リハビリナース
Volume 1, Issue 6, 2008
Volumes & issues:
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特集
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- 障害は“受容”できるか?
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- 対談
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“障害受容”とはなにか?
1巻6号(2008);View Description Hide Description大田:まず、「受容」という言葉の定義をはっきりしたほうがいいね。英語の「acceptance of disability」の訳だよね。南雲:先日、試しにGoogleTM の翻訳ソフトで調べてみたんです。そうしたら、「acceptance」の第一義は「承認」なんです。一般的には「受け入れる」なんて意味、ないんですね。大田:「受け入れる」と解釈すると、「だれが」受け入れるのかという問題が起こってくるよね。「障害を負った人」なのか、「社会」なのか、「他人」なのか。でも「承認」なら、本人も承認しなさい、周りも承認 - 各論
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障害は受容できるとかできないとか、あるいは受容するとかしないとかいう問題ではない 障害受容批判決定版
1巻6号(2008);View Description Hide Description「アクセプタンス・オブ・ディサビリティ」(acceptanceof disability)という言葉は、1950 年前後のアメリカの現場でささやかれていたらしい。そこに最初の肉付け(理論化)を行ったのが精神科医のモリス・グレイソン1)である。彼の診た患者は、受傷後しばらくは障害がないと言い張ったり、自分の体でないような気がしたり、補装具の使用を拒否したり、夢のなかにいるみたいだったり、なぜ私が障害を負わねばならないのかと思い悩んでいたという。彼はこれらをひっくるめて次のように説明した。それらは「ボディ・イメージ障害に直面して、自己がなおもその統合を維持しようと無意識的に行う防衛なのだ」と。 -
リハビリテーション医の立場から 「障害の受容」とは 〜リハ医がすべきこと〜
1巻6号(2008);View Description Hide Description診察室から、2 人の障害のあるらしい壮年の男性が、奥さんと思われる方に車いすを押されて出てくる。2 人とも涙を拭いたらしい。しかし1 人は(Aさんとしよう)難しい表情で、奥さんも不満そうな顔。もう1 人(こちらはB さん)は晴れやかな表情で、奥さんも笑顔で。 2 人とも30 分ほど前に緊張した面持ちで、それぞれ別の診察室へ入っていった。 -
精神科医の立場から 精神障害の場合を考える
1巻6号(2008);View Description Hide Descriptionリハビリテーション(以下、リハビリ)の世界ではよく使われる言葉でありながら、精神科の世界ではほとんど使われない言葉、「障害受容」。精神科病院や総合病院の臨床現場からリハビリ専門病院へ出入りするようになり、意味はよくわかるけれど、何かひっかかってしまった最初の言葉が、この「障害受容」である。 身体障害のリハビリの世界では、まず障害受容ありき。障害を負った後、障害があることを自分で理解する。そして価値を転換し、新しい価値を選択していく。できないことはできないこととしてあきらめつつ、できることを最大限に使う工夫をする……。まさにその過程を支えるのがリハビリといえる。 -
看護師の立場から 看護ケアのなかで見える対象の障害受容とケアのありよう
1巻6号(2008);View Description Hide Description「障害受容」は、障害受容の段階論が看護学の雑誌に掲載されて以来、障害を扱う看護の臨床の場で、関心を寄せられてきている。しかし看護師は、この概念や障害受容論の吟味を十分に行わないまま、対象のケアに活用し続けてはいないだろうか。 この背景には、非常につかみどころのない障害者固有の心理を理解するうえで、障害受容論がとても有用だということが考えられる。よく知られているコーン(Cohn,N. 1961)やフィンク(Fink,SL. 1967)の障害受容論は、日本に危機理論が台頭した時代に、キューブラー・ロスの「死の受容」論とともに、看護職の臨床の場でも多く活用され、ケアの手がかりとされてきた。 -
言語聴覚士の立場から 失語症者 田村利男さんとの思い出
1巻6号(2008);View Description Hide Descriptionこれから紹介する田村利男さん(1924-2006)は1978 年(昭和53 年)55 歳のときに脳出血のため右片麻痺とブローカ失語症を負い、以後30 年近くを障害とともに生きた方である。 -
なぜ障害受容は中途障害に限定されるのか?
