癌と化学療法
癌と化学療法は本誌編集委員会により厳重に審査された、 日本のがん研究に関するトップクラスの論文を掲載。
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総説
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電子患者報告アウトカムモニタリングによるがん治療の有効性と期待
51, 4(2024);View Description Hide Descriptionがん領域における有害事象の評価にはCommon Terminology Criteria for Adverse Events が用いられてきた。しかし有害事象を評価する医療者は,実際に発現している患者自身よりも症状を過小評価する傾向があることが示されており,患者中心の医療を実現するためには患者報告アウトカム(patientreported outcome: PRO)のモニタリングが必須と考えられている。PRO とは,「臨床家その他の誰の解釈も介さず,患者から直接得られた患者の健康状態に関するあらゆる報告」のことである。PRO は紙の質問票を用い日常的に臨床現場で収集されているが,タブレットやスマートフォンを使ったelectronic PRO(ePRO)という形でより簡便に,かつ効率的にPRO を収集できるようになってきている。ePRO は患者が入力したPRO を非対面でも医療者は共有できるため,遠隔での症状モニタリングや必要時の介入も可能となり,患者の生活の質を改善するだけでなく,全生存期間を延長した報告もある。本邦でもすでに日常診療において使用可能なePRO が登場しているが,広く普及するには至っていない。本稿ではがん患者の治療において,ePRO モニタリングの必要性や有用性,導入や普及のための問題点と解決策,日常診療における現状と展望について概説する。
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特集
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- コンパニオン診断薬の現状と課題
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日本におけるコンパニオン診断薬の現状と規制上の課題
51, 4(2024);View Description Hide Descriptionコンパニオン診断薬(companion diagnostics)は特定の治療薬の有効性や副作用を投与前に予測するために使用される体外診断用医薬品であり,治療薬との同時開発・同時承認が原則となっている。国内では2024 年1 月までに40 品目のコンパニオン診断薬が承認されており,そのうち39 品目はがん治療薬の適応を判定するための製品である。多くのコンパニオン診断薬は,PCR 法,免疫組織染色(immunohistochemistry: IHC)法,in situ ハイブリダイゼーション(in situ hybridization:ISH)法などの技術を検出原理として,がん関連遺伝子に生じた変異(点変異,挿入欠失,融合など)やがん関連分子の発現量を解析することで特定の治療薬の適応の可否を判定する。また,最近では次世代シークエンス(nextgeneration sequencing: NGS)法を検出原理とするコンパニオン診断薬が複数承認されており,がんゲノム医療に活用されている。NGS診断の台頭により,1 回の検査で多数のがん関連遺伝子の変異を同時に解析し,多種の治療薬についてその適応の可否を同時に判定することが可能になりつつある。一方で,コンパニオン診断薬の開発品目の増加に伴い,治療薬とコンパニオン診断薬の同時開発に関連する課題や検出対象が共通するコンパニオン診断薬の互換使用に関する課題などが生じており,これに応じた規制の見直しが国内外で進められている。 -
肺癌診療におけるコンパニオン診断薬の現状と課題
51, 4(2024);View Description Hide Description非小細胞肺癌では多くのdriver 遺伝子異常が同定され,治療薬の開発と臨床導入が進んでおり,それに伴いコンパニオン診断薬(CDx)を取り巻く状況が複雑化している。肺癌診療ガイドラインでは,進行肺癌の初回治療前のCDx には多くの遺伝子異常を一度に検査可能なマルチ遺伝子検査が推奨されている。しかし保険診療においてマルチ遺伝子検査が保険償還されるのは1 回・1 種類のみであること,特定のコンパニオン診断薬と特定の分子標的薬が紐付いていること,現在使用可能なマルチ遺伝子検査はどれも承認薬が存在するすべての遺伝子変異のCDx となっていないことなどから,規制上の問題点に直面することが少なくない。進行期の非小細胞肺癌では,マルチ遺伝子検査で正しい結果を得るのに十分な組織検体を採取するのが難しいという問題点もある。検査に偽陰性があり得ることにも注意が必要で,患者にキードラッグが届かない可能性につながる。本稿では,臨床医の立場から日常臨床で直面するCDx にまつわる問題点について記載する。 -
コンパニオン診断としての分子病理診断
51, 4(2024);View Description Hide Descriptionゲノム医療が進むにつれて,病理医による分子病理診断がコンパニオン診断として用いられる機会も増えている。病理標本が病理診断のみならず,ゲノム解析,分子病理診断に資するものでなくてはならない。病理医が行うコンパニオン診断は免疫組織化学的染色やfluorescence in situ hybridization(FISH)を用いて,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の患者適格性を判断する。多種多様な判定基準を正確に守り,精度高く行うことにより,病理診断学が治療病理学に近づくことになる。 -
がんゲノム医療にかかわるコンパニオン診断の現状と課題
51, 4(2024);View Description Hide Description2023 年12 月現在,保険診療で実施できるがん遺伝子パネル検査は5 種類存在する。そのうち4 種類についてはコンパニオン診断機能も有しているが,がん遺伝子パネル検査をがんゲノムプロファイリング検査として実施した場合は,検査実施料の44,000 点とがんゲノムプロファイリング評価提供料12,000 点の合計56,000 点を請求できるのに対し,コンパニオン診断目的で使用した場合は,この56,000 点より低いコンパニオン診断としての診療報酬しか算定できない。このため臨床現場においてがん遺伝子パネル検査がコンパニオン診断目的で使われることはほとんどない。がんゲノムプロファイリング検査として用いられる場合でも,その適応が標準治療終了または終了見込みの患者に限定されているため,保険適用薬と紐付くバイオマーカーについてはがん遺伝子パネル検査申込時にすでに単独のコンパニオン診断薬で評価されていることが多い。一方,TMBHに対するペムブロリズマブやNTRK 融合遺伝子に対するエヌトレクチニブ,ラロトレクチニブのように,単独のコンパニオン診断薬が存在せず,がん遺伝子パネル検査を実施しなければ薬剤適応の有無を判定できない抗がん薬も存在する。本稿では,がんゲノム医療にかかわるコンパニオン診断の現状と課題について述べる。
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Current Organ Topics:Melanoma and Non—Melanoma Skin Cancersメラノーマ・皮膚癌
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