内科
日常診療に直結したテーマを精選して特集として掲載し、タイムリーな情報をクオリティの高い編集で提供する内科総合誌です。総合診療の現代において広く横断的な知識を得るのに最適で、とくに年2回の増大号は他の内科系雑誌の追随を許さない情報量です。
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目次
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特集【在宅医療は何のために存在するのか これからの在宅医療を見据えて】
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- [Chapter 1]在宅医療のアウトカム
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なぜ在宅医療が必要なのか
133, 3(2024);View Description Hide Description▪ 日本では多くの高齢者が人生の最終段階で救急搬送,入退院を繰り返し,最後は病院で亡くなる.▪ 増加を続けるがん患者も 70%が自宅で最期を過ごすことを希望しているが,在宅死率は12.3%にすぎない.▪ 超高齢化に伴い疾病構造,世帯構成が急速に変化している.地域医療はこの急速な社会の変化=医療ニーズの変化に対応できていない.▪ 継続的・計画的な健康管理により,急変を予防すること,入院依存を減らすこと,自宅で最期まで生活ができるよう支援することが,在宅医療が地域で担うべき役割である.▪ 医学モデルと生活モデルをバランスよく組み合わせ,安心できる生活と納得できる人生を支援すること,これが,在宅医療が提供すべき重要な患者価値である. - [Chapter 2]医学モデルとしての在宅医療
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在宅医療における多様な視点の必要性 日々の健康管理と医学モデルの適用
133, 3(2024);View Description Hide Description▪ 在宅医療では,患者の個別ニーズに応じた多職種連携が重要で,患者全体をみる視点が求められる.▪ 疾患治療だけでなく,低栄養やサルコペニアなどのリスクにも対応する必要がある.▪ 患者の「その人らしさ」を理解するためには,過去の行動や価値観から読み解くことが重要で,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実施にも役立つ.▪ フレイルや多疾患を抱える患者に対しては,情報統合と個別化された治療アプローチが求められる.▪ 治療実践では,患者の生活環境や家族の負担も考慮する必要があり,医療者間の信頼関係に基づいた意思決定が,良好な医療結果をもたらす鍵となる. -
在宅医療における低栄養,フレイルサイクル,誤嚥性肺炎へのアプローチ
133, 3(2024);View Description Hide Description▪ 在宅高齢者は低栄養,サルコペニア・フレイルなどの影響で誤嚥性肺炎,摂食・嚥下障害を発症しやすい.▪ その改善のために,病院で行われている「誤嚥性肺炎パス」や「摂食・嚥下機能評価パス」の取り組みが参考になる.▪ 在宅医療においては,患者や家族のナラティブを踏まえた「“引き算”の介入」を進めながら,病院との連携を行うことが重要である. -
認知症
133, 3(2024);View Description Hide Description▪ 認知症診療は在宅医療において主要分野である.▪ 認知症の見立てとしてまずは認知機能と生活の障害について評価する.▪ 次に,せん妄などの改善可能な認知機能障害について評価する.▪ 最後に認知症の病型診断を行い,典型例を見逃さないようにする.ただし,過去に診断された病型にこだわりすぎないことも重要である.▪ 認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)の対応としては,まずはせん妄についての評価を行い,次にチャレンジング行動という視点でも考える. -
神経難病を在宅で看取る
133, 3(2024);View Description Hide Description▪ 神経難病は,高齢化社会における在宅医療に関わるなかで,珍しい疾患ではなくなりつつある.▪ 現状では,神経難病患者は受け皿の乏しさゆえに,自身の最期を迎える場所や,時には人工呼吸器装着などの生命維持装置の選択の意思決定さえ制約されている.▪ 神経難病患者の緩和ケアの概念とスキルが,在宅医療における神経難病診療においては重要である.▪ 神経難病患者の在宅療養を可能にするためには,環境調整と関わるスタッフの教育が必要となる.▪ 在宅医療に関わる訪問診療医がチーム全体をメタにみながら,多職種と連携してチーム医療として共通の目標に向かうことが必須である. -
在宅医療とケアにおける感染対策の考え方
133, 3(2024);View Description Hide Description▪ インフルエンザの感染対策では,訪問スタッフと患者の双方がマスクを着用する.高齢者施設では,病室単位のゾーニングを実施する.▪ 新型コロナウイルス感染症の迅速抗原検査では,発症初期の偽陰性に注意する.エアロゾル感染リスクが高いときは,訪問スタッフはN95 マスクを使用する.▪ ノロウイルスの感染対策では,訪問スタッフはグローブとガウンを着用し,ケア後の手洗いと空気感染のリスクに注意する.環境消毒には,エタノールではなく次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用する. -
在宅緩和ケア
133, 3(2024);View Description Hide Description▪ 在宅緩和ケアは,QOL 維持向上のための適切な治療・ケアであり,日々変化する患者のトータルペインのアセスメントに基づき,生活目標に合わせたタイムリーな支援が必須となる.そのため主に医療・介護・福祉専門職からなる在宅支援チームの連携・協働が支援基盤となり,ICT やアセスメントツールなどを活用した適切な情報や支援目標共有が大事である.▪ 地域や患者生活特性を加味した,限りある支援資源を駆使し,知恵と工夫を凝らした個別支援となり,継続経過で患者家族の希望に合わせて在宅看取りとなる.▪ 提供する医療・ケアの適正評価や質の担保,維持改善には多くの課題があるが,患者の自律と尊厳を保持した最期までの支援体制担保は必要である.▪ 地域特性をも加味し,専門職多職種のみならず地域全体で課題解決・改善に取り組む必要性と有用性がある. -
みんなで支える小児在宅地域ホスピスケア お子さんとご家族のいのちの物語を地域で支える
133, 3(2024);View Description Hide Description▪ 重度の健康障害をもつ小児の成育には,自宅および社会環境での日常的な医療ニーズが高まり,在宅での実利支援と社会資源の施設利用が求められ,小児在宅医療を含む地域資源がとくに重要な意味をもつ.▪ 医療者は,病児の病態告知と成育のための特別な専門資源の利用の必要性に対する配慮だけでなく,重度の障害や疾病の告知が父母に強い喪失と絶望を引き起こしうるため,告知のタイミングや手法についても特別な配慮と,常に「希望を支える」という緩和的な視点が必要である.▪ 小児の ACP には,この「希望を支える」という大切なコンセプトが必要であり,ACP には病状が進行する将来や最期の時間を誰とどこでどのように迎えるかという「暮らしのACP」とそのなかで医療の介入をどこまで行うかという「医療的なACP」の双方を対話によって気持ちを引き出すという役割がある.
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