サーキュレーション・アップ・トゥ・デート
Volume 5, Issue 4, 2010
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目次
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特集
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- 大動脈基部再建・置換術のテクニック
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特集2 David手術:自己弁温存大動脈基部置換術
5巻4号(2010);View Description Hide Description近年,若年例の大動脈基部病変を中心に,従来の弁付き人工血管を用いたBentall 手術に代わって,自己弁温存大動脈基部再建が試みられている.以前は弁の変形のないことが絶対条件とされてきたが,最近では多少の弁の変形を伴っていても弁形成の手技を用いることで安定した早期成績が得られるようになっている.ただ,術式も大きくDavid のre-implantation 法とYacoub のremodeling 法に分類され,前者はさらにDavid-I 法からV 法,その変法と細かく分けられる.同時に,対象がMarfan 症候群などの遺伝性結合織疾患であることが多く,術後大動脈弁閉鎖不全の遺残ないしは再発を含め遠隔成績はいまだ不明である.本項では,著者自身が種々の変遷を経て,最も安定した成績が得られ,「標準化」に適していると考えるValsalva graftR を用いたValsalva-David 法を紹介する. -
特集3 Ross手術:自己肺動脈弁による大動脈基部置換術
5巻4号(2010);View Description Hide DescriptionRoss 手術は,1967 年Ross DN1)らによる報告が最初で,大動脈基部を自己肺動脈グラフト(pulmonaryautograft)にて置換する手術であり,若年者における人工弁(機械弁)に伴う血栓塞栓症,抗凝固療法による出血の合併症を回避できる有用な術式である.しかし,大動脈弁単独疾患に対し大動脈基部置換術および肺動脈弁置換術が必要であり手術手技の煩雑さから標準術式とはならなかった.しかし,近年の心筋保護法の確立,手術手技の確立から従来より安全に手術ができるようになり1990 年代から再び注目され,先天性大動脈弁狭窄症や弁輪部膿瘍を伴う大動脈弁位感染性心内膜炎などに施行されるようになってきた -
特集4 生体弁・stentless valveを用いた大動脈基部置換
5巻4号(2010);View Description Hide Description大動脈基部再建には自己弁を温存したDavid 手術,Yacoub 手術が試みられているが,人工血管と人工弁を用いたBentall 法はいまだ大動脈基部再建のgold standard である.本稿では生体弁を使用した大動脈基部再建術式として,Valsalva graft とstented valve を組み合わせたBio-Bentall 法およびstentless valve を使用したFull-root 法を概説し,両者の特徴および適応について解説する. -
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特集6 大動脈基部再手術
5巻4号(2010);View Description Hide Description大動脈基部再手術とは,厳密には基部置換手術後の再基部置換を指すが,多数例の報告はみられない1 〜 5).一方,中枢大動脈手術後,大動脈弁手術後,さらにはあらゆる心臓手術後の大動脈基部置換をまとめた報告では150 例以上の報告も見られる6,7).これらの報告における死亡率は0 〜 18%と,報告により大きなばらつきがある4)が,一般に初回手術よりも高いとされる. 本稿では,高安動脈炎に対する上行・hemiarch 置換+大動脈弁置換術後6 年に発生した基部拡大+器械弁機能不全に対するBentall 手術+腕頭動脈再建例の手術手技を供覧し,テクニックの詳細を概説する.
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Focus
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- どう対応するか? 特発性不整脈の予防から治療まで 特発性心室頻拍の予防から治療まで
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特発性心室頻拍の予防から治療まで
5巻4号(2010);View Description Hide Description特発性心室頻拍とは,明らかな心筋梗塞や心筋症などの器質的心疾患が認められず,また電解質・代謝内分泌などの異常や薬物の影響がなく,さらにQT 延長症候群やBrugada 症候群などが否定された症例に見られる心室頻拍(ventriculartachycardia:VT)の総称である.これらのVTは全VT 中, 米国で約10%,日本で約20%に存在する1). わが国を含む東アジア地域では特発性VT の方がむしろ多く,臨床的に重要である.器質的心疾患に伴うVT がその心筋瘢痕組織の部位によってさまざまなQRS 波形を有するのに対し,特発性VT ではいくつかの特徴的なQRS 波形を呈することが多い.一般的に特発性VT の予後は良好であるが,失神や心不全などの症状を引き起こす可能性もあり,適切な治療が必要である.本稿では特発性VT の中で代表的な,心室流出路起源VT と左室脚枝起源VT の特徴,予防および治療について概説する. -
特発性心室細動の予防から治療まで
5巻4号(2010);View Description Hide Description心室細動(ventricular fibrillation:VF)は致死的不整脈で,一般には何らかの基礎心疾患(虚血,弁膜症,心筋症,QT 延長や電解質異常など)に伴って起こることが多い.近年,基礎心疾患を認めない,いわゆる“ 特発性” 心室細動(idiopathicventricular fibrillation:IVF)の存在が明らかとなり,その臨床像・心電図所見・電気生理学的特徴などが報告されている.ここでは,これらの特徴について簡単に触れ,その予防・治療について述べていく. -
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連載
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- 症例から学ぶ循環器の薬剤治療ピットフォール
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高脂血症薬
