整形外科

・1950年創刊。整形外科領域でいちばんの伝統と読者を持つ専門誌。
読者と常に対話しながら企画・編集していくという編集方針のもと、年間約250篇にのぼる論文を掲載。
・その内容は、オリジナル論文、教育研修講座、基礎領域の知識、肩の凝らない読み物、学会関連記事まで幅広く、整形外科医の日常に密着したさまざまな情報が、これ1冊で得られる。
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論説
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仙腸関節障害に対する新たな検査方法―インフレアテスト,アウトフレアテスト
73, 7(2022);View Description
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直立二足歩行を行う人間において腰痛の発症率は高く,わが国だけではなく世界的にも有訴者率が高い.2019 年国民生活基礎調査によるわが国の有訴者率のなかで,腰痛は,男性では第1 位,女性は第2 位であり1),適切な治療や予防は医療費を削減するための社会的な要請でもある.また,2002 年の腰痛の年間医療費は約700億円であり,2011 年は821.4 億円と9 年間で約120 億円増加している.この医療費の増加の理由は,過剰治療,過少治療,誤治療が原因とされており2),腰痛診断の精度向上は適切な治療につながるため重要課題となっている.画像検査で原因を特定できない慢性腰痛患者は診断が困難であり,非特異的腰痛といわれ,仙腸関節障害もこれに含まれる.仙腸関節障害を診断する方法として,透視下での二度の診断的ブロック注射が有用であるとされている3).仙腸関節障害の疫学として,諸外国の報告では,腰痛者の25%前後3~5)とされているが,わが国では,山口大学のグループが画像所見に加え,質問紙や神経学的評価,脊椎所見,二度の診断的ブロック注射を行うことで,仙腸関節障害と診断された者は5.6%であったと報告している6). 仙腸関節障害を診断する方法として,さまざまな仙腸関節に対する疼痛誘発テストが報告されている.Laslettは,二度の診断的ブロック注射の結果を仙腸関節障害とした場合,distraction test,compression test,thighthrust test,Gaenslen test,sacral thrust test,drop testの6 つのテストのうち3 つ以上の疼痛誘発テストが陽性であった場合,感度,特異度がもっとも高いとした7).また,van der Wurff らもdistraction test,compressiontest,thigh thrust test,Patrick sign,Gaenslen test の5 つのテストのうち3 つ以上が陽性の場合,診断的ブロック注射と鎮痛反応との間に相関関係があると報告8)している.どちらも一つの疼痛誘発テストの結果のみでは仙腸関節障害の診断は不十分であり,三つ以上の陽性で仙腸関節障害と診断することを推奨している. これらの論文で仙腸関節障害の疼痛誘発テストとして用いられるdistraction test,thigh thrust test は前方から後方に腸骨への負荷,sacral thrust test は仙骨の後方から前方への負荷,drop test は上半身の荷重の仙骨への負荷,Gaenslen test は腸骨を前方回旋させる負荷により,それぞれ仙腸関節に剪断応力を加えることにより疼痛が誘発されることを確認するテストである.Patricktest(引用文献ではsign と呼称されるが本稿では以下test と統一する)は股関節外旋,外転方向への負荷,compression test は腸骨を側方からの負荷で仙腸関節に圧縮応力を加え,疼痛誘発を確認するテストである. 水平面上で仙骨に対して寛骨が内旋する内方腸骨をインフレア,仙骨に対して寛骨が外旋する外方腸骨をアウトフレアという9).仙腸関節に対する疼痛誘発テストは,剪断応力を考慮したものが多く,インフレア(後方靱帯への伸張応力)方向やアウトフレア(仙腸関節への圧縮応力)方向に負荷を加える手法が少ない.仙腸関節に対してこれらの負荷応力が加わることで疼痛が誘発される症例がある臨床事実から,負荷手技を考慮した疼痛誘発テストは,仙腸関節障害を有する病態をよりとらえられる可能性がある.股関節の可動域以上の負荷が加わると,負荷は腸骨を介して仙腸関節に伝達応力となるため,われわれは股関節を他動的に最大内旋させ,腸骨を介し仙腸関節に対してインフレア方向(anterior superioriliac spine:ASIS,上前腸骨棘が中心に向かう方向)に伝達応力となるインフレアテスト(図1),股関節を他動的に最大外旋させ腸骨を介し仙腸関節に対してアウトフレア方向(ASIS が外側へ向かう方向)に伝達応力となるアウトフレアテスト(図2)を考案した.ほかの仙腸関節障害に対する疼痛誘発テストと比較し有用性を検討した.