1巻6号(2008);View Description Hide Description障害の受容とはあきらめでも居直りでもなく、障害に対する価値観(感)の転換であり、障害をもつことが自己の全体としての人間的価値を低下させるものではないことの認識と体得を通じて、恥の意識や劣等感を克服し、積極的な生活態度に転ずること」 ( 上田敏.障害の受容:その本質と諸段階について.総合リハビリテーション.8(7),1980,515-21.) これは上田 敏によって示された障害受容の定義である。旧来から存在した価値転換論とステージ理論を融合して日本に紹介したものである。まとめ直すと、人が自分の障害を受容する際には、 ㈰ 医師等から障害があること(治らないこと)を告げられてショックを受け、 ㈪ それを否認し、 ㈫ 否認したところで現実が変わらないことに混乱し、 ㈬ 現に日常生活上に起きている問題を解決しようと努力をはじめ、 ㈭ 「障害があるために○○できない人(自分)は劣っている」という悲観から「○○ができなくてもそれが人間的価値を低下させるものではない」という価値観へと変化していく、という心理的プロセスを経るとされる。
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特集2
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- ADL情報を共有するツール&システム
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松波総合病院の取り組み
1巻6号(2008);View Description Hide Description取り組み前は、リハビリスタッフと病棟看護師のコミュニケーションが不足していました。動作能力に関しても、病棟看護師が知ろうと思えばリハビリカルテの記載を読む、リハビリスタッフにしても看護師に聞かれたら答えるという程度でした。病棟看護師からは、この患者はどこまで自分のことができて、何を介助していいのかわからないといった声も聞きました。 これらを打開するために、病棟で行うであろう動作を一覧表にし、どこまでできるのかを見たらわかるようなツールを作ることにしました。そして、この評価表を有効に使うためのシステムも作りました。 -
西宮協立リハビリテーション病院の取り組み
1巻6号(2008);View Description Hide Description当院では、患者の日常生活動作(activities ofdaily living;以下、ADL)評価の一つに機能的自立度評価法(Functional independence measure;以下、FIM)を用いています。FIM は、「しているADL」の自立度を評価するものです。患者に評価対象となる動作をしてもらって採点するのではなく、日常生活で、実際にどのように行っているかを観察して採点します1)。
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連載
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- リハビリテーション看護とわたし
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「リハビリテーション看護の目標とは」
1巻6号(2008);View Description Hide Description私が「リハビリテーション看護学」を教授するようになったのは鳥取大学医学部保健学科に在職していた2002年からです。当時、鳥取大学医学部保健学科看護学専攻のカリキュラムに「リハビリテーション概論」「リハビリテーション看護学」「リハビリテーション看護演習」という科目が位置づけられていました。このようなプログラムは、私が看護学生の時代には考えられないことです。 - 在宅の患者さんに紹介したいおすすめグッズ【6】
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「プリモプエル」
1巻6号(2008);View Description Hide Description「ねえってば〜」。 独居の高齢者の家に訪問リハでうかがったとき、人形が話しかけてきたのです。彼女が「今、忙しいの!」と人形の頭をコツンとすると、人形は「ぷ〜ん」と答えます。このような人形とのやりとりを彼女は楽しんでおり、独居の寂しさを癒しているようでした。 - ADL介助のキソとコツ、教えます【5】
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「靴を履くときの介助について」
1巻6号(2008);View Description Hide Description入院生活のなかで、ベッドからの移乗動作は食事や排泄などのたびに繰り返される動作であり、そこでは必ず靴を履く(脱ぐ)動作が伴います。1 日の生活のなかで何度も行う動作ですから、そこでの適切な介助は、靴の着脱の自立を支援するために重要なだけでなく、座位の獲得や移乗の準備段階の動作獲得としても大切です。逆に不用意な誘導や力まかせの介助をしてしまうと、患者さんの全身の緊張を高めてしまうことになり、正しい動作の学習が行えませんし、1 日に何度も不安と恐怖を感じさせてしまうことになります。 ほんの少し患者さんの動きを見つめる、ほんの少しの手間をかける、そして患者さんの立場で誘導する……。それだけで、患者さんが発揮できる動作は変わり、苦労せずに靴の着脱を介助できるようになります。今回はベッドの端座位がまだ安定していない方に対して、靴の着脱を介助する際のコツを考えてみたいと思います。 - 編集部がおじゃまします 施設訪問
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千葉県千葉リハビリテーションセンター3 階AB 棟、3 階C 棟
1巻6号(2008);View Description Hide Description“ 老舗” リハビリテーション施設の一つである同センターは、乳幼児から成人、高齢者まで、幅広い年齢層を対象とした包括的リハビリテーション施設である。センターの理念は「誰もが、街で暮らすために」。その実現に向かって、日々、取り組んでいる。 - こころの回復はリハビリを左右する【6】
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「生活の再建」
