臨床精神薬理

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【展望】
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プラセボの可能性と限界
26, 9(2023);View Description
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プラセボの可能性と限界を展望した。プラセボ効果は多層的な生物学的プロセスが統合された現象である。プラセボ効果の臨床利用は,精神疾患以外にも,神経疾患,免疫疾患などに広がっている。しかしながら,学術的な進展に比して,臨床におけるプラセボ効果への理解や,治験におけるプラセボ対照試験の課題が,本邦において充分に再考,議論されているとは言いがたい。本稿は,プラセボの可能性と限界を展望するにあたって,1.プラセボについて現状の科学的知見をまとめ,2.プラセボの生物学的・臨床的知見を通して治療学について考察し,さらに,3.プラセボ対照試験における課題を整理した。プラセボの生物学的知見と臨床知見は,私たちに,疾病からの回復に個々の患者の体験がいかに重要であるかを示している。プラセボ効果について臨床的,生物学的に説明するためのさらなる研究が必要である。それらの研究結果からは,精神疾患からの回復(レジリエンス)に関する示唆に富む情報が得られるだろう。 臨床精神薬理 26:823-832, 2023 Key words : placebo, resilience, biology, clinical usability, clinical trial
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【特集】プラセボを究める
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精神疾患の臨床試験におけるプラセボ反応の歴史
26, 9(2023);View Description
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プラセボをテーマにした研究は右肩上がりに増加しているが,古代からプラセボの持つ意味は医学の発展と重なって変化してきた。様々な疾患の特定の治療法が開発される前には,プラセボと他の治療を切り分けるのは困難であったが,その後,想像力による治療効果と実際の薬効を切り離そうとする時代,無治療群と治療群の比較,単盲検,二重盲検のプラセボ比較試験などプラセボ比較試験の洗練によって実薬の発展に役立てようとする時代,そしてプラセボ反応自体を臨床利用のためにコントロールしようとする時代へと変遷してきた。臨床試験の目まぐるしい発展において,プラセボの扱われ方が変化しており,例えばプラセボ比較試験ではめざましいプラセボ反応を抑えて,実際の薬効を際立たせるなどの試みが行われてきた。臨床試験の発展とともに徐々にプラセボ反応自体に焦点があたり,現在では,プラセボ投与自体の非盲検と盲検化によってプラセボ反応がどう変わるかなど実際にプラセボを臨床応用するにあたっても有用な研究などが発展しつつある。 臨床精神薬理 26:833-838, 2023 Key words : placebo response, history, clinical tria -
プラセボ対照試験と実薬対照試験
26, 9(2023);View Description
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ランダム化比較試験には,実薬とプラセボとを比較するプラセボ対照試験と実薬同士を比較する実薬対照試験がある。プラセボ対照試験は,新薬の有効性を実証する標準的な方法であり,新しい治療法の有効性検証にはプラセボとの比較が原則であるとされている。しかし,抗うつ薬のネットワークメタアナリシスにて,プラセボ対照試験は実薬対照試験と比べて同じ抗うつ薬の反応率が低く脱落率が高いことが指摘された。また,このネットワークメタアナリシスのデータの解析により,抗うつ薬のランダム化比較試験の臨床試験においては,プラセボ群の存在や,プラセボ群に割り付けられる割合が高いことにより,薬剤に対する反応率が下がったり,脱落率が高くなったりすることも明らかになった。抗うつ薬のランダム化比較試験の結果を統合して解釈する際には,プラセボが投与される確率を考慮する必要があり,また,抗うつ薬の有効性や受容性を適正に評価するためには,有効性や忍容性の高い抗うつ薬を対照群とすることを検討する必要があるかもしれない。 臨床精神薬理 26:839-844, 2023 Key words : placebo-controlled trial, active-controlled trial, antidepressant, placebo, network meta-analysis -
ニューロモデュレーションとプラセボ効果
26, 9(2023);View Description
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ニューロモデュレーションの臨床試験では,偽薬(プラセボ)を投与することができないため,偽刺激(シャム)が実施されてきた。うつ病を対象とした反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や脳深部刺激(DBS)では,左背外側前頭前野や膝下部帯状回が刺激部位として選択される。プラセボ効果に関わる脳領域としては,左背外側前頭前野,左膝下部前部帯状回/腹側線条体,右吻側前部帯状回,右基底核,右背側前部帯状回などが同定されており,rTMS や DBS の抗うつ機序とプラセボ効果には,共通した脳領域や神経回路が関与している可能性がある。うつ病を対象とした臨床試験では,経年的にプラセボの効果量が増加傾向を示しており,近年の rTMS や DBS の臨床試験では,偽刺激と比較し実刺激の有効性が示せなかった報告もある。真の治療効果を評価するためには,偽刺激の技術的な問題だけではなく,対象患者,併存疾患,治療抵抗性の程度,試験デザインなどが肝要である。 臨床精神薬理 26:845-850, 2023 Key words : Neuromodulation, repetitive transcranial magnetic stimulation(rTMS), deep brain stimulation(DBS), depression, placebo -
精神療法の実証研究における比較対照
26, 9(2023);View Description
