Pharma Medica

臨床医・薬剤師を対象に,各種疾患治療に関する最先端の臨床学の学術的トピックスを解説。医学・薬学の中間領域を目指す学術月刊誌。医師の薬学に対する理解を深め,薬剤師にも臨床の啓蒙となる雑誌を基本方針として,近年注目されている臨床薬理学分野からも 高い評価を受けている。
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座談会
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10年後の治療展望〜腫瘍内科、血液内科、自己免疫疾患、循環器内科、神経内科領域〜
40, 1(2023);View Description
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21世紀の医療における10年は、技術面においては飛躍的な進歩を可能にする時間単位になっています。複数の領域で分子標的薬が普及し、A(I 人工知能)やゲノム医療、さらにIoT(Internet of Things)やIoH(Internet of Human)が臨床応用されるなど、研究や治療へのアプローチ手法自体も10年前とは大きく変化しました。一方で、治療戦略においては個別化医療へのニーズが高まり、同時に厳しい経済状況や世界的な感染症拡大に伴う医療への危機感、さらに少子高齢社会の進行が、個人や社会における治療の目的や意義にも変化を及ぼしています。これからの10年は、医療においてさらに大きな変革の10年となることが予想されます。 そこで今回は、新たに「Pharma Medica」の編集委員にご就任いただいた先生方にお集まりいただき、それぞれがご専門とされる腫瘍内科、血液内科、自己免疫疾患、循環器内科、神経内科の各領域について、10年後の治療展望やそこへ至るまでの課題について、ご意見を伺いました。
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特集【最近の話題と将来展望〜腫瘍内科、血液内科、自己免疫疾患、循環器内科、神経内科領域〜】
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腫瘍内科領域
40, 1(2023);View Description
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がん医療においては1990年頃からゲノム(遺伝情報)研究が注目されている。基礎研究の域にとどまっていた遺伝子異常に基づくがんの診療は、2010年以降、大きく前進することになった。米国と日本では、遺伝子情報をもとにがんの診断や治療へと応用した個別化医療が実装化され、臨床現場において展開されている。キーワードこそ違えど、内容はかなり似通っている。 -
血液内科領域
40, 1(2023);View Description
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血液内科領域における最近の話題として、血液悪性疾患(造血器悪性腫瘍)の病態解明と治療法の急激な進歩が挙げられる。近年の網羅的遺伝子解析により、1細胞レベルでどのような遺伝子異常があるのかが明らかとなった。さらに、腫瘍微小環境がどのようにがんをサポートしているのかも明らかになりつつある。これらの病態解明を通じて、がん細胞に特異的な分子標的薬が次々と創薬されている。がん領域における分子標的薬の進歩は誌面の都合上、触れないが、まさに新薬ラッシュの状況といえる。本稿では、その発展がとても顕著である免疫療法について概説する。 -
自己免疫疾患領域
40, 1(2023);View Description
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自己免疫疾患の治療はこの20年間で大きな変化を認めている。グルココルチコイド中心の治療から、ミコフェノール酸モフェチルやタクロリムスなどの免疫抑制薬、TNF 阻害薬や抗IL-6受容体抗体などの生物学的製剤、JAK 阻害薬などによる治療が浸透してきたのである。寛解を目指せる治療薬の登場は、ダメージが蓄積される前に診断して治療しようとする早期診断および強化治療の診察体系をもたらした。しかし、未だ寛解に至らない人も多く、今後さらなる進歩を目指すには、基礎医学と種々の自己免疫疾患臨床における進歩に広く精通することが望まれる。 自己免疫疾患はしばしば全身性自己免疫疾患と臓器特異的自己免疫疾患に分類され、前者はリウマチ膠原病科で、後者は各科で診療されることが多いが、いずれも疾患感受性遺伝子や関与するサイトカイン、細胞群などにおいて共通点もあり、臨床的にも両者の合併をしばしば認め、グルココルチコイドや免疫抑制薬が効果を示す。広い自己免疫疾患領域もこのように基礎および臨床面での共通点があり、特定の疾患における進歩はその後、他の疾患の研究や臨床に応用できる可能性も高い。基礎研究では近年の統合オミクス解析や免疫チェックポイント阻害療法に伴う免疫関連有害事象の病態など興味深いテーマがあるが、本稿では種々の自己免疫疾患の臨床で認められた最近の進歩に焦点を絞り、新たな治療標的および治療概念、新技術について触れたい。 -
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連載
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- Medical Scope
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クローン病治療における内科と外科の連携
40, 1(2023);View Description
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クローン病の治療は内科治療が主体である。外科治療に求められるものは、早期の内科治療の再開や社会復帰のために術後合併症をなくすことである。術後合併症の頻度はステロイド治療中の患者や術前低栄養状態や炎症状態で高く、また膿瘍や穿孔、瘻孔状態での手術で有意に高くなる。そのため、内視鏡治療適応外の狭窄病変は早期に手術介入が重要である。また膿瘍や瘻孔を有する場合は緊急手術ではなく、膿瘍ドレナージの先行や術前に栄養状態や炎症状態の改善に積極的に介入することが重要である。よりよいクローン病治療のためには、患者の状態を把握し、内科と外科が連携しながら、手術の適応やタイミングを決めることが重要である。
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復刊に寄せて
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その他
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筋萎縮性側索硬化症診療をめぐる最近の潮流-検査・診断および医療連携を中心として-
40, 1(2023);View Description
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神経難病である筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)では、原因遺伝子の同定とともに遺伝子変異をターゲットにした治療薬の国際的な治験が進行し、わが国での上市も視野に入りつつある。適応の有無を見定めるためには臨床的診断を経た上での遺伝子検査が不可欠であるが、実施医療機関の限定やカウンセリングなど、遺伝子検査に伴う課題も存在している。そこで今回は横浜市立みなと赤十字病院脳神経内科の大久保卓哉部長に、ALS 診断の現状や診断基準の変遷、遺伝子変異を標的とする治療の意義と課題、さらにALS 患者をめぐる地域医療連携についてもご解説いただいた。 -
再発・難治性びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(R/R DLBCL)の治療と今後の展望
40, 1(2023);View Description
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多彩なゲノム異常を有するびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse largeB-cell lymphoma)は、悪性リンパ腫の約45%を占め、日本では患者数が年々増加している。R-CHOP 療法の普及により6 割程度で治癒が得られるが、その一方で30 ~ 50%とされる再発例やR-CHOP 療法難治例などの再発・難治性(R/R:relapsedrefractory)DLBCL は予後不良であり、治療戦略上の大きな課題となっている。これに対して近年ではR/R DLBCL に対する細胞療法を含む新規治療薬が次々と臨床応用され、さらに新たな作用機序をもつ薬剤の開発も活発に行われている。今回はR/R DLBCL 治療の現状に焦点をあて、課題や今後の治療法開発の潮流も含め、埼玉医科大学国際医療センター造血器腫瘍科の塚崎邦弘教授にご解説いただいた。
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