癌と化学療法

癌と化学療法は本誌編集委員会により厳重に審査された、 日本のがん研究に関するトップクラスの論文を掲載。
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総説
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抗腫瘍T 細胞の疲弊プロファイルと免疫チェックポイント阻害剤反応性のかかわり
49, 6(2022);View Description
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T 細胞疲弊は,慢性ウイルス感染症やがん微小環境など,持続的に抗原刺激にさらされるT 細胞が陥るエフェクター機能の低下した状態である。本来,疲弊T 細胞においては免疫チェックポイント分子の重要性が知られていたが,近年の解析技術の進展に伴い,疲弊に至る機序および疲弊に至ったT 細胞のプロファイルについて,遺伝子,エピジェネティクス,代謝レベルでのより詳細な理解が進んでいる。これらの疲弊T 細胞プロファイルの大部分は免疫チェックポイント阻害剤によっても変化しないことから,疲弊状態の本質にかかわる性質変化と考えられるようになった。また,これまであまり意識されてこなかった疲弊T 細胞集団の異質性が同定され,異なる分化状態のT 細胞が混在していることがわかってきた。疲弊T 細胞の特性の違いは,がん免疫療法などの治療効果にも深くかかわることから特に注目されている。これらの知見に基づき,疲弊状態から本質的に脱却するため,もしくは免疫チェックポイント阻害剤の有効性をさらに高める観点での治療標的がわかってきており,本稿ではこれらの最新の知見を紹介したい。
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特集
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- 第3 期がんプロフェッショナル養成プランの成果―その2―
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北信がんプロ―超少子高齢化地域での先進的がん医療人養成―
49, 6(2022);View Description
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北信がんプロでは,長野県,富山県,石川県,福井県に所在する金沢大学,信州大学,富山大学,福井大学,金沢医科大学,石川県立看護大学が連携し,超少子高齢化地域での先進的がん医療人養成をめざした教育プログラムを実践している。大学院生コースとして10コース,社会人コースとして11 コースを立ち上げ,目標を上回る履修生を受け入れている。e-learning 教材を使った講義やテレビ会議システムを活用した多職種連携セミナーを開催している。海外スタッフ研修として3か国の医療施設でがんゲノム医療やがん緩和ケアを学んだ。がん診療連携拠点病院等22 施設の院内がん登録データを活用した地域がんデータベース事業で,4県における障がい者がん,胸膜中皮腫,胸腺がん,小児・AYA 世代がん患者の特徴を明らかにした。さらに市民公開講座を開催し,市民に対しがん情報を提供した。 -
高度がん医療を先導するがん医療人養成
49, 6(2022);View Description
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京都大学拠点では,滋賀医科大学,三重大学,大阪医科薬科大学,京都薬科大学との5大学連携で「第3期がんプロフェッショナル養成プラン」を推進してきた。掲げたテーマは,「高度がん医療を先導するがん医療人養成」である。われわれが取り組んだ特色ある教育プログラムは,1)海外研修,2)5大学連携短期研修プログラム,3)5大学連携医療フォーラム, 4)患者・市民の視点を入れた教育の実践である。第3期では173名のがんプロ履修生を受け入れ,2021年時点で120名が専門資格を取得した。一方,第3期がんプロは2021年度に終了し,現在在籍しているがんプロ履修生の教育が継続困難な状況であるため,2022 年度以降にがんプロ予算が計上されサスティナブルな教育が実施できるようになることを切に願う。 -
ゲノム世代高度がん専門医療人の養成
49, 6(2022);View Description
