癌と化学療法

癌と化学療法は本誌編集委員会により厳重に審査された、 日本のがん研究に関するトップクラスの論文を掲載。
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総説
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がん免疫力をアップさせる目から鱗の腸内ケア—特に胚中心を伴うTertiaryLymphoid Structure 誘導の役割について—
48, 4(2021);View Description
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癌患者は,程度の差こそあれ腸内環境がすでにdysbiosis 状態に陥っている。そのような患者に抗癌剤を投与すると,その副作用で腸粘膜バリア機能が障害される。その結果,bacterial translocation が起こって肝臓類洞内に好中球細胞外トラップと活性化血小板からなる免疫血栓が形成され,そこで腸内細菌を捕捉・殺傷する自然免疫応答が働く。しかしこの免疫血栓が必要以上に過剰に発生すると,そこからHMGB1・S100A8/S100A9・VEGF—A などのalarmin が細胞外に放出される。これらのalarmin は癌巣部からも放出されており,ともにmyeloid—derived suppressor cell(MDSC)などの免疫抑制性細胞を肝臓や癌巣部内に数多くリクルートするので,肝臓内にpre—metastatic niche が形成され,癌巣部の免疫抑制性環境も増強する。したがって,抗癌剤治療時には肝臓や癌巣部にMDSC などがこれ以上増加しないように腸粘膜バリア機能を強化する腸内ケアを行う必要がある。われわれは,独自に考案したプロバイオティクスとL—グルタミン含有サプリメントからなる腸内ケアを膵癌の術前化学療法施行時に行ったところ,免疫チェックポイント阻害剤の治療効果予測バイオマーカーとして今にわかに注目され始めた“胚中心を伴うmature tertiary lymphoid structure 誘導”を介した驚きの癌免疫応答症例を経験した。そこで,その貴重な病理組織像を紹介するとともに,その液性免疫誘導の詳細な機序について腸内ケアを伴う抗癌剤治療の視点から概説する。
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特集
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- 小細胞肺癌治療の最前線
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小細胞肺癌の病理分類・分子生物学的分類
48, 4(2021);View Description
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肺癌を除く他の多くのがん種では小細胞癌の名称は神経内分泌癌に統一されつつあり,その流れを受けて2015 WHO肺癌分類では小細胞癌は神経内分泌癌の一型となった。しかしながら,小細胞癌の名称は維持され,2021 WHO 肺癌分類においても一つのエンティティとして存在する。本稿では小細胞肺癌における分類の歴史と現在の考え方を紹介するとともに,2019 年に提唱された四つの決定的分子,ASCL1,NEUROD1,YAP1,POU2F3 を軸とした小細胞肺癌についての分子生物学的分類を紹介する。 -
小細胞肺癌の網羅的ゲノム解析
48, 4(2021);View Description
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小細胞肺癌は肺癌のなかでも最も予後不良な組織型であり,発見時にすでに手術不能な進行期であることが多い。近年の研究では小細胞肺癌の網羅的ゲノム解析が行われ,TP53 やRB1 などの腫瘍抑制遺伝子の失活変異,MYC ファミリー遺伝子の増幅などが癌の発生,増殖に関与していることが示されているが,治療標的となるような遺伝子異常は少なく,小細胞肺癌における標的治療薬の開発は大きな進展がみられていない。本稿では,全国規模での肺癌ゲノムスクリーニングプロジェクトであるLC-SCRUM-Japan を基盤として実施した,日本人の小細胞肺癌患者を対象とした大規模ゲノムスクリーニングの結果と,検出されたPI3K/AKT/mTOR 経路の遺伝子異常に対する標的治療の有効性を検証したEAGLE-PAT 試験の概要,およびこれまで研究された小細胞肺癌における遺伝子異常や標的治療について概説する。 -
小細胞肺癌におけるQOL 維持への取り組み—脳転移・骨転移治療の最前線
48, 4(2021);View Description
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小細胞肺癌は増殖速度が速く,比較的早期に多臓器に転移を起こし得る。特に脳転移と骨転移は生じる頻度が高く,進行すると生活の質(quality of life: QOL)を著しく低下させるため,脳転移・骨転移の管理を適切に行うことが重要である。限局型小細胞肺癌の化学放射線治療後,治療効果が良好な場合には脳転移の再発を予防するための予防的全脳照射(prophylacticcranial irradiation: PCI)が標準治療である。小細胞肺癌の脳転移では,単発であったとしても早期に多発の脳転移を来す可能性が高いために全脳照射(whole brain radiation therapy: WBRT)を行うことがある。しかしながら,PCI およびWBRT は晩期の有害事象として神経認知障害のリスクがあり,QOL 低下の可能性がある。限局型小細胞肺癌に関してはPCI を行わない場合,magnetic resonance imaging(MRI)による定期的なフォローアップを行い,脳転移出現時に定位照射(stereotactic radiosurgery: SRS)もしくはWBRT を行うことが代替案となる。小細胞肺癌の脳転移においても一律にWBRT を選択するのではなく,症例に応じてSRS を行う選択肢もある。骨転移は疼痛,病的骨折,脊髄圧迫や高カルシウム血症などの原因となり,放射線治療や外科的治療が必要となる骨関連有害事象(skeletal—related event: SRE)を来すリスクがある。SRE はQOL を著しく低下させるために適切かつ迅速な対処が求められる。骨転移の治療としては,鎮痛薬,放射線治療,外科的治療,骨修飾薬(bone modifying agent: BMA)などがあるが,いずれの治療も症例に応じて適切に選択することが肝心である。脳転移・骨転移ともに局所の制御を適切に行うことがQOL 維持に重要であり,集学的アプローチが必要となる。 -
進展型小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント阻害剤
48, 4(2021);View Description
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様々な癌腫に対する治療戦略として,免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor: ICI)はICI 単剤治療,ICI どうしの併用療法または化学療法とICI の併用療法で,従来からの化学療法に比し全生存期間を延長できることが複数の臨床試験で検証されており,癌治療におけるキードラッグとして認識されている。長らく治療進歩が停滞していた進展型小細胞肺癌に対しても二つの大規模な第Ⅲ相試験(IMpower133 試験,CASPIAN 試験)が行われ,標準治療とされる化学療法群に比較して化学療法に抗PD—L1 抗体(atezolizumab,durvalumab)を上乗せすることにより全生存期間を延長することが示された。免疫関連有害事象には注意が必要であるが,両試験とも有害事象での治療中止割合は両群で同等と考えられ,治療の忍容性も示された。現在,進展型小細胞肺癌に対する一次治療としてcarboplatin+etoposide+atezolizumab併用療法,またはプラチナ製剤(carboplatin またはcisplatin)+etoposide+durvalumab 併用療法が,肺癌診療ガイドライン2020 年版でも推奨グレード1A とされている。本稿では,それぞれの臨床試験の概要説明とクリニカルクエスチョンを提示する。
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Current Organ Topics:Melanoma and Non—Melanoma Skin Cancers メラノーマ・皮膚癌
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Ⅰ. Dermatologic Oncology—その概念および本邦での現況と展望—
48, 4(2021);View Description
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