癌と化学療法

癌と化学療法は本誌編集委員会により厳重に審査された、 日本のがん研究に関するトップクラスの論文を掲載。
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総説
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末梢血からみた腫瘍免疫
48, 3(2021);View Description
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がん免疫編集理論,がん免疫サイクル理論は腫瘍免疫を説明する二つの基本理論である。最新のテクノロジーを使った研究は腫瘍免疫にCD8+ T 細胞のみならず,CD4+ T 細胞が必須であることを証明し,その分化マーカー・機能分子発現によるphenotype,TCR レパトア解析によるclonotype を明らかにしている。また,抗腫瘍T 細胞免疫をつかさどるCD8+T 細胞,CD4+ T 細胞は,われわれが予想していたよりもはるかに広く全身性に分布していることも証明された。末梢血循環は二次リンパ臓器でプライミング→クローン増殖したT 細胞を全身に配置するための通り道であり,T 細胞遊走・浸潤という重要なステップを担うがん免疫サイクルの現場でもある。PD‒1 阻害薬,抗CTLA‒4 抗体の奏効メカニズムを考察しながら,腫瘍免疫の窓ともいえる末梢血から何がみえるのか論じてみたい。
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特集
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- 免疫染色を用いた癌研究
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免疫組織化学の基礎とマルチプレックス免疫組織化学
48, 3(2021);View Description
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免疫組織化学は,抗原抗体反応を利用して標的抗原のin situ での分布や発現量を解析する形態学の中心的なツールであり,基礎研究から診断の実務に至る様々な場面で活用されている。広く普及している手法ではあるものの,目的にかなった免疫組織化学を行うためには,その原理を十分に理解した上で適切な試料や抗体を準備して妥当な手法を選択する必要がある。免疫組織化学の結果は従来の多重標識法によるものも含めて画像として出力され,その解釈は研究者にゆだねられる。そのためフローサイトメトリー法など他の手法に比較して,免疫組織化学の再現性や検証性は不十分といえる。しかし近年開発され,実用化された高度の多重標識を行うマルチプレックス免疫組織化学の各種手法では,観察視野内に分泌している細胞の座標や標的抗原の発現量といった形態学的な情報が数値として出力され,形態を数理科学的に解析することが可能となっている。本稿では免疫組織化学を行う上で留意すべき基礎的な要点を再確認し,マルチプレックス免疫組織化学を含む多重標識法の手法について提示する。それらの特徴・利点とともに,未解決の課題も取り上げる。 -
大腸癌治癒切除後の予後予測マーカーとしての免疫関連因子
48, 3(2021);View Description
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背景: CD3 およびCD8 陽性T 細胞の腫瘍浸潤は,結腸直腸癌(CRC)患者の良好な予後予測マーカーとして報告されてきた。CRC におけるCD4 およびFOXP3 陽性T 細胞の腫瘍内浸潤の予後に与える意義を明らかにする。方法: 治癒切除を受けた342 人のCRC 患者の組織標本から,CD3,CD8,CD4 およびFOXP3 陽性T 細胞を免疫染色(IHC)し,1 mm2当たりの腫瘍内浸潤細胞数を定量化した。マイクロサテライト不安定性(MSI)も322 検体で評価し,臨床病理学的因子および生存率を解析した。結果: CD3,CD4 およびFOXP3 陽性T 細胞の高浸潤群は,無再発生存率(RFS)の改善と関連した。CD8,CD4 およびFOXP3 陽性T 細胞の高浸潤群は,疾患特異的生存率(DSS)の改善と関連した。深達度,脈管浸潤およびCD4 陽性T 細胞密度はDSS の独立した予後因子であった。CD4 およびFOXP3 陽性T 細胞浸潤は,CD3 およびCD8 陽性T 細胞浸潤とは対照的に高頻度マイクロサテライト不安定群と関連を認めなかった。結論: 腫瘍内CD4 陽性T 細胞浸潤とFOXP3 陽性T 細胞浸潤は,他の臨床病理学的因子と比較して強力な予後因子であった。これらの結果は,CRC の新しい予後予測マーカーとして治療戦略の確立の一助となる可能性がある。 -
胃癌におけるtopo Ⅰ-pS10 発現のイリノテカン効果予測バイオマーカーとしての有用性
48, 3(2021);View Description
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背景: 胃癌治療においてイリノテカンはよく用いられるが,現在のところ効果を予測するバイオマーカーは存在しない。イリノテカン耐性機構には投与後のtopoisomerase Ⅰ(topo Ⅰ)分解がかかわっていることがわかっている。われわれは,このtopo Ⅰ分解の指標となるリン酸化topo Ⅰ-S10(topo Ⅰ-pS10)抗体を作製した。目的: 免疫組織化学染色法によるtopo Ⅰ-pS10 核内発現の胃癌におけるイリノテカン効果予測としての有用性を検討する。方法: まず,topo Ⅰ-pS10 抗体を用いた免疫組織化学染色法の条件検討を行った。続いて,topo Ⅰ-pS10 発現とイリノテカン効果を比較するために,胃癌臨床検体を用いた二つのパートの試験を行った。試験パートとしてSDI 法によりイリノテカン感受性が予測された₇₉ 例の胃癌検体を用い,免疫組織化学染色法にてtopo Ⅰ-pS10 の発現を検討した。検証パートとして実際に二次治療以降でイリノテカンが使用された27 例の胃癌検体を用いた。結果: topo Ⅰ-pS10 発現は核に認めた。各種条件検討の結果,topo Ⅰ-pS10 免疫染色条件は抗原賦活85℃,抗体濃度を1:100 と定めた。試験パートではROC 曲線を作成し,カットオフ値を核染色陽性細胞率35% とした。79 例中63 例がtopo Ⅰ-pS10 陽性であった。イリノテカンのSDI の結果と比べると感度は76.6% であり,陽性的中率は92.5% であった。すなわちtopo Ⅰ-pS10 陽性症例では,イリノテカンに耐性であることを示した。検証パートでは,感度82.4%,陽性的中率は82.4% であった。結論: topo Ⅰ-pS10 発現はイリノテカン効果と相関が認められ,イリノテカン効果を予測するバイオマーカーとなり得ることが示唆された。 -
多重蛍光免疫染色法を用いた食道癌化学療法の効果予測
48, 3(2021);View Description
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癌患者における化学療法の効果には,癌細胞に対する直接的な細胞傷害性に加え,腫瘍免疫を介する機序の存在が明らかとなっている。今回,食道癌の化学療法奏効にかかわる免疫環境の解明を目的とし,86 例より投与前生検組織を採取,蛍光標識チラミドを用いた多重染色を行い,波長可変フィルター蛍光顕微鏡にてリンパ球およびマクロファージを解析した。化学療法非奏効と種々のT 細胞分画には相関は認めなかったが,CD163 あるいはCD206 陽性のM2 マクロファージ(TAM)高値とは有意な関連を示した。TAM を標的とした免疫療法の臨床試験が世界で進行中であり,今回の結果は食道癌においてもTAM 阻害剤併用が化学療法耐性の克服に有用である可能性を示している。
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Current Organ Topics:Musculoskeletal Tumor 骨・軟部腫瘍 骨軟部腫瘍に対する薬物療法―最近の話題―
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