ENDOSCOPIC FORUM for digestive disease

症例は50 歳台，男性。X‒1 年に前医で上部消化管内視鏡検査（EGD）を受け，食道胃接合部2 時方向にポリープを指摘された。逆流性食道炎や胃粘膜萎縮は認めなかった。生検は肉芽組織が主体で炎症性ポリープと診断された。X 年のEGD でポリープの形態変化を認め，生検でGroup 5 の診断であった。炎症が強いため，ボノプラザン服用後に再評価を行ったが，ポリープは消失し食道粘膜の肥厚のみであった。NBI 拡大観察で扁平上皮下に不整な血管像を認めた。ESD 後の病理診断は，Jz，18 mm，“0‒ Ⅱ　b”＋0‒Ⅱ　a＋0‒Ⅱ　c，adenocarcinoma（por2‒sig＞tub，muc），pT1b‒SM（450μm），Ly0，V0，pHM0，pVM0 で腫瘍の大部分は扁平上皮下に存在していた。組織学的にバレット食道の所見は認めず，食道胃接合部腺癌と診断した。リンパ節転移を考慮して追加手術を施行し，遺残やリンパ節転移は認めなかった。

症例は20 代，男性。X‒12 年に内視鏡的胃瘻造設術を施行しバードPEG キット® 16Fr 3.0 cm を挿入した。以後，半年ごとにX 線透視下でカンガルーボタン　Ⅱ　® 16Fr 3.0 cm に交換を行っていた。X 年に胃瘻カテーテル交換予定日の2 日前から栄養剤注入は可能であったが，ボタンが動かなくなり受診した。内視鏡観察すると胃内部バンパーが粘膜に埋没し，一部のみが視認可能であり，バンパー埋没症候群と診断した。ガイドワイヤーを挿入し，胃瘻を確保し，胃瘻カテーテルを鈍的に再挿入した。後日，MIC‒KEYバルーンボタン® 16Fr 4.5 cm に交換した。X‒12 年からX 年の間に，身長は130.0 cm から160.0 cm，体重は15.7 kg から25.0 kg まで増加していた。小児期造設症例では，成人例よりも発育成長が顕著な場合が多く日々の胃瘻管理で，体外固定板は体表面から1～2 cm 程度離れた場所で固定することでバンパー埋没症候群は予防可能と考えられ，示唆に富む1 例と考えられた。

症例は30 歳台，男性。13 年前，下痢，血便を発症し近医で大腸内視鏡検査を施行し，潰瘍性大腸炎，全大腸炎型と診断された。再燃を繰り返し，都度ステロイド療法を必要とし依存性と考えられた。今回，腸管症状，発熱が再燃し，2 日後，前脛骨部に虫刺傷様の皮疹が出現し潰瘍化した。潰瘍性大腸炎再燃に伴う壊疽性膿皮症と考えられた。ヤヌスキナーゼ（Janus Kinase: JAK）阻害薬であるトファシチニブを投与した。4 日後，便回数減少，皮疹も改善傾向を示した。16 日後，血便は消退し，37 日後に皮疹は著明な改善が認められた。潰瘍性大腸炎に対し相次いでJAK 阻害薬が保険収載されているが，壊疽性膿皮症に対して使用報告例は少ない。壊疽性膿皮症を合併したステロイド依存性潰瘍性大腸炎再燃に対してJAK阻害薬を投与したところ，潰瘍性大腸炎とともに壊疽性膿皮症にも著効した。

症例は50 歳台，男性。膵体尾部癌に対して膵体尾部切除を施行した。その後に肝転移を認め，FOLFIRINOXを施行していたが，上腹部痛と嘔吐が出現した。肝胆道系酵素と膵酵素の上昇があり，CT にて膵癌腹膜播種による輸入脚症候群と診断した。緊急性があると判断し経皮経肝的に輸入脚にドレーンを留置し，緊急手術を回避できた。症状安定後に内瘻化目的でシングルバルーン内視鏡下に，金属ステントを留置し内瘻化に成功した。悪性腫瘍の再発による輸入脚症候群は，全身状態不良例も多く，緊急手術や鎮静を要する内視鏡処置が困難であることも多い。全身状態を考慮してドレナージ方法を検討するべきと考える。