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誌説
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経験と考察
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重症骨粗鬆症患者における実臨床でのロモソズマブの骨代謝改善作用の再検証
73, 7(2022);View Description
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高齢者を主とする重症骨粗鬆症は増加しており,多くの高齢者においては骨折が切迫した状態と考えられる.近年,Swedish National Patient Register のリアルワールドのデータ解析より,既存骨折発生からの経過年数は新規骨折の独立した予測因子であることが示され,そのリスクを入念に評価するとともに,骨折発生後には早急に治療介入を行う必要があると報告されている1).また,脆弱性骨折の既往は,将来の骨折における最重要リスク因子であり,骨折発生後12~24ヵ月にそのリスクが最大化することが複数報告されている2,3). したがって,これらの骨折連鎖を断ち切るには,短期間でより効率的に骨代謝をコントロールし,骨密度(BMD)を増加し,かつ骨質の劣化を食い止めることが急務であろう4~6).さらに近年の研究により,長年にわたって治療薬の第一選択となってきた骨吸収抑制剤から,一転して骨形成優位anabolic 1st の概念が広まりつつある7~9).これら骨形成促進剤の詳細な作用は,実地臨床におけるエビデンスでさらなる裏づけが求められる. 抗スクレロスチン抗体薬のロモソズマブは,短期間でのBMD 増加および各種骨折抑制作用をもつ10).しかし,ロモソズマブに関しては,既存椎体骨折を有する,より厳しい重症の基準を設定した症例群において,実臨床での骨代謝改善効果の報告はまだない.そこで本研究では,BMD と併せて,骨形成マーカーのtotal type Ⅰprocollagen N—terminal propeptide(P1NP),骨吸収マーカーの酒石酸抵抗酸ホスタファーゼ—5b(TRACP—5b)の変動を検証した. -
頭蓋直達牽引下頚椎後方矯正固定術―術後C5 麻痺は防げるか
73, 7(2022);View Description
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頚椎後弯矯正固定術後のC5 麻痺は頻度の高い合併症であり,C4/C5 変性によるC5 椎間孔狭窄が危険因子でC5 神経根障害が原因と考えられる1).前後合併手術での発生頻度がより高く1,2),予防的C5 椎間孔拡大を行ってもなお高率に術後C5 麻痺は発生する2).後方除圧術においても術後C5 麻痺は発生しており,後弯矯正による医原性椎間孔狭窄のみが原因ではなく,脊柱管拡大による脊髄後方移動に伴う神経根牽引も原因の一つと考えられる3).頚部神経根症が原因の肩挙上・肘屈曲障害はC6 麻痺でも起こるため4),術後のいわゆるC5 麻痺は同様のC6 神経根障害でも起こりうると考えている.自然経過で回復する場合が多いが,術後長期にわたり回復が乏しい場合もあり,可能な範囲での予防が必要である3,5).C4/C5・C5/C6 椎間を含めた前方すべり・後弯の矯正固定を行う場合にはC5 麻痺発生の危険性が高くなると考えている.用手的牽引矯正(頚椎牽引テスト)で神経症状の発現がない場合や痛み・しびれが改善する場合には,直達牽引下で矯正固定することにより医原性椎間孔狭窄による術後C5 麻痺を防げると考え,2020 年8 月から頭蓋直達牽引下後方矯正固定術を行った6). -
胸腰椎椎体骨折,腰部脊柱管狭窄症に対する脊髄刺激療法の有用性―differential target multiplexed workflow を利用して
73, 7(2022);View Description
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2019 年の厚生労働省による国民生活基礎調査では,腰痛の有訴者率が男性で1 位,女性で2 位になっている.腰痛のなかでも整形外科疾患のなかで,骨粗鬆症に起因する胸腰椎椎体骨折,腰部脊柱管狭窄症の患者は数多く整形外科を受診する.しかしながら鎮痛薬,神経ブロックで効果がなく,手術も年齢や基礎疾患などでリスクがあるまたは希望しないという患者も多い.われわれは整形外科疾患の腰痛,下肢痛に対する新たな治療の選択肢として脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)があると考えている.胸腰椎椎体骨折と腰部脊柱管狭窄症の患者で下肢痛,腰痛がある慢性難治性疼痛に対してSCS を行った.整形外科医による整形外科疾患でのSCSの報告は少ない.臨床成績とSCS の特徴,当院での取り組みについて述べる.
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私論
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経験と考察
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手に発症した非結核性抗酸菌による化膿性腱鞘炎例の調査
73, 7(2022);View Description
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非結核性抗酸菌による化膿性腱鞘炎は,比較的まれな疾患であり,診断に時間を要することが多い.また,治療に難渋し,再発する症例も少なくない.本研究の目的は手に発症した非結核性抗酸菌による化膿性腱鞘炎を調査し,再発した症例についての要因を検討することである.
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臨床室
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小児上腕骨内側顆骨折後の偽関節に対して手術的治療を行った2 例
73, 7(2022);View Description
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小児の肘周囲骨折において,上腕骨内側顆骨折はまれである1~3).上腕骨滑車骨端核の出現前である6 歳前後に受傷した場合,単純X 線像のみで内側顆骨折を正しく診断することは容易ではない3).骨折が看過され,適切な治療が行われないために偽関節となってから診断されることがしばしばあり,可動域制限や遅発性尺骨神経麻痺を伴う場合には手術を行ったとしても成績不良となる可能性がある.筆者らは偽関節となった上腕骨内側顆骨折2 例に対して手術的治療を行ったので,考察を加えて報告する. -
遠位橈尺関節に発生し関節症性変化をきたした滑膜骨軟骨腫症の1 例
73, 7(2022);View Description
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滑膜骨軟骨腫症は大関節に生じることが多く手関節部に生じることはまれである.遠位橈尺関節(DRUJ)に発症し変形性関節症(OA)を合併した症例に対して手術的治療を施行したので報告する.
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整形トピックス
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