整形外科
・1950年創刊。整形外科領域でいちばんの伝統と読者を持つ専門誌。
読者と常に対話しながら企画・編集していくという編集方針のもと、年間約250篇にのぼる論文を掲載。
・その内容は、オリジナル論文、教育研修講座、基礎領域の知識、肩の凝らない読み物、学会関連記事まで幅広く、整形外科医の日常に密着したさまざまな情報が、これ1冊で得られる。
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目次
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論説
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上腕骨近位端骨折に対する骨折用ステムを用いた人工骨頭置換術の術後成績—リバース型人工肩関節との比較
75, 3(2024);View Description Hide Description上腕骨近位端骨折(PHF)は全骨折の4~5%1)を占め,骨粗鬆症に関連した骨折では3 番目に多く,高齢者においてはもっとも多いとされている2).その中で骨頭壊死が危惧される3 part または4 part 骨折に対しては,一般的に人工骨頭置換術(HA)が選択されてきた3).しかしHA の術後成績は,結節の修復,骨頭高位や後捻角などの問題により,必ずしも良好であるとはいいがたかった4~10).2014 年から本邦に導入されたリバース型人工肩関節置換術(RSA)はHA に比べて,疼痛や機能改善,早期のリハビリテーションの開始が可能などの利点が報告され9,11),本骨折に対するRSA の適応は拡大している12).一方,RSA の合併症が比較的多いことも報告されている13,14). エクリスフラクチャー(日本ストライカー社)は2017年から本邦でも使用可能となった骨折用の人工骨頭であり,ステム近位部に骨移植が可能である特徴を有する.本邦導入以前において,従来のステムに比べて良好な結節の修復と術後成績が報告されているが15),体格が小さな日本人に対する本HA の術後成績,さらにRSA と比較した報告はない.本研究の目的はPHF に対してエクリスフラクチャーを用いたHA の術後成績を調査し,RSA と比較・検討することである.
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経験と考察
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信号変化を伴う腰椎分離症例には常に腰痛があるのか—骨盤MRIで偶然見出した成長期腰椎疲労骨折による評価
75, 3(2024);View Description Hide Description腰椎分離症は成長期にみられるスポーツ障害の一つで,椎弓に生じる疲労骨折,もしくはそれが偽関節化した骨欠損である.その診断はMRI による椎弓の信号変化に着目し,活動性のある,言い換えれば有症状の疲労骨折を把握してCT で骨折の進行状態を確認することが一般的となっている. 腰椎疲労骨折の診療にあたって生じる疑問の一つは,腰痛の既往がないにもかかわらず,信号変化部位に一致する骨折以外に,偽関節化した骨折や信号変化を伴わない不全骨折,骨癒合した骨折の痕跡が対側椎弓や他高位の腰椎にみられることである1).これは腰痛の経験を忘れているだけでなく,腰椎疲労骨折がありながら無自覚で運動を行っていた可能性も考えられる.しかし,そのような症状のないアスリートを診察する機会はほとんどない. 一方,骨盤周辺のスポーツ外傷や障害の症例に対して行ったMRI の撮像範囲に下位腰椎が含まれ,偶然に腰椎の信号変化が見出されることがある.これらは外傷などで症状が生じるまで運動を行っていた症例であり,骨盤MRI でとらえた腰椎信号変化例の受診時における腰痛の有無について調査することは,腰椎疲労骨折の症状を詳らかにする一助になると考えた. -
脆弱性仙骨骨折に対する腰仙椎腸骨固定
75, 3(2024);View Description Hide Description急速な高齢化に伴い軽微な外傷,あるいは明らかな外傷なしで発症する脆弱性仙骨骨折の頻度は増加し,入院治療例も増えている.難治例には早期離床と日常生活動作(ADL)維持のために手術的治療が必要であるが,手術適応と手術方法が確立されていないため,現状では保存的治療が一般的である.脆弱性仙骨骨折に対してわれわれはこれまでに腸仙骨スクリュー固定,腸骨スクリューロッド固定,腰椎腸骨固定,腰仙椎腸骨固定などさまざまな方法で手術を行ってきた.保存的治療例を含めた治療経験から手術適応と手術方法について報告したが1),2022 年1 月から手術方法を変更し,すべての手術で仙骨翼腸骨(SAI)スクリューを使用した腰仙椎腸骨固定を選択している.本研究では脆弱性仙骨骨折の手術適応と,腰仙椎腸骨固定の有用性について考察した.
