Pharma Medica
臨床医・薬剤師を対象に,各種疾患治療に関する最先端の臨床学の学術的トピックスを解説。医学・薬学の中間領域を目指す学術月刊誌。医師の薬学に対する理解を深め,薬剤師にも臨床の啓蒙となる雑誌を基本方針として,近年注目されている臨床薬理学分野からも 高い評価を受けている。
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特集【遠隔医療が開く未来】
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在宅医療における遠隔医療の可能性
41, 1(2024);View Description Hide Description超高齢社会および医療の発展に伴い、在宅医療・介護の充実が推進されている。適切な医療を提供するために、人的資源が限られているなかで、地域での多施設多職種での情報共有、専門性のある診断・治療・管理、増悪予測による早期介入などを行っていかなければならない。そのようななかで在宅現場での遠隔医療の臨床応用が少しずつ進められている。すでに心不全患者への遠隔医療の有用性については欧米のガイドラインに明記されている。一方で、現段階では超高齢者を対象とする遠隔医療への障壁も存在する。日本が提唱するSociety 5.0により医療へのAIの導入、遠隔医療の発展が、患者と医療者のコミュニケーション、信頼関係の構築へと導かれることに期待する。 -
不整脈診療におけるリモートモニタリングの歴史と今後の展望
41, 1(2024);View Description Hide Description1985年にWillem Einthoven が12誘導心電図を発明してから、不整脈診断に12誘導心電図が欠かせないのは、現代においても変わらない。しかしながら、不整脈が発作性であることはしばしばあり、病院におけるわずか10秒ほどの心電図検査でその不整脈を検出することは往々にして困難である。このことから、病院から離れた日常生活においても心電図を記録する必要性があり、1950年代にホルター心電図、1980年代頃にイベントレコーダーが開発され、近年では2010年頃に植込み型心臓モニター、2018年に心房細動に限定されるがApple Watch に付随する心房細動を検出するアプリケーションが開発された(図1)。本稿ではそれぞれの機器について概説し、Apple Watchを用いた研究にも言及する。 -
遠隔心臓リハビリテーションシステムの開発状況と今後の課題や展開について
41, 1(2024);View Description Hide Description心疾患治療の一つに心臓リハビリテーションがあるが、適切に実施することにより予後やQOL の改善が期待される。しかし、外来におけるその実施継続率は7% 程度にとどまっている。この大きな要因として、患者側の医療機関へのアクセスの問題がある。心臓リハビリテーションにおいて十分な効果を得るには週3回以上の運動療法が望まれるが、高齢患者にとって頻回の通院は困難であったり、在宅運動療法についてもこれまで状態把握・管理はできなかった。現在われわれは、IoTエルゴメーター、ウェアラブル心電計そしてそれらを統合する医療用アプリを用いた遠隔心臓リハビリテーションシステムを研究開発し、在宅における心臓リハビリテーションを試みている。現在は医師主導治験を進めており、今後本システムの医療機器としての薬事承認および保険適応を目指している。 -
先端素材を駆使した薬物センサの創出―Point-of-care testingと遠隔医療の展開へ向けて―
41, 1(2024);View Description Hide Description遠隔医療は、未来社会での健康の維持や疾患の克服に不可欠である。薬物は、多くの治療の第一選択になる。体内の薬物濃度は、安全かつ有効な範囲、すなわち治療域で維持される必要がある。しかし、治療域が狭い薬物や患者の状態により、薬効の不足や副作用が生じやすくなる。したがって、遠隔医療においては、その場で迅速に薬物濃度を定量するシステムが求められている。この“Point-of-care testing(POCT)” に係るデバイスについては、数多くの試作品が報告されているにも関わらず、実用化は十分に進んでいない。本稿では、最近、筆者らが理工系先端素材を使って開発に取り組んでいる薬物センサを紹介しつつ、遠隔医療の展開に資するPOCT デバイスの現状や課題を述べる。
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連載
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- 【ゲノム医療の現状】
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がんゲノム医療中核拠点病院におけるがんゲノム診療の実際と課題
41, 1(2024);View Description Hide Descriptionがんゲノム医療とは腫瘍組織の遺伝子変化を解析することでそのがんの特徴、性質を明らかにし、その変化に基づく治療提案を行う医療である。筆者はこの医療、遺伝子パネル検査によって治療ターゲットが見つかりその治療の恩恵を受けている症例も多く経験している。がん医療全体にも分子標的薬を中心に臨床試験の活性化、他がん種への適応拡大、薬剤の保険償還など多くのメリットをもたらしている。しかしながらこの結果の解釈には高度な知識が必要とされ、また検査やエキスパートパネルを行える施設も限られ、まだまだ全てのがん患者が平等に受けられる医療ではない。本稿では、がんゲノム医療中核拠点病院で医療を行っている医療者の立場からこの医療のメリットと課題をまとめた。 - 【R&D ~第一人者に聞く~】
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- 【CUTTING-EDGE MEDICAL INTRODUCTION】
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Smart Eye Camera を用いた眼科診療
41, 1(2024);View Description Hide DescriptionSmart Eye Camera(SEC)とは、スマートホン(スマホ)に取り付け、眼科診療を可能とする医療機器の総称である。スマホに取り付ける形の眼科診療機器はこれまでに数種類上市されているが、ほぼ全てが外部光源を使用するため大型で、電池交換やメンテナンスコストがかかるため、高価であることが多い。そのため、眼科専門の医療機関であれば、日常使用のために導入可能性はあるが、日本における僻地医療や途上国での医療では使用ハードルが高い。2023年9月現在、わが国においてSECは、一般的名称として「細隙灯顕微鏡」(Smart Eye Camera 眼診察機器 SLM-i07/08/SE2/SE3. 医療機器届出番号13B2X10198030101、13B2X10198030201)と、「直像検眼鏡」(Smart Eye Camera 眼診察機器 Direct Ophthalmoscope. 医療機器届出番号 13B2X10198030401)の2つのモデルが上市されており、それぞれ前眼部と眼底の診察に活用することが可能である1)-4)(図1)。 SEC「細隙灯顕微鏡モデル」は、前眼部(眼瞼、角結膜、前房、虹彩、水晶体、前部硝子体等)の診断に使用するものであり、白内障や急性緑内障発作などの失明疾患の診断や、ドライアイやアレルギー性結膜疾患などの、common diseaseの診断にも用いられる。 SEC「直像検眼鏡モデル」は、眼底(網膜硝子体、視神経)の観察に用いられるものであり、緑内障や加齢黄斑変性などの視神経疾患や黄斑疾患の観察に有用である。「直像検眼鏡モデル」は無散瞳で直像に眼底観察が可能であるため、眼科の診療現場における前述疾患のスクリーニングや救命救急の現場での、視神経乳頭浮腫の有無など、診療科を超えたさまざまな使用方法が期待できる。 本稿では、SECの国内外における、臨床的なエビデンスや、その実際の使用方法、今後の展望を解説する。 - 【学会レポート】
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特集【遠隔医療が開く未来】
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