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「ゲノム世代高度がん専門医療人の養成」として,ゲノム医療に基づくがんの診断・治療および緩和ケア・日常生活ケアにかかわる人材を養成し,小児・希少がんの専門医療人を教育し,AYA 世代~高齢者に至るライフステージそれぞれの患者ニーズを理解し,患者の視点に立脚してがん医療の各局面に必要で高度ながん医療人材養成を行った。関西7大学が各特徴を活かして連携し,がん治療の多様なニーズ・地域特性を理解したチーム医療を推進できる高度ながん教育コースを開設した。腫瘍外科専門医,腫瘍内科・がん薬物療法専門医,緩和医療専門医,腫瘍病理専門医,放射線治療専門医,がん専門薬剤師,がん看護専門看護師,細胞検査士,医学物理士,放射線治療技師および第3期からはゲノム医療専門医,小児血液・がん専門医を養成した。実習・実地訓練を含めた実践的な教育を提供できた。多職種協働・多大学連携の教育活動を実施し,社会・地域貢献に寄与できた。高度な研究活動を推進し,多くの研究実績を達成できた。がん専門医療職の資格取得者を多数養成できた。修了生をがん専門医療機関に多数輩出できた。 -
「7 大学連携個別化がん医療実践者養成プラン」の成果
49, 6(2022);View Description
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近年,わが国のがん医療には多様化する新たなニーズや課題への対応が求められている。これらのなかで,ゲノム医療の実用化,希少がんおよび小児がん対策,異なるライフステージのがん患者に生じる特有の課題への対応などが解決すべき喫緊の課題とされる。本プランの目的は,大阪府,兵庫県に位置する国公私立7大学9学部の医学,看護学,薬学,遺伝カウンセリング学系大学院研究科が相互連携し,がん医療における多様な新ニーズに対応した個別化医療を実践できる多職種のがん専門医療人を養成することである。目的達成のために,三つのタスクフォース(TF)を立ち上げ,これらの課題に対して取り組んだ。TF1「ゲノム・サイエンス」では,ゲノム医療を実装し連携大学間および産学官共同研究を推進した。TF2「教育イノベーション」では,個別化医療を実現するための革新的な教育プログラムの開発を促進した。TF3「マルチパートナーシップ・アライアンス」では,地域医療機関,自治体・公的機関,がんサバイバーを含む患者会,NPO 法人などとの連携・支援体制を強化し,緩和ケアの推進にも注力した。各TF が実働的に連携することによって,患者中心の個別化医療を実践できる多職種のがん専門医療人を養成することができた。 -
中国四国がんプロでの全人的医療を行う高度がん専門医療人養成
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第3期中国四国がんプロでは全人的医療を行う高度がん専門医療人養成を掲げ,11の連携大学がコンソーシアムを形成し,18のワーキンググループが活動して大学院教育を行ってきた。独自のe-learning システムやチーム医療合同演習などをとおして高度な専門知識を有し,多職種によるチーム医療でがん診療を実践できる医療人を養成した。本事業により輩出してきた人材は医師,歯科医師,薬剤師,看護師,放射線技師,医学物理士,栄養士など多岐にわたり,また各種がん関連専門資格を取得した修了生は地域のがん診療連携拠点病院で診療を担っており,中国四国地方でのがん診療の充実,向上に貢献している。 -
新ニーズに対応する九州がんプロ養成プラン
49, 6(2022);View Description
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本邦では小児がんや希少がんを専門とする医療人材,また小児・AYA 世代,高齢者などライフステージに応じたがん診療に対応できる人材が十分でないと考えられる。また,九州は離島・僻地が多く,それらの地域におけるがん対策も必要とされる。一方で,ゲノム医療の実用化が加速し,がんゲノム医療を適切に臨床応用および研究開発できる人材の育成はこれからのがん医療において重要な課題である。「新ニーズに対応する九州がんプロ養成プラン」は,がんゲノム医療,小児・AYA 世代・希少がん,ライフステージに応じたがん対策といった重要なニーズに対応できる人材を育成することを目的として九州内の10大学が参画するプロジェクトである。われわれは,この10大学が協同してこの5年間で様々な事業を展開した。本プランに沿った講義,研修会,研究発表会,海外施設訪問研修,僻地・離島病院実習,専門医資格取得サポートなどを精力的に行い,本プランの履修生からも好評を得ている。本プランをとおして,がんゲノム医療や希少がん,ライフステージに応じたがん医療について習熟した履修生は多く,将来のがん医療を担う者も多く輩出できたと思われる。本プランは令和3年度で終了となるが,九州におけるがん専門医療人材の数と質を維持するために今後も各大学と連携し各種事業を継続していく準備を行っている。
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Current Organ Topics:Central Nervous System Tumor 脳腫瘍 転移性脳腫瘍Update―転移性脳腫瘍患者に対する薬物療法
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