癌と化学療法

癌と化学療法は本誌編集委員会により厳重に審査された、 日本のがん研究に関するトップクラスの論文を掲載。
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総説
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地方圏域拠点病院における腫瘍内科医の役割
50, 3(2023);View Description
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腫瘍内科医は,施設内のがん診療チームの司令塔として各領域の医師,医療スタッフと協力して個々のがん患者に合った治療の提案・実施が求められる。一方,地方圏の拠点病院にあっては,腫瘍内科医はもとより,各専門領域の医師,スタッフが限られており大都市圏の拠点病院のように全領域を網羅できるとは限らない。したがって,限られた人員と設備を地方圏域の各施設が協力して地域全体で対応する必要がある。この使命のために,地域ぐるみの専門医や専門スタッフの養成,研究・実践活動,行政と協力した啓蒙活動,がん情報,がん教育,がんアドボカシー活動などの企画・運営が望まれる。この役割を円滑に果たすために,腫瘍内科医が率先してソーシャル・スキルを発揮したい。
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特集
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- 骨転移の診療
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骨転移の病態と診断
50, 3(2023);View Description
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骨転移はすべての進行がんに発生する可能性がある。正確な実数は把握されていないが,日本では年間数万人の患者が存在すると見積もられる。前立腺がん,乳がん,肺がんでは30~90% に骨転移が好発する。骨転移はがん細胞の血行性転移によって生じるが,骨破壊の主役はがん細胞によって刺激された破骨細胞である。骨転移の発生に関与する因子のうち,現在治療標的となっているのは破骨細胞の分化・成熟に関与するreceptor activator of nuclear factor kappa‒B ligand である。症状は疼痛,骨折,麻痺であるが,身体症状に加えてADL やQOL の低下など様々な負のインパクトを患者の精神社会的状況に与える。診断はがん種別発生頻度,症状を基にCT,MRI,骨シンチグラフィ,PET‒CT などの画像診断で確定する。 -
骨転移の整形外科的治療
50, 3(2023);View Description
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本邦ではがん治療の進歩によりがん患者の生命予後は延長し,以前にも増してがん患者の日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)が問われるようになってきた。移動能力の低下や疼痛はADL だけでなくQOL をも低下させることから,がん患者の運動器管理は非常に重要である。2018 年に日本整形外科学会は,「運動器と健康」PR 事業のテーマとして「がんとロコモティブシンドローム(がんロコモ)」を選定した。骨転移はがんロコモの一つの大きな要因であり,その解決に整形外科手術は有用である。骨転移により生じる骨折や脊髄損傷の予防あるいは治療として,長管骨には内固定や関節置換が,脊椎には経皮的椎体形成や除圧,脊椎固定,脊椎骨全摘術などの手術が選択される。予想される生命予後を参考にして,生存期間中に骨転移が原因でADL やQOL が損なわれることがないように,術式が選択される必要がある。また,骨転移の病態は多様であり,がんの種類や病期によりがん治療自体が大きく異なり得る。幅広い整形外科の術式とがん治療の多様性を統合するには,がん治療の主治医と整形外科医の連携が必須である。 -
骨転移の放射線療法
50, 3(2023);View Description
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骨転移への放射線治療を上手に使うことで,症状緩和の質を高めることができる。ただ,有痛性骨転移へいつ適用するのが最適か,よい/悪い放射線治療の適応は何か,再照射をどう使うのがよいか,(切迫)脊髄圧迫へいつ介入するべきか,症状予防のための放射線治療適用の可否など診療で判断に迷うことも多い。本稿は,主に放射線治療の非専門家が放射線治療医へのコンサルトを上手に行うための知識を得ることをめざす。 -
骨転移の薬物療法
50, 3(2023);View Description
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ビスホスホネート製剤は1990 年代後半に転移性骨疾患患者の骨関連事象(SRE)の頻度を低下させる目的で導入され,2010 年代になり別種類の骨修飾薬として抗RANKL 抗体も登場した。いずれも破骨細胞のアポトーシスを誘導し,本邦では骨転移を伴った固形がんと多発性骨髄腫に対して使用されている。骨微小環境構成細胞には破骨細胞以外にも骨芽細胞,血管内皮細胞,免疫細胞など多岐にわたる細胞が含まれ,がん細胞と時空間的にダイナミックで密接な相互作用をすることで骨転移巣が形成されていくことが明らかにされている。がん細胞がどのような経路や微小環境因子を用いて骨コロニー形成を促進するように進化してくるかを理解することで,個々の症例における治療戦略立案が最適化され,正確な分子ドライバーのさらなる解明と創薬へとつながっていくことを期待したい。
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Current Organ Topics:Musculoskeletal Tumor 骨・軟部腫瘍 骨・軟部腫瘍におけるがん遺伝子プロファイリング検査
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原著
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頭皮冷却装置RV2101を用いた乳癌の薬物療法誘発性脱毛抑制に関する有効性と安全性について
50, 3(2023);View Description
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化学療法時の脱毛抑制として,頭皮冷却装置RV2101の有効性および安全性を評価した。アントラサイクリン系あるいはタキサン系薬剤の化学療法を受けた乳癌患者39 例を頭皮冷却群27 例と脱毛観察群12 例に割り付け,NCI 脱毛毒性基準グレードでの評価および量的脱毛毒性グレードスケールを用いた評価を行った。NCI 脱毛毒性基準グレードを用いた脱毛率でも量的脱毛毒性グレードスケールでも,それぞれ51.9%(14/27 例)および100%(12/12 例)であった。また,安全性としては頭皮冷却群および脱毛観察群ともすべての被験者に有害事象が認められたが,重度の有害事象は各群で化学療法に起因する1 例に認められたのみで,いずれの群でも半数例以上は軽度の有害事象であった。治験期間中,死亡例は認められなかった。RV2101を用いた頭皮冷却治療は,乳癌の標準的化学療法を受ける患者に認められる脱毛の軽減に明らかな効果を示した。また,頭皮冷却治療に関連して認められた有害事象は軽度で,軽快したことから許容できるものと考えられた。
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