・シリーズゆえ,薬剤の作用により思わぬ病態の悪化を来たしたような症例の提示がふさわしいのであろうが,今回は上記のような昨今の硝酸薬のおかれた状況を考え,あえて硝酸薬の効果を見直すことになった最近の症例を紹介し,その使用法を考えたい. - 一流術者のココが知りたい 心血管インターベンションのコツとピットフォール
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心血管インターベンションにおける造影剤性腎症の予防
5巻3号(2010);View Description Hide Descriptionデバイスの改良やステントの出現により,手技の成功率は格段に改善してきており,近年では薬剤溶出性ステントの出現により,ある一定のアウトカムが保障されるようになってきた.特に最近では多施設共同研究での臨床試験の結果が尊重されており,手技によるアウトカムの違い以上に,デバイスによる違いに重きが置かれるようになってきている.しかしながら手技に伴う合併症に関しては術者の技量が問われることも多い.今回は心血管インターベンションにおいて当院で行っている手技を簡素にするためのカテーテル台の活用と,造影剤性腎症予防のための血管内超音波検査(intravascular ultrasound:IVUS)ガイド経皮的冠動脈インターベンション(percutaneouscoronary intervention:PCI)について紹介したい. - New Topic 循環器内科専門医に求められる知識
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- New Topic 心臓血管外科専門医に求められる知識
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- 講座 最新の大規模臨床試験をひも解く
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- Case 私の治療戦略 循環器内科編 この症例のときにどのような心血管インタ−ベンションを行ったか
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分枝へのガイドワイヤー挿入困難例に対して逆行性アプローチが有効であった一例
5巻3号(2010);View Description Hide Description経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)において難渋する状況の1 つが分枝へのガイドワイヤー挿入の困難である.今回,このような状況で逆行性アプローチが有効であった症例を経験したので報告する. - Case 私の治療戦略 心臓血管外科編 この症例のときにどのような心臓血管外科手術を行ったか
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破裂性腹部大動脈瘤に対してSilo 法(Gradual Reduction)を用いてAbdominal Compartment Syndrome を予防し得た症例
5巻3号(2010);View Description Hide Description腹部大動脈瘤の手術成績は,待機手術では,安定した結果で推移している一方,緊急性を要する破裂性腹部大動脈瘤については,手術死亡率は,40 〜 50%前後1)であり,依然として高値を示している.死亡原因としては,各種あげられるが,その中の一つに,腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:ACS)がある.発生率は,4~12%とさまざまであるが,一度合併するとその予後は不良である2).そのため,予防,早期発見が重要である.今回,われわれはこのような破裂性腹部大動脈瘤でACS を危惧した症例に対して,先天性腹部ヘルニアなどにときどき使用されるSilo 法3,4)を適用し,良好な結果を得たので報告する.