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臨床研究において,介入効果を実証するためには必ず比較対照を用いる必要がある。薬物治療の有効性を実証するのには,対照群との相対的な比較が行われるが,それは精神療法の有効性を実証する場合においても変わらない。しかし,精神療法の実証研究において治療者そのものが介入である点が比較対照の設定を難しくしている。また,治療者によって精神療法の効果量が異なることや,患者・被験者の盲検化がしにくい点も比較を行うのに難しくする要因として挙げられる。精神療法の実証研究で採用されている比較対照としては,無治療対照,待機リスト対照,通常治療,非特異的治療成分対照,他の治療などがあるが,どれも一長一短がある。一方,新薬の治験はプラセボを対照として有効性(efficacy 研究)を確認するため厳格な基準の下で試験が実施されるのに対して,精神療法の実証研究は,海外で開発された精神療法をわが国の一般臨床場面に近い状況で実施しても役立つのかなど有用性(effectiveness)を確認することを目的とするものも多く,臨床試験の目的が異なっていることから,比較対照も見合ったものを選択する必要があることに留意すべきである。 臨床精神薬理 26:851-857, 2023 Key words : psychotherapy, clinical trial, waiting-list control, efficacy, effectiveness -
脳機能の視点からプラセボ反応を検証する
26, 9(2023);View Description
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プラセボ効果に関する脳科学研究は,抑うつや不安・不眠・痛みなどに対する精神的な治療の一環として行われた薬物療法を中心とした臨床研究のなかで報告されることが多い。これらの症状改善には,抗うつ薬や抗不安薬による薬物効果そのものだけでなく,医療従事者による支持的な対応も含め,治療に対する期待や信念・信頼なども重要な要素と考えられている。本稿では,近年の薬理学的脳機能画像研究におけるプラセボによる脳機能の変化に関する知見を紹介し,プラセボ効果の脳科学研究を紹介しながら,その知見について考察する。 臨床精神薬理 26:859-865, 2023 Key words : functional MRI, PET, placebo effect, reward system, self-regulation -
動物モデルを用いたプラセボ反応の研究
26, 9(2023);View Description
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トランスジェニックマウスを含む動物モデルを使用した行動学手法は,脳の高次機能,特に記憶学習の分子的機構の解明に大きく貢献した。しかし,同じく一種の学習でもあるプラセボ反応に関する動物実験の研究例は限られていた。近年,プラセボ反応の機構解明のためのモデル動物として齧歯類の有用性が認識され,積極的に利用する動きが広がりつつある。本稿では,我々が実際に実験を試みた 2 種類のプラセボ条件づけを中心に動物モデルを用いた研究例を紹介する。これらは,マウスに疼痛やうつ症状を引き起こす状況下,特定の文脈(条件刺激)と治療薬(無条件刺激)を組み合わせることで,マウスにプラセボ反応様の鎮痛反応や抗うつ反応が生じることを明らかにしたものである。将来的に,動物モデルを使用したプラセボ研究の重要性はさらに高まると予想される。動物モデルによる研究の将来の展望についてだけではなく,現状の課題についても論じる。臨床精神薬理 26:867-873, 2023 Key words : antidepressant effect, conditioned analgesia, dopamine, mouse model, placebo re sponse -
臨床に必要なノセボ効果の基礎知識
26, 9(2023);View Description
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ノセボ効果は臨床で頻繁に起こり,患者の治療評価において重要であるにもかかわらず,プラセボ効果に比べてほとんど注目されていない。ノセボ効果の根底にあるメカニズムには患者関連因子,心理社会的背景,神経生物学的因子など多くの因子が相互に作用しており,近年,科学的な解明が進んできている。ノセボ効果に関する正しい知識を持つことは,日常診療や臨床試験において,ノセボ効果を回避し,治療を正しく評価するために必要不可欠である。本稿では,臨床に必要なノセボ効果の基礎知識について説明する。臨床精神薬理 26:875-881, 2023 Key words : nocebo effect/response, adverse events, clinical practice, clinical trial, informed consents -
高齢者におけるプラセボ効果――高齢者のうつ病を中心に
26, 9(2023);View Description
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高齢者は一般成人よりもプラセボ効果が出やすいことが指摘されている。うつ病を対象とした抗うつ薬の臨床試験では,プラセボ効果が出やすいことが知られているが,高齢者のうつ病を対象とした臨床試験のメタ解析でも特に高齢者のうつ病ではプラセボ効果が出やすい可能性が示唆されている。抗うつ薬の症状改善効果においては,純粋な抗うつ作用による効果よりも,プラセボ効果の方が大きな割合を占める可能性があり,高齢者うつ病の実臨床においてはいかにプラセボ効果を引き出せるかが,治療の成功を左右する重要なポイントとなる。そしてプラセボ効果を高めるためには,いかに患者に治療への「期待」を持たせるかがカギとなり,そのための心理的アプローチが重要である。こうしたことから,“高齢者のうつ病に対する薬物治療の本質は,「くすり」という患者と医療者をつなぐツールを介した精神療法である”というくらいの認識を持つことを薦めたい。臨床精神薬理 26:883-887, 2023 Key words : placebo, elderly, depression, antidepressant, expectancy -
児童思春期臨床におけるプラセボ効果
26, 9(2023);View Description
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児童思春期に対するプラセボ効果は,患者自身とその親が薬に対してどのような考えやイメージを持っているのかによって大きく異なってくる。薬で治ると思っている例から,子どもに薬を出すなどひどいと思う例まで振れ幅が大きい。子どもに処方がなされると,薬で治療する病気であるとのメッセージになり,処方によって患者や病人との認識が作られる可能性がある。処方が親の罪悪感を刺激することも少なくない。子どもでは大人以上にプラセボ効果は大きいので,これを最大限活用したい。プラセボ効果自体は一時的であったとしても,それによる次の良い変化が起きると,連鎖的に大きな変化が起き得る。治療の成否は,プラセボ効果があるうちに連鎖反応の好循環を起こせるかどうかにかかっている。プラセボ効果だけでなく,服薬の周辺を豊かにするように配慮することが望まれる。 臨床精神薬理 26:889-895, 2023 Key words : placebo effect, child and adolescent, psychotherapy, virtuous circle
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