5巻4号(2010);View Description Hide Description脂質代謝異常は動脈硬化性疾患の危険因子であることは広く認識されている.脂質異常症に対するスタチンの有用性は欧米で実施された臨床試験により確立されている.近年,日本人におけるコレステロール低下療法に関する臨床成績も示され,欧米のみならず1,2),日本人でのプラーク退縮に関する報告も認められる3,4).また,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の進歩と,薬剤溶出ステントの使用が可能となったことより,PCI 後の再狭窄の抑制にも大きな進歩が見られた.従って,生命予後の改善にも大きな期待が寄せられたが,冠動脈バイパス術(coronaryartery bypass grafting:CABG)との比較では劇的な有意性を示すには至っておらず,遅発性ステント血栓症というリスクも報告されている5).冠動脈疾患が全冠動脈の病的状態であることを考慮した場合,PCI による局所的治療のみならず,厳格な薬物治療が適切に行われることが必須である. 本稿では,厳重な薬物治療により冠動脈形成術が不要となった症例を提示し,プラーク安定化,退縮について考察してみたい.高脂血症薬の各作用については,さまざまな文献により紹介させているため詳細は割愛させていただく. - New Topic 循環器内科専門医に求められる知識
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心血管疾患の炎症と制御
5巻4号(2010);View Description Hide Description炎症はあらゆる組織が侵襲に遭遇する時に起こるプロセスである.炎症の部位では血管透過性が亢進し,血管外に「浮腫」が生じてくる.この浮腫は白血球や前駆細胞,幹細胞類が遊走し,反応する際の“ 場” を提供し,最終的には“ 修復” が行われる.このように炎症は修復を最終の「目的」とした合理的なプロセスである.しかし生体反応は,すべからくトレード(取引)反応という側面を有するので,炎症反応も生体にマイナス面も出てくる.痛みや機能低下・障害,などである.特に慢性炎症の場合には組織のリモデリングという構造変化を伴うので,生体にとっては機能障害の面が強くなってくる. 本項では,この炎症を,特に心血管系に限って述べる. - New Topic 心臓血管外科専門医に求められる知識
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大動脈外科における出血の対処法
5巻4号(2010);View Description Hide Description大動脈手術における出血は,通常の開心術に比べてコントロールが困難であり, 患者のmortality およびmorbidity を著明に悪化させる一因である.止血困難は種々の因子が絡んでいるが,循環停止のための低体温に伴う出血傾向,広範囲の.離,吻合部の脆弱な大動脈組織などさまざまな原因が考えられる.出血傾向に対しては,凝固因子などの全身投与も有効な手段の1 つであるが,外科医としてできることは,出血させないように吻合することと,いったん出血しても確実に止血することの2 つに集約できる. - 一流術者のココが知りたい 心血管インターベンションのコツとピットフォール
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PCIに必要なACLS − Advanced Cardiovascular Life Support二次救命処置について−
5巻4号(2010);View Description Hide Description - 一流術者のココが知りたい 心臓血管手術のコツとピットフォール
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人工腱索を用いた僧帽弁形成術のコツ
5巻4号(2010);View Description Hide Description僧帽弁形成術は今やあらゆる病態による僧帽弁閉鎖不全症に対するスタンダードな手術となっている.最近のACC/AHA のプラクティスガイドラインでも左室機能の温存されている(駆出率60%以上,左室収縮末期径 40mm 未満)無症状の高度な慢性僧帽弁閉鎖不全症を有する患者に対する僧帽弁形成術は,弁形成の成功率が90%を超える経験のある外科チームにおいて施行される場合に限りClass II a の適応となっている.精度の高い確実な弁形成術を行い,高い弁形成率を維持することが外科医に求められている.確実な弁形成術を行う上で,もっとも大切なことは,“ 僧帽弁がよく見えること”,すなわち良好な視野を確保することである.あらゆるメカニズムによる僧帽弁閉鎖不全症に対して常に90%以上の弁形成率を維持するためには,基本となる弁尖切除術に加えてExpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)糸を用いた人工腱索移植術あるいは健常な弁尖の腱索移植術のテクニックが必須である. われわれは手技が簡便で再現性の高いePTFE 糸を用いた人工腱索移植術を多用している. そこで今回は,高い弁形成率を達成するために必要な,(1)僧帽弁の視野出しのコツ,(2)人工腱索を用いた僧帽弁形成術のコツとピットフォールについて述べることにする. - Case 私の治療戦略 循環器内科編 この症例のときにどのような心血管インタ−ベンションを行ったか
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側枝閉塞に対して,プロテクトワイヤーを用いてベイルアウトに成功した2症例
5巻4号(2010);View Description Hide Description分岐部病変に対する冠動脈インターベンションは,その手技中に本幹にステント留置を行った際に,側枝の閉塞を起こすことがある.側枝の環流域が十分広い時には,胸痛・心電図異常が出現し,閉塞が持続すれば心筋梗塞を引き起こす.ステント留置後に側枝が閉塞した場合には,通常ステントストラット越しにコロナリーガイドワイヤーを側枝に通しなおし,必要があれば側枝に対してバルーン拡張,もしくはステント留置(プロビジョナルT ステント,もしくはY ステント)を行う.しかし,側枝入口部に解離等を形成したり閉塞したりした場合は,ワイヤーのリクロスが困難なときがある.本幹にステントを留置した際に側枝が閉塞した症例に対して,あらかじめ側枝に入れておいたプロテクトワイヤーを用いてベイルアウトに成功した2 症例を呈示する. - Case 私の治療戦略 心臓血管外科編 この症例のときにどのような心臓血管外科手術を行ったか
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間歇的静脈圧増強逆行性脳灌流法(IPA-RCP)を用いた全弓部置換術の1症例
5巻4号(2010);View Description Hide Description弓部大動脈手術時の脳保護法の1 つとして逆行性脳灌流法(RCP)が行われているが,しかし,RCP では十分な脳保護効果が供給されないとの報告が散見される.RCP における灌流静脈圧および送血様式に改善の余地が残されていると考えられ,これらの改善点を踏まえた新しいRCP であるIPA-RCP の動物実験における有効性がKitahori らにより報告された.われわれは,IPARCPを臨床応用しており,その実際と管理について報告する. - 講座 最新の大規模臨床試験をひも解く
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