1巻6号(2008);View Description Hide Description生活再建の中心課題は、仕事をすることです。それにはまず、仕事を見つけることが必要になります。私のいう「仕事」とは“ 社会(家族を含む)が必要とする働き” という意味です。働き手を求めている会社や作業所に勤めること以外にも、今はお金にならないけれども先々収入になるような活動や家事も含まれます。家事は、家族それぞれの「仕事」を支える、なくてはならない活動です。生活再建のころになると、リハビリ患者の多くは「活動」(前回詳述)を行っているはずです。ですから、仕事を見つけるということには、たとえばそうした活動のなかから1 つを選び、あるいは新たな活動に取りかかることによって、将来の仕事につなげていく作業も含まれます。 - 最終回 ハテナがわかる 知っとくナットク運動学【6】
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「車いす上動作 椅子としての車いす」
1巻6号(2008);View Description Hide Description最終回の今回は、車いすの「椅子」の部分をテーマにお話をします。 「車いす」といって、施設のスタッフや介護者が最初に思い浮かべるのは、患者を送迎する場面ではないでしょうか。しかし実際は送迎ばかりではなく、車いすに座って食事をしたり、テレビを見る、休憩するなど、その活動は多種多様ですが、どの場面でも車いすを「椅子」として利用しています。そして、それらの行動を同一の車いすで行っているのではないでしょうか。 私たちは日常、目的に応じて無意識に椅子を選んでいます。そう考えると、患者が座っている車いすは、本当に目的としている活動に合っているのでしょうか。今回は車いすの構成要素のなかでも座面に着目して、運動学的要素と目的動作との適合について紹介していきます。 - 家族のカルテ
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「自宅復帰を目指して、排泄の自立に向けたかかわり」
1巻6号(2008);View Description Hide DescriptionA 氏は、回復期リハビリ病棟へ転棟してきたとき、ベッド上でお尻を上げるのがやっとの状態だった。リハビリにて座位・立位練習、ベッドと車いす間の移乗練習をしたが、妻の介助では難しかった。排泄は、尿意があるため、尿器を用いて床上排泄を行っていた。 今後の方向性を確認するため、主治医と私(担当看護師)・A 氏・妻の4 人で話し合いを持った。A氏は「家に帰りたいねぇ。それとトイレに行けるようになりたい」と話し、妻は「息子は、歩けるようになるまで帰ってこられんと言っていたけれど……。施設に預けるようなかわいそうなことはできません。車いすの生活になったとしても家で看たいです」と強い思いを話してくれた。A 氏と妻の思いを受けて、「トイレで排泄することができるようになる」ことを自宅に復帰するための目標とした。当病棟での予定入院期間は2 か月で、この間に家屋改修や在宅サービスの調整を進めていくことになった。 担当看護師としてもA 氏と妻の「自宅でいっしょに暮らしたい」という意欲を大切にし、排泄の自立に向けて援助していけば、2 人の思いは可能になると考えた。 - 月が瀬より リハビリ看護 折々の記
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「医師とのけんか」
1巻6号(2008);View Description Hide Description私が月が瀬に就職してまもないある日のこと、ナースステーションで若い医師と病棟婦長が大きな声でけんかをした。原因は脊髄損傷患者さんの間欠導尿の頻度のことだった。神経因性膀胱による膀胱尿管逆流現象の処置を巡って、病状改善を考えた医師と患者の生活を守ろうとした病棟婦長が対立したのだ。 - 私たち、こんなことに取り組んでいます プロジェクトR【6】
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「個別転倒対策の実践と効果」
1巻6号(2008);View Description Hide Description2000 年11 月回復期リハビリ病棟(42 床)の承認を受け,2003 年8 月には54 床増床して計2 病棟となった.しかし両病棟とも病院全体の転倒発生件数が他病棟よりも多いという現状があった.後期高齢者や認知症患者が増えたこと,またリハビリによってADL が向上した患者が多いことがその理由と思われた.その状況を解消するために,2004 年度から42 床の病棟でリハビリスタッフとともに転倒対策に取り組むことにした. - よくわかる疾患のハナシ【6】
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「パーキンソン症候群」
1巻6号(2008);View Description Hide Descriptionパーキンソン症候群とは,図1 のようなパーキンソン病症状を呈する疾患の総称である.表11)にパーキンソン症候群を呈する主な疾患を示す.このなかで,パーキンソン病は主要な疾患であり,振戦,筋固縮,寡動・無動,姿勢反射障害が4 主徴とよばれている.しかし,この4 主徴はパーキンソン病以外の疾患でも共通して見られるので,特異的ではない.患者を診察し,真のパーキンソン病と鑑別をする必要がある. - Care Study
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「 身体半側無視を呈した患者の移動動作獲得に向けた介護介入 Self-esteem の低下が予測された一事例への視覚刺激の活用」
1巻6号(2008);View Description Hide Description本事例は,左被殻出血によって身体半側無視,右片麻痺,運動性失語を呈していた.身体半側無視の影響から麻痺側の上下肢に対する認識が低下し,起居動作や移乗動作の際に上肢を背中の下に敷き込む,足を組んだまま立ち上がろうとする等の危険な行動が観察された(図1 〜 3).また,失語症のために他者と思うようにコミュニケーションを取ることができず,いらだって泣く, 行為の誤りに気づくと泣き出す,看護師やセラピストによる介入を拒否するなどの行動からself-esteem(自尊感情)の低下が予測され,麻痺側の身体に対する意識を高めるための積極的な介入が困難であった. そこで,本研究では患者のself-esteem を評価しながら効果的に看護介入を実施できる時期を判断し,移乗動作の獲得に向け,麻痺側への認識を高めるための刺激の活用について検討した. - いつも笑顔のわたしでいたい 東洋医学からのワンポイントレッスン
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