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誌説
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臨床室
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母指末節骨に発生した骨軟骨腫の1例
75, 3(2024);View Description Hide Description母指末節骨の掌側から発生し,屈筋腱を掌側に持ち上げて基節骨方向に腫大化し,母指指節間(IP)関節の運動制限をきたした骨軟骨腫を経験したので報告する. -
コマネジメント下に周術期合併症に対して準緊急再手術もしくは画像下治療を必要とした大腿骨近位部骨折の2例
75, 3(2024);View Description Hide Description近年,コマネジメントあるいはhospitalist/orthopedic surgery co-management(HOCM)と呼ばれる,整形外科医と総合診療医が共同で病棟管理を行うシステムが脚光を浴びている1~7).当院では大腿骨近位部骨折患者の大多数が整形外科入院後に手術を受け,術翌日より総合診療科に転科している1~3).HOCM を実施するには,各々の施設の実情をふまえたプロトコルが必須となる4).当院では,責任の所在は周術期関連に関しては整形外科,それ以外に関しては総合診療科と規定されている2).しかし,現実には曖昧な点も多く,臨床現場は試行錯誤を繰り返している. 当院では2023 年4~10 月に約90 例の大腿骨近位部骨折に対して手術的治療が行われた.このうち2 例に,総合診療科が主科の状態で,周術期合併症に対して準緊急再手術もしくは画像下治療が必要となった.本稿の目的はこれらを報告し,医療安全の観点から今後の対応について考察を加えることである. HOCM が今後本邦で広がるにつれて,同様の事例が発生することが予想される.そのため大腿骨近位部骨折の治療に携わるすべての医療者にとって,本稿はよき教訓となるであろう.発表に際し患者の了解は得ている.
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私論
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問題点の検討
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第5中手骨頚部骨折に対する逆斜位X線撮影の有用性
75, 3(2024);View Description Hide Description中手骨頚部骨折の転位(角状変形)の程度を評価するには3 方向(正面,側面,斜位)のX 線撮影(図1)が推奨されており,通常の斜位像は回内45°での撮影である.回内斜位像が側面像を示しているのであれば,回内斜位像での第5 中手骨頚部骨折の角状変形測定が最適になるはずである.しかし,Lamraski ら1)やSletten ら2)は,回内斜位像で角状変形を測定すると過大に評価されるため,側面像での測定を推奨している.ただし,側面像では隣接指との重なり合いで測定が困難なことがある.掌屈転位のチェックのためにはCT が測定するうえでもっとも容易ではあるが,経時的に撮影することは被曝量を考慮すると一般的とはいえない.回内斜位像で角状変形を測定すると過大評価になるというLamraski らとSletten らの2 論文があるにもかかわらず,回内斜位像が一般的に用いられていることに矛盾を感じ検索を続けたところ,1992 年にLane ら3)が報告した逆斜位像(回外斜位像)[図2]が角状変形の測定に有用であることがわかったが,一般的ではない.本稿ではその根拠に関して,文献ならびにCT 撮影での検討を行った.
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整形手術手技
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骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対するvertebral body stentingの治療成績と前方開大手技
75, 3(2024);View Description Hide Description高齢化社会が急速に進行し,骨粗鬆症性骨折患者も増加している.脊椎疾患においても明らかな外傷歴がない,いわゆる「いつのまにか骨折」が多く存在するため,急激な腰痛発症ではなるべく早期にMRI を施行し,迅速に確定診断することが重要である.高齢の骨折患者の在院日数を短縮することは医療費削減の観点からも重要なことであり,診断後に早期社会復帰,健康寿命の延伸を目的として,高齢者にも積極的に椎体形成術を選択する症例は増加している.保存的治療を選択する場合でも早期離床を推奨する報告1)があるが,後弯変形による腰痛が残存する確率が高い. 椎体形成術は術直後からの除痛効果が優れており,また後弯変形を防止することが可能であるため,今後はさらに新規骨折の発症早期から施行することが望まれる.さまざまな人工骨による椎体形成術があるが2~5),本稿では椎体内でステントを拡張し,より確実に椎体内からの整復が可能となったvertebral body stenting(VBS)の前方開大手技における治療成績について検討した.
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