がん看護
『がん看護』は、がんの医学・医療的知識から経過別看護、症状別看護、検査・治療・処置別看護、さらにはサイコオンコロジーにいたるまで、臨床に役立つさまざまなテーマをわかりやすく解説し、最新の知見を提供するジャーナルです。施設内看護から訪問・在宅・地域看護などの看護の場と領域に特有な問題や、告知、インフォームド・コンセント、生命倫理、グリーフワークといった、患者・家族をとりまく今日の諸課題についてもアプローチをしています。
Volumes & issues:
Latest Articles
-
目次
-
-
-
特集【がん医療における「家族ケアの課題」~困難事例への解決アプローチ~】
-
-
- 総論
-
家族理解の基本概念と支援における「円環的思考法」
29, 2(2024);View Description Hide Descriptionがん臨床において,家族を巻き込んだかたちでの,患者・家族への対応が増している背景には,次の3 つの事象を挙げることができる.1つ目は,病院機能の役割分化による,がん専門病院や一般の病院からの緩和ケアあるいは在宅への療養場所の移行,いわゆる退院調整支援である.2 つ目として,徹底した入院期間の短縮を目指したがん治療・療養指導の外来化がある.これにより,外来への付き添いなど,家族への患者サポートの期待が大きくなる.3 つ目として,ACP (advance care planning)がある.患者と家族間での人生のケア計画をめぐる「意思決定」には対話が必要であり,これはその調整のためのものである.実際,がん臨床では,患者と家族に重要かつさまざまな意思決定が課せられる機会が多く,家族内の合意形成がないと治療方針が定まらないことが起きている. 一方,コロナ禍で病棟から家族の姿が消え,外来で家族とかかわる時間が短くなったことで,「家族がみえない,家族の情報がない」という看護師の戸惑いの声には切実なものがある.そして,今後深刻になる可能性があることが,「(家族とかかわった経験がないため,)家族をどうとらえてよいのかわからない」「(必要性はわかるけど,)うまく家族に声をかけられない」と話す看護師が増え,医療者-家族間でぎくしゃくした関係での“もめごと”が増えることである. そこで重要になってくるのが,「家族をみつめるメガネを磨き上げて(家族アセスメントの精度を上げて),相手の言動をキャッチする力をつけ,推論をフル活用して事にあたる(対応する)こと」である. 本稿では,家族理解として「家族レジリエンス」を取り上げ,家族の生活経験と歴史を重んじてみつめていくことを解説する.また,家族支援の際の,家族間調整の相互作用(関係性)をみる「円環的思考法」について説明したいと思う. - ライフサイクル別 がん患者と家族の問題への具体的アプローチ
-
-
-
- 実践! がんとACP(意思決定支援)
-
がん臨床の倫理的問題とACP
29, 2(2024);View Description Hide Description現在,日本人にとってがんは身近な病気となっており,その病気の経過は,終末期の軌跡モデル(イルネス・トラジェクトリー)では,比較的長い期間身体機能が保たれ,最期の2~3 ヵ月で急激に身体機能が低下することが多いとされている1).つまり,終末期の病状変化が急激である可能性や,治療に伴う重篤な合併症や副作用で思い描いたような最期を送ることができないケースがある.このような状況において,医療の場では,家族に代理意思決定を求めることが多々みられる.一方で,代理意思決定を担った家族の80%以上は心的外傷後ストレス障害に苦しんでいるという報告2)や,家族が患者の思いを推察するむずかしさ,患者の意向よりも家族の希望を優先する決断を行うなど3)の問題点が指摘されている.将来の医療ケアを話し合うプロセスである人生会議(advance care planning:ACP)は,これらの問題を解決し,患者の意思を尊重した医療を提供するために有用とされているが,開始するタイミングのむずかしさや,患者と医療従事者の信頼関係が不可欠であること,時間と手間を要するなどのむずかしさが指摘されている. 本稿では,がんに罹患した患者とその家族の最期の時間を支えるために,患者自身の意思決定や家族・医療者と合意形成,つまりACP に関して,その周辺の概念も含めて解説し,事例を使って支援のポイントを考えていく. -
標準治療終了時に起こる医療者間のコンフリクト(不協和)を解消する
29, 2(2024);View Description Hide Description本稿では,「標準治療終了時に起こる医療者間のコンフリクト(不協和)を解消する」をテーマとし,標準治療終了時に医療者間で生じやすい問題やその解決に向けて押さえておくべきポイントについて,事例を挙げて概説する.ここで述べる「標準治療終了」とは,がんの積極的治療の中断, 支持療法(best supportive care:BSC)への移行を指す. -
標準治療が終わるとき,患者と家族の意思を調整し統一させる
29, 2(2024);View Description Hide Description近年,がん薬物療法は急速な進化を遂げ,その目的は根治から症状緩和まで幅広く,そして進行期・再発時においては長期間で治療は連続的なものとなっている.そのような中で,医療者から治療効果よりも不利益が上回ると判断されたとき,患者は治療の一時中断や中止,これに並行して療養場所の選定などのさまざまな意思決定が必要となる. 門脇は,がん患者とのend-of-life discussions (EOLD)を「がんが進行した状態にある患者に対して,患者の価値観や個別性を尊重しながら,患者と家族と医療者のチームアプローチと個々の信頼関係に基づいて,治療・緩和ケア・療養について話し合うこと」1)と定義している.EOLD を積極的に行うことは,患者の意向に沿ったEOL ケアの増加やQOL の向上につながる.本稿では,標準治療* での治療効果が望めない時期に差し掛かった患者・家族と医療者が,EOLD により意思決定をした事例について紹介する. - よくある家族ケアの困りごとと具体的アプローチ
-
複雑な家族への多職種連携の実践
29, 2(2024);View Description Hide Descriptionここ数年,緊急入院をした患者の未成年の子が家に取り残されるという問題や,死を迎える患者の子の養育の方向性が定まっていない問題など,病気の親をもつ「子」に関する問題が,多く見受けられるようになった.核家族化(家族構成が小さくなっていること)や離婚率の増加,地域社会の人間関係の希薄化などがまず理由に挙げられる.加えて,令和4 年度の診療報酬改定で,ヤングケアラーに関する加算がつけられたことからもわかるように,以前であれば見逃されていたかもしれない病気の親をもつ子の問題を,社会全体で取り組むようになってきたことも一因と考える.
-